The 髪の毛リンチにあった後、私たちはマーケットまで歩いてきた。
跡部家車も、あることにはあったんだけど、そんな遠くない距離だし。歩いて行こうかってことになったんだよね。

マーケットについて、カゴを持って。
キャスターはいいよね……うん、っていうか、ガラゴロあんまりやりたくないし。



Act.37  おい物は、みんなでGO



!菓子買ってきていいか!?」

がっくんが、くいくい、と私の服を引っ張りながら聞いてくる。
……あぁ、可愛いなぁ、もう。
微笑ましくなって、うん、いいよ〜、と許可の声を出す。
……まぁ、部費だしね。部費!少しくらいなら平気でしょ(ニヤリ)

「岳人、お菓子は500円までや」

侑士がなんだかとても所帯じみたことを言っていた。
…………500円って……遠足のお菓子じゃないんだから。

だーっとがっくんがお菓子売り場の方へ走っていく。

、俺もムースポッキー欲Cー……」

「ジローちゃんも選んできていいよ?」

「うん、じゃあ行ってくる〜……」

ジローちゃんもお菓子売り場へ。
大分眠いのか、フラフラしてる。……大丈夫かな。

「えーっと……まずは、レタスレタス、と……」

野菜売り場から回っていくので、レタス、トマト、キュウリ、アスパラガスなどをどんどん詰め込んでいく。明日の朝食もあるし……色々買っておこう。

いつの間にか、カゴは樺地くんが持ってくれていた。
ありがとう、といいながら、野菜を入れる。
……ん?

「……亮、さりげなくチーズ入れた?」

「げ、バレたか……」

「そんなにチーズ食べたいの?……まぁ、いいけど」

「うしっ」

「…………にしても、新鮮やな〜。普段買い物なんてけぇへんからな」

侑士がキョロキョロと周りを見回して言う。
……確かに、中学生の男の子なんて、夕飯の買い物なんてこないだろうな。

「そうだねぇ。私も久しぶりにマーケットなんて来たよ。………あ、チョタ、そこにあるピーマン取ってくれる?」

「はい、さん!」

ニコニコのワンコ笑顔(眩しい……!)で、チョタがピーマンを取って、カゴに入れる。
ちなみに、景吾はずぅっと私の後ろに張り付いている。……なんなんだ、一体。

〜!これとこれだったらどっちがいい!?」

がっくんがお菓子を抱えてやってくる。
指し示してるのは、チョコ系のお菓子だ。どっちかで迷ってるみたい。

「んー、じゃあこっち」

「うしっ、じゃこれ!後は返してくる!」

…………なんだか、子供を持った気分だわ……(遠い目)
がっくんとジローちゃんが子供………

―――妄想―――

「お母さん、俺こんだけ飛べるようになった!」

おかっぱみそカットの子供が飛び跳ねるのを、微笑ましく見る私。

「お母さん、眠い〜……」

愛用のくまさんを引きずりながら、目をこすりつつやってくる子を見る私。

―――妄想終了―――

イイ!すごくイイ!
可愛い!大変そうだけど(1人はずっと飛びまくり、1人はずっと寝まくり)、それを補って余りある可愛さだわ!

この子たちのためなら、私、ガンバレル!!!

その後は、お肉を買ったり、朝食は納豆がいいというがっくんにつられて、納豆を買ったり(侑士がゲンナリしてた)とにかく様々な食材を買って。
袋に詰めたら、大きな袋が4個分。
ど、どーするかな、これ……私、1人じゃちょっと無理か……。
チラ、と景吾を見たら、視線に気づいた景吾が、パチンと指を鳴らした。

「樺地」

「ウス」

…………樺地くんが、持ってくれた。しかも、4個いっぺんに。

ごめん、樺地くん。
荷物持ちばっかさせて、ホントごめん!





