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「監督、マネージャー希望者です」

「あぁ、例の子か。…………うむ、確かに入部届は受け取った。行ってよし!」

異世界にいるお母さんへ。生行ってよしは、想像以上にすごかったです。



Act.9  ダンディーな、あのお



校舎案内がてら、私は榊太郎(43)のところへ連れて行かれた。
彼は音楽室におられました。
昨日書かされた入部届(所有は景吾)を渡して、入部が幸か不幸かアッサリ認められ、行ってよし、と言われたので、私たち2人は退散する。

「…………監督って……思った以上にダンディーだね」

「は?…………あぁ、まぁな……」

「あれで音楽教師なんだもんね……ビックリだよね……」

そんなことで感心するな、と頭を小突かれ、教室に戻る。
ビシバシビシバシ……!

うぉっ……忘れてた、この子達の鋭い視線をかいくぐらなければいけなかったんだ……!

「おー、おかえり、跡部……有紗ちゃん…………」

なんだか侑士がぐったりしてる。
周りには女の子たち……うわ、何があったか一目瞭然。

絶対、私と景吾の関係を、侑士に聞いてたんだよね……。
あぁぁ……ホントに、全女子生徒を敵に回してしまったよ……!
大丈夫か私の学校生活……!

「ねぇ、桜田さん、ちょっといいかし…………」

キーンコーンカーンコーン。

…………こんなにチャイムが嬉しいことって、長い学校生活の中でなかったんじゃないかな?
とにかく、チャイムに救われた私は、自分の席へとついた。
うぁー……緊張するなぁ、授業。
号令と共にお辞儀をして(さすが氷帝、みんなお辞儀のタイミングが完璧だ)着席する。
どんな授業なんだろ…………ってか、1時間目って何の授業?

ん?ちょっと待って…………。

ガタッ……ガサガサガサ……ッ。

教 科 書 が な い ……!

そうだよ!気がついてみれば、私もらってないじゃん、教科書!
えぇぇ、どうすんだよ、これ!教科書なしで授業ですか!?ただでさえどこをやってるかわからないというのに、教科書なしですか!?

「どうした?」

ガサガサしていたから、景吾が振り返って聞いてきた。

「け、けけけけ景吾さん……!私、教科書がないですよ……!」

「……そういえば発注が間に合わなかったとか言ってたな」

オーノー!!!!!

有紗ちゃん、そんなら俺の見せよか?」

「……侑士様…………!」

侑士が机をガタガタと寄せてきた。
机をくっつけて、間に教科書を置く。

どうやら1時間目は現代文の模様。……おぉ、なんとかなりそうだな、現代文なら。

「ありがと、侑士……とても助かりました。……で、あの……」

コソコソとしゃべると、侑士もコソコソと返してくる。

「わかっとるって。他の授業も教科書ないんやろ?見せてやるから、安心しぃ」

「侑士様……!あなたは神様です……!えーと……今、どんなことやってんの?」

「あー、今はな…………」

バッ。

「なっ?……なに、景吾……」

突然景吾が振り返ってきた。
次の瞬間、私と侑士の間においてある教科書をものすごい勢いで捲る。

「……ココの12行目からだ」

「……………ありがとうございます」

フン、と景吾はまた前を向く。
侑士がプッと噴出した。

「跡部のヤツ、妬いとんのや。有紗ちゃんと俺が仲良うしてるから」

「…………聞こえてるぞ、忍足」

くるぅり、とまた景吾さんが振り向く。
うわっ、なんか邪悪な笑顔が怖っ!

「なんや、跡部。授業中やで、ちゃんと前向きや。……有紗ちゃん、筆談でもしよかvv」

「授業中なのはお前も一緒だろ、筆談誘うな!」

言い争いをするのは構わないのですが。

あぁ……このクラスの女子生徒の視線が私に向いてるのは気のせいですか……!?
しかも、かなり悪意を込めて送られてきてるんですけど……!(泣)






大体こんな感じで授業を受け続け、4時間目までなんとか乗り切った。
現代文、古典はよかったんだけど……数学、なんですかあれ。代数?幾何?知らんわそんなもん!
泣きそうだったら、侑士が丁寧に教えてくれた。
そういえば侑士の得意科目って数学だったな…………。

「ま、氷帝の数学は高校レベルまで行っとるからな……最初はキツイかもしれんが、頑張り」

元は高校生だったけど、無理です!

