Act.14 乙女の祝日、腰砕け 景吾により、少し寝坊を認められたので、8時までしっかりと熟睡。 いつもはなにがあろうと、6時に起こされてたからね……久しぶりの寝坊はとても気持ちよかったですよ。 シャワーを浴びるために、タオルを出す。それと着替え。 クローゼットを開けた。 中にはたくさんの服。……なんか、知らない間にまた増えた気がする。 この世界に来て2日目に、景吾がこれでもかとデパートで買ってくれたんだけど、それでサイズを知ったのか、時々カタログかなんかで買ってくれてるみたいなんだよね……景吾いわく、『服はいくらあっても困るものじゃねぇ』だそうで。 …………タンスのこやしになる服たちが可哀相だとは思わないのが、ブルジョワだよ……。 やっぱり、歩きやすい服装がいいよね……。どこ行くかわからないから。 うーん……?だからといって、Gパンじゃなぁ……チェックのパンツにしようかな……あぁっ、迷うッ! ……っていうか、景吾の服を見てからの方がいいかな?あんまりカジュアルすぎると、景吾がエレガントファッションだったときに、取り返しがつかない……。 コンコン、とノックされる。 「、起きたか?」 「あっ、うん……」 現れた景吾は、ボーダーのパンツに白のハイネックセーター。……思ったよりもエレガントじゃなくてよかった。 「用意できたら、ノックしろよ」 「はーい」 景吾に返事をして、服選びを再開。 うーん……チェックのパンツに上は……重ね着でいいか。インナーは黒。よし、これに決めた! 選んだ洋服とタオルを持って、シャワー室へ。 景吾も待っているので、さっさと浴び終え、ブォーっとドライヤーで髪の毛を乾かす。 ……元の世界じゃ、朝シャワーを浴びるとか、1ヶ月の間に数えるほどしかなかったのに、こっちの世界に来てからじゃ毎日だもんなー……人間、変われば変わるものだ。 いつものように、髪の毛は生乾き。……全部乾かすの、メンドクサイし手が疲れる。表面は乾いてるように見えるから、それでよし(いいのか) 景吾の部屋まで行き、ノックする。 すぐに景吾は出てきてくれた。 「おはよう、景吾」 あぁ、と景吾が私の頭にポン、と手を乗っける。 ヤバイと思ったときには、もう遅い。景吾の眉間に、シワが寄っていた。 「…………、また髪の毛サボったな」 くしゃ、と景吾が髪の毛の中に手を突っ込む。 ……ち、バレたか。 景吾の部屋に引き込まれ、椅子に座らせられて、髪の毛を乾かされる。 「濡れたままだと風邪引くっていつも言ってんだろうが」 「だって時間ないし……メンドクサイし(本音)」 「風邪引くよりマシだろ、あーん?」 ブォーっと風が髪の毛を揺らす。 生乾き状態まで行っていたので、わりとすぐに乾いた。 「少しやればちゃんと乾くだろうが」 「その少しがメンドクサイのだよ……」 ペシッと頭を叩かれて、私たち2人は食堂へ向かった。 朝ごはんを食べ、部屋に戻って歯を磨く。 バッグの中身を確認し、コートをクローゼットから取り出す。 ファーがついた、ハーフコート。これでいいや。 このお屋敷は洋館なので、ここまで靴で入ってくる(といっても、部屋に入ればスリッパだけど)だから、靴も部屋の中に置いてあるわけで。 靴は、スニーカー。パンプス苦手だもん。パンプスって、小さいと可愛いんだけど、大きいサイズになると、可愛くなくなるんだよね……。 コンコン、というノック。 「はーい、大丈夫だよー」 「、支度出来たか?」 「うんっ、大丈夫〜」 「じゃ、行くか」 靴を履き替えて、景吾にくっついていく。 「いってらっしゃいませ。車の準備は整っております」 「あぁ」 「いってきま〜す」 玄関を出て、すぐに車に乗り込む。 発進した車の中で、私は堪えきれずに景吾に聞いた。 