長かった合宿(といっても、3泊4日だけど)も、明日で終わる。
本日3日目の練習を終えて、とりあえず練習日程を全て終えた私たちは、最終日の団欒、ってヤツを楽しみにしていた。

マーケットでたくさんお菓子を選んで。
ジュースも買い込み、準備はOK!

みんなで早々にご飯を食べ終えて、お菓子王国(笑)がっくんの部屋へGO!

やっぱり、合宿最終日っていったら、夜まで話し込むのが常ってモノでしょう!



Act.38  宿の、お楽しみといえばこれ



買い込んだお菓子、ジュースをがっくんの部屋に持ち込んで、私たち全員は集まった。

「よっしゃ、準備OK!」

「まずは何する?俺、トランプ持ってきた」

亮がポケットの中から、トランプを出した。

「あ、俺UNO持ってるよ〜」

ジローちゃんも同じくポケットからUNOを出す。

「俺は人生ゲーム!」

どーん、と人生ゲーム(でかいサイズ)を出してきたのは、がっくん。
……やたら大きい荷物は、お菓子だけじゃなかったのね……人生ゲームなんて持ってきたら、そりゃ荷物になるだろうよ!

「まずは……定番の大富豪やろ?」

「大富豪……あぁ、大貧民な。それにするか」

「関東じゃ大貧民って言うんか?」

「どっちも言うぜ?……あぁ、でも大貧民って言うことの方が多いか」

ふーん、と侑士が頷いた。
へぇ、関東と関西で呼び方違うんだ……そういえば、ものもらいはメバチコだしなぁ。今度、侑士に色々聞いてみようっと。

「じゃ、大貧民……だけど、8人じゃ多いな……2人1組になるか?」

「そうしようか。……んー、じゃ、トランプ2枚ずつ出してー……」

トランプで公平に決めた結果。

ペア1:ジローちゃん&がっくんのチビーズペア
ペア2:樺地くんとチョタの長身ペア
ペア3:侑士と亮の地味に強そうだぞペア
ペア4:景吾と私の帝王と使用人ペア

「って、なんでや―――!なんでいっつも跡部ばっかりいい思いすんねん―――!」

「あーん?日ごろの行いの差だろ?……ほら、、こっち来い」

ペアなので、隣同士にくっつかなければいけない。
私は、今までいた場所(侑士とがっくんに挟まれてた)から、景吾の隣へ移動した。

みんなもぞろぞろと移動を開始する。

「ほんじゃ、配るからなー」

がっくんがぽいぽいっ、とカードを配る。
4組なので、手札は多い。
10枚以上の手札を、私が持つ。だって、景吾がカード持たないんだもんよ……。

「ルールは?これって、結構地方ルールあるからな」

「あー……階段3枚からで、8切り・革命有り、2上がり禁止のシンプルルールでいいんじゃね?」

「せやな。それ以上詰め込むと、わけわからんくなりそうやし。……よっしゃ、じゃあ」

ジャーンケーンポン!

私      パー
がっくん   チョキ
侑士     パー
チョタ    パー

「よっしゃ、俺たちからだな!……ジロー、やっぱ最初はこれだよな?」

「うん、それでいいんじゃない……?」

あふー、と欠伸をしながらジローちゃんが、なんとも適当に答える。……眠そうだな、絶対途中で寝そうだな、ジローちゃん。

「時計回りで、次は僕達ですね。……樺地、これでいいよな?」

「ウス」

ポイッとチョタが手札を出す。
次は私たちの番。

私は、景吾に札を見せながら言った。

「景吾、これとこれ、どっち?……ってか、景吾、大貧民のルール、知ってるよね……?」

「実際やるのは初めてだが、ルールくらいは知ってる。…………この場合は、妥当にこっちだろ」

よ、よかった……景吾って、トランプやるんだったら、なんかカジノの方が似合うんだもん(それはそれで問題)……大貧民とか、普通のトランプゲーム知らないかと思った……!

「……跡部……自分、絶対負かすで……!」

侑士がなんだか怖い笑顔で笑う。隣にいる亮が、少し離れた。
ぺいっと侑士がカードを出し、次にまたがっくんが出し―――。

しばらく続いた後、侑士が場のカードを流したときに。
キラリ、と侑士の眼鏡のレンズが光った……気がする。

「ふっ……革命や!」

バシーン、と侑士が4枚の9を出した。
げっ……私たち、強いカード残してたのに……!なんてことをするんだ、侑士!

みんなも同じ心境だったらしく、がっくんが「あ〜〜!」といって、頭を抱えた。彼が持ってるカードは、もう3枚ほど。……きっと強いカードばかり残して、さくさく勝とうと思ってたことだろう。

対する私たちは、まだカードを持ってるけど、うっ、革命じゃなかったらそこそこよかったのに……!

