「ただいま〜……」

明かりが消えたモーリン邸に、そろそろと入る。
みんな、お祭りに行っちゃったのかな?
だったら、お祭り会場に行った方がみんなに会える。
お祭りの日に、1人で留守番とか、ちょっと……ねぇ。

とりあえず、踵を返して街へ向かうことにした。

すると。

「…………?」

暗闇からの声。
一瞬ビックリしたけど、この声は。

「シャムロックさん?」

暗い廊下から現れた、白く輝く騎士姿のシャムロックさん。

「今戻ってきたのか?」

「はい、ちょっと知り合いの所に行ってたら遅くなって……シャムロックさん、お祭り行かなかったんですか?」

「ちょっと考え事をしていたのでね。…………はこれから行くのかい?」

「はい。……よかったら、一緒に行きませんか?」

「もちろん、私でよければ同行させてもらうよ。…………1人では危ないだろうしね」

「ははは、私、そんなに子どもに見えますか?」

「いや、そういうわけではなくて……女性1人では危ないだろう?」

女性1人って…………。
キョロキョロとあたりを見回しても……誰もいないってコトは。

「コラコラ、のことだよ」

「あー、私……私ぃ!?……やっだなぁ、シャムロックさんってば褒めるの上手いんですから!あはは、じゃ、一緒に行きましょう♪」

「…………本当のことなんだが」

苦笑しながら、そのまま玄関に出てきてくれたんだけど。

「…………もしかして、鎧のまま行く……んですよねぇ」

白い鎧をつけたままのシャムロックさん。
まぁ、彼の律儀さを考えたら、仕方ないかぁ……本当は、鎧とか騎士とか抜きにしたほうが、お祭りは楽しいと思うんだけどなぁ。

「あぁ……だが、そうだな……折角の祭りで鎧も……、少し待っててくれるかい?鎧を置いてくるから」

「!!!待ってます!」

うわぁぁぁぁ、シャムロックさんが鎧脱いでくれる!?ゲーム中じゃ見られない、ラフな格好ですか〜〜〜!?

本当に少しだけ私を待たせて、出てきたシャムロックさんは、ゴソッと鎧やらガードやらを取った、軽装。
うっひぇ〜〜〜……鎧つけてるときは、あんまり体つきとかわからないけど……思った以上にいい体してますねぇ(変態)

「待たせたね。……では、行こうか」

「はい!!!」

うふふ……これで、祭り会場の女の子の嫉妬の目を頂戴すること間違いなし!(変な喜び方)




「うっわぁ〜……盛り上がってますねぇ……人がいっぱいだ」

「………………」

「シャムロックさん?」

「あ、いや、すまない……どうもこういう会場は、警備をしていることのほうが多くてね……しかし、すごい人だな……」

「えぇ、本当に!……あっ、あっちにりんご飴〜vv」

あま〜い香りのする方向には、祭りの定番りんご飴!

「あはは〜、面白〜い!ヨーヨーも売ってる!ぬいぐるみも〜!!」

ちょこまかちょこまかと、人の間を縫うように移動して、色々な店をひやかす。
だけど、私とは反対に、シャムロックさんは、大きい体をしているから、人の間を移動するのは苦手みたいだ。
今も、前にいるカップルをどう抜けようか迷ってる。
なんだか、その困っている顔が、いつものカチコチ騎士さんじゃなくて、すご〜く可愛く見えた。

「シャムロックさん、こっちこっち!」

強引に腕を抜け出させて、ぐいっとひっぱる。
カップルを上手く避けて、シャムロックさんが私の方へ。

「す、すまない……どうも、人を避けるのが得意ではなくて……移動が遅くて悪いね」

「いいんですよ、そんなこと〜…………あっ!」

ドーン……パラパラパラ…………。

「花火か……」

ドーン……ッ……ドドンッ……。

「キレイですねぇ〜……」

「あぁ…………今日は、と祭りに来れてよかったよ」

「え?」

と一緒じゃなければ、祭りになんて来なかっただろうしね。……ありがとう」

…………………………ボンッ。

!?ど、どうしたんだい!?顔が真っ赤だが……!」

「い、いえ、な、なななんでもないです!」

…………もうお分かりだろう。

私は、シャムロックさんの笑顔にノックアウトされてしまったのです。

花火よりも輝いてる、その笑顔は。


犯罪級ですよ、シャムロックさん!!!!



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