Scene.31 悲しみへの道標
翌朝、体勢を整えた私たちは、すぐさまトライドラへ向かった。 かなりの急ぎ足で―――正直、治りかけの足にはちょっときついくらい。でも、そんなことを言っている場合じゃない。 みんながみんな、どこかしら怪我をしているし、それを直していたアメルやモーリンの疲労も半端ではない。 それでも、急がなきゃならないこの状況。みんなが我慢しているのに、私だけがどうして泣き言が言えるだろう。 必死になって、前を行くシャムロックさんたちについて行った。 ふと、リューグが隣にやってくる。 「………………オイ、大丈夫か」 「うん?」 「…………足、それに腕もまだ治ってねェだろ、お前」 そういえば、あの騒ぎの後、真っ先に私の怪我の具合を見てくれたのはリューグだった。 …………まぁ、あの時は色々無茶して、傷口が開いたりとかしてたから、酷いものに見えたんだろう。 「大丈夫、みんなのに比べれば、なんてことないよ」 「嘘付け。傷口、もろに開いてるじゃねェか。テメェ、人の治療ばっかして、自分の治療してねェだろ」 「んー…………落ち着いたら、ちゃんと治療するから」 曖昧な笑顔で笑うと、リューグはフイ、と顔をそらす。 「…………もしも、この先戦闘が起こったとしても、お前は前に出なくていいからな」 「はーい。リューグたちにお任せするよ」 リューグは、何も答えずに、私の頭をくしゃりと1つ撫でると、前を行くシャムロックさんに合わせて歩き出した。途端に離れていく背中。 ………………トライドラでは、シャムロックさんにとって、辛い出来事が待っているだろう。 行かなくてはならないのはわかっているけど……やっぱり、未来を知っている上で、それを言わないのは、とても悪いことのような気がする。 ここで私が未来を言ったとしたら、どうなるのだろう? みんなは、トライドラへ行くのをやめるだろうか。 鬼に侵された都市として、派閥に協力を求めるだろうか。 ………………どちらにしろ、それは私が知っている『未来』とは大きく異なる結果を残すこととなるだろう。 それがいいのか悪いのかわからない。 知っている未来を変えることが、よいことなのか。 それがもしも、悪い結果を残すことになったら―――。 私が生きてるこの世界では、ゲームのように、リセットはできない。 悪い結果になったからといって、やり直しができるわけじゃないのだ。 私は、なまじ、全てが終わった後のハッピーエンドを知っているから、未来について何も語ることができない。 …………だから、結局、私は誰にも何も告げずに、みんなと共に走るしかないのだ。 この先にある、ハッピーエンドを信じて。 ふぅ、と大きな息を吐いて、私はグッと足に力を込めて、歩みを速めた。 トライドラへついたのは、お昼を大きく回ったころだった。 でも、本当なら丸1日はかかる距離を、こんな短時間で来たのだ。かなりの急ぎ足だったので、もう足は極限まで疲れていた。 ミニスやレシィなどは、途中から、ネスティに呼び出してもらったゴレムに交代で乗っていた。安定性は悪いけど、なかなか早いんだ、これが。私も、1回乗せてもらった。でも、やっぱり体重の差か……ゴレムが少し歩くのが遅くなったから、すぐに降りたけど。 それでも、こんなに苦労してたどり着いたトライドラは―――なんというか、元気のない街だった。 街自体が閑散としているせいもあるだろうけど、ポツリポツリと見える人の表情は、みんな暗い。 静かに、息を潜めてひっそりと暮している。そんな形容詞が似合うほど、聖王国の楯、と呼ばれるトライドラは静かだった。 領主に謁見を申し込んでくる、とシャムロックさんが離れた瞬間、バルレルがケッ、と毒づいた。 