別荘に戻り、さっそく食材をキッチンへ運ぶ。
まずは、お米を研いで……。
パタパタパタ、とスリッパの音が聞こえた。

「手伝うで」

「俺も」

「僕も手伝いますよ」

やってきたのは、侑士、亮、チョタの3人。
いいよ、って断ったのに、それでも3人は手伝うといって聞かない。
……結構頑固なんだよな、みんな。

「じゃあさ、亮、野菜洗ってくれる?チョタはお米研いでくれるかな?」

「わかった。このボール、使っていいのか?」

「うん。チョタ、ちょっと待っててね……えっと、お米お米」

お米の袋を開けて、何合炊けばいいかな……と考えながら、結局8合炊くことにする。
8合分のお米(初めてこんな量を見た)を2つのザルにうつして、チョタに渡す。

「よろしくね。……んで、侑士は私と一緒にお肉切ってくれる?」

「了解」

キッチン広くてよかった……体だけは大きい男の子3人と私が入って、なお動けるスペースがあったからね。
途中、「うわ」とか「ぎゃー」とかいう悲鳴を出しながらも、私たちはなんとか夕食を作り終えた。
……なんだか、プチ調理実習みたいだったよ……。

出来た料理を、テーブルに運ぶ。

「そろそろあいつら呼ばんとな」

侑士が階段を上って、部屋にいる他の子を呼びにいった。
どうも、がっくんはお菓子の吟味をしてるらしい。ジローちゃんはお昼寝。樺地くんはボトルシップを持ち込んでるらしい。景吾はいったい何をしてるんだか……。

その間に、私たちは料理を運んで。

「ん〜、Eにおい〜……」

目をこすりながら、ジローちゃんが降りてきて、次にがっくんと樺地くん。景吾は一番最後。

「じゃ、席について……頂きます」

手を合わせて、みんなで一斉に食べ始める。
ドキドキしながら感想を待った。味見はしたつもりだけど……マズイとか言われたら、立ち直れない……!
私もぱくり、と食べるけど、緊張しすぎて味がよくわからない……!あぁぁ。

「おいCーッ!豚の冷しゃぶ、ゴマダレが市販のじゃない!」

ジローちゃんの言葉に、まずはほっと胸を撫で下ろす。
よ、よかった……食べられないことはないみたいだ〜……。

「そのゴマダレなぁ、ちゃんが作ったんやで〜。美味いやろ〜」

「コイツ、すげー手際いいから、驚いたぜ」

それは、何度も何度も脳内でシュミレーションしていたからです(予習済み)
しかも、みんなが手伝ってくれたから、同時進行が出来たしね。

「よかった……なんとか食べラれるみたいで」

「食べラれるどころじゃないですよ、美味しいです、すごく!」

「あ、ありがと……手伝ってくれたからだよ……」

はぁ……よかった、最初の関門は通過した!
やっと自分自身の料理の味がわかる。……うん、庶民の味だ〜。

「美味いッ!………あ」

がっくんがピタリ、と箸を止める。
な、なに……豚肉生だったりした……!?

「……キュウリ、嫌い」

小さく呟くがっくんの姿に、胸がどっきゅん。
うわぁぁぁぁ、なんだこの可愛い子!キュウリが嫌いで、小さく呟くトコが、超可愛いッ!

「岳人、好き嫌いはあかんで」

「キュウリ……青臭いし、虫になったみたいで嫌だ」

「うっ……」

そんなこと言われると、ギクリとしてしまう。む、虫……!想像してしまったら、キュウリに手が伸ばしづらい……!

