バタンッ。

車に押し込むように乗せられ、その直後に乱暴にドアが閉められる音。
ふかふかな椅子で、普段ならすごく居心地のいいはずの車の中は。

………………最高に重苦しい雰囲気で、一刻も逃げ出したい場所ナンバーワンへと変貌を遂げました(チーン)





シーン…………。

…………沈黙が痛い。

そして、力いっぱい握られた左手も痛い。

「け、景吾……さん…………」

恐る恐る呼びかけると、景吾がちらり、とこちらを向く。
…………相変わらず、目は据わったまま。

……こ、怖すぎる…………っ。

「あ、の……手、が……」

景吾の視線がゆっくりと繋がったままの手に移動し―――ようやく解放してくれる。
とりあえず、小さく息を吐いたけど……解放されてもなお、鈍い痛みを伴っている手。

痛みを散らせるために、手を振りたかった……んだけど。

景吾の手が、ゆっくりと顔に添えられたので、ピキーンと体が固まり、行動不能にさせられた。

つつ、と景吾の長い指が、頬のラインをなぞる。
ぞくりと背筋があわ立った。

「け、景吾……?」

ヤバイ予感を感じて、小さく呼びかけてみる。

景吾の長い指が頬をなぞって……唇に到達する。
それと同時に―――景吾が、ふ……と微笑んだ。

それはそれは、綺麗な微笑みで。

…………ゾクリと背筋が強張るほど、怖く、綺麗な微笑みで。

「……止めろ」

目線を逸らせずにいたら、景吾の形のいい唇が動き、声を紡いだ。
大して大きな声でもないのに、耳の奥にまで響く声だ。
車が、すーっと静かに停車する。

景吾が何を考えてるのか、まったくわからない。
とにかくわかっているのは。
…………………なにやら嫌な予感がするということだけ。

「景吾、何を……ん……ッ」

突然唇を塞がれて、言葉を封じられた。
最初は景吾の唇で。次に大きな手のひらで。

私の口を、骨ばった大きな手で塞ぎながら、景吾は運転席に顔を向けた。

「……外せ。2時間経ったら、戻って来い」

「かしこまりました」

運転手さんの声がして、静かにドアが閉まる音がする。
ドアが閉まったと同時に、景吾がゆっくりと手を外して―――今度は、直接、唇で塞いできた。
それは、喉の奥にまで届くかと思うくらい、深いキスで。
―――目の前がチカチカする……ッ!

「……んんっ……」

与えられる刺激に耐え切れず、目をぎゅっと瞑った。
シャッ、と言う不思議な音が聞こえる。

音の正体を確かめるために、なんとか薄く目を開ければ、景吾が、車の窓についているカーテンを片手で引っ張っているのが見えた。音の正体は、カーテンの閉まる音だったらしい。

ぐっ、と壁に追い詰められ。
キスの嵐で腰に力が入らなくなり。
結果、ズルズルと座席に倒れこむ形になる。

最初は隣に座っていたハズの景吾が、いつの間にか覆いかぶさっていた。

本来ならお尻の下にある、ふかふかの毛皮の感触を、頭に感じる。

口内を舌で侵食されて。
唇を吸われて。
軽く下唇を噛まれて。

……もう、何も考えられないよ…………ッ!

ただただ、唇が離れる一瞬に、息を吸い込むことだけを繰り返す。
それでも酸素が足りなくて、頭がぼーっとしてきた。

だけど、スルリ、とシャツの下に感じる冷たい感触。
それが景吾の手だとわかったとたん、一気に思考回路が復活した。

「けい……っ……んっ!……ちょ……ここ、車……ッふぁっ……」

いくら寝心地がよかろうが、広かろうが。
ここは車の中。
そして、車が止まってるのは街中。

………………そんなところで、何をしようとしてるのだ、この男は―――!!!

なんとか体を動かして、景吾の拘束から抜け出す。
すでにネクタイが取られていたけど、そんなのよりも、自分の身の方が大事だ!(汗)
ネクタイはなくても、シャツはまだ平気だから……とりあえず外に逃げよう!
一瞬のうちに、そう頭の中で考え―――ドアのハンドルに手をかけた。

―――だけど、開けようとしたところで、あっさり背後からまた拘束されてしまう。
今度は、すぐにシャツの下から手を入れられて、胸を柔らかく揉まれた。

思わず声を上げそうになるのを、すんでのところで留める。
こ、ここで声を上げてどうする、私……!