「…………辛気くせェ街だな……どいつもこいつ覇気がねェッ……騎士の街っていうからには、もっと荒々しいもんだと思ってたのによ……」 「バルレル?」 マグナに諌められるが、バルレルは口を止めることなくしゃべった。 「…………感情の起伏ってもんが、全然伝わってこねェ。なーんか、嫌な感じだぜェ?」 「た、確かに、ボクも嫌な感じがします……し、失礼だとは思ってるんですが……」 レシィもか……おそるべし、野生のカン。 でも、やっぱりここの人たちには……目に覇気がない。 疲れきった、濁った目が、力なくあたりを見ているだけ。 「…………気をつけたほうが良さそうですね」 ロッカの声に、うん、と頷こうとしたところで、シャムロックさんが駆け寄ってくるのが見えた。 どうやら、謁見の許可が取れたみたいだ。 私たちは、ゾロゾロと、閑散とした街の中を進んで行った。 城に入ってからも、どこか閑散とした様子は変わらなかった。 いや、別に楽隊でお出迎えしろ、って言うつもりは毛頭ありませんが。 でもね。 静か〜なお城って…………すごく不気味なんだよね。 無駄に通路とか広いからさ…………声とかも響くし。 「…………なぁ、シャムロック。お前の報告を聞いたにしては、あんまり城に動きがねーな?」 ほら。今のフォルテの声も、そんな大した音量じゃないのに、色々反響して、かなりの大きさになってる。 「リゴールさまは、皆さんからお話を聞いた上で、全軍に指示を与えるつもりなのです。城には一般のものたちも多く出入りしています。下手な噂はそれこそ混乱を招きますし」 「これだけ静かなのにか?ふぃー。なんとも用心深いこったなぁ」 ホント、静か。 レシィは、なにか感じるものがあるのか、ずぅっとトリスの後ろにくっついている。 ドルルルルルルル、と楽隊が音楽を鳴らした。 ハッとして私は玉座の方を見る。 渋い……渋すぎるオジサマ(オジサンにあらず)が、ゆっくりとした動作で玉座に座るのが見えた。 みんなが控えるのを見て、私も見習う。 「遠路よりご苦労だった。私がトライドラの領主、リゴールだ。お前たちのことは、シャムロックより報告を受けておる。陥落したローウェン砦より、命がけでこの者を救い出したとか……重ねて礼を言うぞ。ご苦労であった」 「領主様に申し上げます。かのものたちは、われらが交戦した、デグレアの特務部隊、黒の旅団なるものたちに、以前より狙われていたとのことであります」 リゴールさんの眉が、ピクンと跳ね上がった。 とたん、私の背筋をつつつーっと冷たいものが伝い落ちた。 なんか今…………確実に、リゴールさんの中の違うものが反応した気がする。 思わず、隣にいたアメルの手を握り締めた。 きょとん、と私のほうをみるアメル。 「黒の旅団のルヴァイドなるデグレア騎士は、ここに控えるこの娘、アメルの身柄を欲し、レルムの村に焼き討ちをかけました」 「この少女は民たちの間で噂に上っていた、癒しの奇跡を用いるあの聖女なのです」 「なんと……!アメルとやら、それは本当なのか?」 アメルは、私から顔をそらして…………そして、軽く手を握り返してくれながら、肯定した。 「彼らの聞き及ぶところ、デグレアは今回の侵攻に勝利するため、彼女を欲しております。おそらくは、その奇跡の力が目当てかと。…………願わくば、彼らに我がトライドラより、相応の庇護をおあたえになられますことを……」 深々と頭を垂れた、シャムロックさん。 その瞬間…………私は見てしまった。 リゴールさんの、唇の端が、ゆっくりと歪められていくのを。 「…………………領主様?」 壊れたように、笑い出すリゴールさん。 「それが本当ならば、またしても重ねて礼を言わなくてはなぁ?