「おっじゃましまーす」 「失礼する」 「邪魔するで」 「……なんで俺様がわざわざ来なくちゃいけねぇんだよ」 両校メンバー勢ぞろい。 まだまだ夜は始まったばかり。 結局、立海氷帝メンバー全員揃って、この部屋に集合することになった。 17人入っても大丈夫っていうことは、やっぱり相当でかいんだよね、この部屋……! さて、どこに座ろうか…… 「、こっち来い」 迷っていたら景吾さんに手首を掴まれて、ベッドの1つに強引に座らせられた。 当然のように景吾は私の隣に座る。 「跡部……っ、またお前は……!」 「動くのが遅ぇんだよ、バーカ」 「じゃ、俺はこっち座らせてもらうよ」 ニコッと笑った幸村くんが、景吾とは反対側へと腰掛けた。 2人の究極美形に挟まれて、嬉しいながらも汗はダラダラ。……わ、私ここにいちゃいけない気が果てしなくするんですけど……! キョロキョロと逃げる場所を探したけれど―――逆に、思い知らされる。 ……今更だった……この美形軍団の中にいること自体が、もうダメなんだよね……!どこいってもこりゃ、居場所ないわ……!(泣)出来る限りちっちゃくなろうと試みよう……! 「何すんだ?トランプじゃ、この人数は多すぎんだろ」 「2人1組にして、無理やりできないこともねぇけど……」 「んな無理しなくてもいいだろ。適当に話してようぜ〜」 「そうだね。その方が面白いだろうし」 「丸井くん丸井くん!あのさ、妙技のさ―――」 おぉぉ、ジローちゃんが珍しくテニス以外で覚醒してる! やっぱ、憧れのブンちゃんを目の前にしたら、そうそう寝てるわけにもいかないんだろうな……うわ、笑顔が輝いていて、とても素敵……! ぼやーっとそれを見ていたら、ぽん、と頭に手が乗る感触。 「、疲れてんだったら、無理してコイツらに付き合う必要はねぇんだぞ」 その手の正体は、お隣の景吾さん。 ぼやーっとジローちゃんを見ていたのを、疲れてぼんやりとしていると思ったみたいだ。 確かに疲れてはいるけど……でも、折角だし、合宿の醍醐味を味合わなきゃね!別名、美形たちの顔をたくさん拝む最大のチャンスとも言う……!(鼻息荒い) 「ううん、大丈夫だよ〜。……あ、そうだ、確認したいことがあるんだよー。明日の交流戦のことなんだけど……対戦はどうするの?みんなシングルスでやるの?」 「あぁ、そういやまだ決めてねぇな……おい、幸村」 景吾が話を促すと、話を聞いていたのだろう。幸村くんが少し思案の後、口を開いた。 「関東大会も近いし、やっぱり、ダブルスはダブルスで、シングルスはシングルスでやった方がいいだろうね」 「そうだな……、じゃあ、ダブルスとシングルス、分けて試合組んでくれ」 「わかった。うちはいつものオーダーでいいとして……立海メンバーの確認したいんだけど、いいかな?」 その場でダブルスメンバー、シングルスメンバーの確認をして(まぁ、知ってる通りだったけど)、頭の中に入れる。 「……よし、わかった。明日までには組んでおくね」 ん、と返事をする景吾と、よろしく、と微笑む幸村くん。 ……どちらを見たらいいのか、真剣に悩んでしまった……!(結局両方見た) 幸村くんが、微笑を浮かべながら口を開く。 「本当にちゃん、よく働くね……マネージャー、1人なんだって?」 「うんー……本当はもうちょっといた方がいいとは思うんだけど……」 「以外のマネージャーはいらねぇ」 「…………なんて言ってくださるもので」 フン、と景吾が鼻で笑って、また頭に手を乗せてくる。 本当は喜んじゃいけないことなんだろうけど……やっぱり嬉しい。 ここまで必要としてくれるなんて、マネージャー冥利に尽きるもん。 「ま、今日の働きを見てたら、俺でもそう思うからね」 「いやいや、まだ未熟者ですが……」 「そんなことないよ。真田とも言ってたんだ、ちゃんが働いてくれるから、今日の練習はすごく楽だったって」 「そ、そんな……」 あぁぁ、お尻がむずむずする……! 居心地の悪さを感じて、ふよふよと視線を彷徨わせると、ちょうど真田と目が合う。 視線を逸らすのも悪い気がして、どうしよう、と悩んでいると。 