「景吾……っ、ここ、車の中……ッ」

「…………関係ねぇ」

耳元で聞こえる声は、すでに低く掠れている。
それは、怒りのためかなんなのか、判別はつかない。

「で、も……っ……」

「…………お前が悪い」

ブラを上にずらされ、直に景吾の手が胸に触れる。
胸で1番敏感な部分を、景吾が人差し指と中指で転がし始めた。

「ヤ、だ……ッ!」

「ヤ、じゃねぇよ。……約束破ったバツだ」

背後から景吾はどんどん動きを進めてくる。
耳の裏側を舐めてきたり、首の後ろに息を吹きかけてきたり。
いつもとは違う感覚に―――とうとう、我慢してた声が漏れてしまった。

「……ゃん……ッ……ぁっ」

「…………声、出てるぜ……?」

「景、吾が……ッ……」

「……俺が?」

意地悪だ。
景吾はこういうとき、いつも意地悪だけど……今日は、もっと意地悪だ。
目の前が涙で少し霞む。

「景吾が、こんなこと……するから……ッ」

背後からこんなことされているから、景吾がどんな表情をしているか見えない。
ただ、段々と耳に感じる吐息が、熱くなってきたのだけは、感じる。

「…………お前が、わかってねぇからだろ……ッ……」

「……やっ、んっ……!」

少し強めに胸の突起を引っかかれる。
ビリッ、と電流のようなものが背筋を這っていった。

「男だらけの部室に、ノコノコ1人で行くなよ……ッ」

「……だっ……立海の人、だよ……ッ?」

「相手が誰でもだ……っ」

「……ひゃっ……ん……っ……だ、って……」

男だらけっていっても、立海の人たち。
立海の人がどういう人であるか、知っていたから……平気だってわかってた。ちゅ、中学生だし!…………見えないけど!
大体…………私だよ!?メチャメチャ綺麗な女の子とかだったら、そんな心配だってするだろうけど……私だよ!?(ココ重要)

頭の中で色々叫んでいたら。
はぁ、と景吾の吐息が耳に吹きかかり、思わず身震いしてしまった。

「………………体で、わからせるしかねぇみてぇだな……」

「へっ……やっ、ちょ…っ」

スルリ、と下着が膝の辺りまで下ろされる。
外気に触れたソコは……自分でも、十分な熱を持ってるのがわかる。
さらに与えられる、甘美な刺激。

景吾の指が、ゆるやかに入り口付近を撫でてきたのだ。

「やぁっ……こんなとこ、で……ッ」

「……男は、どこでもお構いなしだぜ?……それが、車ン中だろうと、部室ン中だろうと」

トントン、と景吾の指が付近を軽く叩き、ゆっくりとなぞってくる。
もう、頭がおかしくなりそうだ……!

こんな街の中で、車の中でこんなことしてるなんて。
カーテン越しの外では、いつもと変わらない一日の風景なんだろう。

それなのに、私たちは……

「……すげー濡れてんじゃねぇか……いつもと違う場所で、感じたか……?」

「違……っ」

「違わねぇよ……ほら、すぐに指が入る」

「ッ……や、ぁんっ!」

指が内部に入ってきたことによって、さらに刺激が大きくなった。
広げるようにかき回されると、いいところを掠めていく。

「……あ、ぁっ……」

「…………男は、いつでも女のことを考えてンだ……もっと、危機感を持て」

「んぁっ……や、ぁ……っ」

「…………返事は?」

「……は、ぁっ……や……っ!」

耳元で低く囁かれると、どうしてもビクリと体が反応してしまう。
景吾の髪の毛が、するり、と顔を滑っていく。
ごく至近距離で合わせられた目が、私を射抜いていく。

「……返事は?……?」

「……んっ……あっ……は、い……っ」

「………………いい子だ」

景吾の吐息が耳にかかり―――カリ、と耳にも甘い刺激。
くらくらしてきた。

「……やぁ……ッ……やめっ……」

口をついて出てきた言葉。
それと共に―――甘美な刺激が、なくなる。
何が起こったかわからずに、息を弾ませたまま、後ろを振り返る。

ごく至近距離に、景吾の、意地悪そうな笑顔。

「……やめるんだろ?」

「え…………あ……」

「……辛いのは、お前だよなァ?」

ペロリ……と景吾が濡れた指をわざと見せつけるように舐める。
カァァァァ、と顔が真っ赤になるのがわかった。

「け、いご……」

「……このまま帰るか?中途半端に熱くなったままで」

「う……」

「…………ほら、どうしたいか、言ってみろよ」

………………とことん、意地悪だ。
約束を守らなかったから、とことん意地悪をするつもりらしい。

自分の顔が、さらに熱くなるのを感じた。

それでも……この熱を解放して欲しい。

だけど、車の中。街の中。
カーテンを少しでも捲れば、多くの人に、この姿が見られてしまう。

…………頭では、わかってるのに。
それでも―――。

「…………お、願い……シ、て……」

芽生えた熱の放出場所が欲しくて―――ほとんど口が勝手に動いていた。

クッ、と景吾が口角を持ち上げる。

……まだ、意地悪をするつもりだ。この笑顔は。

「…………じゃ、来いよ」

「……え?」

「…………ココに、お前が来い」

私をゆっくりと解放して、景吾がシートに深く腰掛けた。そして、太もものあたりを、ぽんと叩く。
最初、何を言いたいのかわからなかったけど―――少し思案して、景吾の意図するところが、ようやくわかった。