「ねぇ景吾、今日はドコに行くの?」 どこだろう……オペラとクラシックコンサートの貸切は却下したから……。 でも、景吾が行く場所って、想像できないんだけど……! 景吾は、私のほうを見て、ニヤ、と笑った。 「秘密だ。……ついてから、な」 「………………そういう手で来ましたか…………」 あ〜〜〜〜〜!気になる!気になるじゃんか〜〜〜!!! はっ……でも、気になる以前に心の準備ができないよッ! なにか演劇鑑賞とかだったら、寝ないようにとか(最悪)……おぉぉ、ドコに行くんだ〜!? 「、ここの道は覚えておけよ?駅から家に続く道だ」 「へっ?あ、ハ、ハイ!」 「何ボーっとしてやがる。…………まさか風邪でも引いたのか?あーん?」 額に手を伸ばしてきそうになる景吾にむかって、ブンブンと首を振る。 「そんなことはないですよっ!だからエリザベート(愛馬)で登校はやめてくださいっ!」 「ならいいんだが。…………そこの道を曲がって、ずっとまっすぐ行くと駅だ」 「りょ、了解。…………駅に近いほうが、お店とかいっぱいあるよね?」 「そうだな。家の近くはまるっきり住宅しかねぇし。駅前に行けば、一通りの店はそろってる」 買い物にいくんだったら駅前だな…………。 カラオケとかあるのかな?あったら、今度がっくんとか誘ってみよう。 すーっと車が停止した。 「ついたぞ、。降りろ」 景吾に促されるままに降りる。 降りた場所はホールの前でもなんでもない、普通の大通りの一画だ。 なんだ、案外普通だ〜。 と思ったら。 景吾さんがこっちだ、とさっさと入って行った店の名前が。 「グ、ググググ、グッチ!?」 うっそぉ、グッチとか、何!?えっ、マジ!?本物!? 後ろに祐三とかつかない!?(つきません) だって、グッチだよ!?友達で、社会人の彼氏に貢がせたらしく、財布持ってる子はいたけど……。 「、なにしてんだ?」 「は、はい…………」 恐れ多い……!なんだか、私のような若輩者がグッチの店の扉をくぐってよいのでしょうか……!?なんか、店内とこの道路の間に、見えない透明なシールドが張ってある気が……! 「……ったく」 いつまでも動かない私を見かねたのか、景吾が腕を掴んだ。 私は引きずられるようにして、店内に足を踏み入れる。 「いらっしゃいませ、跡部様」 丁寧にお辞儀をする店員さん。 お得意様なのね……跡部家。もはや次元が違います、色んな意味で……。 「コイツに合う服、見せてくれ」 !!!!! 「かしこまりました」 「け、景吾、私はいいから、景吾の服……」 「あーん?いいんだよ、俺様は。今日はお前の服だ」 「いや、でもいっぱい持ってるし!」 ブランド物は着る人がブランドついてるから、美しく見えるわけで。 一介の庶民の私がグッチの服を着ようが、スーパーの大安売りのセール品を着ようが、あまり見た目的には大差ないと……!私がグッチ着ても、誰も気づかない可能性大……! 「どうしてそんなに服を買いたがるのですか……!?」 「脱がせたいから(キッパリ)」 ……………………………………What? ………………えーっと。 青少年にあるまじき発言は、脳内から削除しておこう、うん。 「………………景吾さん、ここは街中です。発言には気をつけましょう」 「嘘は言ってねぇ。……まぁ、今日のはあのチョコの礼だ」 「バレンタインのお礼は、ホワイトデーで十分です!」 「いいんだよ。俺様がしたいんだから。…………あぁ、そっちのドレスも」 「ドーレースー!?着ませんよ、そんなの着ませんよ!着る機会ありませんよ!!」 親戚の結婚式くらいしかドレスなんて着たことありませんよッ! 「これから着るんだよ。今度パーティーに連れて行ってやるからな」 「パ、パーティー!?」 