明後日は練習試合。

マネージャー就任して、初めての試合だから、少し緊張してる。

……やっぱあれだよね。

試合って言ったら。

マネージャーからの差し入れでしょう!



Act.26  春サービス、実施中



、レモン買っておいてあるけど……一体何に使うの?」

「ありがと、ハンス!……ふっふっふ、これはねー、青春差し入れサービスに使うのだよ……」

「……まぁ、頑張って」

「うん!」

去っていったハンス。これくらいならハンスがいなくても、問題ナッシング!
まぁ、部員の多さに比例して、レモンの量も大量だけどね……ふふふ……(涙)。
大量のレモンをよーっく水洗い。
これでもか、これでもか、とゴシゴシ洗う。ブラシも使って。

全部洗い終えたら、今度はその水気を全部布巾ふき取る。レモンの量が半端じゃないから、1枚じゃ布巾がたりなくて、3枚も使うことになってしまった。

水気を拭き取り終えたレモンを、今度は2〜3ミリの厚さで輪切り。
ひたすらトントン切っていった。最後のほうは、中々いい包丁捌きだったと思うよ……!

瓶を煮沸消毒して、レモンを入れる。4分の1くらいまで入れたら、業務用の大きな蜂蜜を、ぎゅーっと絞って蜂蜜を投入。ひたひたになるくらいまで蜂蜜を入れたら、もう1度レモンを重ねて、また蜂蜜を投入。それをひたすら繰り返した。

出来た瓶は、合計5個。はぁ……肩凝った…………。
それを冷蔵庫(これも業務用だから、馬鹿でかい)に保存する。

よし、準備は出来た!





次の日の夜。

つまり試合の前日の夜。
私はまた厨房へ足を運んだ。

今度は、昨日漬けておいたやつを、かき混ぜるため。
レモン汁が出るから、はちみつと分離しているらしい(と本に書いてあった)
冷蔵庫へ向かって、瓶を5個取り出す。

おぉ、確かにすこし分離してる。
ぱかっ、と蓋を開けて、フォークでくるくるとかき回した。
うーん……レモンが邪魔で混ぜにくい。でも、混ぜないといけない、って書いてあるしなぁ……えぇい、レモンごとひっくり返してしまえ(大雑把)

「おい」

「あ。……景吾」

厨房に入ってきたのは、景吾。
多分、私が部屋にいないから、宮田さんにでも聞いてここへ来たんだろう。

「なにやってるんだ?」

「時間外マネージャー業」

はちみつをかき混ぜながら、私は景吾に答える。

「……レモン?」

「明日の差し入れにしようと思って、昨日から漬けておいた……あっ!」

ひょいっ、と景吾がレモンを1枚とって食べてしまった。

「…………すっぱい」

「明日になれば、もうちょっと甘くなるはずなの!つまみ食いした景吾が悪い!……んっ」

ぎゃー!!キスされた―――!!!
景吾が、舌と一緒に唾液を送ってくるんだけど……す、すっぱい!

「んっ……っはぁっ……す、すっぱい……」

「だろ?」

「だろ、じゃな―――い!!もう、景吾にはこれあげない」

「あーん?お前、俺様にそんな口聞くのか?」

もう1度キスされる。今度はもう少し乱暴に。

「っはぁ……景吾!」

ぺろり、と景吾は指についた蜂蜜を舐めた。
その後に、私の口の中に自分の指を突っ込んでくる。
うっ……蜂蜜の味がする……じゃなくて!

「今度は、甘いだろ?」

「景吾の馬鹿―――!!!」

な、なんなんだこの男!!
やることが中学生じゃないぞ!なんでそんなに手馴れてる!(涙)

、明日の試合な」

「なに……(グッタリ)」

「俺様も出る」

「…………そう、頑張って」

「で、だ。…………俺様が、相手にラブゲーム(0ゲーム)で勝ったら、褒美にお前からキスな」

ぱかっ←口が開いた音。

「な、ななななな、なんでー!?」

「そうでもしなきゃ、張り合いねぇだろ。銀華中なんて」

「…………ッ……ラブゲームだった時だけだからね!?1ゲームでも落としたら、ダメだからね!?」

「……その言葉に二言はねぇな?」

「女に二言はないっ!」

「楽しみにしとくぜ、あーん?」

景吾はまた、ちゅっと音を立ててキスをする。

「今キスした―――!」

「これは俺様からだ。俺様が勝ったときは、お前からするんだぜ?」

跡部景吾……恐るべし。
こんなのが中学生でいいんですか……!?私が中学生の時の男っていったら……エロ本回して喜んでる奴らばっかりだったんですが……!?
時代は、変わったのね…………(ジェネレーションギャップ)





