「はじめまして、です」

人生2度目の、中学2年生。




Act.8  長命令、権力横暴



教卓に立っている私を見つめる、40の人間。
バクバク鳴っている心臓の音がウルサイ。

「あー、今日から、2−Aの仲間になったさんだ。みんな、仲良くするように」

「はじめまして、です。よろしくお願いします」

お辞儀をしたら、窓際の方で手を振ってる人物とムスッとしている人物。

「席は……なんだ忍足、手なんぞ振って」

「俺、ちゃんの知り合いやねん。ここ空いとるで〜」

侑士が指し示してるのは…………侑士の隣の席。
ムスッとしている人物は……言わずもがな、景吾さんであります。

で、何が言いたいかといいますと。


うわっ……絶対イヤ!
絶対アソコの席、取り合い防止のために空いてるんだって!
大体、もう1つ席空いてるし!そっちのがいい…………。

「まぁ、跡部の後ろでも、お前ならなんとか見えそうだしな。忍足の知り合いらしいし、あそこにするか?」

「えぇっ!?イヤ、私、他の席で……!」

「他の席って言うと、1番前の右端だが……」

1番前のほうが、なんぼかマシですよ!
あんな、心臓に悪いトコより!

「…………が1番前だと、後ろのヤツが見えなくなるんじゃねぇのか?」

ボソッと景吾がとんでもないことを抜かしやがりました。
しかも、さりげなく『』って言ったし!
あぁ、ホラ!女子が騒ぎ出しちゃったじゃん!

さんと跡部様って、どういう関係?』

心の声が聞こえるよ!

「そうだな……じゃあ、は忍足の隣だ」

あぁぁぁぁぁ、今だけはこの背が憎いぃぃぃぃ!
窓際の1番後ろっていう絶好条件だけど…………チクチク突き刺さるよ、視線が!
………………平和な……学園生活………………(遠い目)

仕方なく、魔の席へ移動する。
…………おぉう、周りの子の視線が……!

「いい席やろ?わかんないことあったら、遠慮なく聞いてぇな?よろしゅーな」

「……(悪魔の席だっ!)……うん、よろしく……」

「お前が1番前になったら、後ろのヤツが迷惑だからな。この席で我慢しとけ」

「なっ……景吾がそれさえ言わなければ……!」

『私は平安の地を手に入れていたのに!』と続けようとしたけれど、ザッッッと敵意の視線が私に向いたおかげで、口を閉じなければならなかった。

『ちょっ……なんで跡部様のこと、名前で呼び捨てなのよ!?転校生のくせに、信じられない!』

ヒィィィィィ!私、今やってはならないことやりました!?
あぁ、周りの視線がビシバシビシバシ……!

「私の楽しい学校生活が…………」

「あーん?このクラスでこの席だってことでもう、十分楽しい学校生活だろうが」

「景吾の一言で、確実に8割減だよ…………」

そうこうするうちに、いつの間にかHRは終わりを告げていて……。
私の周りには、興味津々+少しの悪意を持った方たちが集まっていた。

さんと跡部様って、一体どういう関係なの?」

「えーっと……遠い親戚で…………」

「忍足君とは?」

「えっと……昨日、学校見学に来たときにあったんだ……」

「身長何センチ?」

「170センチ……」

「おっきいねぇ〜。でさぁ……」

「…………うるせぇ」

ボソッ、と景吾が呟いたとたん、バッと周りの女の子が黙る。
跡部様の威力は絶大みたいだ……。

「おい、、行くぞ」

ガタン、と席を立つ景吾。女の子たちが慌てて脇によった。
無理やり立たされて、腕をひっぱられた。

「ど、どこに!?」

「学校案内。昨日はそれどころじゃなかっただろ?あーん?」

「やっ、それなら、クラス委員の子にでも……!」

「俺様がクラス委員だ」

逃れようと思って発言したのに、墓穴掘っちゃったよ!
勘弁してくれよ!これ以上、女の子の敵は作りたくないよ!
いや、そりゃ多少の覚悟は出来てるけどさ、敵は少ない方がいいに決まってるじゃん!?

「あぁぁぁぁぁ…………」

なんだか哀れそうにこっちを見ている侑士。
哀れそうに見えるんだったら、助けろや!!(泣)






学校中の好奇(+羨望)の目にさらされながら、私は景吾に案内という名で引きずり回された。
っていうか、無駄にでっかいんだよ、この学校は!ここまで広くなかったら、すぐに終わったのに!

