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Scene.15 to 16  明かりの決意



ガバッ!!!

皆、寝静まった真夜中。バルレルは1人飛び起きた。
すぐに隣ですやすやと規則正しく寝息を立てる少女を確認し、安堵の息をつく。

そろりと、隣の娘が起きないよう、最大限の注意を払ってベッドから抜け出した。

月明かりがさす窓へ向かう。
カーテンをさらりと分けて、窓の外に目をやる。
大きな満月が、照明もいらないほどに部屋の中を照らし出す。

(…………シャレにならねェ、夢だな……)

バルレルは1人、誰ともなしに毒づいた。
ん……と、うめき声が聞こえて、バルレルの心臓が飛び跳ねる。

「バルレル……寒……」

それが、ほとんど寝言に近い言葉であることに安堵し、そっと近寄って毛布を肩まで引き上げてやった。それを感じ取ったのか、むにゃむにゃと、感謝の言葉を言う。
バルレルは、ふっと笑ってまた、窓辺に近づいた。

―――悪夢だった。

今、月明かりに照らされて眠る娘が、倒れている夢。
真っ赤な血だまりの中に倒れて、ピクリとも動かない。
助けたいのに、俺は自分の手を伸ばすことすら出来なくて。

…………考えるだけで、寒気がする。

この娘は。

この娘にだけは。

―――傷ついて欲しくないから。

悪魔が聞いて呆れる。
でも、これだけは偽りのない、純粋な気持ち。
…………たとえ、天使にだって、負けはしない。

カーテンを閉め、静かにベッドの中にもぐりこむ。
隣にぬくもりを見つけたのが嬉しかったのか、バルレルの腕に抱きつく娘。
何か楽しい夢でも見ているのだろう、軽く結ばれた口元が緩んでいる。

毛布を再度かけなおし、つかまれたままの腕をそっと外して。
今度は、軽く抱きしめた。
起きていたら暴れるだろうに、今は抵抗もせず、すやすやとおとなしく眠る娘。

ギリ……と唇を噛む。

「…………絶対、失いやしねェ……」

そう、誓いを立てる。
なのに、襲い掛かってくるこの不安感は何だ?
……なにか、とてつもないものが背後にいる気がする。
恐怖がないといったら嘘になる。
だが、それ以上に。
この娘といたい。
この娘を守りたい。

彼は、この"ニンゲン"に対する感情の正体に、とうに気がついていた。





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