翌日―――。

初の試合ということで、私はかなり緊張していた。
まず、第一の仕事は、やってきた銀華中のみなさんを、案内すること!
ドキドキしながら校門の前で待っていると。

ガヤガヤ騒がしい声。

おぉ……確かにどこかで見たことある顔だ。ちょっと幼いけど。

「あ、はじめまして。私、氷帝のマネージャーの、です。今日は、遠いところをわざわざありがとうございます」

「おっ、氷帝のマネージャーさん!?随分背が大きいねぇ。俺、銀華の部長で、福士っつーんだ。今日はよろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします。更衣室までご案内します。こちらです」

前に立って、歩き始める。
後ろにゾロゾロついてくる銀華生。……なんだか遠足を引率してる先生の気分。

「うっひゃ〜……氷帝って、でっかいなぁ〜……」

「広さだけは……」

「マネージャーさんって、何年生?」

「2年です」

「おっ、俺らと同い年!……いいなぁ、氷帝にはいいマネージャーさんがいて」

「いえ、そんな……銀華さんにはマネージャーさんはいらっしゃらないんですか?」

「いねぇんだな、これが…………な、うちの学校に編入してこねぇ?」

私の肩を引き寄せたのは、ドレッドヘアの男。

「!?あ、あの、離してください!(つーか、離せやこの野郎)」

ひゅ〜、と他の生徒が口笛を鳴らす。

なんとか手をはがそうと、力を込めるけど、力が強くて離れない。
こ、このやろ〜……!
ひっぱたいてやろうかと右手を上げようとしたら。

ゴン、ゴン、ゴン……ッ

ボールが飛んできて、銀華中の人(しかも、ピンポイントで頭)に命中する。
ぱっと手が離れた。

「うちのマネージャーになにしとんねん」

「お前ら、それ以上やってみそ?……飛べなくさせるぜ?」

「ふわぁ〜……眠いCー……、大丈夫〜?」

「ふふふ、悪ふざけにもほどがありますよね?」

「おめぇら、女が嫌がることするなんて、激ダサだな」

「………………銀華中、試合が楽しみだな、あーん?」

「……ウス」

レギュラー陣、総集結。
どうやら、手にラケット&ボールを持ってるところをみると、彼らがボールを打って銀華中に命中させたらしい。
…………ってか、何?ものすごいタイミング良かったんだけど……見張ってたの?監視ですか?

、案内は鳳にやらせる。お前は試合の準備に行ってくれ」

「あっ、う、うん!」

「さぁ、みなさん。更衣室はこっちですよ?(ニッコリ)」

「は、ハイ…………」

「だから言ったやろ、跡部。ちゃん1人で案内させるのは、嫌やって」

「仕方ねぇだろ、何事もやらせなきゃいけねーんだからよ」

遠くで、そんな会話を聞きながら、私はコートに向かって走っていった。
…………みんな、ストレッチとかは終わったのかな。





アップが終わり、ボトルやタオルをみんなに配る。

「今日は、レギュラーは試合しないんだっけ?」

「そやな〜、銀華と試合したところで、利益なんてないと思うで?」

「あいつらと試合するだけ、ムダムダ」

そんな……みんな……身も蓋もない……。
ちょっとだけ銀華のみなさんに同情するよ……。

「俺様は出るぜ」

…………そうだった。
景吾さんはお出ましになられるんでしたよね……。

「なんでや跡部。お前、いっつも『俺様が出るまでもねぇ』とか言って、見とるだけやないか」

あっ……なんか嫌な予感。

「この試合、ラブゲームで勝ったら、がキ「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

慌てて私は景吾の口を塞ぐ。
わっ、景吾の唇柔らかい……じゃなくって!
ふー……危ない危ない……危うく恥ずかしい約束のことを言われるところだっ……

ペロリ。

「ぎゃ―――!!!」

手を舐められた(泣)
思わず手を離してしまう。

「この試合、ラブゲームで勝ったら、がキスしてくれるっていう約束でな」

あぁぁ、言ってしまわれた…………。

「なっにぃぃぃぃぃぃ!?」

「ほ、ほんまか、ちゃん!?」

「えっ、いやっ、あのっ、それはっ……」

「監督、監督!俺、試合に出たいCー!」

「あっ、ジロー!抜け駆けなんて、激ダサだぜ!?……監督、俺も試合に出させてください!」

「俺も!俺も出たいです、監督!」

みんながわぁわぁと太郎ちゃんの所へ走っていく。
……Oh〜……みんな、一体どうしたよ……?

「景吾〜……?」

「……、じっくりその目、開いておけよ?」

「……はい?」

「俺様の美技に酔いな」

!!!!!
うっわぁ〜、決めゼリフ〜〜〜!!
生で聞くと、こっぱずかしい!


試合開始まで、後、15分。


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