景吾が店員さんに持ってこさせたドレスを私に当てて、具合を確かめている。 ……あぁぁ……似合いませんから…………無駄な努力は止めましょ…………。 「この薄い紫……それに、マリンブルーのドレス」 「えぇっ!?」 「ありがとうございます」 「うそっ?えっ?」 景吾がいつの間にか持っていたドレスを店員さんに渡している。 えっ、ねぇ、もしかして、それお買い上げ?お買い上げ!?いっぺんに2着もドレス!? 「それから……あぁ、その鞄も。…………、色は紫、オレンジ、ブルーがあるが、どれがいい?」 「か、鞄なんていりませ「俺的には、にはオレンジなんだが」 …………Oh〜……一体このお店でいくら使う気ですか、景吾さん…………。 「オレンジでいいな?」 もはや逆らう気も起こらずに、コクンとだけ頷く。 「よし。…………支払いはカードで。品物はいつものように家へ届けてくれ」 「かしこまりました。……それでは跡部様、こちらにサインをお願いいたします」 サラサラッと景吾が流暢な字でサインをして…………あぁぁ、お買い上げになってしまわれたよ。ホントに……ウン十万円使ったよ、この店で…………。 夜中にコッソリ戻しに来たら、返金……とかないかな?ないよな…………。 「おい、次行くぞ」 景吾に手をひっぱられて、グッチを後にする。 また車に乗り込んで、移動。 ビクビクしながら、景吾に聞いた。 「…………あの、次はドコへ?」 そう聞くと、また景吾は笑って 「秘密だ」 …………………………………………あぁぁ、怖すぎる。 どうしよう、どうしよう、どうしよう…………。 グルグル悩みながら着いた先は。 ティファニー。 カクン、と足の力が抜けそうだった。 グ、グッチに引き続き、ティファニー……芸能人の結婚指輪御用達の、ティファニー……それどころか、どこかの王室の冠とかもティファニーだった気が…………。 先ほどから動かない私を、景吾は手を握って先導する。 そうでもしないと、本当に足が動かないんだってば!明らかに庶民とブルジョワで線引きされている向こう側(ブルジョワ側)に行けないんだってば! 「いらっしゃいませ、跡部様」 こーこーでーもー、お得意様……? 「本来なら、リングを買ってやりてぇが、さすがにまだ早ぇし…………」 「本来も何もないですよ!(半泣き)」 「(無視)ま、ネックレスくらいにしとくか。……おい、そのショーケース、全部見せてくれ」 パチン、と景吾が指を鳴らせば、店員さんが素早い動きでネックレスを持ってくる。 持ってこられたそれを、じっくり景吾は見定め――――――。 「…………石は氷帝の青にするか。…………形は……シンプルに星型だな」 あれよあれよという間に、ネックレスをお買い上げ。 星型の真ん中に、青い石が埋め込まれているヤツ。 …………なんか、私が見たことある銀色よりも、キラキラしてるんだけど。 お買い上げになったそれを、景吾は私の首につけてくれた。 「大事にしろよ?プラチナのサファイヤネックレスだからな」 「ぷ、プラチナ!サファイヤ!?」 「どこか出かけるときは、それ、必ずつけとけよ」 ポン、と頭の上に手を乗っける景吾様。 プラチナとかサファイヤをポンと買ってしまわれる景吾さんって、一体……。 今って確か、金相場とか上がってるから、プラチナの値段も半端じゃないはずなんだけど……。 「じゃあ……っと、もうこんな時間か。レストラン予約してある。行こうぜ」 ……………………………………………予約って……予約って(泣) 中学生がレストラン予約ってどうですか!?ファミレスじゃないんですよ、きっと! 案の定着いたレストランは、私ですら名前を聞いたことのある有名三ツ星レストラン。 個室に案内され、そこで、すごい超高級ランチを食べて。 また私たちは車に乗り込んだ。 