「…………なして俺が跡部と同じ部屋やねん」

「俺様だって、テメェと同室なんてまっぴらごめんだぜ」

くじ引きに文句はつけないでください、お2人とも。






テニスを終え、テニスコートについているシャワーで手早く汗を流した後、私達は私服に着替えてホテルへ戻った。

さて、ホテルに戻って、1番最初にすること。
それは、お風呂に入ることでも、ご飯を食べることでもなく。

「9つキーがある。全部2人部屋だ」

そう、部屋決めなのです。

何をするにも、まずは部屋を決めなくては行動が起こせない。

ホテルのロビーにみんなで集まり、景吾が持ってきたキーをテーブルの真ん中に置いた。
すぐに幸村くんがキーの1つを手にとって、私に差し向けてきた。

「まず、ちゃんは1つの部屋だね」

「あ、う、うん……ありがと」

まぁ……普通に考えて、私は1人だろう。高級ホテルの2人部屋を1人で使うなんて、とても勿体無いような気もするけど、他のメンバーと同室なんてなれやしない。ほら、一応、健全な中学生の男女だからさ!……ほら、ジローちゃんとかがっくんとかと同じ部屋になったら、私の理性が保つか危ないじゃん……!?(え)

「問題は、後のメンバーだな……何か案のある者は」

真田くんの声に、はいはーい、とがっくんが手を上げる。

「案じゃねぇけどよ、学校はどうするんだ?氷帝と立海、ごちゃまぜで部屋決めんのか?」

「ふむ……そういえばそうだな。……跡部、どうする?」

「別に、学校は別でいいんじゃねぇか?今更、交流深めるって仲でもねぇだろうし……どうせ、夜は夜で1つの部屋に集まるんだろ?とりあえずは、荷物の置き場所と寝る場所だけ確保しときゃいーんだろうから、学校別で支障ねぇだろう」

「うむ。……では、立海は立海、氷帝は氷帝で決めるとしよう」

真田くんの言葉に、景吾が頷き氷帝メンバーを集める。
1人先に決まった私だけど……特にすることもないので、氷帝メンバーの方へと混ざることにした。

「……さて、どうする?お前らなんか希望はあるか?」

「今更、誰がどうとかねぇしな……くじ引きとかでいいんじゃねぇか?」

「それが1番手っ取り早ぇな。……

景吾が言う前に、私は持っていた部活ノートの1番後ろを開き、ベリリ、と1枚引きちぎった。

「はいはーい。あみだでいい?」

「あぁ」

返事と共に、紙に線を書き始める。
手早く8本の線を引き、部屋番号を記入した後、紙を折り、今度は横線を書き加えた。

「はい、出来たー。好きなとこ選んで」

「1番は俺様だ」

「跡部って、ホント1番好きだよなー……あ、俺3番!」

「こんなんどーでもえぇんやけど……ほな、俺はラッキー7っちゅーことで、7番」

それぞれの希望を聞いて、記入していき―――1番の景吾から、あみだを引っ張っていく。

「えーっと……景吾は2127で……2番の亮は……2125。がっくんは、と……2124だね〜」

6番まで終えて、とりあえず決まってるのが、がっくんと若の部屋、そしてジローちゃんと亮くんが同じ部屋だってこと。残るのは、侑士と樺地くん。チョタは2126だった。

「次は侑士ねー……あ」

ピー、と線を引っ張っていき、たどり着いた部屋番号は。

「侑士2127だ。景吾と一緒だー」

「「…………………」」

途端に2人とも、嫌そうな顔になった。

「……なして俺が跡部と同じ部屋やねん」

「俺様だって、テメェと同室なんてまっぴらごめんだぜ」

「「貴様(自分)、部屋変われ」」

くじ引きの意味がなくなるような発言。
今までくじ引きやった意味がないじゃん……!