「う、上に乗る、って……コト……!?」

「……そうだ。……ほら、来いよ」

「む、無理……!お、重いし……だ、第一、そこに乗るって、コトは……」

じ、自分で……その、景吾を挿れなきゃいけない、ってことで……。

ニヤ、と景吾が笑う。

「……どうした?やめるか?」

「……う…………」

うずうずと体の中心は疼いているけど、でも……は、恥ずかしすぎる……ッ!
うー、とかあー、とか言っていると、景吾がまたもや、はぁ、とため息をついた。

「………………ったく、仕方ねぇな……」

ぐいっ、と手を引かれて、唇同士が触れ合う。
頭を片手で押さえつけられている間に、立て膝状態になった私は、景吾の手によって、いつの間にか景吾の両足を跨ぐ格好になっていた。

ぐわー、と顔が赤くなるのがわかる。

「重くねぇから、大丈夫だ」

「……うー……でも」

「……平気だって。……早くしねぇと、運転手帰ってくるぞ?」

「あっ……うぅ……」

「…………準備だけはしてやるから、後はお前が全部やれよ。今日は、これが罰だからな」

景吾が手を伸ばして、鞄の中からお財布を出した。
お財布の中から出てきたのは……銀色の包み。…………何かなんて、聞かないで。
景吾の手がそれを破り、動き出すのを雰囲気で感じる。恥ずかしくてぎゅっ、と景吾の首にかじりついた。

「…………ほら、後はお前がやれ」

「うぅぅ……」

「…………どれくらいで運転手が帰ってくるだろうな」

「あぁぁ……」

こんなとこ、他の人に見られたらホント、恥ずかしくて死ねる……!
ゆっくり息を吐いて、決心した。

恥ずかしくて下は見れないので、手で少し探って―――硬いものを見つける。
間近で見える景吾の顔が、少し歪んだ。

そっと中心にあてがい―――ゆっくりと、腰を沈めていく。
体の中に、モノが入っていく感覚。
ぞくぞく、と背筋を何かが走り抜ける。

「……ぁっ……ふ、ぅっ……」

やっぱり、景吾の上に体重をかけるのははばかられたので、立ち膝状態で体勢を一旦止める。
それでも、繋がっているだけで、甘い意識に洗脳されてしまいそうだ。

でも、もっと奥の方に欲しい―――。

どうしよう、と思っていると、また景吾が例の笑みを浮かべて、頭を引き寄せ、わざと耳元に唇を寄せてくる。

「…………ほら、動いてみろよ。……奥まで欲しいんだろ?」

「……うぇっ……!?」

「お前が動かなきゃ、今日はずっとこのままだぜ?……一晩中、車ン中で繋がってるか?」

「なっ!?……なななななっ……!そんな……っ!」

「そうなりたくなかったら…………動けよ」

「あ、うぅ…………」

観念して―――ゆっくり、腰を動かした。
景吾のモノが、内部に擦れる。それだけで、ビクッ、と体が震えた。

「……っ……はっ、ぁ……」

「…………んなゆっくりで、いいのかよ……っ?」

「だっ、だって、う、うまく、動け……な…っ……んぁっ……」

ちょうどいいところに当たって、会話が中断してしまった。
思わず腰を引いてしまったので、クチュ、ズ……ッ、と恥ずかしくなる音が、車の中に響く。

……あぁぁ、恥ずかしすぎる……ッ!

「もっと動かねぇと、いつまで経っても終わらねぇぜ……?」

「うぅ……」

景吾の声に、少しだけ腰を動かす速度を、早くする。
運転手さんが帰ってこないうちに、終わらせなきゃ……ッ。

少しずつ腰を動かしていると。

「……うひゃぁっ……!?」

胸に感じる、電流。
景吾の上に乗ってるから、景吾の顔は私の胸付近にあるわけで。
………………どうやら、それで景吾は、私の胸で遊び始めたみたいだ。

もう、その刺激でいっぱいいっぱいだった私の思考は、完全に活動を停止した。

「……景吾……っ」

「……あーん?」

「お願い……っ、もう、無理……ッ」

ギブアップ宣言。
こんな恥ずかしい体勢で、私が主導権なんて、もう無理だ。
…………こ、今度は、もうちょっと、お勉強するから……!(なんのとは、やっぱり聞かないで)

「お願い……っ」

「……………………………仕方ねぇな」

ニヤ、と笑った景吾が、ちゅ、と軽いキスをくれた。
ゆっくりと腰に手が回る。
景吾の手が触れるだけで、体の中心が熱くなった。

「…………お前のお願いじゃ、な……」

少しだけ景吾が、動きはじめる。
……うぁっ……ヤバイ、思考が持っていかれる……!

「あっ……はぁ、っ……」

「………………覚悟しろよ?俺様にお願いしたからには……ちょっとやそっとじゃ、終わらせねぇからなァ?」

「えっ…?……ぁんっ、……あっ……!」

「……この際だから、たっぷり教えといてやるよ……男の怖さってヤツをな」

耳元で囁かれた景吾のセリフの意味を、考えることすら出来ない。
ただただ、快楽の波に少しでも抗おうと、景吾の首にぎゅっと手を回した。





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