車は、しばらく走り続ける。 「景吾……次は……次はドコに行くの……!?」 もう必死だ。どこかまた高級店に連れて行かれたら、私、きっと壊れる!! 「あぁ、次はブルガリで香水でも見ようかと」 やっぱり………………。 ふ、と窓の外を見たら。 見慣れたネオン。ゲーセンだ。 「け、けけけけけ、景吾!ゲーセン行かない!?記念にプリクラ撮らない!?撮ろうよ、ねっ!?」 なんとかブルガリ行きを阻止しなければ! 香水とか……香水とか、中学生には(いや、私には!)必要ないと思うのよね!? 景吾からいい香りがするのは全然構わないんだけど!むしろそれはそれで「ありがとうございまーっす!」なんだけど! でも、そんな高級な香水、私には絶対 不 釣 り 合 い ! 「あ?プリクラ?」 「うんっ、記念に!だ、ダメかな!?」 「イヤ、別にダメじゃねぇが…………わかった。おい、車止めてくれ」 すぐに車が停止して、私たちは降りて近くのゲーセンまで行く。少し過ぎてしまったから、逆戻り。 その間、すれ違う人という人が、景吾を振り返っていく。 …………そりゃそうだよな、こんな美形が歩いてたら、思わず振り返っちゃうよな。芸能人かとも思っちゃうよね そして、私に突き刺さる視線は堪らなく冷たい…………うぅ、慣れたけどね!氷帝で慣れたけどね!(泣き笑い) ゲーセンに入って、プリクラコーナーへ。 プリクラコーナーはカップルのみでしか男の人は入れないから、女の子が断然多い。 そんな中で当然景吾は注目の的。 順調に視線を集めております。 「音がうるせぇな……」 「あぁ、色々ゲームの音がするからね。……んー、機種は……空いてるのでいいか」 空いている機種を発見したので、中へ入る。 入り口のビニール製の布をまくって入ってきた景吾は、ほぉ、と見回した。 「中はこんな風になってるのか。……ソファみてぇなモノまであるし」 「家にあるソファと比べちゃダメだよ」 コートを脱いで、手に持つ。……ゲーセンの中は暖房きいてて暑いくらいだしね。 財布を出そうとしたら、景吾が背後から手をにょきっと伸ばして、チャリチャリーン、と400円入れていた。 「あー!私が出そうと思ってたのに!」 「バーカ。女に金出させると思うのか、この俺様が、あーん?」 「よ、400円くらい出させてくれたっていいじゃんかー!」 「、なんか画面が出てる」 ハッ……そうだそうだ。 画面に現れる指示に従って、モードを選択。 んー……女の子同士だったら、時間内撮り放題とかやるけど、ここは6枚ショットで。 壁紙は……水色、黒、紫……景吾の背景がピンクとかだったら……それは乙女的妄想ではありなのかもしれないけど、この場合はパスした方が無難だろう。 「、オレンジ」 「え?」 「にはオレンジが似合う。……それから、黄色もだな」 「あ、ハイ…………(なんか恥ずかしい)」 操作してオレンジと黄色の背景。 後1枚は、黄緑にした。 「景吾、撮影に入るからね。あそこのカメラ見て笑って」 1枚目、2枚目は普通に笑って撮った。 3枚目は、アップで、背景が黒だったんだけど、映らないくらい近づいてみる。 4枚目、景吾が上で私が下の団子状態(8みたいな感じ)で撮った。 5枚目、景吾のコートに私の髪の毛が引っかかってしまい、景吾が笑いながらそれを取ってる場面。 「景吾、あと一枚だよ、何かポーズある?」 「…………じゃ、さっき撮った、俺が上のヤツあるだろ」 「あぁ、団子状態ね。わかった」 私が少し前に行って、心持ちかがむ。 景吾が後ろに立った。 『さん!にぃ!いち!』 突然ふわっ、と景吾の手が前に回った。 つまり、抱きしめられているというわけで。 ビックリしてる間に、カシャッというシャッター音。 「け、景吾!」 