「さぁぁぁぁん!!!」 その声を聞くなり、のんびり歩いていた足を、猛ダッシュに切り替えた。 不吉だ。 今の声は、空耳ということにして、早く帰ってカイナにお払いしてもらおう!!! 「お久しぶりですねぇ♪」 「うわぁっ!?」 不意に隣から聞こえた声に、ビックリして立ち止まる。 「おや、もう追いかけっこは終わりですか?私、追いかけるの嫌いじゃないんですよvv」 「好きも嫌いもあるかっ!な、なななな、なんでレイムがここに……!」 「嫌ですねぇ、さんがいるところに、私ありvvですよ♪」 「いや〜〜〜〜〜!!!爽やかにストーカー宣言しないでぇぇぇ!!」 表面爽やかに微笑みながら、レイムが言う言葉は悪質他ならない。 「さん、今日はお祭りですよ♪一緒に行きましょう、さぁ!!!」 「誘い口調で、強引に腕をつかんでるのはなぜ!?あぁぁぁぁ〜〜………」 ズルズルと引きずられるように、私はレイムに祭り会場へと連行された…………。 「…………なんで私は今、レイムと仲良く綿菓子食べてるのよ……」 「あ、さん、あっちにはキャンディ売ってますよ」 「そして、なんでレイムはこんなに楽しそうなんだろう……」 「さぁんvv」 「だぁぁっ!わかった!わかった!今行きますって!」 だから、人の名前、大声でハートつけまくって呼ぶのやめてもらえませんか!?(泣) 「はい、どうぞvv」 渡されたキャンディをぺろっと甞めて、思わずレイムに聞いた。 「…………レイム、そういえば、私……この間、デグレア軍にさらわれたのだけど」 「あ、そうみたいですねぇvv」 「そうみたいですねぇ……って、あんた他人事のように……で。私、またつかまるわけには行かないから、この辺でレイムとはおさらばしたいのだけれど」 「大丈夫ですよ、今日は、さんのことを捕まえる気はありませんから」 さらっとそう言って、レイムはまた違う食べ物を買ってきてくれる。 キャンディを右手に、綿菓子とヨーヨーを左手に持った私。 一瞬、何て言ったのか理解できなくて、ぺろりとキャンディを1舐めした。 「……って、なんで?なんで、今日は捕まえないの?」 レイムは少し考えるように黙った後、くすり、と笑った。 ……いつもの、笑い方じゃなくて、少し寂しそうに。 だけど、一瞬で、いつもの変態スマイル(失礼)に早代わり。 「ふふ、だって今日はお祭りですよ?……さんと私の、初めてのデート記念日じゃありませんかvvそんな良い思い出の日に、悪い思い出なんか1個も作らせたくないですからねvv…………あ、ほら、さん、たこ焼きはどうです?」 …………一瞬でも、なにか違う言葉を期待した私が馬鹿だった。 はぁ〜……と大きくため息をついて、やけくそ気味に綿菓子を食べた。 レイムが嬉しそうに笑う。 「…………何?」 「いえ……さんが私の買った綿菓子を食べてるなぁ、と思って」 あぁ、嬉しいです! そう叫ぶ顔が、あまりにもきわどかったから、思わず身を引いた。 本当に、黙ってれば美形さんなのに、どうしてコイツは……! 「あっ、さん、花火ですよ、花火!」 「へっ?」 ひゅるるる〜〜〜……ドーン! 夜空に浮かぶ色とりどりの花。 「綺麗ですねぇ……」 「ホント…………」 咲いてはすぐに散っていく、儚い花は、一瞬だけの閃光を私たちに残していく。 「さん」 「ん?」 「私は……今日、さんとこんなに近くで、一緒に花火を見れたことが……とても、嬉しいですよ」 発言はいつもの変態みたいなことだったんだけど。 あまりにもその顔が柔らかな笑みをたたえていたから。 不覚にも、見惚れてしまった。 NEXT |