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Scene.7 細腰クイーン襲来 「あいつらが、あなたたちを襲った連中なの?」 バルレルと一緒に応接間に近づくと、声が漏れ聞こえてきた。 それに受け答えする声。その声を聞きながら、私とバルレルは応接間に入った。 静かに空いている席に座る。バルレルは近くの壁に身を預けた。 「しかし、まさか王都の中で仕掛けてくるとは思わなかったよ。慢心だったな」 ギブソンさんが、硬い表情で窓の方を見る。 「すいません……僕達のせいで……」 「不可抗力よ。気にしないで」 「さいわい、敵はまだ私たちが気づいたとは思っていない。そこに付け目がある」 「どうすんだい?」 ギブソンさんがふっと笑った。 …………ちょ、ちょっとかっこいいんですけど……! 「外にでて、1つ注意でもしてきてやるか」 へっ?とみんなが口を開ける。 私はみんなの見ていないところで、軽く息を吐いた。 「人の屋敷の前でなにをしてるんだ、とね?」 「そんなことさせたら、先輩に迷惑が!?」 「じゃあ、私はこれからアメルちゃんを連れてお散歩してこようかな」 「裏口からだぞ?」 「フフッ。心得てるわよ。ケイナさんもどう?」 「行って来いよ。俺は旦那の護衛で忙しいからな」 「……うん、わかった」 ミモザ姉さんがいち早く動く。こっちとアメル、ケイナを連れて行く。 「トリス、マグナ、君たちも行くんだ」 2人は顔を見合わせた。彼らは目だけで会話をして、言葉を交わすことなく、頷きあう。 トリスはミモザ姉さんの方へ走り、マグナはこちらに残った。 「俺はここに残る。ネスだけに、先輩の前で格好付けさせるのも面白くないし」 む、とネスが押し黙る。ギブソンさんが軽い笑い声を立てた。 「好きにしろ!」 「うん、好きにする」 「オレも残るぜ。あいつらが村を襲った連中なら、ただじゃおかねぇっ!」 「よすんだ、リューグ。僕達が出て行ったらあいつらの思うつぼじゃないか?」 「今更関係ねェだろ!兄貴はアメルんとこへ行けよ……オレはゴメンだがな!」 「やれやれ、こりゃ、説得するだけ無駄ってヤツだな……マナミはどうする?」 「へ?」 「へ?じゃねーだろ。道は二つに一つだ」 あー……どーしよー……。 いや、ね……こんなことを言うのは不謹慎なんですが……。 あの、金髪サラサラ、細腰色白クイーンのイオスさんに会いたいのよね!? けど……明らかに、私がここに残ったら足手まといだよなぁ……って、どっちにしても戦闘するんだけど(汗) 「テメェはここに残れ」 「は?」 壁際からかけられた声。 「バルレル?」 「……ちょろちょろ俺のいないところで動き回られるより、傍にいたほうが安心なんだよ」 「……おーい、バルレルさん……護衛すべき相手が違くないでしょーか?あんた、マグナの護衛獣でしょーが」 「あ、俺は気にしないで。むしろ、マナミを守ってあげた方がいいと思うし」 「……いいんじゃねぇのか?ここに残れば」 リューグさんの言葉に、再度私は固まる。 いや、残りたいんですけど、なんか、あまりにも意外な方からの助けだったので、驚いてしまったのですよ。 「リューグ……?」 「お前1人ぐらいこっちにいたって、どうもしねぇよ」 ……それは、どう受け取ったらいいのかしら??? それは置いといて、どうやらみんなの意見は固まったらしい。 ……うむ、それでは残らせていただいて、イオスの顔を拝見しよう。 「……連中が動き出したぞ」 「この屋敷のものか?」 男の人にしては少し高めの声が、投げかけられる。ギブソンさんがあくまで穏やかに聞き返した。 「そのとおりだが、何の用事かな?」 「とぼけても無駄だよ。あなたがかくまっているものたちを引き渡してもらいたい」 「素直に引き渡せるなら、最初からかくまったりはしないだろう?」 「なるほど……総員、行動開始!速やかに対象を確保せよ!」 「させるかよぉ!」 リューグの叫び声が、戦いのゴングになった。 まず、リューグが1番近くにいる敵に近づいて、斧で攻撃。鎧を着ているからいいものの……これ、マジメに人命危うくないかしら?