キーンコーンカーンコーン…………。

鐘の音を聞いたとたん、私は机に倒れこんだ。

「お、終わった…………」

地獄の3日間が、今、幕を閉じた。



Act.22  しんだ後には、至福の時間



一番後ろの席なので、列全員分の回答を集めて試験監督に渡す。
自分の席に戻って、1度大きく伸びをした。

「ん〜……終わったぁ〜!」

「お疲れさん。どうやった?初試験は」

「…………難しかったよ〜……景吾がヤマ張ってくれたところが、見事に出たから助かったけれども」

「当然だろ。……で、どうだ?10位以内」

「あー…………きっと無理vv」

ペシッ、と頭を叩かれた。

「いったー……だってねぇ、1ヶ月でこの学校の授業についてこれるようになっただけでも、スゴイよ!?」

「そやな〜。ちゃん、よぉ頑張ったわ」

「ほらっ、侑士は褒めてくれた!」

えぇ子えぇ子、と侑士が景吾に殴られた頭を撫でてくれる。
侑士兄ちゃん……ッ!(感激)

「お前ら……!、お前10位以内に入らなかったら……」

「入らなかったら?」

景吾が口を耳元に寄せてくる。

「キス、10回だ(ボソリ)」

「な―――ッ!な―――ぜ―――!!!!!」

侑士には聞こえてなかったらしく、なんやねん、と眉を寄せている。

「入ってなかったら、絶対やってもらうからな。覚悟しとけよ、あーん?」

「なっなっなっ…………あぁぁ、私の答案、誰か書き直してくれないかな!?」

ちゃん、それはちぃっと無理やな……」

「あぁぁぁぁ…………なんか、確実に嫌な予感だよ……」

わからなかった問題多かったし……(泣)
なんとか白紙にはしないように、適当に文字入れまくったけど、間違ってる確率大……!
10位以内に入らなかったら、景吾にキス10回……ッ、そんなの無理……ッ!
ってかキス!?なぜキス!?しかも、なんで10回……ッ!多すぎだよ……ッ!!!(突っ込むとこ違)

「さってと。今日はHRもないし……」

――――――!!!迎えに来たぜ〜〜〜!!」

ドーンッ!と飛びついてきたのは、がっくん。
おっとっと。思わず後ろに倒れそうだったのを、なんとか支える。

「期末考査終わったら、遊びに行くって約束だっただろ!?」

「岳人!ちゃんから、離れっ!」

侑士がべりっと岳人を私から引き剥がして、投げ捨てた(酷)
それでも、ぴょんっと岳人は飛び上がって、キラキラした目でこっちにやってくる。
うっ……がっくんのキラキラお目目パワー全開……ッ!

「なっなっ、!どこ行く!?」

「いた―――!―――!!!」

先ほどのがっくんよろしく、ドーンッと体当たりしてきたのは、ジローちゃん(覚醒モード)
ガバッと満面の笑みで見上げてくる。

「遊びにいくんだろ!?俺、すっげー楽しみにしてたCー!!」

「ジ、ジローちゃん……!」

さん、まだこちらでしたか」

「おう、。行こうぜ」

「……ウス」

「み、みんな…………」

レギュラー陣、勢ぞろい。
教室内からは、キャー!!!!と黄色い声が飛び交っています。
そりゃそうだろうさ……学校内のいい男が勢ぞろいしてるんだもんよ……!気持ちはよくわかる。

、早く早く〜〜〜!!」

だから、私の気持ちもわかって!?
そんなに冷たい視線を投げ飛ばさないで!?
がっくんに手をひっぱられながら、私は引きずられるようにして教室を出た。

………………お願いだから、この前みたいなイジメは止めてね……!?(切実)





学校を出たところで、みんなが急に止まった。

「ところで……どこに行くん?」

侑士の声に、誰もがうーん、と悩む。
…………確かにね……!何にも決めてなかったよね……!

、どこ行きたい?」

ワクワク、と言った感じでジローちゃんが聞いてくる。
……どこって言っても、私、よく知らないからなぁ、この辺。
……………………………………っていうか。
このメンバーで行きたいのは。

カラオケなんですけど。

みんな、その素敵ヴォイスで歌ってくれないかな!?

そしたら、私、一発で昇天できると思うんだけど!

ダメ元覚悟で言ってみるか…………。

「か、カラオケ行きたいなー……なんて」

みんな、ぽけっとこっちを見る。
あっ……ダメですか?ダメでしたか……?
すみません、差し出がましかったですね…………。

と思ったら、ぽん、とみんな手を叩いた(何)

「カラオケえぇな〜。俺、最近行ってへんし……ほな、カラオケにしよか」

「俺、歌うのは結構好きなんだよな」

「俺も、楽器やってますから、音楽嫌いじゃないですし」

「俺も久しぶりだなー、カラオケー。楽Cー!」

「よっしゃ、決定!行くぜ、カラオケ!」

がっくんが駅前に向かって、さっさか歩き出す。

「…………カラオケ?」

1人そう呟いたのは。
われらが跡部景吾様。

「なんやねん、跡部。文句あるんやったら、来ないでもえーで。ちゃんはもらってくけど」

「も、もらわれるの、私!?」

「……別に、イヤだとは言ってねぇだろ、あーん?」

景吾がギラリ、と侑士を睨む。
慌ててその間に割って入った。

「け、景吾も一緒に行く?(ぜひとも諏訪部ヴォイスを……!)」

「……仕方ねぇな、付き合ってやってもいいぜ?」

「押し付けがましいやっちゃなー…………ほな、行くで」

ぞろぞろ8人で歩く姿は、結構圧巻だと思う。
うち2人は、180超す長身(チョタと樺地くん)だし、なにより。

みんな美形ぞろいだからね!

