目立つことには慣れてます。
なんせ、気がついたら人より頭1つ分高かったもので。

順番に並ぶとき、1番前だと少し嬉しいです。
席替えのとき、中途半端な位置だと、後ろの人に気が引けます。
満員電車のときは、ちょっとだけ得した気になります。

それが私、


何もしなくても注目を浴びる対象だとは自覚していました。

だけど、この状況はちょっと勘弁願いたいです。




Act.1  ての始まり。



確かに私は夢見がちな人間だった。
時間があれば夢小説読み漁っていたり、現実逃避(テスト中とか)したいときは妄想したり。
寝る前に妄想してたのも認めますよ、えぇ、認めますとも。

夢の中に好きなキャラが出てきて、ちょっといい感じだったりすると、目覚めがよかったりしますよ。
エロい展開になったときは、夢なのにドキドキしてましたよ!

ですが。

「おまえっ……何者だ!?」

この状況はちょっとね……(遠い目)

…………。

私は知ってるけど、向こうは知らない人にどうやって自己紹介をするべきですか?
しかも、私的に『嫌われたくない人(色んな意味で)No.1』なんですけど。

というか、なぜ私は見知らぬ場所にいるのかしら?←1番最初に突っ込むべき

私、家でいつものように夢小説を見ようとしていたんですけど。

これはあれですか?

現実逃避したいがために見ている、夢ですか?




ついさっき―――

私はいつものようにPCを立ち上げて、ネットに繋いだ。
お気に入りに登録してある庭球夢のサーチさまへ行き、『トリップ』という単語を打ち込む。
検索して現れたサイトさまの数は数十にも及ぶ。
ニマニマ笑いながら、一番上のサイトさまをクリックした。

名前は、そう。『Temptation to Dream』だったはず。直訳すると、夢へのお誘いってところかな。

うふふ、どんな素敵なトリップ夢が見れるのかな、とワクワクして画面が出るのを待った。
INDEXページに飛ぶのかな、と思っていた私は、突然現れた入力画面に驚く。
アンケートみたいに、パッと現れた二択の問題。

『あなたは、スポーツが好きですか?』

脈絡のない質問だな、と思いながらも、『YES』をクリックする。

『テーピング、ドリンクについての知識はありますか?』

スポーツ部だから、『YES』

『料理はできますか?』

レパートリーは多くないが、できるかできないかで言われたら、出来る。だから『YES』

『嫉妬に狂う女子生徒に負けない、身体的強さはありますか?』

なんだ、それ!意味がわからん。だけど、まぁ……体格的に、私のほうが強い。一般の女子より。体育会系だし。

『YES』

いい加減、質問に答えるのが面倒くさくなってきた。
なんだ、このヤケに多い質問は。

『あなたの名字をどうぞ』

おっ、やっと名前入力か。

……と。

『あなたのお名前をどうぞ』

。うしっ、さぁ、細かい質問に答えたんだから、さぞかし面白いんだろうな。うふふ……(怪)

『最後の質問です、氷帝学園はお好きですか?』

なんだよ、まだ質問あるのかー……でも、最後とか言ってるし。ここまで答えてきたんだから、最後まで答えよう。
氷帝ね。

ふっ(嘲笑)

大好きでっさぁ!

『YES』

入力情報、確認しました。
それではどうぞ、お入りください。

ぐいん、と画面に引き寄せられる。

「!?なっ……」

手が、にょいんっと画面へ吸い込まれた。
慌ててパソコンの裏側を見たけど、私の手は突き抜けていない。
つまり、手はパソコンの中に入っていったということで。

「ぎゃー!!!なにこれ、なにこれぇぇぇ!いやー!おかあさあぁぁぁん!は買い物だあぁぁぁ!」

私の意志に反して、ずぶずぶとパソコンにのめりこんでいく体。
今、1番の問題は。

「この画面に私の体が全部入るとか、ありえないぃぃぃぃ!ウエストとかお尻とかつっかえたらどーするのっ!」

妙なトコに突っ込む叫び声に反応してか、ぐいん、とパソコンのフレームが歪んで私は闇に飲み込まれた。



で。

闇が明けたと思えば、突然見知らぬ部屋に景色が変わった。
そしてすぐに来る―――落下感!?

「ぎゃっ!」

ドスッと音がして、私は床に尻餅をついていた。

……痛い。どうも、机くらいの高さから床に落ちたらしい。
ヒィ、尾てい骨がジンジンする〜!

それでも、痛いなんて言ってる状況じゃない。
目の前には、呆然とこっちを見ている人間。

「えーっと……えーっと…………(汗)」

今現在この状況。


目の前に おわしまするは 跡部さま (5.7.5)


跡部さま(なぜか敬語)は、私の足元に注目されておられます。
そして、私の足元には紙が2枚。

一枚は濡れた古そうな紙。

もう1枚は、新しい紙。

「……ちっ、その濡れている紙は……あの暇人ども……!」

何かに思い当たったように、跡部さま(やっぱり敬語)が濡れている紙を拾い上げる。
そして、私は新しい紙を拾い上げる。

「なにこれ……プロフィール?」

呟くと、それに反応して跡部さま(どうしても敬語)がひょいっと覗き込んできた。
ひいっ!麗しいお顔がめっちゃ近い!ぎゃあぁぁぁ!

名前:

年齢:14

学年:中学2年



「なんっだ、これぇぇぇぇ!!」

私の名前は確かに合ってる。
けど、年齢から学年から、激しく違いますから!

「……お前、というのか」

うぎゃっ!だから、無駄に近いんだって、顔が!
ってか、私の身長と跡部さま(なんとしても敬語)の身長が近いからかもしれないけど。

そして、その麗しき美声で私のお名前を呼んでくださいました!?
あざーっす!!……って、違う違う違う!!!(パニック)

あわわわわ、と1人で慌てていると、整いすぎた顔に眉間のしわが。
……綺麗な顔は、眉間にしわが寄っていても絵になるものなのね……(ポカーン)

「…………やっぱな……おい、。悪いが……こいつはオレの両親の仕業だ」

「は?」

思考があっちこっちに飛んで、全然話を理解していなかった私は、なんとも間抜けな顔と発言をしてしまった。
意味もわからず、とりあえずプロフィールに目線を戻す。
誕生日は一緒、身長も一緒。…………体重も一緒。
ダーッと目を走らせて、一番下の文章。
見たとたん、目を見開いた。


備考:マネージャーの素質あり


なんっだそれぇぇぇ!


……とりあえず、説明する。こっちへ座れ」

混乱していると、跡部さま(どんなときでもやっぱり敬語)が、ため息をついて私を呼んだ。ソファへ座るよう目で指示される。

そして話されたのだ。

驚くべき真相を。





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