(汗) いや……甘いって言うのはわかってるんだけど。戦いに、こーいう感情が邪魔だって言うのもわかってるけど。 …………やっぱり、イヤだよ、誰であろうと血を流すのは。 いい子ちゃんぶる気はない。 けど、現代で戦争とは無縁の日本にいた私にとって、『戦闘』っていうのは、あまりにも非日常的過ぎて、精神的にキツイ。 私は、できる限り敵から1番遠く、みんなの近くにいることにした。1人残されるのもイヤだし。 リューグは怒りに感情をまかせて攻撃しているからか、ほとんど一撃で相手を瀕死の状態にしている。ほぼ1人でつっぱしっているから、1番怪我も多い。しかも、もうすぐ召喚師の間合い。あの傷じゃ、一発で気絶してしまう。 「リューグッ!ストップ!!」 そう言ってから、あぁ、ストップは英語だから通じない、となぜか頭で冷静に考える自分、そして感情のままに動き出そうとする自分のギャップに気づいた。 召喚師がリューグに近づき、自分の間合いに入れ、何かを呟く。すぐに身につけた召喚石が輝き始めた。 おいおいおい……マジメにシャレにならないって!! リューグ、あんたはMDFメチャクチャ低いんだから!!! 私は、バルレルの横をすり抜け、リューグの隣に行って、ぐいっと手をひっぱった。 「リューグ、危ないッ!」 「なにしやが……っ!?」 いきなり手をひっぱられたリューグは、私を怒鳴りつけようとしたが、すぐに自分の身に降りかかる事態を把握すると……ぎゅっと私を抱えて召喚師に背を向けた。 「って、私を守ってどうするのよ!(汗)アンタが危ないって……!」 そこでリューグの腕の力がさらに強まり、私は何も言えなくなった。 肩越しに、紫の光が見える。召喚されたプチデビルが生意気そうに笑ったのが見えた。 思わずぎゅっと目を瞑る。 そしてすぐにビクンッとリューグの体が震えた。 「ッ……リューグ!?ちょっ……大丈夫!?」 気絶してもまさか消えはしないので、きつく締められた腕を振り解こうともがく。 それでも解けない。…………もしかして、このまま気を失ってる!? 「リューグッ、平気!?ごめん、私が来たばっかりに……うわあぁぁぁん!リューグ―――!!!生きて―――!!!」 「……っせぇな、耳元でぎゃあぎゃあ騒ぐな……」 意外にもしっかりした声。リューグは腕をほどき、サッと召喚師に近づくと、ガスッとキツイ一撃をお見舞いした。召喚師は一撃で目を回す。 「…………あれ?……元気?」 慌てて近寄ってきたマグナたちが、リューグと私を見て不思議そうに目を丸くする。 「…………なんともないのか?」 「あぁ。なんだか知らねぇけどな」 「……確かに命中したように見えたんだが……」 「衝撃はあったぜ?でも、痛みはねぇ。まだイケる」 リューグが斧の柄を握りなおす。私は、ポケットからFエイドを出すと、リューグの傷ついている腕にペタリと貼った。 「…………1人で突っ走らないように」 コクリ、とリューグは1つ頷くと、今度はじわりじわりと慎重に歩みを進めるようになった。バルレルやネス、ギブソンさんたちが間接攻撃、召喚術をしては、直接攻撃のマグナ、フォルテ、リューグが最後にしとめる。 ただ1人残ったイオスは、私たち全員を相手に槍で対抗する。リーチが長い為か、近くに寄らせてもらえず、フォルテやリューグは舌打ちをしていた。 「……誤算だったな……これほどの召喚師がついていたとは……」 イオスがバルレルの槍を跳ね返しながら、呟いたのが、私の耳に届いた。 そして、同じように聞いたリューグが目を吊り上げて怒鳴る。 「なにをすかしてやがる、テメエッ!」 リューグが襲い掛かろうと近寄る先に槍の先端を突き出し、リューグはたまらず動きを止めた。 「どうにも、これでは分が悪いな……」 そうイオスが呟いたと同時に、数発の銃声があたりに響いた。 「気をつけろ!そいつはロレイラルの機械兵士だ!」 ネスの声。彼の声に、なぜか無駄な緊張が含まれているように聞こえたのは、私の気のせい? ゼルフィルドがイオスに近づく。一言二言会話すると、イオスはすぐに兵士たちを撤退させた。ザッと消え去る黒い人影たち。 最後、ちらりとイオスの赤紫の瞳が私に向いたので、一瞬身をすくめた。 NEXT |