「ふ、2人とも……!くじ引きだから、ね?」

「……なら、俺様がの部屋に行く。貴様は1人で部屋を使え」

「ちょい待ち、跡部。そんなんこの俺が許すわけないやろ。それやったら、俺がちゃんの部屋行くから、跡部はいつもどおり、広〜い部屋を1人で使ったったらえぇわ」

「ふざけんな。なんで貴様がと同室なんだよ。それこそ許すわけねぇだろうが。と俺なら家でも一緒だし、別にベッドが一緒でも―――「ちょお待てや」

とんでもない発言をぶちかましそうな景吾の肩に、侑士の手がかかる。
侑士の顔に、ニヤーリと黒い笑顔が広がる。

……今理解したで。俺がお前と同じ部屋になったんは、きっと、お前の悪行からちゃんを守るためなんや……そや、きっとそうに違いない……!跡部がちゃんに悪さしようとするのを止めるために、跡部と同じ部屋になるように、神さんが仕向けたんや……

「……おい、妄想眼鏡」

俺の目が黒いうちには、ちゃんの部屋なんかに行かせんで……行くときは、問答無用で俺もくっついていく

「いい加減に―――」

しゃーないわ、ホンマは嫌で嫌で仕方あらへんけど、ちゃんのためや……!ここは俺と跡部が同室っつーことで、手ェ打ったるわ

……忍足……テメェやっぱいっぺん死んどくか……?

おぉ……今度は景吾が侑士の襟首引っつかんだ……!
こ、これは止めた方がいいのかしら……!?でも、他のメンバーも遠巻きに見てるだけだし(注:ただ呆れてるだけ)

跡部……覚悟しとき。絶対2人っきりになんて、させんからな……!あわよくば、俺とちゃんが2人っきりに……!

「……本気で死んどけ、馬鹿眼鏡!」

「あ、あのー……お2人とも、話はまとまったのでしょうか……?」

恐る恐る話しかければ、むすっとした景吾と、対照的にニッコリ笑顔の侑士が、同時にこちらを向いた。

「あぁ、ちゃん、こっちは平和的解決に至ったで」

「あ、そ、そうですか……それじゃ、この部屋割りでよろしいですね……?」

「…………………」

景吾さーん!!!お返事は―――!?(絶叫)
明らかに『よろしくない』と全身から否定を表してるんですけど!
……これは断行していいんです、よね……?くじ引きだしね……?

「えぇってえぇって、ちゃん。俺と跡部、仲良うやったるから」

「……そ、そう……?じゃ、この部屋割りで行き、ましょう……ね?」

「「「「「「「はーい」」」」」」」

景吾以外からはとてもよいお返事を頂きました。
…………ま、結局景吾もこの決定を覆しはしなかったけどね。






立海はそれぞれ平和的解決だったらしく、部長&副部長、紳士&詐欺師、ガム&デタラメ、そして糸目&ワカメの部屋になったみたいだ。……どうも、部長&副部長の部屋は説教部屋っぽいな……(オイ) そして、デタラメさんと糸目さんが苦労する姿が目に浮かぶ……でも、中々バランスが良いのではないかとも思うよ、うん(無理やり)

荷物は部屋に送ってあるので、部屋に行く前にご飯を食べて行くことになった。
ボーイさんに導かれてたどり着いたのは、明らかに高級レストランで。
…………うん。本日の夕食はフルコースでした(泣き笑い)
どう考えても、中学生のテニス部の合宿じゃないよ……!

運動の後にフルコースは、どうやっても全部入らなかったけど……やっぱり、とっても美味しかった。みんなで美味しい美味しい言いながら、食べてました。最後にブンちゃんがみんなにデザート貰って、すごい嬉しそうに食べてたのが可愛かった……!(萌)

ご飯終了後、エレベーターで21階まで上がって、そこでみんなと別れる。
部屋は、氷帝と立海が、廊下を挟んで向かい側になるようにしてもらった。
私は氷帝側の一番端っこの部屋。

やたら立派なドアをガチャリと開けて―――一瞬くらりと眩暈を感じる。

「…………なんなの、この部屋は…………」

私がかつて泊まったことのあるホテルとは、規模が全然違いました……!
ベッドにたどり着くまでに、こんなに歩数を要するホテルの部屋なんて、初めて……!
なんでこんなに一部屋が広いの……!?いや、広さでいったら跡部家での私の部屋や、景吾の部屋の方が広いけど……でも……でも!