、これ」

景吾が、指差したカード。

「え?」

「で、これを組み合わせて……」

あ。

「ごめん、侑士…………革命返しだ」

6を3枚と、ジョーカー1枚。
革命中の今は、侑士が出した9の4枚よりも、6の方が強い。
ぽいっと出して、そのまま元の強さにカードが戻る。

「なっ……なにぃ!?」

、よくやった〜!」

がっくんが、ピースサインを送ってくる。
はは……気づかなかった。景吾、良く見てたなぁ……。

「もう4枚出せるヤツはいねぇだろ?……じゃ、2の2枚だし……で、8切り。最後はQの2枚で上がりだ」

景吾が、私の手からぽいぽいっと手札を出していって、気がついたら私の手の中に札はなく。
…………あ、上がっちゃったよ。

「あ、跡部〜〜〜……」

「忍足、いつも言ってるだろうが、詰めが甘ぇんだよ、詰めが」

ふん、と景吾が勝ち誇った笑みを侑士に向ける。
け、景吾さん……やったことない、って言ってなかったっけ……?

まぁ、いいやー。勝てたからそれでよし!(いいのか)

で、結局侑士と亮のペアが負け。

「敗者は……腕立て30回な」

景吾の言葉に、渋々侑士と亮が腕立てを始める。
……うわ、腕立て30回……嫌すぎる。


そのまま何回か大貧民をやり、UNOもやって(UNOはペアじゃなくて、個人戦)、最後に人生ゲーム。

「げー、もう子供いらん〜」

「侑士、子供ばっかだー」

あはは、と笑いながら人生ゲームを進めていく。
ジローちゃんは途中でオヤスミになられましたので、今やってるのは7人。

突然「ダメだ……もう寝る」って宣言したかと思うと、ジローちゃんはベッドに向かって、3秒としないうちに寝息を立て始めた(ちなみにここはがっくんの部屋。つまり、ベッドもがっくんの)

「しかも、跡部が政治家になってんのが、気にいらん〜!」

「跡部が政治家になったら、日本はどうなることか……」

「俺様が政治家になったら、日本の未来は明るいぜ?……よく出来てるな、このゲームは」

そうなのだ。景吾は職業が政治家。
しかも、なんだかんだでゲームが上手いから、がっぽり稼いでるし。

んー……と目をこすった。
ちょっと眠くなってきた……だけど、楽しいし。寝たくない。

「よっしゃ、給料日!」

がっくんが給料日でお金をもらってる。
私の番まではまだあるなぁ……。

体育座りをしながら、ぼーっとそれをボードを見ていたら。

…………意識がなくなった。





コツン、と左側に当たった感触に気づいて、俺はそちらに視線を流した。

感触の正体は、体育座りをしていたの頭。足を抱えていた腕が外れている。そして俺に頭を預けて……目を瞑っている。
すー……という小さな寝息。

その安心しきった寝顔に、ふ、と笑みが漏れてしまった。

「……あれ?ちゃん、寝ちゃったん?」

忍足が少し声を潜めて、聞いてきた。
起こさないように、なるべく体を動かさないようにして頷く。

「疲れてたんでしょうね……」

鳳が少し笑いながら、の様子を見ている。

「……にしても、こんだけ男がいて女1人なのに、無防備に寝るってのは、どうなんだよ?」

宍戸の言葉に、全員が複雑そうな顔になった。
安心してるのか。
はたまた……男として見られていないのか。

おそらく、なんにも考えていないだろう、この無防備に寝る人間は。

「…………深く考えんようにしとこ」

「そうだな……」

忍足の意見で一致したらしい。
しばらく、静寂が続く。

「…………、寝てると別人みてーだなー……」

岳人がそぉっとの顔を覗き込んだ。

「確かに……いつもの元気なさんとは、少し違いますね……」

鳳も一緒になって覗き込んだ。

なんとなく、の寝顔をこれ以上見せたくなかった。
……が俺に寄りかかって寝てる状況を捨てるのは、もったいなかったが。

「樺地」

「ウス」

パチン、と指を鳴らせば、樺地がすぐに傍にやってくる。

「部屋に運んでやれ。……ゆっくりな」

「ウス」

樺地がひょいっとを抱えあげた。

「ほんじゃ……そろそろ俺らもお開きにするか」

「そーだな。……って、あー!俺のベッド、ジローが使ってるんだった!!」

「お前がジローの部屋を使えばいいだろ?」

「あ、そーか。…………じゃー、オヤスミー」

「あぁ、ほなな」

の就寝と共に、あっさり解散していく奴ら。
と一緒にいることだけが目的だったらしい。

わかりやすすぎる、アイツらの思考に苦笑して。

俺もさっさと自分の部屋に戻った。



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