朝起きて乳搾りに行って。

搾りたてミルクを飲んでご満悦。

朝食はふわふわ卵のチーズオムレツ、それに搾ったミルク、さくさくトーストなどなど。シンプルながらもおいしいんだ、またこれが!

朝食を終えたら、馬のところへ案内してもらえるらしい。

今日1日、面白そうだ〜。

…………なんだかやたらと景吾が、乳搾り上手かったのは、もはや景吾だからという理由で納めておこう。慣れてるからだよね?……深く考えると色々怖い……。



Act.31  女失格、再び



朝食を終えて一息ついて。
景吾に案内されて、厩へ。

「うわぁ〜……馬って、間近で見ると結構大きいんだね……」

特に顔が大きい。
うわー、口もでっかいよ……こんなのに噛まれたら痛いだろうなぁ……。

景吾がポンポン、と普通に馬の顔を触る。

「ここにいる馬は、穏やかな性格のヤツばかりだ。……触ってみろ」

恐る恐る1匹の顔に触れる。
触れた瞬間、ぶるる、と言われたからビックリしたけど……うん、大丈夫みたい。
最初はただ触れるだけだったけど、慣れてきたら撫でる。
うぉっ……目がつぶらで超可愛い……待てよ、この目、どこかで…………。

!!!!!

樺地くんだ―――!!!

馬のこの純真でキラキラした目、樺地くんそっくり!……いや、別に樺地くんが馬っぽいとかそういうわけじゃなく……あれ、馬っぽい……のかなぁ。ヤバイ、段々と馬と樺地くんが一体化してきた……!(混乱)

でも、樺地くんだと思うと、全然怖くない……!

なでなで……なでなでなで……

やばい、超可愛い〜〜〜!!!

「慣れてきたようだな。……じゃあ、これに乗ってみるか」

「う、うん……」

谷山さんが手早く私が触っていた馬に、鞍をつける。
ポンポン、と景吾が馬を撫でてから、ひょいっと乗った。

そ、そんな簡単そうに乗るけど……実際は結構高いよ?

