徐々に近づく、クリスマス。

「………………困った」

これはなかなか手ごわい問題だ。



なる夜の、願い事



12月も半ばを過ぎた。
師走と言われるだけあって、12月はなぜだかやたらと忙しい。
やることは大して増えていないのかもしれないが、年末年始の休みをもぎ取るために、その分の仕事を前倒しでやりくりしている。そのうえ、関係各所が休みに入る前に処理しなければならない仕事などもあるから、それも前倒し―――結果、短期間でやらねばならない仕事が増える。

でも、そんな仕事よりも大事な任務を、私はまだ遂行できていなかった。
すなわち。

景士のサンタクロースへのお願いごと。

それを聞き出せていなかったのだ。

「景士、サンタさんに何頼むの?」

と聞いてみても、

「えへへ、秘密〜」

と言って教えてくれなかったり、

「サンタさんに、お願いのお手紙書こうか?」

とはがきを差し出してみたら、

「もう書いて、フィンランドに出したんだ!」

とあっさりかわされた。
4歳にしてサンタがフィンランドにいるということを知ってるあたり……景吾の息子だ。

…………明日はどんな手を使って成功させようか。

むむむ、とベッドの上で悩んでいたら、ちょうど景吾が部屋に入ってきた。
私の顔を見て、景吾はちょっと肩をすくめた。

「またそんな顔しやがって……どうした、?」

何悩んでるか言ってみろ、と私の隣に座り、ちょい、と頬に触れる。

「景吾……」

「ん?……どうした?」

優しい優しい声音で、景吾が肩を引き寄せてくれる。
近づくぬくもり。感じる恥ずかしさは相変わらずだけど、今は安心感の方が大きい。

…………困った時は、景吾さんに相談してみよう。

「実は……」

ごにょごにょ、と懸案事項を耳打ち。
それを聞いた景吾は、呆れたように1つため息をついた。

「なんだ、そんなことか」

「そんなこと……って言っても、これがなかなか手ごわいんだよ〜……下手な行動出来ないし」

「お前は気を揉みすぎだ。……ま、それなら俺様に任せとけ」

「え?」

「ちょっと行ってくる」

「えぇぇ?」

景吾はすくっと立ち上がると、ドアに向かって歩いて行く。

「景吾さん?」

「大丈夫だ。安心して待ってろ」

そう言うとさっさと部屋を出ていってしまった。
向かった先は、きっと景士の部屋だろう。

大丈夫かな、景吾さんのことだもん、もしかしてネタばらししちゃうんじゃ―――ともやもやしていたら。

数分後、ガチャリ、と音がしてドアが開いた。

「わかったぞ」

「えぇぇ!?」

その答えと、任務遂行までのあまりの速さに二倍ビックリした。

「だから任せとけ、って言っただろ?」

「さ、さすが景吾様……!どうやって聞き出したの??」

「それは……秘密だ」

確実に景士は景吾の血をひいてるな、と思った瞬間。
私はこの時点で聞き出すのをあきらめた。景士でさえ無理だったのだから、景吾から聞き出せるはずがない。

「えーっと……それで景士、何をお願いするって?」

聞くと、景吾はちょっと楽しそうに喉の奥で笑った。

「……?なに?……あ、なんか難しい本でも頼んできたの?」

いや、と小さく頭を振った景吾。さらり、と柔らかな髪の毛が揺れた。
楽しそうに―――嬉しそうに笑った景吾は、ゆっくりと私を引き寄せる。

「アイツが欲しいもんはな―――」

景吾が耳元で小さく囁いたそれを聞いた私は、『やっぱり景士は景吾の子だ』と妙に納得して、嬉しくなってしまった。




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