Scene.12 to 13  夜の晩に



カチャ……パタン。

バルレルは、細心の注意を払って、ドアを開ける音を最小限に抑えた。
真っ暗だが、窓から差し込む月明かりが、ベッドの膨らみを映し出している。
そっと近づくと、すやすやと娘が熟睡していた。

そのあまりの幸せそうな顔に、一瞬気が引けるが―――思い直して、バルレルはゆさゆさと娘の体を揺らす。

「おい……おい、起きろ、

しばらくバルレルはの体を揺らし続ける。
むぅ?と不機嫌そうな声がして、ゆっくりと目が開いた。

「………………本日はまだ起きる予定ではございません。またのお越しを

…………意味不明な言葉だが、寝ぼけたとは思えないほどスッパリキッパリと述べて、彼女はまた寝息を立てる。
バルレルは、あっけにとられて思わず手を止めてしまうが、すぐにまた先ほどと同じ作業を開始した。

「……おい、……起きろ……!」

「う〜……んぁ?…………バル……レル?」

眠くてろれつが回らないのだろう。先ほどの完璧な言い回しとは違って、どこか聞き取りにくい言葉である。
だが、バルレルは、その声で彼女がやっと意識を少しだけ目覚めさせることができたと安心する。

「やぁっと、目が覚めたか」

「……なに〜?……まだ、真っ暗じゃない」

「当たり前だ。真夜中だからな」

しばらく、彼女は目をうっすらと開けてバルレルを見ていたが、ふいにきょとんとして目を見開いた。

「………………あれ?……なんでバルレルがここにいるの?

「………………もっとはやくそっちに突っ込めよ」

「む……でも、なんで?……はっ!まさか、バルレル……私にぐらっと来て……」

来るわけねェだろうが!…………あいつら、もう我慢ならねェんだよ!」

「………………あいつら?」

バルレルは、さもイライラしているかのように、あ〜〜〜!!!と髪の毛をぐしゃぐしゃにする。慌ててはしーっと言った。今は、真夜中だ。

「あのニンゲンども!俺のことを蹴っ飛ばすわ、毛布は剥ぎ取るわ……!大体、狭すぎるんだよ!あきらかに2人用の部屋に、4人も押し込められちゃ!……だから、ここで寝かせろ!」

がよくよく目を凝らしてみれば、なるほど、バルレルは脇に枕を、手には毛布を引きずっている。

「…………しょーがないなぁ。じゃ、どーする?床でいい?」

「…………床以外にどこがあるんだよ」

「いや、ベッド使いたいなら、半分こもできるじゃん?広いし、このベッド」

「……………………………………オマエ……」

「ん?」

「オレの本当の年齢言ってやろうか?」

「……………………………………は?」

「その気になりゃあ、オレはオマエを襲うことだってできるぜ?」

目が、点。

「…………説得力ない。そんなちびっこで言われても」

がそういうと、バルレルはちょっと挑発的な目で彼女を見た。

「……あのなー……チビでもできることにゃできるんだぞ?」

「は?なにが?」

「…………………………もういい。……オラ、さっさとベッド半分よこせ」

もぞもぞとのベッドの半分を占領し、さっさと背を向けた。
は、不思議がりながらも、結局ベッドに入ってきたバルレルの反対側で、眠りにつく。すぐに、先刻と同じ寝息が聞こえてきた。

「………………身体はガキでも、中身は大人だってーの……」

蹴っ飛ばされる心配はなくなったが、違う意味での悩みができた。
狂嵐の魔公子バルレル。
人間よりはるかに長い年月を生きてはいるが、悪魔の年齢に換算したら、今だ思春期真っ最中



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