唯我独尊男のパス4 ひょいっ、ひょいっと男達はあざ笑うようにパスを廻す。 ストリートだから正確に24秒なんて測らない。 そろそろ経ちそうだな、と思えば軽くシュートをしてまたタイムを元に戻す。 「くっそぉ〜……時間稼ぎなんてセコい真似すんなよぉ〜……」 は、男たちの間を駆け巡るボールにイライラを募らせる。 むきになってボールを取ろうとすると、体ごとかわされて前につんのめりそうになる。 かわした張本人、ジュンは笑った。 その笑いで、の堪忍袋が音を立てて破裂した。(すでに緒は切れているので) 「ムゥッカツク――――!!!!なんなの、あの笑いっ!鼻で笑われたっ!鼻でっ!」 つんのめりそうになった方じゃない足でダン、と地面を踏みしめてグン、と加速をつけてジュンの前に立つ。 「あんたっ!女を馬鹿にしてると女に泣くわよっ!」 が大声で怒鳴ると、さすがに相手も反応する。ピク、と油断した隙に、流川がその手からボールを奪った。 「ナイッス、カエッ!」 無言のまま頷く。 「あぁ〜!ルカワッ!テメー、1人だけいいカッコしやがって!」 無言で通り過ぎる。 「くぉら、ルカワッ!無視すんなっ!」 ……流川の耳には入っていないらしい。 彼の頭には、早くこのゲームを終わらせて隣で試合をしている仙道たちの中に入ることしかインプットされていない。 「カエッ!そのままダンクッ!」 コク、と頷く。 ……訂正しよう。彼の頭には、早くこのゲームを終わらせて隣で試合をしている仙道たちの中にはいること&のことしかインプットされていない。 「―――!」 ガンッ、と派手な音がしてボールが地面に落ちた。 「きゃあっ!カッコイー、カエッ!」 抱きついてきゃあきゃあ言うの頭を、ポンポンと叩いて落ち着かせる。 ひゅぅ、と敵の1人が口笛を吹いた。 「……やるねぇ」 が、その言葉を聞いてふふん、と笑った。 「でっしょ〜?ふふふん♪」 「いや、お前ことは褒めてないから」 冷静な相手の言葉にぴきっとの顔が凍る。 「う〜るさぁいっ!私だって、私だって……そりゃ、ダンクはできないけどっ!派手なプレイくらいできるもんっ!」 「へ〜え?」 「あっ、馬鹿にしたなっ!ムカツクゥ〜……!!!」 「女だろぅ?」 「むっかぁ〜!!!」 からかわれながらも、不良(しかもかなりガラの悪い)たちと対等に話しているに、流川と清田は唖然とした顔をむける。 「ほぅら、あるかないかわからんけど、一応胸もあるし」 ぺと、との胸に、手を当てる。 は、一瞬目をこれ以上ないくらいに見開いて、顔を真っ赤にさせた。 「おぉぉぉぉまぁぁぁぁぁえぇぇぇぇぇぇ!人の胸触っといて、その言い草は何事だぁぁぁぁ!」 突っ込むところが、違うぞサン! 「だって、ほらどっちが背中なのかわからないじゃん?」 そういって、もう一度ぺたん、と胸を触る。 「…………殺ス」 そう言って、目を光らせたのは流川だった。 「オメー、人のモンに何しやがる……」 ぐわし、とその敵の頭を掴み、ぎりぎりと締め上げる。 「うあぁぁぁぁっ!やめろぉっ!いてぇ!ギブギブ!」 「……なんか、お前ら和んでないか……?」 清田の言葉に3人(、流川、敵)は息ぴったりで言う。 「「「どこがっ!?」」」 あまりの形相に、ザザザ、と清田が後退した。 その時だ。ブハッという奇妙な音が漏れたのは。 「???」 訝しげにと流川は振り返る。 振り返れば、肩をゆすって笑っている"ジュン"という名の男。……先ほどまでの姿とは到底思えないほど、明るかった。 「……な、なんなのさっ!誰、あんたっ!」 涙を浮かべて、こちらを見て、ようやく息を落ち着かせた男は未だに口元に笑みを浮かべながらしゃべりだす。 「まったく、あんたたちおもしろすぎッ!」 「そんなことを聞いてるんじゃなぁいっ!」 「あぁ……俺は、陵南の魚住純の弟、魚住純二だ」 は?との顔が、クエスチョンで埋まり、流川の顔は、隣で楽しそうにバスケをしている仙道へと向けられた。仙道が寒気を感じたのか、ビク、と立ち止まって辺りを見回した。 「おっと、仙道さんは、俺のことを知らないと思うよ。学校も違うしな」 流川の凍てつくような目線が元に戻される。それと同時に、の口から言葉が漏れた。残っていた清田たちが近寄ってくる。 「……あれ?じゃあ、なんで私たちとケンカしたの?純二くんは、私たちのこと知ってたんでしょ?」 純二は、またクツクツと笑い始める。 「ケンカ?俺は、こいつらの頭として出ただけだけど?あ゛。もしかして『首根っこ洗って待ってろ』とか、言ったから?冗談のつもりだったんだけどなぁ」 カラカラと笑う。 「全っ然、冗談に聞こえなかったヨッ!」 無言で流川が頷き、清田が大声を発しつつ頷く。 「そうかぁ?なら、悪かったよ。……こいつら、一応タバコ吸ってるけど、不良じゃないから」 「タバコ吸ってるのが、世間様では不良って言うんだよ!」 の突っ込みに、純二たちがうっと後退する。 「なになに?ちゃん。どうしたの?」 騒ぎ(?)を聞きつけてゲームを中断したらしい仙道が、を抱きしめつつ笑顔で聞いた。すかさず、流川の蹴りが仙道へ飛ぶ。 (オメーが覚えてりゃ、こんなことにはならなかったハズだ……) 「……目で訴えないでくれ……」 「あ、仙道さん。うちの兄がどうも世話になってます」 「兄?」 「はっ、魚住純の弟です」 「あぁ〜……魚住さんの。どおりでデカイと思った」 「一家そろってデカイので……」 純二の敬礼に、たちは同時に思った。 (こいつ、今までとキャラ違う……) 「あんた、私たちで遊んでたでしょう!?」 「っていうか、ちゃんで遊んでただろうっ!?」 清田の指摘に、こちらを振り向いて純二はあっけらかんと答える。 「あ、わかった?」 「ふぅざぁけぇるぅなぁ〜〜〜〜〜〜……」 ギク、と全員の背中が凍る。 「遊ばれた?……は?あんなに真剣に怖がってたのに、なにごと?一生懸命フォーメーションとか考えて、カエに……そんで、そんで……!!!あぁ〜〜〜!もうっ!なんなのよぉっ!」 怒り狂うを、どうどうと流川が宥める。が、怒りは収まらない。 「カエッ!あんたも原因でしょッ!あ〜〜〜っ!せっかく考えたフォーメーションッ!バスケの試合しないと気がすまないっ!」 「え゛」 はぁ〜……と流川が深い溜め息をついた。 「……ということでっ!バスケの試合、再開っ!」 「ちょぉっとまったぁっ!」 ドリブルして、走り出そうとするにまったの声。その音量の大きさに、の足が止まる。 そろそろと振り返れば、同じくボールを抱えた4人(牧、神、仙道、桜木)の姿。 「……俺たちも、もちろん入れるよな?」 牧の声に、流川の眉がピクリと上がる。 「……勝負だ」 「臨むところだ」 流川と仙道の目に、バチバチと光が走る。 「おいおい。最初の目的は、俺らとでしょう?もちろん、俺らも入れてくれるんっすよね?」 純二の言葉に、つまるが、なんとかコクリと頷く。 「赤木!審判をやってくれないか?」 声をかけられた赤木が、フッと笑い、立ち上がった。 「まったく、しょうがない奴らだ……ほら、始めるぞ」 「え?あの?は?」 始めようとした張本人のクセに、事態が飲み込めていないの腕を流川が引っ張る。 「え……私も入るの?」 「当たりめーだ」 「うっそぉ?神奈川オールスターズとやるのぉ!?」 「オメーも女子の神奈川オールスターズだろ」 「うっ……それとこれとは……」 「一緒だ」 ぐいぐいとの意に反して体はコートの中央へと連れ去られる。 「チーム分けは?どうする?」 「同じくらいの背のやつと、ジャンケンでどうですか?」 「ふむ……じゃあ、まずは桜木と流川が同じくらいか。……おい、魚住の弟とか言う奴。お前、何cmだ?」 「198cmですけど……」 (で、でけぇ……!さすが、ビッグジュンの弟……!) 「よし、仙道だ。それで、そこの2人。お前らは同じくらいだから、お前らはお前らでやれ。清田と神も、同じようなポジションだろう。SFとSGだから、そこでジャンケンしろ。……残ったのは、俺と……中学の神奈川MVPか」 「な、なんで知って……!」 「ま、そんなことはどうでもいい。ほら、手出せ」 「高校神奈川MVPが敵でマッチアップゥ〜?嫌ぁ〜!」 「……とかいいつつ、ジャンケンの体勢に入ってるのは、なぜだ?」 牧の指摘する通り、は、ジャンケンの体勢―――構えに入っていた。 「ジャーンケーン、ポンッ!」 牧はグー。はパー。 「勝った〜っ!勝った〜っ!」 「(ちょっと悔しいらしい)……負けた奴はこっち、勝ったやつはあっちだ」 はーい、といざ別れてみたら、ものすごい組み合わせ。 勝ったチームは、PGに、SGに神、SFに不良(あだ名はポパイらしい)、PFに流川、Cに仙道という、(本当の)天才軍団(桜木軍団ではない)、別名策士&負けず嫌い軍団。外からのシュート(特に神)が脅威ながら、スピードも兼ね備えているチームだ。 一方、ジャンケンに負けたチームは、PGに牧、SGに不良(あだ名はプルートらしい)、SFに清田、PFに桜木、Cに魚住純二という、インサイド中心のチーム。リバウンドがとてつもなく強いだろう。 ちなみに、チーム決めのジャンケンの時、が『勝った』を連呼してから、キラリと流川と仙道の目が光り、すばらしい形相でジャンケンに臨み、勝ったというのは……あながち嘘ではない。 「フンヌ〜ッ!ルカワ!今日こそ、てめーを倒すっ!」(桜木) 「……やれるもんなら、やってみろ」(流川) 「ノブ、お手柔らかにねvv」(神) 「神さん、その笑みが怖いッス……」(清田) 「魚住さんの弟かぁ〜……ま、1つヨロシクvv」(仙道) 「せ、仙道さん、こちらこそヨロシクお願いします」(純二) 「おいおい……なんか、とんでもないことになってないか……?」(ポパイ) 「なんで、俺らオールスターズとやってんだよ……」(プルート) 「……なんかわけわかりませんけど、やるからには、全力でやりますからねvv」() 「……臨むところだ。俺は手加減ができないからな」(牧) という呟きを抱えて、また次回っ! 中間の言い訳。 ご、ごめんなさいっ!終わるとか言いつつ、物語がへんな方向へ進んで……ごめんなさいっ!次こそ、次こそは……!!!終わる、はず……(馬鹿) BACK NEXT |