、あっちが特別校舎で特別教室はほとんどあの校舎に……って聞いてるのか、あーん?」

「き、聞いてますとも!えーっと……図書室はどこ?」

「図書室?んなもんねぇよ」

「えぇっ!?図書室がないって……こんなでっかいのに!?」

「この学校にあるのは、図書室じゃねぇ、図書館だ」

「………………………………………さいですか」

あぁ、なんて学校なんだ氷帝学園……!
ここまで来ると、ムカツクぜ……!その金を、他の学校にまわしてやれよ……不動峰とか六角とかさ!

「なんで図書館なんだ?」

「あー……ちょっとテーピングやテニスのルールとかの本を借りようかと思って」

「んなもんうちにある。却下」

「………………………ハイ」

サクサクと景吾は歩みを進めていく。
……あぁもう、見てないうちにどこかにばっくれてもわからないかしら?(凶悪)

「おい、何やってんだ」

わかられてしまいますね、ハイ!(汗)

?」

「今行きますよ〜……」

トボトボついていくと、景吾はなにやら、一段ときらびやかなドアを開けた。
なんだろ……目の錯覚でなければ

『生徒会室』

とか見えた気がするんですが?

ありえなくない?
なんでただの転校生が、生徒会室に来なくちゃいけないのさ?

「ここが生徒会室だ」

「ふーん……私とは一生縁がなさそうだ、じゃ」

「待て」

ガシッと手を掴まれた。
なんだよ、私には絶対関係ないって、ここ!

「俺様は生徒会長だ」

「うん、知ってる……(なんとか手を外そうともがく)」

「…………で、だ……(平然と手を掴んだまま離さない)」

「な、なんか嫌な予感がするのですが…………離して……いただけません?」

気にするな(スパッ)…………お前、4月にある臨時生徒会選挙で、副会長に立候補しろ」

「はぁっ!?無理!絶対無理!副会長とかいって、生徒会長の次に偉い役職じゃん!」

「副なんだから当たり前だろ。今の副会長が3年でな、本来なら、9月に行われる生徒会選挙で引き継ぐはずだったんだが……引き継ぎ手がいなくてな。今までずっと仕事をしてもらってる。だが、4月からは副会長の座が空くことになる」

「ふ、ふーん……それは大変だ、ねぇ……いやぁ、大変だ。私にはとても手に負えないよ……!」

なんとか景吾の手を外そうとしてるんだけど……外れないぃぃぃ!
ってか、痛い!そろそろ痛い!握力いくつよ、あなた!(泣)

「俺も、わけのわからないヤツがサポートしてくれるよりは、お前の方が断然いいからな……ちょうどいいから、俺様がお前を推薦する」

「ちょうどよくない!(泣)他の子にやってもらって!第一、私編入してきたばっかだし!私には、絶対、無理!」

「無理じゃねぇ、やれ。部長命令+会長命令だ」

「なっ…………権力オーボー!職権ランヨー!!!」

「何とでも言え。お前が副会長だったら、家でも仕事が出来て楽だしな」

ズルズルと腕を掴んだまま、景吾は歩き出す。
なんとか踏ん張ろうとはしてるけど、景吾さんの力というものは強くてですね。
抗えなかったのですよ…………。

「生徒会選挙には、現生徒会役員の推薦と、先生5名の推薦が必要だ」

「…………先生5名も無理だよ、だから諦め「だから、お前は今度行われる期末考査で、10位以内に入ってもらう」

………………………期末考査?
10位!?

「無理ッ!絶対無理ッ!第一、氷帝学園って頭いい子ばっかなんでしょ!?」

「もう1度言うが……無理、じゃねぇ。やれ

…………オーマイゴーッド…………。
あぁ、神様……あなたは、私をお見捨てになられたのですか……!?

「勉強は俺様が付きっ切りで見てやる。お前、元々は高校生だろうが」

「……高校ではねー、私、受験にいらない科目はバンバン落としていったからさー…………数学とか……理科とか全く覚えてない……!」

「試験は、英語、国語、古典、化学、数学、歴史、技術家庭に加えて、選択科目の音楽、第二外国語の9科目だ」

チョットマッテヨー!
ダイニガイコクゴってなんですかー?

「いやー!!私、生まれも育ちも日本で、生まれてこの方日本語しか日常的に話しておらず、英語ですら危ういのに、何ゆえその他の言葉を学ばなければならないのですかー!?」

「(無視)第二外国語はドイツ語、フランス語、スペイン語、ギリシア語から選べるが……お前は何にする?」

「………………どれでもいいですよ、もはや………………」

「じゃあ、俺様と同じドイツ語だな。家にはドイツ人シェフがいるから、ドイツ語のレッスンは毎日出来る。安心しろ」

あ・ん・し・ん・で・き・ま・せ・ん・!

お金持ちの学校って、考えることがわからない……!

氷帝学園を甘く見ておりましたわ、ワタクシ……!

生活の違いをまざまざと感じさせられた。



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