、アブミに足を引っ掛けて、タテガミ握って一気に乗れ」

「た、たてがみ!?痛くないの?」

「大丈夫だ。乗った後は俺につかまってバランス取れ」

足場に足を引っ掛けて―――1、2の3!
あっという間に視線が高くなった。
高いので慌てて、前にいる景吾の服に掴まる。

「うわっ、高いっ!」

、抱きついた方がいいぜ?」

服を握っていた手を、前に回される。
……密着していて、なんだか恥ずかしい。

「まずは馬に乗ることに慣れろ。その後、1人で乗ってみるといい」

「う、うん……」

「最初は歩くところから」

景吾がポン、と軽く蹴ると、馬がとことこ歩き出す。
わっ、結構揺れる〜。揺れにあわせて体を動かすと楽ね……。

「しばらく歩いてみるからな」

「うん。……すっごいね、視界が高い」

「あぁ、初めのうちは怖いかもしれないが、すぐに慣れる」

景吾の言うとおり、少し歩くとこの視界の高さに段々と慣れてきた。

、少し早くするからな」

景吾が今度は馬の体を少し蹴った。
ドコドコッと今度は早歩き。ガクガク揺れる。

「うわっ……」

「落ち着け。揺れに体を合わせろ」

景吾の言うとおりに、なんとかその揺れに体を合わせる。
うっ……結構乗馬って筋肉使うかも。

「…………まぁ最初は速足くらいまでだな……、今の見ててわかったか?」

「えーっと……馬のお腹をポンッて蹴ると、進んで……もう1回蹴ったら、早くなった」

「そうだ。……で、曲がるときは曲がりたい方向の手綱を引きながら、逆側を少し押してやるようにすれば」

景吾が言ったとおり、手綱を操作すれば。
くいっとお馬さんは素直に曲がった。

「……すごいね、景吾……」

「要は慣れだ慣れ。何度も乗ってるうちに、体が覚えてくる」

「が、頑張るよ……」

くいっ、と景吾が手綱を引いて、馬を止まらせる。

「じゃあ、今度は、1人で乗ってみろ」

「えっ、えぇっ!?」

「大丈夫だ、最初は俺がついてる。……一旦降りれるか」

「わ、わかった……えーっと、右足抜いて……」

乗ったときと逆の動作で一旦地面に降り立つ。
……ふぅ、視界が低い。やっぱり少し安心するね、この高さ。

景吾が同じように馬から降りてきた。

「次、お前1人で乗ってみろ」

「……う、うん……」

左足をひっかけて―――タテガミ握って。

「って、さっきは景吾に抱きつけたからいいけど、今度は抱きつくものがないじゃん!」

「手綱握ってバランス取れ。……大丈夫だ」

ぐっと覚悟を決めて、タテガミを引きつつ馬の背に乗る。
バランスを崩しそうになるのを、なんとか堪える。

「っはぁ〜……の、乗れた……」

「よし、じゃあ、少し蹴ってみて―――」

景吾のレクチャーの元、私は乗馬体験に汗を流すのだった。





大分乗馬にも慣れて。
景吾は自分の馬『シルバーミーティア号』(すごい名前)に乗ってきた。

くそー……景吾ってば、白馬が似合っちゃってるんだよ!
跡部家本宅にいるエリザベートも白だったなぁ……。

「どうした?」

「なんでもない……(絶対白馬が似合うだなんて言ってやらない)」

「?……じゃあ、少し2人で歩くか」

景吾が私の隣に来て。
促されるままに、馬のお腹をぽんと蹴って歩き出す。

お馬さんがぽこぽこ歩く。
これ……結構楽しい。はまりそう。

「乗馬って、楽しいねぇ〜。はまっちゃいそうだよ」

景吾もあわせて歩いてくれるので、会話が出来る。
のんびりとした雰囲気がこれまた心地いい。

「またここに来ればいい。……は覚えがいいからな。今度来たときは、もう少し速く走る、次の段階にいける」

「馬って全速で走ると何キロくらい出るの?」

「あぁ……大体60キロ前後……競走馬だと、70キロは出るな」

「な、70キロ…………高速道路走れちゃうね……」

それはちょっと速すぎるよ……。
そう思っていたら、全速力の段階はまだ先らしい。
次のは20キロ〜40キロくらいの速さで走るんだって。

「そのくらいの早さだと、上下運動が少なくなって、もっと楽に乗れるようになるからな」

「ふ〜ん……じゃあ、そこまでは頑張ってみる」

「あぁ、疾走感が気持ちいいぜ。…………これ終わったら昼飯にして、羊なんか見にいくか?」

「羊〜!見にいく〜!」

もこもこの羊さん見たい〜!
えさとかあげてみたいし!

「じゃあ、あそこまで歩いて…………」

景吾の言葉が突然止まった。
怖くて私は視線を真正面から外せないので、ちょっとだけ横目で景吾を見ると、景吾はある方向を凝視していた。

私もなんとかその方向へ視線を向ける。

「…………ん?」

なんか……見たことがある、人間像がたくさん……。
そのうちの1つが、元気よく手を振ってきた。

―――!!!」

「……が、がっくん!?」

、落ち着け。…………何も見なかったことにして、向こうに戻るぞ」

「えっ!?」

景吾はさっさと方向転換する。
私も慌てて方向転換。

「あっ、は置いてけ、クソクソ跡部〜〜〜!!」

がっくんの言葉を無視して景吾は馬を歩かせ、少し歩いたところで馬から降りる。
私が降りるのを手伝ってくれて。

「あ、あの……景吾……」

「俺様は何も見てねぇ。昼、食いに行くぞ」

…………え〜〜〜……ちょっと……。
明らかに、がっくんとかいたんだけど……しかも、がっくんだけじゃなくて。

レギュラーがいたよね?

なんだか、あまりにも牧場とレギュラーが結びつかなくて、そりゃ否定したくなるのもわかるけどさ。

さん!」

……チョタの声だって聞こえるし。

〜〜〜」

なんだか、抱きついてるふわふわ金色眠り羊もいるし。

これは、認めざるをえないんでは?