「バカか。文句言わずに食え」

景吾がひょいっとキュウリにお箸を伸ばして、ポリポリと食べてしまった。
それを見たみんなも、キュウリを食べるのを再開する。

「岳人、ゴマダレつけて食うてみぃ。青臭さなくなるで」

「うー……」

がっくんが、ゴマダレをこれでもか、とキュウリにまぶして食べた。

「……食べた……ッ……キュウリ食ったぞ……ッ」

「そりゃ、そこまでゴマダレかけりゃ、ゴマの味しかしねぇだろうよ……」

亮が呆れたように、肩をすくめながらそう言った。
ホントにね……でも、まぁ食べたからよしとするか。

ん、と差し出されたお茶碗は、景吾のもの。
おかわり、ということらしい。

「どれくらい?」

「さっきと同じくらい」

って、そんなに食べるんかい!
それでも炊飯器のところまで行って、さきほどと同じくらいご飯をよそう。

ご飯を景吾に渡すと、またパクパクと食べ始める。
……口数が少ないと思ったら、なんだかひたすら食べてたみたい。

侑士がガタン、と席を立った。
お茶碗を持ってるところをみると、侑士もおかわりみたい。

「侑士、私行くよ」

「そうか?すまんな」

、俺もおかわり〜」

「俺も」

「あ、俺もお願いします」

「俺も俺も!」

「……ウス」

えーっと…………。
そんなにご飯、あったかしら?(汗)





「ご馳走様でした〜」

「お、お粗末さまでした」

結局みんながぺろっと全て食べてしまった。
ご飯もたくさん炊いたのに、すべてない……余ったらおにぎりにでもしようと思ってたのに……8合炊いたのに、全部ないってことは……みんな、1合以上食べたってコト!?私、お茶碗1杯しか食べてないから……。
あ、甘く見てたよ、中学生男子の食欲……!

う〜ん、明日の朝ご飯……またお米炊かなきゃ。
納豆なんて景吾は食べたことないだろうな……おかめ納豆買ったときに、不思議そうな顔してたもん。

カチャカチャと食器を集める。

手伝おうか、と言ってくれた人には、『これくらい大丈夫』と言っておいた。
洗うだけだしね。

食器を洗い終わったときには、すでに9時を回っていて。

あー……先にお風呂入った方がいいかな。
お風呂入った後に、明日のご飯の準備しよう。準備って言っても、お米研いでおくぐらいだけどね。

お風呂入って、今度はしっかりちゃんと髪の毛乾かして(久しぶりに腕が疲れた)、もう1度キッチンに戻る。

お米を計って、研いで。
よいしょ、と炊飯器にジャーを入れて、タイマーをセット。
明日は7時起床って言ってたから……7時にセットでいいか。

?」

景吾がキッチンに突然顔を出した。

「景吾。どうしたの?」

「それはこっちのセリフだ。何やってんだ、お前」

「明日のご飯の準備。もう終わったけど。景吾こそ、こんなとこまでどうしたの?」

「お前の部屋に行ったら、いなかったから」

…………いつものように、部屋に来たってワケね。
で、いないからキッチンまで来たと。

「なにか用?」

「…………用がなきゃいけねぇのか?あーん?」

「違うって。なにか急な用事でもあったのかと思って」

スリッパだから、音もなく景吾が近づいてくる。
なんだろう、と思ってると、突然抱きしめられた。

「ぎゃー!景吾、何すんのさー!」

「…………体冷たいぞ、お前」

「キッチンいたからね……って、離して離して―――!!」

「あったまるまでこうしててやる」

「イヤ―――!……ほ、ホットミルクでも作るから!」

ベシッと剥がして、冷蔵庫に向かって一目散に逃げる。

「(チッ)…………なら、俺様は紅茶」

「え?……でも私が作ると、家の味は出ないよ?」

「別にいい」

「……わかった、じゃ、ちょっと待ってて」

お鍋を2つ用意して、1つには私のホットミルク。お砂糖入れておこう。これは弱火。紅茶の方が出来るのが遅いからね。時間を合わせるために。
もう1つは、お湯を沸かす。
戸棚から出したティーポットは温めておく。