「うぅぅ…………数学なんてキライだ…………」

まだ頭の中で数字(+英語)がグルグルしてる気がする。
こんなんで期末考査10位とか、夢のまた夢だよ…………!

有紗ちゃん、とりあえず数学のことは忘れて、昼食わんか?」

有紗、来い。テニス部のレギュラーを呼んである」

………………………WHAT?
なんか景吾さん、さらっとスゴイこと言いましたよね?

テニス部のレギュラーを呼んである?



バチコーンバチコーン!!!



はぅあ!女子たちから目線の攻撃!
私は痛恨の一撃を食らいましたよ!!!
なんでドラクエは味方だと会心の一撃なのに、敵だと痛恨の一撃なんですか!?(関係ない)

『テニス部レギュラーとランチ!?行かないわよね!?そんな夢みたいなところ、転入早々いくわけないわよね!?』

おぉぉ、テレパスィーが伝わってきますよ…………。
そうよね、そうよね……ここはご辞退申し上げるべきよね…………。

「あのさ、私ちょ「早くしろ、マネージャー」

「「「「「「マネージャー!?」」」」」」

あぁぁ、みなさん勢い余って、心の声が口から出てますよ(遠い目)

景吾さん、今日爆弾投下しすぎです……私の身がもちません…………!

動かない私を見かねてか、景吾が腕を掴んできました。
それだけで『きゃあぁぁぁぁ』とかいう黄色い声。
すみません、すみません!ホントみなさますみません!!!

「あぁぁぁぁ…………」

だからどうか。
どうか夢小説にありがちなイジメだけはやめてくださいね!?






屋上へ行って、レギュラー勢ぞろいの中でお弁当(跡部家シェフ作成)を食べ。
恐る恐る教室へ戻れば、女子生徒からの冷たい視線。
…………Oh。私、転入早々イジメに合いそうな香りが、プンプン漂ってますが!?
………………こんな中で、景吾と一緒に住んでるとか言ったら、マジ刺されるよな。絶対言わないようにしよ。そして景吾が怪しげな発言をしたら、全身全力を持ってフォローしよう。
同居してると知れたら、それこそマジメに命の危機だよ…………!

6時間目まで、女子生徒の冷たい視線をヒシヒシと浴びながら授業を受けました。
…………こんなに居づらい授業は初めてだよ……おかげで、眠気なんて1回も襲ってこなかった……!

だけど今日一日授業を受けて。
………………マジで無理だ、10位以内。
英語とか、マジレベル高ぇ~!私の高校生活の英語ってなんだったの!?ってくらいだよ!しかもみぃんなペラペ~ラペラペ~ラだし!発音いいし!景吾が1回朗読したんだけど、ありえなかった……!何言ってるか、聞き取れなかったよ……!

チクチクチクチク…………。

…………………視線を感じる。

そろりと横目で見れば、教室の横にわんさか人が。

「おっ、こっち見たぜ……あれが噂の転校生か……転校早々、男テニのマネージャーになったって本当かよ?勇気あるというか無茶というか…………」

聞こえてますぜ、旦那(何)
…………勇気も無茶もありませんよ。

強制ですから!!!!

ってか、この世界に呼ばれた理由が、『男テニマネージャー』になるためでしたから!

「おい、有紗。部活行くぞ。さっさと支度しろ」

「ハイハイハイッ」

慌てて鞄を閉じて、すでに教室を出ようとしている景吾と侑士に追いつく。
……うぁー……みんな興味津々にこっち見てるよ……私、珍獣じゃないんだから……いや、もう男テニマネージャーって言う珍獣なのかな……!?(泣)

「あー……景吾、私ちょっと購買部寄って行きたいんだけど」

「あ?なんでだ?」

「ノート欲しくて」

「ノート?全教科分、昨日買ってやっただろ?」

隣で侑士がボソッと『なんやこの夫婦みたいな会話……』と呟いたのを、景吾が目で制してた(怖っ)

「教科じゃなくて、部活の。…………人数多いから、健康状態把握するの、難しいと思うから。書き留められるように。だから、先、行「購買はこっちだ、ついてこい」

………………………Oh~…………………。

なんとか景吾+侑士っていう、目立つコンビから脱出したかったんだけど、敢え無く撃沈だよ…………。
ホントに大丈夫か、私の学園生活……暗雲が立ち込めるどころか、周りが暗黒な気がするんですが……!



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