うーわー……みんな振り返ってみてるよ……。
そこのOLさん……(そうは見えないけど)あなたよりも、確実にこの子達、10歳は若いから!
……って言う私も、本来なら4歳も年上だけどね!(泣)

「確かこの辺にカラオケあったよな〜……おっ、あったあった!」

狭い階段があり、そこの前に『カラオケ』の看板が。

「狭ッ……この階段上るのか?」

普通の身長である亮がそういうのだ。
かなり狭いし、天井も低い。下手したら、チョタとか、頭がつっかえるかもしれない。

まぁ、階段上れば狭いなんてこともないだろう。

まず、身軽ながっくんとジローちゃんが先陣を切って乗り込んだ。
次に、亮と侑士。その後にチョタが続いて、樺地くん、景吾、私の順でせまーい階段を上る。

なんか、跡部家の広い階段を毎日上り下りしてるから、圧迫感があるよ……ッ。壁に押しつぶされそうだ……!前まではこんな階段、きっと大丈夫だっただろうに……!

人間の習慣とは、恐ろしい。毎日大きいものを見慣れると、こんな風になっちゃうのね……。
トントン、と階段を上りきると、ロビーはまぁまぁ広かった。
案内役のお姉さんが、美形ぞろいでびっくりしてる。
そして、最後に現れた私を見ると…………ちょっと睨んだ(泣)

「……いらっしゃいませ、お客様8名様でよろしいですか?」

「はい」

「それではご案内いたします」

8人という結構大所帯なので、部屋は大きい。

「空いててよかったな」

「平日の中途半端な時間だからな。8人でカラオケ待ちなんて、激ダサにも程があるぜ」

「確かに……」

私はふと、8人でギチギチになりながらロビーで部屋が空くのを待つ図を、想像してしまった。
……ちょっと、それはそれで笑える。

「さ、てと……何歌う?」

「そうだな……おい長太郎、SMAP歌わねぇか?」

「SMAPですか?いいですよ」

亮とチョタがSMAPの曲を入力。
……うっわ、超楽しみ(ドキドキ)

「そんじゃー俺は……あっ、この新曲入ってる、俺コレにしよっ」

がっくんは新曲を入れたみたいだ。

さっき亮とチョタが入れた、SMAPの曲が流れる。
2人がマイクを持って歌い始めたんだけど。

…………………………………やばい、お姉さん感激のあまり、泣いちゃいそうだよ(え)

うっわー!2人ともいい声してるね!
癒される……!テストで疲れた脳みそに、新しい息吹が吹き込まれていくよ……!

「あー……ダメだ、眠くなってきた…………」

私の隣に座ったジローちゃんが、眠たげに目をこする。
コテン、と寄りかかってきた。

、俺寝る〜、おやすみぃ〜…………zzz」

はやっ!ジローちゃん寝るのはやっ!
まぁいいか。きっとテスト勉強とかしてたんだろうし。いつにも増して眠いんだろうね、ジローちゃん……。
あぁ、もう可愛すぎ……ッ!ふわふわの髪の毛、撫でていいですか……!?(聞く前に手が出てる)
撫で撫で、とジローちゃんの頭をなでた。あぁ……ッ…幸福……vv

「ジローのヤツずりー!!」

がっくんが口を尖らせてこっちを見る。
そ、そんな……!私がずるいんじゃないんだ!?私がおいしいんだよ、このシチュエーション!!

「は、はは……侑士は何か入れた?」

「あぁ……何歌おうか、迷てたところや。ちゃん、なんか一緒に歌うか?」

なっにぃぃぃぃ!
そんな恐れ多い……!侑士のエロヴォイスと共に歌うなんて暴挙、私には出られませんよ……ッ!

「ゆ、侑士はBUMPとか歌って欲しい!」

「BUMP?天体観測くらいしか知らんが」

「それでいいよ〜、歌って歌って」

「ほな、それ入れとくわ」

ゆ、侑士のBUMP……!いい……ッ!
その素敵なボイスで低い声を出しまくって……!(萌)

亮とチョタのSMAPが終わって、がっくんが歌い始める。
保志さんヴォイスもいいね……!高音になると、少し掠れ具合が堪らなくいいね……!(マニアック)
しかし、8人(樺地くんは歌わないの……かな?)だから、曲入れてもすぐに流れこないね。
私は、さっきから黙っている景吾に目を向けた。
なんだか珍しそうに色々見渡している。…………珍しいんだろうよ、景吾がカラオケなんて来るわけないもの。
ってか、景吾とカラオケって、ほんっと似合わない……ッ……!

「景吾は歌わないの?」

「あーん?俺様の美声を聞きてぇのか?」

「んー、ぜひとも聞きたいけど」

そういうと、景吾はちょっと驚いた。

「…………珍しく素直だな」

「まっ、失礼なっ。人間自分の欲望には忠実なんですよ!」

「何の欲望だ、何の。…………そうだな、この間お前と見てたテレビで、出てきたヤツ。あれ、なんて歌手だ?」

「あぁ、Chemistry?」

「それ歌う」

「じゃあ予約入れとくね」

け、景吾のChemistry……!
私、ちょっと、昇天しないでいられる自信がなくなってきた…………!



後にコレだけ言っておこう。


このカラオケ。

至福のときだった……と!!!(ガッツポーズ)


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