なにしろ……ワタクシは労せずして、あのお方の望む『鍵』を手に入れたことになるのですからねぇ」 玉座の影から出てきたのは…………青白い肌の、悪魔長男坊。 顎にへんてこなものをくっつけている、キュラーだ。 「てめぇ……いったい何者だ!?」 「ワタクシはキュラー、貴公たちのことは、同輩より耳にしております。スルゼン砦で、ガレアノを倒し、ローウェン砦ではビーニャを退けたご活躍とのコト」 「チッ!不愉快の原因はコイツかよっ!?」 「あわわわ……いやな感じがしますぅ〜!」 「……ってことはアレだ。お前さんもデグレアの手先ってわけかい」 レナードさんの言葉に、キュラーは恭しく頭を下げた。 「仰せのとおりで。しかし、ワタクシはあの2人よりいささか勤勉でしてな……貴公らがおいでになるまでに、命じられた仕事を終えております。ほら……」 ものすごい光が、リゴールさんを覆ったかと思うと………一瞬にして、ワケのわからない……まさしく『バケモノ』に……変わった。 レシィが、ひっと息を飲んだのがわかった。 モーリンが、1歩後ろに下がった。 ルウが悲鳴を上げた。 ………………おぞましい、姿だった。 「領主様!?リゴールさまぁぁぁ!!!」 ガタガタ、と自分の足が震えるのがわかる。 ――――――怖い……! 一瞬にして、人がバケモノに変わる。 そのおぞましさは、なににも変えがたい。 「しゃァァむろォォォック!欲しい、欲しいぞォ!貴様の肉がァ、血がぁ魂がァ!!!」 もう、あの渋かった声も、色々な声と混ざってよく聞き取れない。 シャムロックさんが、崩れ落ちるように、膝をついた。 「あ、あぁぁぁ……嘘だ……嘘だぁ!」 認めたくない現実のために、頭を抱え、否定しようと目を瞑っているシャムロックさん。 無防備なそこへ、キュラーが召喚術を叩き込もうとしていた。 「シャムロックさん!!!」 私は、駆け出すと膝をついたままのシャムロックさんに近づいた。 「なっ!?……!?」 驚き、そしてキュラーの行動に気づいて、私を突き飛ばそうとするシャムロックさんの腕をそのままつかんで、ぎゅっと目を瞑る。 やっぱり、衝撃はあるけど、痛みはない。 ゆっくりと目を開いて、手足の無事を確認した。 「…………どういう、ことだ……?」 「そんなことは、今はどうでもいいんです!…………シャムロックさん、ちゃんと前を見て!あれは現実なんです……ッ。変えられない、現実なんです……ッ」 シャムロックさんは、じぃっと私を見てから、リゴールさんを……リゴールさんだったものを見つめた。 「………………聞いて、いいか?」 「……なん、ですか……?」 「…………あれは、本当に、リゴール様なのだよな?嘘でもなく、お芝居でもなく……現実なのだな?」 認めたくない。否定したい。 そんな気持ちが、まだシャムロックさんの中にあるんだ。 私は、出てきそうな涙を堪えて、頷いた。 「そうか…………ならば、戦わねば、なるまい……ッ」 チャキリ、と剣を構え、立ち上がって近くにいる鬼神兵に切りかかっていった。 なんとか現実を見てくれたシャムロックさんを見て、安堵の息をついたところで、後ろの方からリューグの怒鳴り声が聞こえてきた。 「オイ、!前に出るなってあれほど……!」 「しょ、しょーがないじゃん!シャムロックさん、危なかったんだもん!」 「だからって、自分の身も考えずに衝動で体を動かす癖、なんとかしろ!」 あぁぁぁ……リューグ、怒ってる、怒ってるよぉぉぉぉ。 「まったく、君はバカか!?」 「ね、ねねねね、ネスティまで……」 「いいから、早く後ろへ戻れ!いくら、君が召喚術が効かないっていったって、物理攻撃には弱いんだ!」 「…………召喚術が、効かないって、どういうことだい?」 「そんなことって、あるの?」 あー……モーリンや、ルウは私の特殊能力、知らなかったのか。 