ちゃっかり昼まで食って、午後も居座ったレギュラー達。
午後は午後で、ゲームをしたり、話をしたりしていたら、あっという間に夕方になってしまった。
追い出すようにレギュラーを家に帰らせ、ようやく一息つく。

「……ったく、部活やるより疲れたぜ……」

小さくため息をついて、ソファに身を沈めた。
ゲームやらなにやらの後片付けをし終えたが、ちょこんと隣に座る。

ぐい、とその肩を引き寄せた。コツン、と頭が触れあう。

「でも、楽しかったよー」

「……俺様は不満だ。……せっかくお前と2人でゆっくり過ごそうと思ってたのに」

「……んー、じゃ、それはまたの機会に!」

楽しそうに笑う
あまりにもそれが可愛かったので、頬に軽くキスをしてみた。

「ぅひゃっ……」

案の定、驚いたは俺から離れようとする。
だが、それも予想済みだ。
肩に回していた手に、更に力を込めて、逃げられないようにする。

頬に唇を滑らせて、耳まで移動させる。
耳たぶを軽く唇で挟んで少し舐めると、俺の胸を押し返す力が、少し弱くなった。

その瞬間を見逃さずに、の腕を絡めとり、俺の背中に回させる。
ピッタリと密着する形になったので、更に攻めやすくなった。

「け、景吾〜……ふっ」

何か言いそうだったの唇を、すぐに塞いだ。
……本当は、今日はこんなことばかりしていたかった。
それを、この短い時間で我慢してやってるんだ。

あいつらがいたから、今日は全然キスができなかった。
ゆっくりと味わうようにの口内を探り、いつまで経っても弱いポイントを丹念に攻める。

髪の毛を少し梳いて、耳に掛けてやった。
おずおずと、俺の背中に回ったの手に、力が込められる。

その行動の可愛さに、ニヤけそうになる口元を見られないように、更に深く口付けた。

の口の端から、飲み込みきれなかった唾液が、少し伝い落ちる。
それを見て、ようやく俺は体を離し、丁寧に口元を舐めてやった。

真っ赤になったが、慌てて手で口を拭う。

「うぅぅ……な、長くて死ぬかと思った……っ」

「バーカ」

何度も、鼻で息をすればいい、って言ってんのに、は苦手らしい。
どうしても息を止めるから、いつもキスの後は息を切らしている。
…………まぁ、そんなも可愛いんだが。

はぁ、と小さく息をついて、ぐったりとが俺に身を預けてきた。
柔らかい体を、ゆるく抱きしめて幸せに浸る。
…………本来なら、この幸せな時間が今日1日中取れるはずだった。

………………………。

……あの眼鏡には、後15周くらいランニングを追加してやっても、いいかもしれない。

ぎゅ、とを抱きしめる腕に力を込めた。
の肩越しに部屋が見えて―――ふと思いつく。

「お前、欲しいもんねぇか?」

え?と小さな声を上げて、が俺を見る。
……上目遣いは、反則だ。

ちゅ、ともう1度キスをして、耳元に再度低く呟いた。

「……お前、欲しいもんねぇのか?」

途端にまた、の顔が真っ赤に染まる。
…………本当に、いつまで経っても耳は弱い。

「け、景吾……っ、耳元でしゃべるの、やーめーてー……っ!」

「却下。……お前が可愛い反応見せるのに、やめられるか」

それも耳元で囁いてやると、が「わー!」と小さく悲鳴を上げて、ジタバタと暴れ出した。
ニヤリと笑いながら、ぎゅっと強く抱きしめて抵抗をやめさせる。

「……で?欲しいもんはねぇのか?」

「ほ、欲しいものっ!?ないよっ!今のままで十分です〜!だから、はーなーしーてーっ!」

の言葉に、俺は1度天井を見上げた。
…………ったく、欲がないヤツだとは前から思っていたが。

ゆるりと部屋の中を見回す。
…………やはり、な。

の部屋には、あまり物がない。
金を使うことに遠慮をしているのか―――は、自分で物をあまり買わないから、やたらと簡素な部屋に見える。

置いてある物といえば……ジローから貰った安眠枕と、鳳からのオルゴール、俺がホワイトデーに送ったテディベア……そんなものだ。
服に関しては、俺が適当に選んで買ってやっているので、数だけはある。
アクセサリー、バッグもまぁ、人並みだろう。もっとあっても構わないが。

……だが、娯楽用品が少ない気がする。

「景吾さ〜ん……抱きしめたまま考え事をしてくださるのは、大変光栄なんですが……私の心臓に多大なる悪影響を及ぼしますので、程々にしてください〜……」

の声に、考えていた所為で少し飛んでいた意識が元に戻る。
ふと目に入ったのが、俺が送ってやったテディベア。
……こういうので、いいか。

「……お前、動物は好きだよな?」

「はっ!?イキナリ何を……えーっと、まぁ、好きですよ?」

「……やっぱり、でかい方がいいよな」

「……えーっと……景吾さん?動物飼うんだったら、もうすでに跡部家には、エリザベートもクリスティーヌも……その他もろもろの、可愛い動物たちがいるから、十分だと思いますよ……?」

どうやらは、俺が新しい動物を飼うために悩んでいると思っているらしい。
……まぁ、そう思わせておいた方が、いざ買ってやったときの反応が面白い。

きっと目を見開いて驚き―――最初は、少し困った顔をするかもしれない。遠慮がちな目線が買ってやったものに注がれ―――それでも最後には、絶対に、嬉しそうに笑うのだろう。

「け、景吾さ〜ん?」

「…………この際だから、たくさん買っておくか」

「!?(たくさん!?)お、お世話する人が大変になると思うよ……!?」

妙なことを言い出すに、思わず笑いが漏れた。
ちゅ、ともう1度のふっくらとした唇を味わう。

離れた後、喉の奥から笑いがこみ上げてきた。

「……け、景吾さん……?」

不思議そうな視線を向けてくるを、もう1度腕の中に閉じ込めた。
……さぁ、どこで買ってやろうか。





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