「ふっ……言ったやろ、跡部……覚えとき……ってな」

背後から聞こえてきた侑士の声。
ぐるり、と景吾が振り返った。
なにかボソボソと呟きながら、にらみ合っている。

「貴様か、忍足……」

「せっかくのホワイトデーをちゃんと2人っきりなんて過ごさせへんで……レギュラー呼んで、跡部んちまで電話してここまで来たんや。あぁ、ちなみに樺地は今日はけぇへんで。残念やな、お前の味方はおらへん」

「お前……!」

何を言ってるか聞こえないけど、なんだか黒いオーラと雷の音(ピシャーンってヤツ)が聞こえる気がする……!

「さぁ、いがみ合ってる2人は放っておいて、あっちへ行きましょうか」

「そうだな。ったく……2人ともこんなとこまで来てケンカかよ……激ダセェな」

にこやかな笑顔のチョタに促され、私とがっくん、ジローちゃんに亮は牧場内のお店へ歩いていく。

「みんな、いったいどうしてここが……?」

「侑士のヤツが、『ちゃんに会いに行くで!』とか言ってたから、ついてきた〜」

そんながっくん……!
あなた、そんなことじゃ、さらわれちゃうわよ!?
『納豆あげるから、ついといで』とか言ったら、絶対1も2もなくついてっちゃうでしょ!?
お姉さんが『納豆あげるからがっくんおいで!』って言ったら来るでしょ、絶対!
…………その手があったか、今度やってみようかな(オイ)

「まぁ、僕らもさんに用があったので……」

「え?私に用?」

―――!これあげる〜〜〜!」

ジローちゃんがなにやら大きな包みをくれた。

「な、なに……?」

「今日は、ホワイトデーだよぉ?、もしかして忘れてたー?」

ほ、ほわいとでー……?

ホワイトデー!!!!(理解)

「わ、忘れてた!!」

わぁ、バレンタインの時といい……私ってば、なんて乙女失格なの……!
ホワイトデーとかって、お返しもらえるかワクワクするときじゃないの……!

、開けてみて、開けてみて〜」

「う、うん……」

ジローちゃんがくれた包みを開けると。

「か、可愛い〜〜〜!!」

ラブリーな羊型枕が!!

「それねー、ラベンダーの香りがして、よく眠れるんだよ〜」

「可愛い!ありがと、ジローちゃん!」

「えへへ〜、に喜んでもらえて、嬉Cー!!」

超可愛い!羊枕も可愛いけど、ジローちゃんがそれ以上に可愛い(激萌)

、俺はこれ〜!」

がっくんが渡してくれたのは、小さな小箱。
中には羽の可愛いチョーカーが入っていた。

「うっわぁ、これも可愛い〜〜!!」

「だろだろ?……へへっ、つけてみそ」

チョーカーを手にとってつける。
がっくんが満足そうに笑った。

「ありがと、がっくん!」

さん、俺からはこれです」

チョタに渡された箱の中には、これまた木の箱。
そっと開けてみたら、可愛い音楽が流れ出した。

「わぁ、オルゴールだぁ……この曲……」

「パッフェルベルのカノンです。……俺の好きな曲なんで」

「私もこの曲大好き。ありがとう、チョタ」

「じゃあ、最後は俺だな」

亮がくれた包みは。

「お菓子の詰め合わせ〜!」

定番といえば定番だけど……小さなバスケットに入ってて、キャンディやらマシュマロやらが可愛く詰められてる。星型のキャンディがもう激プリティvv

「何選んでいいかわかんなくてよ……結局こんなありふれたもんなんだが」

「ううん!すっごく嬉しい、ありがと〜!…………って、みんなごめんね!?なんだか、こんな可愛いものもらっちゃって……」

明らかに私が買ったチョコより高いよみんな!

「気にすんなよ。俺たちからの気持ちだから」

「そうですよ。さんに日ごろの感謝も込めて」

あぁぁ……なんって……なんっていい子たちなんだ、本当に!
もう感動して泣きそうだよ……!

