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唯我独尊男のパス5





ポンッと赤木がボールを上げた。

仙道と純二が飛び上がる。

ふわっと飛び上がる仙道と、兄も顔負けの迫力あるジャンプの純二。空中で両者の手がボールに触れ、力のぶつかり合いとなり―――ボールは丁度ど真ん中に落ちた。

「いっただきぃ♪」

そう言ってボールを取ったのはおそらくこの中で一番素早い(と思われる)真奈美だ。

バウンドで大きく跳ね上がったボールを片手で器用に操ってみせる。

「ほぅ……」

帝王の顔に笑みが浮かぶ。

「んじゃ、行きますよ、牧サン♪」

トトン、と軽く跳躍すると、一気に抜きにかかる。……が、止められる。

「俺も甘く見られたものだな……」

ピク、と真奈美の眉が動いた。

「ふっふっふ~ん……もう一回やってみようかな?」

「いつでも来い」

すっと、牧が腰を落とした。ドリブルで突っ込む気であろう。

「いっきま~すっ!」

真奈美が、右足を大きく前に出した。

む、と更に腰を落として下がる。

と。

真奈美が出したはずの右足を大きく蹴って後ろに下がった。

「……な~んちゃって♪」

背中に腕を廻して、見事なトリックパス。

おぉ、と歓声が上がった。

なにせ、女子が全国プレーヤーの牧を(たとえまぐれであろうとも)出し抜いたのだ。

ボールは神の腕の中に収まった。

「ナイスパス、真奈美ちゃん」

ニッコリ笑って、ゴールを見る。すると、視界に清田の顔が入った。

「……あれ、ノブ。いたの?」(ニッコリ)

「……神さん、手加減はしませんからね」

「手加減?なんのことかな?」

ヒュッとボールが手から離れる。

瞬間、清田の顔がサルに退化した。

「あ―――ッッッ!」

とどめの神のニッコリスマイル。

パスッと小気味のいい音をさせてボールはリングへ吸い込まれた。

「ナイッシューです、神さんっ!」

真奈美の声に、神はニッコリ。流川はブッスリ。

「……真奈美ちゃん、やるねぇ~……」

「バスケだけが取り柄ですからvv」

仙道の言葉に、真奈美は笑って返す。ポパイとプルートは唖然と真奈美を見た。

((……あれが、女子かよ……))

それでも、なんとか必死に真奈美たちについていった。

真奈美がキュッと振り返ると、そこには意地悪く笑う帝王の姿。

「……やだなぁ、そんな笑い方しちゃって……!」

「……悪く思うなよ……」

ギュギュン、という音が聞こえてくるかのようなフットワークに真奈美が翻弄された。

「お、女の子相手にそんなことしないでよねっ!」

「……手加減は出来んといっただろう?」

ヒュッと純二にパスを出す。

「……牧サン、こっちも手加減しませんよ?」

仙道の腕がニュッと伸びてきて、パスをカット。

「ぬ……!」

「へっへっへ~ん。……ナイス、仙道さん!」

いやいや、と首を振りながら真奈美にパスをする。

「……フンヌ―――ッッッ!」

バクッという音と共に、桜木が現れた!

「おぉ…!」

「センドーとルカワは俺が倒すっ!」

流川の怒り度数、上昇中。





桜木に流川がビッチリとついた。

あまりの気迫に(というか怒りオーラに)さすがの桜木もビビる。

「ヌ……!ジィ!」

「おぅ」

「……だから、手加減しないってば」

そのボールを上手く真奈美がパスカット。

「ふっふっふ~ん♪カエッ!速攻行くよ!」

「……OK」

流川が前へ走る。

そこに上手く真奈美のパスが届く。流川が真奈美の顔を見れば、そこにはダンクをねだる真奈美の顔。

気合もみなぎって、流川がダンクを決めようと走る。

が。そこには、帝王牧の姿。

「……どうした流川。抜かんのか?」

牧が真奈美をほったらかしにして流川のディフェンスにつくのにも、根拠がある。

一対一でこいつは絶対にパスしない

ということが、頭の中に刻み込まれているからだ。

だから、真奈美が流川の後ろに走りこんでも問題ないと思っていた。

「……『俺たち』は手加減しない、と言ったハズだ」

流川は後ろに向けてパスを放った。

相手のことを考えた、少し弱めのパス。近くにいる真奈美が衝撃を受けすぎないように考えての事だろう。

だが、もはやそんなことは牧たちにとってはどうでも良い事だった。

「嘘だろっ!?」

「あの流川が!?」

「1ON1でパスした!?」

「しかも、ちゃんと考えたパス!?」

本人は聞いていないのか、聞かなかったのか。

とりあえず冷静についたてになって、真奈美のシュートを誰にも邪魔されないようにする。

落ち着いて真奈美はシュート。

唖然、というしかないだろう。

流川が1ON1でパスをした。

そして、スクリーンをした。

あの。

「「「「「「天上天下唯我独尊男が!?」」」」」」

ボールが地面に落ちるのさえ、今はとんでもないことのように思える。

「何、みんな驚いてんの?」

少し息を切らせて、屈託のない笑顔で真奈美が流川に問う。

「カエがパスしたこと?……いつもするよねぇ?カエ」

「……当たり前」

(((((猫かぶってやがる……!!!)))))

「……でも、天上天下唯我独尊男って……カエ、そのまんまじゃん」

「ム……!」

ボソ、と真奈美の耳元で流川が一言呟く。

途端に、真奈美の顔から一気に血の気がひいた。

「……さぁ、ドンドンパスするからね、カエ♪」

コク、と流川が頷いた。
未だに、2人を除いた全ての人は、あっけに取られていた。





「……ってなわけで。同点っすか?」

「そうだねぇ~……やっぱ、牧サンは強いよぉ~……」

帝王、牧は笑った。

「いや、さすが中学MVPだ。今年は、男子だけじゃなくて、女子も湘北は強くなるな」

「ありがとうございますvv」

フゥ~……とみんなで息をついた。

「……そろそろ、出るか?……昼メシ、食いにでも」

「行く!!!行きますっ!!!」

真奈美の声に、流川の顔が険しくなる。その顔を無視するように、晴子の腕を取る。

「さぁっ!行こうか!」

仙道まがいのセリフに流川の顔が更に顔をしかめた。





後日。

腰をさすりながら登校している真奈美の姿と。

たまの休日にバスケットコートに集まる神奈川オールスターの姿見られたとか見られなかったとか……。





あとがきもどきのキャラ対談



銀月「終わったぁ!無理やり終わらせたぁっ!」

流川「……無理やりスギ……」

銀月「はい。わかってます。わかってますよ~だっ!」

流川「ならやるな」

銀月「……だってぇ~……」

流川「真奈美とは甘くないし……余計な奴らは出るし……」

銀月「……次は、甘くしますよッ!」

流川「……フゥ~……」

銀月「……がんばりますので、これからもよろしくです」





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