「こんな部屋を、中学生の合宿で使う……!?」

何度も同じコトを思ってるけど……やっぱりこれも疑問に思いますよ、お姉さんは!

恐る恐る荷物をテーブルの上において(ベッドに置く勇気はない小市民)、椅子に腰掛けた。
ゴソゴソと部活ノートを取り出して、本日の記入事項を書き入れ始める。

氷帝メンバーの調子やらを記入して―――しばらく考えた後、ついつい癖で持ってきてしまった、平部員用のノートを開いた。

切原赤也      練習終了直前、軽いこむら返り ストレッチチェック
ジャッカル桑原   右手首(?) 明日確認
丸井ブン太     マメ潰れ処置

……一応、合同合宿では立海のマネージャーでもあるわけだし、なにかあったとき、役に立つ。書いておいて損はない。

明日は交流戦だから―――やることを列挙しておこう。その方が、効率よく動けて、たくさん試合が出来るかもしれない。

「明日やることは―――まずはテーピングか……」

マメを潰している人は多々いるし、若の手首や亮の膝など、予防用のテーピングをする必要がある。関東大会まで後3週間。今ここで怪我をしたら、致命的だ。用心に用心を重ねなければ。

明日やること   テーピング
          ドリンク作り
          コールドタオル(冷水器の水で冷たくしたタオル)作り
          スコア記入

その他:甘めポカリを1本作る (がっくん、ブンちゃん用)

こんなところだろう、とシャーペンを置いた。
明日やることを列挙したおかげで、今日やることもおのずと見えてくる。
ドリンクの粉、タオル、スコアシートの確認、テーピングの復習―――できることは今しておこう。
明日の交流戦の対戦はどうなってるんだろう―――これも、後で確認しなきゃ。

バッグの中身を確認して、ついでに救急箱の中身も確認し、持ち物はの確認を終えたところで―――ピンポーン、とチャイムが鳴った。

「はいはーい?」

広い部屋なので、少し急ぎ足で玄関に向かう。
ガチャ、とドアを開ければ、まずがっくんの可愛らしい笑顔が目に入って、思わず抱きしめそうになった(怪しい)

―――!!!」

「が、がっくん……!チョタ、若に樺地くんも……!」

がっくんの後ろに揃っているのは、2年生's。
平均身長がやたらと高いですよ……!……あ、人のこと言えないか(汗)

1人だけチビっこいがっくんを見て、ほわーっとなっていたら、後ろにいた若が少し眉をひそめてこっちを見ていることに気付いた。

「……先輩、相手を確かめもせずに、ドア開けないでください。……危ないったらないです」

「そうですよ、さん。俺たちだからいいものの……」

「えっ?あ、そ、そうか……ついつい家と同じ感覚で……次からは気をつけます、ハイ」

…………むしろ、家の方が気をつけて欲しいんですけどね(ボソリ)

ん?若、何か言った……?
疑問の視線を投げかけたら、若はふい、と視線を逸らしてしまった。
おや〜?と思っていたら、腕にしがみつく可愛いヤツ……

「なぁなぁ、!俺たちの部屋に集まんねぇ!?他の奴らも呼んで!」

その名は向日岳人…………!(ガッツポーズ)

「いいねぇ〜。うん、行く行く!」

にぱっ、と笑うがっくんがこれまた可愛いんだよ……!

「そんじゃ、俺、他の奴らにも声掛けてくるぜ!たちは先に部屋行って待ってろ!」

言うが早いか、動くが早いか。
がっくんはあっという間に、向かい側の立海部屋のインターホンを鳴らしていた。

…………さて、これからが、ある意味では本番ってこと、かな……?




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