「太陽が眩しいな〜……ちゃんも眩しいな〜」

「……誰かこのバカを埋めろ……!砂の中に永久に閉じ込めてしまえ……!」

物騒な言葉も、特定の人間の口から出ると本気に聞こえるから、シャレにならない。



Act.3 い最中の、熱い争い



胡散臭い笑顔の忍足が俺の目の前にいるだけで、どうしようもない殺意が湧いてくる。

別荘でゆっくりと2人過ごそうと思っていたのが一変して、この状況。

忍足率いる邪魔者軍団(そうとしか思えない)は、中3レギュラー全員だった。
聞けば、強引に朝っぱらから連れてこられたらしい。鳳もいないから、今日は電車を乗り継いできたんだと。

……いい加減、俺がこの伊達眼鏡を殺っても、誰も文句は言わねぇんじゃねぇかと思う。むしろ、文句なんか誰にも言わせやしねぇ。

ちゃんの水着、可愛いやろなー……白いビキニが俺の好みやけど、ちゃんならなんでも似合うやろなー……」

「侑士……鼻の下伸びすぎ。っていうか、それただの親父発言……」

だらしねぇ顔している忍足を岳人が呆れ顔で眺める。
それを見ながら、俺は本気で凶器になり得るものを探そうかと思った。

「うっさいわ、岳人。ちゃん、そろそろかなー」

すでに俺たちは着替えを終えて、別荘の外で待っている状態だ。
……ま、こいつらが水着や遊具なんかをちゃっかり持って来てる所もまた憎らしい。

ナイフなんかなくても……そこらの石でもコトは足りるかもしれねぇな……。
俺様の手を汚すのは少々不本意だが、この際そんなことはもはや関係ねぇ。

俺は視界内に手ごろな石がないかと探し始めた―――その時。

「…………お待たせ、しました……」

ガチャ、と静かに扉が開いた。






私は、昨日買ったばかりの水着を前に悩んでいた。
…………これを、着るのか…………。

あの人たちの前で!!!(そこが大問題)

散々色んな高級品(+派手な商品)を示す景吾を怒涛の勢いで振り切り、なんとか女友達の前なら着られるぜ!なレベルのものを選んだつもりだった。というか、泳ぐつもりは毛頭なかったし、あわよくば着ない気満々だった!!
だから!!!
……あの、素晴らしい人たちの前で着るなんて、そんな、とんでもない(キッパリ)
激しく逃げ出したい気持ちでいっぱいなんですが……もうみなさん、別荘の前で待ってるらしいし。
チラ、と持ってきた荷物を見た。

…………覚悟を、決めるんだ、!!!!

私はぐっと気合いを入れて、水着を手に取り、着替えを始めた。

そして―――。

玄関のドアを開けるときはさすがに躊躇ったけど、思い切って(それでもかなりそろり、と言った感じになってしまったけど)ドアを開けた。

「……お待たせ、しました…………」

最初に顔だけ覗かせれば、素晴らしい肉体美をさらした方々に目を奪われた。
その方々の視線がこちらを向いて―――。

「な、ななななんでパーカーなん!?」

侑士にまず、突っ込まれた。

な、なんでってねぇ……。
見せられる体を持っていない私は、ちゃんと用意してきてたのです。

上:パーカー。
下:パレオ。

わーはははは、パーカー最高!パレオ最高!PPコンビ最高!!

「そんなね、見せる体を持ってないのよ、侑士たちと違って!!連日の炎天下によって、しっかり半そで焼けしてるし、見せられる腕も足も腹もついでに言えば、胸もないから!」

「…………そうか?」

はい、景吾さん、ボソリと何かいわなーい!!

まぁ、別荘から海まですぐとは言っても、水着で海まで向かおうなんて思えませんよー。ものすごい肉体美を披露している侑士やがっくんとは違って。
しかもほら!景吾もジローちゃんも亮も上着着てるじゃん!多数決的にも……私は間違ってない!

「ま、いいじゃん!とにかく海行こうぜ、海!」

「あぁぁぁ、そんなー……ちゃんー……」

「侑士、嘆いてないで行こうぜ!」

「だって、ちゃんがー……」

「だーもー!!(海行ったら、もパーカー脱ぐかもしれねぇだろ!?)」

ほな、海行こっか(ニッコリ)

侑士、切り替えの早っ!!!
がっくん……何を言ったんだ……?

お姉さん、激しく気になるよ!!!






「海ー!」

「海ー!!!」

「「「海だ―――!!!」」」

「…………元気だな、お前ら」

私は、がっくんとジローちゃんに混じって、砂浜で叫んでいた。
冷静にツッコミを入れたのは、もちろん景吾様。

わっはっは!海!楽しいー!!
見るだけでテンション上がるー!