「ありがと……!大事にするね!……みんな、今日はこれからどうするの?」

「あー……ここまで来たからには、少し見て帰ろうかと」

「じゃあ、一緒に羊見に行こうよ、羊!あ…………そう言えば、景吾と侑士は……?」

「「ここにいる!(おる)」」

バンッと店のドアを開けて、2人が入ってきた。
おぉ、ナイスタイミング。

「自分ら……俺置いてって、仲良うちゃんと話しよって……」

「おぉ、侑士。おかえり」

「おかえりと違うわ、岳人……はぁ、もう怒る気もせぇへん……」

……なんだその荷物」

景吾が私が両腕いっぱいに抱えたプレゼントを見て、眉をひそめながら聞いてきた。

「みんながホワイトデーのお返しだってくれたvv」

「…………そうか、そりゃよかったな」

「うん!……ご飯、ここで食べるの?」

「そうだな……どうせお前らも食うんだろ?」

最後の言葉はレギュラーに向けて言ったもの。
みんながうん、と頷いた。

結局、みんなでお昼ご飯を食べて、牧場見て回って。
ジローちゃんと羊の、夢のツーショットも見れたし(笑)

おやつに食べたジェラートも美味かったvv

日が暮れるまで遊びつくした私たち。
レギュラーも明日は日曜日だし、全員泊まることになった(部屋は大量にあるし)

夕飯が終わった後もみんなでわいわい騒いで。
途中、侑士からは、可愛いブレスレットをもらった。

そろそろお開きにしようか、と自分の部屋に戻った時には、もう12時近かった。

ふわぁ、と欠伸をしながらベッドに飛び込む。

ジローちゃんがくれた羊枕を抱きしめると、いい香りがした。

コンコン。

「……はーい?どうぞー?」

こんな時間に部屋を訪れるのは、『俺様』ただ1人だってわかってたけど、一応むくっと起き上がって確認する。
ガチャッと開けて入ってきたのは、

「……

やっぱり景吾だった。

「どしたの、景吾」

パジャマに着替えて真っ黒な景吾は、何か手に持ってる。
私が座ってるベッドのところまできて、ベッドに自分も腰掛けると、ずいっとその包みを差し出してきた。

「?なに?」

「…………チョコの礼だ」

そういえば……景吾からはお返しもらってなかったけど。

「でも、私散々バレンタインの時に買ってもらったんだけど……」

「あれとこれとは別モンだろうが」

羊枕を一旦置いて、景吾の包みを受け取る。
結構大きなサイズ。
ガサガサと包装紙を開けてみれば。

「あははっ、可愛いテディベア!」

ふわふわのちょうど抱きしめるのに最適なサイズ。

「バーカ、もっとよく見てみろ」

「え?」

ジィッとテディベアを見つめたら。
手のところに何か光ってるものを発見。

「…………あれ?」

「やっと気づいたか……」

ひょいっと景吾がテディベアを取り上げて、なにかをクマの手から抜き取る。
左手を取られて、小指につけられたのは、指輪。
…………またなんか、青い石とかついちゃってるんですが。

「とりあえず、ここな。……隣の指は、予約しておくから空けとけよ?あーん?」

ちゅっと音を立てて、指輪がついた隣の指にキスをする。
カー……ッと顔が赤くなるのがわかった。

「な、なななな……ッ」

顔を上げた景吾は、今度は指ではなく私の唇に覆いかぶさってきて。

「ん〜!……(隣の部屋に侑士とかいる〜!)」

ドンドン、と背中を叩くけど、景吾は止める気はまったくなし。
微塵も見せてはくれない(泣)

「んっ……っはぁ……景吾のバカ……ッ、隣の部屋に侑士もいるでしょー!?」

聞こえるとまずいから、少し小さめの声で抗議する。
景吾はまだ顔を近づけたままで、しゃべったら唇が触れそうだった。

「あーん?……気にすんな」

景吾がしゃべれば吐息が顔に当たって、これまた恥ずかしい。
……とか思うまもなく、またキスしてくるしー!!!

キス魔め!キス魔跡部景吾め!

段々と酸素が足りなくなり。
ジローちゃんからもらった、安眠枕の香りも効いてきて。

いつの間にか、眠りの世界へ。





「あぁぁぁぁ!!!跡部とちゃんが一緒に寝てる〜〜〜!!!」

がっくんの大きな声で起きたときは、マジびびったよ(汗)


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