振り返ろうとしたけど、抱きしめられたままなので、顔しか回せない。 しかも、顔だけ回したら、景吾の顔も近くにあったから、うっかりキスしそうなぐらい近かった。バッと前に向き直る。 「いいだろ、これぐらい」 「よくないっ!(泣)心臓に悪いッ!」 「あぁ、本当だ。バクバクいってやがる」 コートを脱いでるから、直接心臓の音が手に伝わるんだろう。 ……ってアナタ、どこ触ってるんですか―――!!!!(絶叫) 『画像転送中、画像転送中……』 頼む、機械!早く転送してくれ!!! 転送し終わったというので、景吾の手を無理やりはがして、ラクガキコーナーへ。 はぁ……まだ心臓バクバク言ってるよ……! 「景吾、今までとった6枚から4枚選べるんだけど、どれにする?」 「最後のと……あぁ、5枚目のも。後はが選んでいい」 「最後の……これ選ぶの?」 「当然」 うぅ…………。 タッチペンでその2枚と、笑ってるやつ、アップを選んで。 ラクガキはほどほどにしておいた。 景吾は傍観してるだけだから、凄く恥ずかしかったんだけど。 名前書いて、日付書いて。Valentine dayって書くのは景吾にやらせた。景吾の方が、筆記体キレイなんだもん(そして景吾は、ペンの使いにくさに怒っていた) 後はスタンプツールをフル活用。 ラクガキを終えて、しばらくしてプリクラが出てくる。 「出てきたよ〜」 「ほぉ……中々キレイに撮れるもんなんだな」 「画質いいよね。前はもっと酷かったけど。家に帰ったら分けようね」 バッグの中にプリクラをしまい、私たちはゲーセンを後にする。 また街中の視線を集めながら、車へ。 「もうこんな時間か…………最後はあそこへ」 「かしこまりました」 「最後って……ドコに?」 「こればっかりは言えねぇな」 ニヤ、と景吾は楽しそうに笑う。 「高級なお店じゃない……?」 「今度は店じゃねぇ」 ならよかった。これ以上何か買っていただくのは、本当に心苦しい。 「ちょっと遠いからな。寝ててもいいぞ」 景吾が私の頭を引き寄せる。 同じくらいの身長なので、コツン、と頭と頭がぶつかった。 ちょっと色々あって疲れた……(主に午前中の出来事) 本来ならこのシチュエーションに抵抗したいんだけど、もはやそれをする気力もあまりない。 「じゃ……ちょっとだけ寝る。着いたら起こしてね」 「あぁ」 疲れてたから、すぐに眠気は襲ってきて。 景吾に頭を預けながら、眠ってしまった。 「…………い……おい、……着いたぞ」 景吾の声で、ふっと目が覚めた。 いつのまにか、景吾に大幅に寄りかかってしまっていたので、慌てて体を起こす。 「ご、ごめんっ!」 「気にすんな。……ほら、降りろ」 車を降りたら、あたりは真っ暗。 ……結構寝てたんだな、私。 でも、ここなんだろう……公園? 真っ暗で外灯もないから、全然周りが見えない。 「景吾、ここ、何があるの?」 「まぁ、見てろよ」 パチン。 景吾が指を鳴らした。 バッ。 「!!!イルミネーション!!!」 景吾が指を鳴らすと同時に、バッと一気に光の渦。 ものすごい数の電飾が、ハートやお城を形作っていた。 「すっご〜い!!!」 「お前、こういうの好きそうだと思ってな」 「うん、好き好き!……だけど、これ、もしかして、私たちだけ用……?」 「これくらいは許せ。貸切じゃねぇと、他の奴らがうるせぇからな、あーん?」 「…………ありがと、すっごい綺麗だよ」 「そうか。お前が喜んでくれりゃ、それでいいんだ。…………冷えるし、車の中に入るか」 車の中に入って、もう少しだけイルミネーションを見た後、車は発進した。 「景吾」 「あーん?」 「…………今日、すっごい楽しかった。ありがとう」 景吾は、ポン、と頭の上に手を乗っけると。 笑顔で言った。 「俺様もだ」 NEXT |