「あはは、人いないー!!」

「プライベートビーチって、静かー!」

「向こう、人だらけで真っ黒ー!気持ちワリー!!」

「「「あっはっはっはっは!!」」」

「……テンション高すぎとちゃうんか?」

侑士のツッコミにもなんのその。
がっくんとジローちゃんが、ひゃほーいっ!と海に向かって走り出した。

「おい、もう海は入れねぇぞ!」

「足つけるだけー!」

景吾の制止もなんのその。
もう海はクラゲでいっぱいだろうからね……それでも、波うち際でバシャバシャやっている可愛い子ちゃんたちを、私は遠くでほほえましく見守ることにした。

「ったく、激ダサだぜ……」

呆れたような顔をしながらも、亮も楽しげに小走りで海に向かっていく。

「クラゲ、気をつけてねー」

「おー」

亮が片腕を振り上げて答えた。
……もうこのはしゃぎっぷりを見られただけでも満足かもしれない。
来て良かった、海!

「おい、忍足。さっさとパラソル立てろ」

「なんで俺が立てなあかんねん……」

「うっせぇ。無断で来たんだから、それくらいやりやがれ」

「……この坊ちゃん、1回ボランティアやらせたろか……」

「不法侵入でたたき出すぞコラ」

「…………へいへい、立てりゃえぇんやろ?」

ぶつぶつ言いながら、侑士がパラソルを立てだした。
…………文句を言いながらも、侑士は器用なので、あっという間にパラソルが立った。

「ご苦労。、こっち来い」

景吾が1つ言い放って、悠々と座り込んだ。

「……この男、いつかしばく……!……あ、ちゃん。そないなとこおったら足熱いやろ〜?こっちおいで」

「え、あ、うん。ありがと!」

「えぇってえぇって。ほな、こっちおいで」

砂を踏む感触を楽しみながら、さくさくとパラソルの下へ行く。
簡単に立てた割には、大きなパラソルだから、3人入っても大丈夫だろう。
……と思ってたんだけど。

忍足……お前、邪・魔・だ!消えろ

冗談抜かすなや。俺が消えたら、ちゃんがどうなるかわかったもんやあらへん。それだけは阻止せな

俺とがどうなろうとテメェの知ったこっちゃねぇ。というか、むしろどうにかなるのが必然だ

俺らは健全な中学生や!このエロボクロ!

うっせぇ!大体、テメェ、海に来たんなら伊達眼鏡取れ!

お2人さまが素敵なオーラをかもしだしておられます。
ふ、2人の間に入り込めない……。

ー?……大丈夫?」

「まーたやってんのかよ、侑士たち……」

ひょこひょことジローちゃんたちがやってきた。
一旦テンションが落ち着いたらしい。
…………でも、すでにかなり遊んだらしく、ずぶぬれだ。波打ち際で遊んでるだけなのに、どうして全身ずぶぬれ……?でも濡れた髪……はじける笑顔が眩しいよ……!(変態)

、こっち来いよ。ビーチバレーでもやろうぜ」

「あー……やりたいのは山々なんだけど、まだ足がねー……」

「あ……まだ良くなんねぇか」

「いや、私的には全然問題ないんだけど……やってるのが景吾さんにバレたら、確実に新学期まで部屋に監禁される」

「あー…………だな」

亮が少し上を見上げて納得した。
……うん、景吾さんならやりかねないから、ね……。

「……ビーチ、バレー……?」

意外なところで反応された。
今まで、景吾と言い合っていた侑士だ。

こちらを見て、キラーンと眼鏡を光らせる(怖)

転がっていたビーチボールを手にとって、侑士はビシィッ!と景吾に突きつけた。

「ビーチバレーで勝負や、跡部!」

うわぁ、とがっくんたちが1歩引いた。
……侑士……鬼気迫ってる……。

「あぁん?テメェと勝負しても手ごたえがねぇからな……第一、この間の要求、全然やってねぇじゃねぇか。無駄な勝負仕掛けてくる前に、その無駄に吐息を混ぜたしゃべり、なんとかしろ!」

「何度も言ってるやろ、これは地や!……跡部!お前絶対ボランティアやってきた方がえぇで!?俺は勝って、お前にボランティアを要求する!」

「俺様が存在すること自体が、地球に対するボランティアだ」

「アホ抜かすんもえぇ加減にせぇよ、自分……!」

「じゃあ、俺様が勝ったらお前なにするんだよ?1日俺様の付き人にでもなるか、あぁん?」

「……っ……やったるわ、ボケェ!!!」

「……交渉成立だ」

ズォォォオ、と2人の間にオーラが見える。
私、がっくん、ジローちゃん、亮は、4人もいるのに、なぜだか居心地が悪い。

…………ビーチバレーの王子様〜氷帝Ver〜勃発……?





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