「飛んでみそ」

「上手い上手い!似てる〜!岳人と一緒にやってみて欲Cー!」

「じゃ、、せーの、でなっ」

「う、うん!……せーのっ」

「「飛んでみそ」」

「アハハハハハッ!他には?他には〜?」

ジローちゃんが、うきうきと目を輝かせて聞いてくる。

―――突発的に始まった、モノマネ大会。

昨日、がっくんとジローちゃんがテレビでものまね大会を見てたらしい。

部活が始まるまでの短い時間、ジローちゃん、がっくん、亮、そして私は暇をもてあまして、そんなことをはじめた。
んで、最初は芸能人のモノマネだったんだけど、いつの間にか、ネタは身近なところへ。
がっくんがいるから、がっくんのマネをしてみたんだけど、これがウケた。

「んーっと……じゃ、若ね。…………下克上だ」

「スッゲー!アハハ、似てる〜!」

「そ、そうかな……そういえば、モノマネといえば、亮、なにかやってよ〜」

完璧、観客として私達のモノマネ大会を見ていた亮に、話を振った。
ギクリ、と亮の顔が引きつる。

「ゲッ……なんでお前、そんなこと知ってんだよ!?」

「チョタが言ってた〜。『宍戸さん、モノマネ上手いんですよ〜』って」

「長太郎のヤツ……!……ったく、仕方ねぇな。誰がいいんだ?」

「えーっとね……まずは侑士!」

「攻めるん遅いわ……」

「うわっ、すごっ……完璧エロボイス〜〜〜!!ねぇねぇ、次は……樺地くん!」

「ウス」

「アハハハハハッ!」

みんなで大爆笑。
亮ってば、絶妙なタイミングで言って来るから、上手さと掛け合って更に笑いを誘う。
照れたように頭をかきながら、亮がそれでも楽しそうに視線を向けてきた。

、お前、他にはネタねぇのか?」

「私?……えーっとね、あ、あった!」

「やってみろよっ!」

がっくんの言葉に、コホン、と咳払いをして、声の調子を整える。……うん、低い声、出そう。

「……あーん?」

「あ、跡部か〜〜〜!アハハ、似てる〜〜〜!!」

「景吾ネタだったら、まだ出来「……なにやってんだよ」

ガチャリ、と部室のドアが開いて、景吾と侑士が入ってきた。
ピタリ、とみんなの動きが止まる。

「なにやってるん〜?」

「……ずいぶん、楽しそうじゃねぇか、あーん?」

『あーん?』を聞いたところで、ぶふっ、と変な音を立てて、ジローちゃんが噴出した。

「や、やっぱ、、似てるC……!」

「……は?……、何やってたんだ、お前」

景吾の訝しげな視線に、恥ずかしいけれど……お答えしました。

「えーっと……景吾のモノマネ」

「……あーん?」

「アハハハハッ!やっぱ、似てたよッ!もう1回やって!跡部と一緒に!」

「えっ!?……え、えと……じゃ、景吾……せーの、で『あーん?』って言って……?」

「……なんで俺様がそんな「せーのっ」

「「……あーん?」」

「アハハハハハッ!」

みんなが一斉に大爆笑した。がっくんとジローちゃんなんて、机バンバン叩いて笑い転げてる。
景吾が、呆れたような視線を向けた。

「なにやってんだ……ったく……お前も」

「ついつい、面白くて」

「オイ、。まだ跡部ネタ出来るんだろ?この際だから、やってみろよ〜!」

笑いの渦から復活したがっくんが、そんなことを言ってくる。
……仕方ないな、見せてやろうじゃないか、秘蔵のネタを!(秘蔵でもなんでもないけど)

「じゃ、行きます。…………俺様の美技に、酔いな……っ」

「アハハハハハッ!似てる―――!」

「今度は指パッチンも練習してみます〜」

「……なにやってんだか」

コツン、と景吾の拳が額に当たった。
呆れたように、それでも少し面白そうに笑いながら。

「ま、そこまで俺様のマネが出来るってのは、日頃、ずーっと俺様のことを見てるからだと思っていいんだな?」

「へっ!?」

「んなっ、そういう方向に話持って行くんか、跡部……!」

「じゃなきゃ、俺様の真似なんて、そうそうできるわけねぇだろうが。……オラ、部活はじめるぞ。さっさと来い」

はーい、とみんなが返事をして、部室から出始める。

そんな、ある日の風景。




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