向こうが口を開いてくれた。 「……その、お前は……」 「真田、ちゃんには可愛い名前があるんだよ?(ニッコリ)」 「…………だが」 「真田、何か言ったかい?」 「………………………」 「え、えと……私は、名前で呼んでもらっても、全然構わないから……!」 そう言うと、真田くんはむ、と黙り込んで。 ゆっくりと口を開いた。 「………………その、……」 …………ほ、本当に名前で呼ばれたよ、皇帝に……!(感激) 、この名前でよかったと心底思った瞬間です。 「え、えと……なんでしょう?」 「う、うむ……テーピングなどは、全て独学か?」 「うん。あ、でもちょっと保健の先生に教わったりもしたけど」 あぁ……と反応したのは、真田じゃなくて、隣にいた景吾だった。 「だからお前、放課後、保健室通ってたのか」 「わからないテーピングがあったから、聞きに行ったんだ。保健の先生、結構詳しかったから」 「わからぬことを聞いて学ぶとは、素晴らしい心構えだ」 「そ、そんな大したコトじゃないよ……あ、そういえば、真田くん、あの帽子「センパーイ!俺も構ってくださいッス〜〜〜!」 話の途中で、どーんっ!後ろから飛びついてきたのは、赤也。 あまりの勢いに、思わず前につんのめった……んだけど、すぐに背中にあったはずの赤也の感触が消えた。 どうしたんだろう、と思って視線を後ろへ向けたら。 「赤也?(黒笑)」 「……俺様の前でに抱きつくなんて、テメェいい度胸じゃねぇか、あーん?」 ………………いつの間にか瞬間移動した、景吾さんと幸村くんに壁際に追い詰められてました。 うん……赤也、何があったかわからないけど、この2人は怒らせちゃいけないリスト上位だから、気をつけようね……(特に景吾は立証済み) 「今度同じことやったら、5時間持久走、素振り3000本、3ヶ月間の部室掃除だよ」 「そ、それ、ジャッカル先輩が遅刻したときと同じ罰……」 「おい、幸村。これ以上何か言う用ようなら、フットワーク3時間っての追加したらどうだ?」 「あぁ、いいね、それ。……あぁ、それにコート整備も入れてあげようか」 「も、もう2度としないッス!!!だから勘弁してくださいッス!(泣)」 赤也の泣きそうな表情に、ニッコリと幸村くんが微笑み、景吾はフン、と視線を逸らす。 どうやら、お許しをもらえたらしい。よ、よかった……!なんだか、他人事じゃない気がしてさ……!(いつも景吾にやられてるから?) 「……なぁ、ー」 幸村くんたちの行動にちょっと怯えてか、控えめに声をかけてきたのは、ジローちゃんと話していたブンちゃん。 ぷぅ〜、と器用に風船を膨らませて、これまた器用に話している。 「ずっと聞きたいと思ってたことがあんだけど、いいか?」 「うん。何?」 「あのよー……その……」 ブンちゃんがガムを膨らませたり破裂させたりと、口をモゴモゴさせる。 「?なに?そんな難しいこと……?」 「いや、そうじゃねぇんだけど……」 「うん?」 「その……お前と跡部って、一体―――「あかん!」 いきなり大きな声を出した侑士に、ビクリとブンちゃんが身を竦める。 眼鏡同士、柳生くんと話していたらしいんだけど……すっくと立ち上がると、柳生くんから離れて、ツカツカとブンちゃんに近づいた。 2人でコソコソとなにやら話し始める。 「……その話は禁句やで」 「お、忍足……?」 「それ聞くのだけはあかん。ちゃんに聞いたら全てが終わってしまうやろ。聞くなら跡部にしぃ。そんで、跡部の言うことは全てウソやと思え。えぇな?」 侑士が何か言ったのだろう、ブンちゃんが訝しげな顔で、近くにいるジローちゃんを振り返った。 「…………おい、ジロー……コイツ……」 「あー……丸井くん、気にしないで欲Cー……」 「ほっとけ、丸井。そいつは頭が可哀相なヤツでな……いつまで経っても事実を認めようとしねぇんだ」 「…………忍足、お前が何を信じたくねぇか、俺にもわかったぜぃ……ま、気持ちはわかる……ここは聞かないでおくぜ……」 こっくり頷く侑士が、なんだか妙に真剣だった。 NEXT |