飯を食い終わり、食堂を後にした俺たち。
結局、こいつらは居座るらしい。

……ったく、折角と2人でのんびり過ごそうと思っていたのに……台無しだ。

天候が良くなって部活が始まったら、レギュラーのメニューに、密かにグラウンド5周を追加で入れておくことに決めた。

「俺、ちゃんの部屋見てみたいわ〜」

「へっ?」

「あ、俺も見たい〜!」

「そういえば、俺たち、何度かこのお屋敷にお邪魔していますけど、さんの部屋というと……1度、お見舞いで来たときだけですよね」

「そうだっけ?……えーっと……でもまぁ、ゲームがあるの私の部屋だし……よければ、どうぞ……?」

許可に喜ぶレギュラーの連中。
反対に、俺は小さくため息をついた。
……の部屋には、他の男を誰も入れたくなかったんだが。

………………こんなことになるキッカケとなった例の眼鏡には、追加で更に10周決定だ。






階段を上り、廊下を少し歩いた先にあるの部屋へ入る。

「おっじゃまっしまーす……うわ、広っ」

1番最初に部屋に入った岳人が、部屋の中をマジマジと見つめてそんなことを言った。
次いで入ったが、岳人の言葉に答えた。

「跡部家の部屋、どこもこんな広さなんだよー。……時々、自分がどこにいたらいいのかわからなくて、隅っこに行きたくなる」

「うわー、マジマジ、スッゲー!チョー片付いてるCー!」

「毎日景吾さんが訪れてくるので、散らかしっぱなしなんて出来ませんよー……私、元の世界じゃ部屋すっごい汚かったのに、信じられないよー」

「なんだ、そうだったのか?」

俺も初めて聞く話だ。
この間、レギュラー達にの事情を話してから、ポツリポツリとだが、は元の世界でのことを口にするようになった。
それは、新たにを発見するようで、とても楽しい。

「うん。……毎日、朝シャンもしなかったし、人間変われば変わるもんだよね……あ、座って座って」

テレビの前に置いてあるソファを勧める。ソファは大きいから、楽々5人は座れるだろう。
俺は、テーブルの方に置いてある、俺専用の椅子にいつものように座った。

は、テレビ棚の中にあるゲーム機を取り出して、準備をしている。
岳人がそれを手伝い始めた。

「なんでこないテレビまでデカイねん……」

が『FWがいい』って言うから、それになったんだよ。最新のプラズマテレビだぜ」

「えっ、こ、これってプラズマテレビだったの―――!?」

準備をしていたが、俺の言葉に反応して振り返ってきた。

「言ってなかったか?」

「き、聞いてない……あぁぁ、もう、普通の小さいテレビでよかったのに、景吾ってば……!」

「普通のテレビじゃ、ベッドから見えねぇだろうが」

ベッドとテレビは少し離れているから、普通のテレビじゃよく見えない。
その分、この大きさのテレビだと、ベッドからでもテレビを見ることが出来る。……事実、俺たち2人は、時々ベッドの上からテレビを見ることもある。

