唯我独尊男のパス3

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唯我独尊男のパス3






「律儀に来やがった……」

「本当にねぇ~……」

流川の言葉に、真奈美が感心して頷いた。まったく、近頃の不良は暇な事だ。

「相当暇なんだね」

「やることないんだろ……」

「タバコだけとか?……かなしー青春だよね、考えてみれば」

ぽんっとボールを空に上げて人差し指を伸ばし、落ちてきたボールをくるくると器用に廻す。

「……真奈美ちゃんたち、本当にやるの?」

晴子の言葉に、真奈美は、パチッとウインクをして返した。しかし、その動作にもボールは落ちない。

「もち☆」

「大丈夫っすよ、真奈美サンッ!いざとなったら、この天才が殴るなり蹴るなり…」

ゴンッ!

「たわけが―――!暴力事件で出場停止になったらどうするっ!」

赤木の愛の(?)鉄拳に桜木は頭を抑えた。……ぷっくりと赤いたんこぶが出来ていたからだ。

「……どあほう……」

「ギャーハッハッハッハ!!!」

殴られた頭を涙目でさすりながら、桜木は洋平たちを蹴飛ばした。(流川には蹴る前に逃げられた)

「お、お兄ちゃんっ!もうっ……きゃぁっ!」

晴子のすぐ脇を何かがものすごい速さで通っていった。風圧で髪の毛がなびく。

「―――!」

真奈美は笑っていた顔を驚愕の顔に変えて、自分に向かってくるものから身を守ろうと、ぎゅっと目を瞑って両手を顔の前でクロスさせた。

バシッ!

そんな音があたりに響いた。

「……なんのつもりだ……」

ぼそっと呟く声がする。

流川の手には、薄汚れたバスケットボール。

ゆっくりと真奈美が目を開けてみると、大きな大きな手が目の前にあって何が起こったのか全然わからなかった。

流川の見つめる先には、大男。ジュンと呼ばれていた男がいた。咥えタバコで後ろに2人、男を従えている。

流川が手をどかすと、ようやく真奈美にも現状が飲み込めた。

「……今日は、随分少人数じゃん」

冷や汗をかきながら、真奈美は気丈にも話し掛けた。

「3ON3だろう?余計なヤツらはいらん」

フーッとタバコの煙を吐き出す。そして、そのまま地面にタバコを落とすと、ぎゅっと靴で踏みつけた。

「……さぁ、始めるか」

ニヤリと笑ったその顔は、真奈美に恐怖を与えるには十分すぎるほど、怪しさを帯びていた。





「しかし……見たことがあるような顔ぶれだな……」

「なに、お兄ちゃん。見たことあるの?」

晴子の問いに、赤木は戸惑う。

(確か、バスケ雑誌に……)

ちら、とその時の残像が瞼に浮かんだ。

「ゴリ先輩?」

話を聞きつけてやってきた真奈美が、不安げに覗き込む。赤木は、ふっと笑って取り消した。

「いや……俺の記憶違いだ」

「ふ~ん……」

真奈美ちゃんっ!」

清田の声に、真奈美はぱっと駆け出して、コートに戻る。

「……お兄ちゃん、本当に記憶違いだよね?」

晴子の声に、赤木は珍しく答えにつまった。





「ジャッジなしの10分1セットマッチ。タイムは流しね。3ON3だけど、オールコートで。10分たって得点の多いチームの勝ち。同点の場合はフリースロー5本で入った数の多いほうが勝ち。OK?」

真奈美の説明にニヤニヤ笑いで答える。

「あぁ」

「んじゃ、始めようか……誰か、ボールピックしてくれる?」

「俺がやろう……」

赤木が名乗り出た。

ボールを渡されて、センターサークルの中に入る。そのときに、もういちどちらっと男を盗み見た。

(やはり、どこかで……)

「先輩?」

「あ、あぁ……」

ピッとボールをアップする。

一番大きいくせに飛ぼうとしないジュンをよそに、流川は大きくジャンプし、ボールを真奈美へと上手く落とした。

「ナイスvvはい、信長!」

「おぅ」

「ノブッ!一発!」

先輩、神の声に答えるように、清田はグッと地面を踏みしめてジャンプした。

「オラァァァァァァ!!!」

気合を込めてリングに叩き込もうとボールをもった右手を頭上高く上げる。

「俺がスーパールーキー清田信長様だぁ!」

ぐわっと右手をリングに向かって下げた。

ポンッと軽快な音がする。

「へ?」

清田の右手は、虚しくリングを掠った。

「―――あ?」

その場にいる全員が息を飲んだ。―――あの流川でさえも。

「……ガキが……」

ダンクしようとしていた清田の右手からボールを奪い取った張本人、ジュンが小さく呟いた。

清田の体が、宙で大きく揺らぎ、地面に落ちた。

「「「「清田!」」」」「ノブッ!」「信長!」

真奈美と流川が清田に近づくと、その間に男はジュンからパスされたボールで豪快にダンクを決めた。

「……くっ……いてぇ~~~~!」

がばっと起き上がった清田に、安堵の声が漏れた。

「大丈夫?」

「あぁ!もちろんっ!」

「……どあほう」

2人で手を貸して、清田を起き上がらせる。後ろから低い声が聞こえた。

「馬鹿が……」

カチンッと真奈美の頭にきた。

「さっきから、ガキだとか馬鹿だとか、うるさいなっ!不良のあんたたちに言われたくないよ!もうっ!」

「女が……」

その言葉に、真奈美が激怒した。

「女だからなんだってのよ―――!カエ!信長!まじめにいくよ、まじめに!」

「……今まで真面目じゃなかったのか」

「そーゆー意味じゃない!」

真奈美は、エンドラインから勢い良くボールを流川に渡した。

「本当に怒った!」

「……フゥ……」

「カエッ!溜め息つかないっ!」

ばしばしとパスしながらしゃべる。それでも、ボールは正確に流川の胸へと渡っていた。

「……真奈美ちゃんが怒っちゃった……」

晴子の心配をよそに、隣ではノー天気な会話が繰り広げられていた。

「やれやれ……なんだか、俺もバスケしたくなったよ……」

「お、仙道、お前もか。俺もちょーどしたくなったところだ」

「あ、本当すか、牧サン。……いっちょ、勝負しません?」

仙道が、常備している(?)ボールを大きなスポーツバッグから取り出した。ニヤリ、と牧が笑う。

「俺も混ぜろ―――!」

「もちろん、僕もですよね?」

桜木と神が腰をあげる。

「い、いいの?お兄ちゃん……」

「ふん……団体行動のできんやつらだ……」

どこかでそのセリフ聞いたような……。

かくして。

コートで不良たちと果敢に戦う真奈美たちと、かたや己の満足のためだけにプレイをする神奈川オールスターが試合をする、という、とんでもないことがこの日、起こった。





4へ続く。



まだ続きます……。多分次で終わり……ます?(ヲイ)






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