ビビるよねぇ、ただの人間が、召喚術無効にするなんて。 「後で、説明す………」 ククク、と私の声をさえぎったのは、他でもないキュラーだった。 「………召喚術が、効かない娘…………あなた、でしたか…………」 嬉しそうに……嬉しそうに、笑っている。 「本当に、貴公たちには礼を言わなければなりませんねぇ?あなたは、『鍵』だけでなく、この方まで連れてきてくださった!!!」 ………………この、方? 私の、こと? 「ルヴァイドにつかまったと聞いていましたが……この分だと、逃げ出したようですね。……ククク、まぁ、いいでしょう。私があなたを連れて帰れば、それで済むことなのですから」 「どういうことだ!?テメェら、アメルだけでなく、をどうするつもりだ!?」 フォルテの問いに、キュラーは答えることなく、召喚術を使ってくる。 だーかーら!効かないって!!! フォルテに抱きついて、一緒に召喚術を受ける。 「ととと……危ねー……、ありがとな。…………今度抱きついてきてもらうときは、戦いの最中じゃないことを祈るぜ」 ふざけたことをいってるけど、フォルテの顔はかなりマジ。 どうやら、かなりご立腹みたいだ。 「だぁぁぁぁぁ!!!さっさと、戻ってきやがれ、!!!」 あ、バルレルが切れてる…………。 私が、しぶしぶ後ろへ戻ると、バルレルはすぐに私の頭を1つはたき、すぐさま鬼神兵にかかっていった。 私はというと……殴られた頭をさすりながら、怪我をしてる人たちを、片っ端から治療していく。 ドサッ、と人が倒れる音がした。 倒れこんだのは、マグナ。大きな剣を地面に転がして、尻餅をついていた。 「マグナ、大丈夫!?」 「へへっ、ちょっとドジっちゃった…………」 腕にザックリ大きな傷。 私は、トリスたちから分けてもらったキッカの実をマグナに渡して、簡単に止血をして布で腕を巻いた。 「ありがと。……もーちょいだから、頑張ろうな?」 頑張るのは、マグナの方なのに。 それでも私は、うん、と頷いて、また走る。 1人、また1人と鬼神兵がいなくなり……最後に残ったのは、キュラーと…………リゴールさん。 まさしく、鬼神のように髪を振り乱し、襲い掛かってくるリゴールさん。その攻撃をかわすのだけで精いっぱいみたいだ。 リゴールさんの剣を振るうその姿は…………もはや、人のものではない。 「……!キュラー!!!今すぐ、領主様たちを元に戻しなさい!」 トリスの言葉に、キュラは嘲笑で返す。 「ククク……お戯れを。そんなことができるとお思いとは………」 そう言って、召喚術をさらに発動させようとする。 私は、やっぱり傍観することが出来ずに前へ飛び出して、召喚術発動圏内にいる人たちの近くに行った。 オニマルはさっきと同じ攻撃をするけど、やっぱり衝撃もなく。 無効になったことに安堵して、キュラーを見れば、やっぱり嬉しそうな笑顔。 ヒィィィィ!!!な、なんか、気持ちワルイぞぉぉぉぉぉ!? 「せめて……せめて貴様だけは倒す!!!」 踊りかかったシャムロックさんを、直撃する光。 「いつまで遊んでるつもりだ、キュラーよ」 いったいどこから現れたのか。 キュラーに非常に似通った肌の色の持ち主、ガレアノが当然のように立っていた。 「ルヴァイドのヤツがお呼びだ。さっさと戻らねば、あのお方に迷惑がかかる。こやつらの始末など、いつでもできるさ。カカカ……」 「なるほど、今は貴公とワタクシが、忠実な兵士へと造り替えた、トライドラの者たちを連れて行くことが先決でしょうな。しかし…………」 「しかし、なんだ?」 「…………そこに、かの捜し求めていたお方がおられるので、ワタクシとしても、この機会は逃したくないのですよ」 ガレアノがこちらをみて、大きく瞳を開いた。 