それに過剰反応してきたのは……やはり、忍足だ。

「ベッドの上からちゃんと一緒にテレビ見とるんか、跡部……!」

「あぁ、そうだが?……コイツ、時々、テレビ見ながら寝るんでな。そのままベッドで見させたほうが、後が楽だ」

勝ち誇った笑みを浮かべてそういうと、忍足の野郎が悔しそうに眉をひそめた。
……フン、これが一緒に暮らしてる人間の特権だ。

「うしっ、準備できたぜ!……まずは、誰と誰から対戦だ?」

「あーん?んなもん俺様に聞くんじゃねぇよ。忍足にでも聞け」

「……くっ、この傍若無人キングめ……せやな……トーナメント戦でえぇんやない?7人だから……ちゃん1人シードになれば、ちょうどえーやん」




厳正なるアミダの結果、こんな対戦に。


忍足  岳人 鳳  ジロー 跡部  宍戸 


「げ……最初っから跡部かよ……俺、頭使うゲーム苦手なんだよな……」

「どんなゲームなんだ?」

「侑士かー。負けねぇぜっ」

「岳人には負けたないなー」

「ジローさん、大丈夫ですか?寝ないでくださいよ?」

「んー……眠い」

各々の発言は別にして、第1回氷帝カップ、ぷよぷよトーナメントが決行された。



忍足vs岳人

「まずは……俺たちからだなっ」

岳人が勢い込んでコントローラーを握る。
なんだかキャラクターを選んで……画面が変わった。

、これは一体どんなゲームなんだ?」

俺の隣に、同じようにいつも使っている椅子を並べて、鑑賞しているに問いかけた。

「んー……えーっとね、パズルゲームでね……ほら、上から落ちてくるあの丸いのを、同じ色4つ集めて消すゲームなんだ。自分の方が上まで積み重なっちゃうと終わり」

の説明を聞きながら、ゲーム画面に目をやる。
そこでは何種類かの色がついた物体が、画面上で動き回っていた。

「……あっ、なんてことするんだよっ!折角大連鎖組み上げてたのに……っ」

「アホ。大連鎖組んどるヤツに、ちょこちょこおじゃま送って、潰すのなんて常識や常識」

「あっ、また……っ!お前も大連鎖組めよ、侑士!」

「俺、細かい連鎖でジワジワやってくのが好きやねん」

「………………忍足、お前らしい戦い方で、なんとも言えねぇよ……」

「あぁぁ、もうおじゃま送ってくんなっ!俺の大連鎖が〜〜〜!」

「これが俺の戦い方や……堪忍な、岳人」

忍足がそう言った数十秒後、岳人の方が画面の上の方まで埋め尽くされた。
終了したようだ。

「侑士のバカヤロー……あそこで赤が来てれば……っ」

敗者は岳人。
ちなみに、ペナルティーは腕立て50回だ。

「クソクソ!あ〜、ちきしょ〜!」

文句を言いながらも、腕立て伏せを開始する岳人。

「じゃ、次は俺とジローさん……って、ジローさん、起きてくださいよ!」

「……ぐー…………」

「ほっとけ、長太郎。起こすだけ無駄だ」

結局、鳳対ジロー戦は、ジローが寝ちまいやがって、鳳の不戦勝。
ジローも起きたら、腕立て伏せだ。

「じゃ、次は、俺と跡部か……」

「ったく……仕方ねぇな。付き合ってやるよ」

コントローラーを受け取って、画面を見る。
隣から、心配そうなの声が聞こえてきた。

「景吾、ルール、大丈夫?」

「あぁ。今の見てて、大体わかった。とりあえず消せばいいんだろ、消せば」

「………………まぁ、そうだけど」

「はじめるで〜」

忍足の声と共に、画面が動き出す。
先ほど、岳人がやっていたように、適当に同じ色を積み上げて―――……。

「えっ、ちょ、あ、跡部……!?」

「ここで……あぁ、この紫を入れればいいんだな?」

「あ―――っっっ!!!」

宍戸の叫び声が聞こえてきた。
俺の方の枠内が、綺麗に一掃されていく。

それと同時に、宍戸の枠の外に、なんだか変な形のものが出現してきた。
妙な音が鳴って、透明なものがバラバラと宍戸の枠内に落ちていく。

しばらくして、画面が停止した。

「勝ったのか?」

のほうを向けば、コクン、と1つだけ頷く
それを見てから、ぽい、とコントローラーを、次にやる忍足に向かって投げた。

「…………お前、本当に初心者かよ……なんで7連鎖も出来てんだよ……」

「あーん?こんなもん、1回見りゃ、誰だって出来んだろうが」

「……普通は出来ないよ、景吾……」

の声に、そうか?と返事をして、深く椅子に座りなおす。

忍足vs鳳戦は、忍足のヤツが、また妙に細かい連鎖をちりばめて、粘り勝ち。
俺との戦いは、俺が勝利した。
……ま、も頑張ったが、相手が悪かったな。

「景吾、強すぎだよ〜……」

勝負がつくと同時に、むぅ、と睨んでくるの頭を、ぽんと1つ撫でた。
……本当に、こいつらがいなかったら、このままベッドに直行してやるところだ。

で。

結局、決勝戦は。

「跡部……今日こそは自分に勝ってやるで……ッ!」

「勝手にほざいてろ、バーカ」

忍足と、俺。

…………コイツにだけは負けられねぇ。
今日1日を台無しにした恨みもあるしな。

スタートと同時に、指をかなりの速度で動かす。
2試合やって、大分慣れた。
次に出てくる色を見ながら、頭の中で色々と組み立て―――。

「……げっ、なしてもうそないに組み立てて……い、急いで落とさな……っ」

「……今更気付いても、遅ぇんだよ」

忍足が連鎖を始める前に、俺は最後の1つをその場所に納めた。
ぱちん、と小さな音が鳴って、4つ集まったやつが拡散して消滅する。

『ファイヤー!アイスストーム!ダイアキュート!ブレインダムド!……』

「あぁぁぁッ!」

あっという間に、忍足のフィールドには透明で埋め尽くされた。

「バーカ。俺様に勝とうなんざ、1億年早ぇ」

化石になった忍足を、笑ってやった。

「……オラ、さっさと腕立てやれよ。特別に、100回にしてやるぜ」

俺様たちの休日を邪魔した、罰だ。




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