うぅ……痛い。

私は腰をさすりながら、ベッドから起きた。

女に訪れる月1回のもの。

2日目にあたる今日は、稀に見る痛さです。





シャワールームの棚に置いてある、生理用品。
そろそろ買いに行かなきゃ……もう残り少ない。こればっかりは、自分で買いに行かないと……宮田さんとかに言いにくいし。

「……はぁ」

ため息をついてるときも、ズクンズクン、と鈍い痛みが下腹部を襲っている。
いつもはそんなに痛みは無い方なんだけど……今回は違うみたいだ。時々あるんだよね、何ヶ月かに1回、すごく痛みが重い日。
とにかく、猛烈にお腹と腰が痛い。幸い、なんとか気持ち悪いところまでは行っていないけれど。

もう、何にもしなくても痛い。あぁぁ、誰かこの痛みを止めて……!
そりゃ、薬を飲めば痛みは治まるんだけど……どうにも薬を飲むには抵抗があるんだよね。だって、これ以上痛いときがあるかもしれないし。いざというときに薬効かなかったら……って、こんな思考回路してるから、いつまで経っても痛い思いするんだよ……!

でもまぁ、仮に薬を飲もうと思っても、肝心の薬持ってないしね(遠い目)

今度、薬局に行ったついでに買って来ようかな……。

「……つっ」

あぁぁ……もう、女ってこれだから面倒くさい……ッ!
だけど、泣き言ばっかり言ってられない。こんな憂鬱な気持ちだろうと、部活に出なければ。
しかも、今日は土曜日だ。たくさんやる仕事がある。
それに。

「はぁ……なんで都大会と被るのよ……最悪」

そう、明日は都大会の日。3日目だから、なんとかなるだろうけど……とにかく、嫌なものは嫌だ(泣)
……ま、今日1日我慢すれば……もう、過ぎていくのを待つしかない。

憂鬱な気持ちを振り切るかのように、私は勢いよくドアを開けた。








の様子がおかしい。

朝、部屋に迎えに行ったときもあまり元気が無かったし、登校するときの車の中でもぐったりとしていた。
今日も、いつものように働いているのだが、どうにも動きに精細さを欠いている気がする。

体調でも悪いのかと、じっ、と働くを観察していると―――。

時々、腰を叩いたり、腹部をさすったりしている。

…………ピン、と頭の中に閃くもの。

「…………ちゃん、あの日か〜……」

同じくを見ていたらしく、隣で、忍足がボソリと呟いた。
見たままを口に出す、どうしようもない忍足の頭を、ゴン、と殴る。

「なにすんねん、跡部」

「お前が見たままを口にするからだ」

「しゃあないやん、俺は正直なんや。……可哀相にちゃん、痛いんやろうな〜。姉貴も、よぉ言うとるからな」

……そうか、忍足には姉がいたな……だから、女の事には詳しいんだろう。
反対に、姉がいるにも関わらず鈍い向日は、「なんだ、なんだ?」と聞いてくる。

それを無視しつつ、俺はに視線をやった。
……のことだ、無理をしている気がする。
事実、顔色があまりよくない。……血が足りてないからか?

「あんま、無理させん方がいいで。貧血で倒れることもあるって言うしな」

「……わかってる」

わかったような言い方をする忍足に、ムッとしながらも、俺はをいつも以上に気にかけることにした。






がベンチに座って俯いてるのを見つけたのは、練習も後半に入ってきたところだった。
腹を抱えながら、じっと俯いている。近づく俺にも気付いていない。

「……、平気か?」

はっ、とが慌てて顔を上げる。

「う、うんっ。大丈夫だよっ?なんともないよっ?」

軽く笑いながら、がパタパタと手を振った。
……まぁ、俺に言えねぇのもわかるが。

「……辛いんなら言えよ。痛みが酷いようなら、見学で構わねぇからな」

俺の言葉に、が一瞬詰まって……恐る恐る聞いてきた。

「……も、もしかして……理由わかってる……?」

「……あぁ」

そのとたん、真っ赤になる

「そ、そか……」

ついにまた、俯いてしまった。

「……あのな、どうにもならねぇってのはわかるが……無理だけはするなよ」

「う、うん……あ、ありがと……」

本当に湯気でも出るんじゃねぇかと思うくらい、真っ赤な顔だ。
……見てるこっちまで照れるほど。

「……ちゃん、無理せんほうがえぇで?」

いつの間に来たのか、忍足の野郎がちゃっかりの隣に座る。

「…………も、もしかして侑士も……?」

「俺は姉貴がおるしな。……岳人のヤツは、姉貴おっても気ィついてへんけど」

「そ、そんな気がつかれても恥ずかしいだけだよ……ッ!」

あわわ、とがまた真っ赤になった。

「とにかく。…………辛いんなら、ちゃんと言え。いいな?」

「は、はい……」

真っ赤なの顔。
俺は、頭にぽん、と手を乗っけた。

明日は都大会の日だ。倒れられたら困るしな。



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