「この娘……イヤ、この方がか……?」 だから、なんなのよ、この方、って!!! 私、あいにく悪魔の知り合いは2人しかしらないのよ!!! 「えぇ……こんな機会、滅多にあるものではないでしょう?」 「…………確かに、またとない機会だが…………ここではあの方を傷つけてしまうことにもなりかねん」 「そうですね……では、やはり、まずはトライドラの者たちを連れて行くことにしましょう」 キュラーとガレアノは私のほうを見ると、丁寧に一礼した。 「それでは、皆様。またいずれお目にかかりましょう。それまで、どうぞ息災で」 あっという間に、消える2人。 残されたのは、傷ついたリゴールさんだけだった。 「……しゃむ……ろく……よ……」 落ち着いた、その声音に、シャムロックさんが駆け出した。 「領主様!?」 「すま……ぬ……わしわ、わしは……」 「しっかりなさいませ!リゴールさま!?」 「カイナ、貴方の力で何とか元に戻してやれないの!?」 トリスの悲鳴にも、カイナは力なく首を振るだけだった。 なにも、できない。 リゴールさんを助けるには、命を絶つほかにしか、救う方法はない。 それは、わかってるつもりだった。 でも。 もう、人が死ぬのは見たくなかった。 「…………下がっていてください、みなさん」 「それしかねーよな、シャムロック。お前がケジメをつけるしか……」 トリスが、レシィを抱きしめた。 ルウとアメルが抱き合った。 モーリンがミニスを抱きしめ―――他のみんなが目をそらした。 私が走り出そうとするのを、バルレルが引きとめ、マグナに抱きしめられた。 それでも、シャムロックさんが剣を構える音が聞こえた。 ダメだよ。ダメだよ、それじゃ。 そんなの……ッ…… シャムロックさんが、辛すぎる!!! 「ダメ…………ッ!」 私の声は、届くことなく。 「…………リゴールさま……お許しください!」 一言の謝罪。 一筋のきらめき。 シャムロックさんの剣が、リゴールさんに向けて―――振り下ろされた。 ザシュッ!!! 「いやあぁぁぁ!!!」 考えるより先に、身体が動いた。 マグナの腕を振り切って、飛び出す。 リゴールさんに近寄って、赤だか青だかわからない液体に服が汚れるのも構わず、手を握り締めた。 「…………ッ死なないで!鬼なんかに負けないで!」 もう、レルムの村の時みたいに、人が死ぬのをみているのはイヤだ! なんとか……なんとか、できないか。 私に出来ることは、なにかないか。 なにか、なにか―――!!! 必死で解決策を考えるけど―――頭の中は真っ白で、なにもいい案は浮かんでこない。 パニックで涙がボロボロ溢れてくる。 そっと…………そっと、リゴールさんが手を握り返してきた。 「…………娘…………やさし……い、娘よ…………あり、がとう……」 異形の姿になって、手も、人のものではない。 でも、その心は―――優しい、人のものだった。 「この……ように愚か…な……私の死を……悲しんでくれる……そなたが、いるだけで……私……は、喜んで……逝ける……ぞ……」 笑ったのだろうか。 少しだけ、表情が崩れる。 せめて…………ッ…… せめて、この瞬間だけ。 最期の、瞬間だけ。 この人を、元の姿に戻してあげたい…………ッ。 「リゴールさ………ッ」 私に召喚術を無効にする力が宿っているのなら。 この瞬間だけ、この人に力の一部を。 この人の中に入った、鬼を消し去る力を――ー! カアァァァア!!! 私の想いに賛同するように、 眩しい、光。 それは、リゴールさんを包み込み―――。 一瞬だけ―――。 本当に、一瞬だけ、元の姿に戻ったリゴールさんは。 ゆっくりと微笑んで。 「感謝……する……ぞ……」 たった1言言い残して、その姿を―――塵へ変えた。 NEXT |