最初に湧いてきたのはお湯のほう。
温めておいたティーポットに茶葉を入れて、お湯を静かに注いだ。

景吾は大人しくテーブルについたみたいだ。

カップにもお湯をそそいで温めておく。

時計をみて、3分経った後に、カップのお湯を捨てて、静かに紅茶をポットから注ぐ。
出来た紅茶をまずは景吾のところへ。

「ハイ」

「あぁ。……お前のは?」

「うん、もう出来るよ〜」

もう1度キッチンに戻って、火に掛けっぱなしのミルクの状態を見る。
……おぉ、膜が張ってるねぇ。
あんまりこの膜は好きじゃないので、スプーンで掬い上げて、ぽいっ。……ごめんよ、栄養あるんだけど好きじゃないんだ。
ふつふつと煮立っているミルクを、少し大きめのカップに注い―――

「……ぁつっ……」

お鍋に口がついてなかったから、手に零した(泣)
あつー……あぁ、零れたミルクが床に落ちちゃう〜!
布巾布巾……!

!?」

「あ、景吾」

「どうかしたのか!?」

「あ、ちょっと零しちゃって……布巾布巾」

「バカッ、そんなもんいいから!どこに零した!?」

「え、左手、だけど……」

景吾が少し赤くなってる左手を掴んだ。
少しミルクがまだついてる指先を、躊躇なく口に含む。

「えぇぇ、ちょっ、景吾!」

ぺろ、とミルクを舐め終えると、そのまま景吾は私の手を引いて水道へ。
蛇口から水をザーッと流して、左手を冷やし始めた。

「け、景吾……?平気だよ?」

「ダメだ。赤くなってる」

「……そりゃ、ちょっとはヒリヒリするけど……あ、ミルク、床に零れちゃった……」

「バカ。……ったく、床よりも自分の手を心配しろ」

景吾にそのままずっと手を握られたまま、冷やさせられた。

「……うー……景吾、もういい?」

「…………まぁ、こんなもんだろ」

ようやく解放してもらう。
景吾はそのままテーブルに戻った。
うぅ、手が冷たいぃ〜…………。

布巾で手を拭いて、そのまま零れたミルクを拭き取る。

カップに移しかけのミルクは、まだ少し温かかった。
お鍋からそれをすべてうつして。

テーブルに行けば、すっかり冷めてしまったと思われる紅茶を飲んでる景吾がいた。

「ごめん、景吾……お茶冷めちゃったでしょ?入れなおそうか」

「いや、いい。…………ほら、こっち座れ」

景吾の隣にカップを持って座る。
景吾に肩を引き寄せられ、ぴと、とくっついた。

「?景吾?」

「……お前の悲鳴は心臓に悪い」

「え?……あ、もしかして悲鳴聞いて来てくれたの?」

「お前が来るのを待ってたら、悲鳴が聞こえて驚いた。……ったく、心配かけんな」

「……ごめんなさい」

コツン、と景吾の拳が額に当たる。

「……ところで、お前。ミルクに砂糖入れただろ」

「あ、うん」

「甘かった。ミルクはただでさえ甘いんだから、少し控えろよ?」

「えー、ホットミルクにお砂糖入れると美味しいんだよー。飲んでみなよー」

景吾が、カップを取り上げて、一口飲む。
そして、顔をしかめた。

「…………甘い」

「そんなにお砂糖入れてないけどなぁ……景吾、甘いもの平気なくせに、これはダメなの?」

「ミルクはミルクでいいだろ?それ以上甘くする必要はねぇ」

「んー……でも、あったかくて甘いとホッとするじゃん?」

景吾はしばらく思考して、あぁ、と呟いた。

そして降ってくるキス。

ぽかん、とした私に、景吾は言う。

「あったかくて甘いのは、ここにあるからな。俺様にはこれで十分だ」

…………………………なんてセリフを吐くんだ、跡部景吾。
バレンタインデー以来の、すごいセリフに、顔が真っ赤になるのを抑え切れなかった。



NEXT