唯我独尊男のパス2





「やっほっ!花道に洋平たちっ!わざわざサンキュッ!」

は、バスケコートに入ってこようとしている赤頭とリーゼント、そしてその他3人に声をかけた。

ちゃぁんっ!俺たちは、『洋平たち』の一言かよっ!」

高宮、大楠、野間の叫びにはにっこり笑って付け足した。

「あぁ、ごめんごめん……望くん、雄二くん、それにチューちゃんvv」

「……よし……(ニヤリ)」

「おい」

がしっと、の腕がつかまれた。タリ、と汗が一筋流れる。

「……カエ、痛い……」

「なんでお前らがここにいる」

ギロ、と一睨み。それにも怯まず、桜木がはっはっはと笑った。

「とうとうフラレたな、ルカワッ!サンが、俺たちを呼んでくださったんだよっ!ハーッハッハッハ!」

どかっ。

流川の蹴りが桜木の背中にHITした。

「……?」

低い声に、がうっと詰まった。

「……だってだって、カエったら酷いんだもんっ!今日は試合なのにさ〜……ごにょごにょ……腰、痛いし……」

ギク、と流川の目が揺れる。キラーン、との目が光った。

「だから、全てはカエの所為だからねっ!文句は受け付けないよっ!」
ここぞとばかりに、が言葉の羅列を並び立てる。最後にビシッとが指を突きつけると、流川は大きく溜め息をついた。

ちゃ〜ぁん…………」

遠くから、声が聞こえた。3ON3のメンバー、清田信長だ。

走ってやってきた清田は、ぜぇぜぇと肩で息をした。桜木達(流川も含め)は目に入らないのか、だけに向かって話し掛ける。

「今日は、がんばろうな!」

「おいっ!野ザル!なんでてめーがここにいる!」

「……あぁっ!?赤毛ザルッ!?なんでお前が……」

ピクッ、と桜木の耳がでかくなる。そして、さも偉そうにいつもの『天才笑い』を炸裂させた。

「ハーッハッハッハ!サンが誘ってくださったんだよ!野・ザ・ルッ!」

「……くっ……ふ、ふん……俺なんか、今日ちゃんとバスケするんだぜ!」

今度は、清田の『ルーキー笑い』が大暴れ。桜木がウッとうめいた。

「……おい、行くぞ……」

流川がその隙にの腕を取ってフェンスの中へ入ろうとする。

くわっ!!!

「ちょぉっと待てぇ、流川っ!」

「……誰が待つか、どあほう……」

振り向いた流川の目に入ったのは、桜木達の後ろからやってくる人だかり。

「……ゴ……キャプテン……?」

「なになに?」

流川の大きな体の横から、ひょいっと顔をのぞかせる。

ぱっとの顔が輝いた。

「晴子ちゃんたちだっ!……あれ?誰、あれ?」

晴子と赤木だけしか呼んだ覚えはない。

明らかに3人以上の人だかりに、は不信感を覚え、流川に聞いた。

「…………」

渋い顔をする。

「ねぇ、誰?誰?」

段々と、近づいてくる人だかり。

ツンツン頭の大男。

肌が黒い、王者の風格漂う男。

ブラックなスマイルの細い男。

「……牧さん!神さん!」

「ぬぅ……センドー!」

「……え?」

が戸惑うのも無理はない。

清田と桜木の言葉から推測すれば。

あれは、陵南高校のエース仙道彰に、海南高校主将かつ神奈川ナンバーワンプレーヤー、牧紳一、そして海南高校の3Pプレーヤーの神宗一郎だ。

つまり……

ここにいる桜木、流川、清田、そして赤木を加えれば、夢の神奈川オールスターチームが出来上がるだろう、というぐらいのプレーヤーが一挙に集まっていたのだった。

「うそぉっ!すご〜いっ!すご〜いっ!カエ、知り合いなんだっ!」

「……別に。行くぞ」

「えぇ〜っ!?ちょっと待ってよっ!私、仙道くんのサインもらいたいっ!」

「どあほう」

と、流川がの頭を小突く。

「そんなもんは、俺ので十分だ」

「えぇ〜っっ!?」

「……ずいぶんな言い様だな、流川」

「……(早く帰れ)……」

ギラン、と目が光る。

「顔で、言うなよ、流川……あ、ハジメマシテ、仙道彰デスvvよろしくね」

の顔が太陽の如く輝いた。

「はじめまして!です!ファンなんですっ!サインお願いしますっ!」

「ファンかぁ〜……嬉しいなぁvv」

にこにこと、の手帳にさらさらと自分の名前を書く。でも、その顔は流川の方に向けられていて。

『俺のファンだって……どうするよ、彼氏クン?』

とはっきりと書かれていた。

更に渋い顔になる。

……行くぞ……」

ぐいっとその腕を引っ張って、フェンスの中に入る。

「ちょっ……カエ〜!」

ぐいぐいとその体は引っ張られていく。

「痛いって……カエ!」

半泣きで流川に訴える。そんなを流川は更衣室まで連れて行くと、壁にダンッと叩きつけた。

「……ったぁ〜……んっ!?」

急に唇をふさがれ、口内を掻き回されて、は怒るのも忘れる。

「……んん〜っ……!」

息も出来ずに、ジタバタと暴れる。

「んっ……!」

そっと唇が離された。銀の糸が2人を繋ぐ。

「……カエ?」

「あいつらと、必要以上にしゃべるな」

「なんでよ〜!んぐっ……」

もう一度キスをされる。

「……はっ……わかった、わかったから!なんで?」

ふいっと流川の顔が横を向いた。

はっは〜ん……との顔がにやける。

「……ヤキモチ焼きカエ」

「……どあほう」

更に、キス。

「……わーかーりーまーしーたーよ。……できるかぎり、努力はします」

「……そうしろ」





ちゃん。今日は誰と試合するの?」

晴子が更衣室から出てきたに聞いた。

湘北高校のバスケ部だが、それと同時にストリートバスケでも活躍するは、このバスケコートで他のストリートバスケのチームと試合することも珍しくない。……もちろん、その時は違う人と組んでいるチームでだが。

「ん〜……知らないなぁ。カエも知らないよね?」

「あぁ、知らん」

「え!?」

驚く晴子に、はケラケラと笑う。

「なんかさ〜、不良たちにケンカ(?)ふっかけられちゃってさ〜……んで、カエが『やるんなら、バスケ』とか言って、バスケの試合になった!」

「えぇ〜!?」

「晴子」

赤木の一言に、晴子が身をすくませる。

「あっ、ごめんなさい……でも、大丈夫なの?」

「うんっ!不良は三井サンで見慣れてるしvvいざとなれば、花道も洋平もいるしっ!」

くいくい、との洋服を引っ張る流川。

「もち、カエもね!」

コクリ、と満足そうに頷く。

どやどやと遠くからタバコくさい匂いとガラの悪そうな声が聞こえてきた。

「あ、来たみたいだねぇ〜……」

の呑気な声。

試合開始まで、後、数分。








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