Scene.11  せ物探し



屋敷に戻ると、イライラしたように待っているバルレルが玄関の前に仁王立ちしていた。
なんだか、とってもいやな予感がしたので、もう少しどこかで時間をつぶそうかな、と後ろを向いたとき。

「くぉら、この大馬鹿女!逃げるんじゃねぇ!」

見つかった(汗)

逃げようかと思ったが、すぐに間合いを詰められ、腕をひっぱられて、屋敷に連れて行かれる。

「どこ行ってやがったんだ!ニンゲンやオンナは先に帰ってるってーのに!」

「いだだだだ、スミマセンスミマセン!!」

「……変な男になんかされたんじゃねーだろうなぁ!?」

「………………されてないって!」

バルレルが急に止まって、じとりといやな目つきで見る。

「…………なんだ、その間は」

気のせい!……で、トリスたち帰ってるんだって???」

「……あぁ、変なチビガキ連れてな」

「…………あんたもチビじゃん(ボソリ)

「聞こえてんだよ、テメェ!」

頭、殴られた…………。

私たちは急ぎ足で屋敷にもどると、その足ですぐ応接間に行った。
応接間には、ほぼ全員が集合していた。真ん中に、金髪の女の子がちょこんと姿勢正しく座っている。

み、ミニスだ―――!!!!!

心の中で大絶叫をあげながらも、表情は変えず、さりげなくその場に溶け込もうとした。ら。

「あっ、!おかえり!先に帰ってると思ったからビックリしたよ」

トリスに声をかけられたので、こっちがビックリだ。

「ご、ごめんね〜!ちょっと寄り道してたら遅くなっちゃって……」

「あ、、服買ったのね?よく似合うわ」

ミモザの言葉を筆頭に、次々と、似合うわ、とか似合うぜぇ〜、とかいう声が聞こえてきて、嬉しい。どんなに耳をすませても、小悪魔の褒め言葉は聞こえなかったけどね〜(苦笑)

「ミモザさん、ありがとうございます!あの、服は洗ってお返ししますので……お金も、なにか機会があったら返します!」

「いいのよ〜、気にしないで」

じいぃぃぃぃ〜。
…………とてつもない視線を感じるんですが。

「…………あなたも、トリスやマグナの仲間?」

不意にかけられた、Happy Voice(命名、。意味は、人を幸せにする声)ミニスちゃんのかわいいお声!
酔いしれていると、私の代わりにマグナが答えてくれた。

「あぁ。彼女は。一緒に行動している仲間だよ」

「ふぅん……仲間が多いのね」

ちょっと、うらやましそうなそんな顔。
金の派閥でのミニスの生活はどうだったのだろう。友達は、いたのかな?フィズしかいないなんて、かわいそう過ぎるぞ?

「さて、と。そろそろ行こうか」

「?どこ行くの?」

「あ、そか、いなかったんだよね。……実はね、ミニスが落としたペンダントを探してるんだ。これからお兄ちゃんとアメルと一通り街を見て回るつもり。…………も来ない?」

「え?いいの?」

思わず、ミニスの顔を見てしまう。
ミニスは、うん、といってくれたので私はやっと落ち着けた腰を再び上げた。
別にそのことに苦を感じることはない。
次にマグナを見たら、にかっと笑った。

「それじゃ、行ってきますね」



屋敷を出た私たちは、まず、導きの庭園に行く。
はじめていく導きの庭園は、噴水があるきれいな公園だった。
ミニスが、落としたとしたらここが一番可能性が高いといったからだ。
しばらくバラバラに分かれて庭園内を探したが、見つからず。
ミニスの話を聞いているうちに、どうもここに断定できるとは言えなくなり。
とりあえず庭園を出て街を探すことにした。

必死で高級住宅街は行かなくていいというミニス。なので、私たちは、まず繁華街に行き、続いて一般住宅街に行った。くまなく探したけれど、やっぱりなかった。
そこで私の提案で商店街に行った。
しばらく店の人たちにも聞くが、見つからない。
みんなが聞き込みをする間に、私は、こっそりミーナシの滴をマグナに買わせた(わけのわからない顔をしながらも、マグナは買ってくれた)
だって、最後にもう1度戻る導きの庭園には、ミニスの宿敵、ケルマがいるはずだもの!
結局、元の庭園へ戻り、もう1度探すことになった。

「まいったわ、これだけ探しても見つからないなんて……」

「トリスさん!」

アメルに言われ、トリスはとっさに口を手で塞いだ。
それでもしっかりとその言葉を聞いたミニスは、みるみるうちに瞳に涙をためていく。

「大丈夫!今日がダメでも明日があるさ!」

「ケッ。思いっきり楽観しやがって……簡単にみつかりゃあ世話ねぇってもんだ」

「バルレル!」

「いえ、いいんです。気休めを言われても嬉しくなんかない」

「ミニスちゃん……」

「私が悪いんだもの。大事なものだったらもっと大切に持ってなくちゃダメなのに。傍にいるのが当たり前すぎて……私、忘れてたの……」

ミニスの『ペンダント』に対するとは思えない言葉に、マグナたちは目を点にする。

「だから、あの子はもう戻ってこないのっ!私が大事にしなかったから、怒ってどっかいっちゃったんだぁ!」

うわあぁぁぁん!と大きな声で泣き出すミニス。
泣き出したミニスに、ただひたすらマグナはうろたえ、レシィはおどおどとあたりを見回している。
アメルがポンポンと、ミニスの肩を叩く。

「あきらめちゃダメだよ、ミニスちゃん。きっと見つかるよ!そのために、あなたはずっと頑張ってきたんじゃない!」

「ひっく……でもぉ……!」

「ミニスちゃんは、自分が悪かったって思ってるんでしょう?」

「……うん」

「だったら、ちゃんとペンダントさんに謝ろう。ごめんなさいって謝れば、きっと許してくれるはずだよ」

「許して……くれるかな……」

「大丈夫よ、だってミニスちゃんこんなに一生懸命頑張ってるんだもの。ペンダントさんだってわかってくれるよ。ね?」

「う、うん……」

「大丈夫だよ、ミニス。それまでずっと大事にしてたんでしょう?ずっと大事にしていた恩を忘れるほど、ミニスのペンダントさんはおばかじゃないと思うよ?」

……う、うん!」

「よしっ、それじゃ、もうひと頑張りするか?」

そう、マグナが声をかけたときだった。

ついにおいつめましたわよぉ!このチビジャリ!

…………………………。
来たあぁぁぁぁぁ!!!
トリスとマグナがバッと声がしたほうを見る。そして『誰!?』と同時に叫んだ。
私はというと。
………………ちょっと怖くってまともに顔が見れません。ただ、わかるのは、金のケバケバしいオーラを振りまいている人物がいるって言うこと。

「ほほほほ。下賎な平民風情に名乗る名など……ん?」

「な、なんだよ?」

「そこのアナタ方、ひょっとして召喚師なのかしら?」

「だったら、どうしたっていうのよ」

とたん、ケルマがほーっほっほほほと高笑いをあげた。

「無知は罪ですわねぇ。召喚師でありながら、私の名を知らないとは」

…………私は知ってるけど、あえて口にしたくはない。
っていうか、未だに私、ケルマを真正面から見れてないわっ!!(汗)

「なにをえらそうにかっこつけてるのよ。自意識過剰じゃないの?この年増女!」

「と、年増っていうな〜っ!」

「ひひひひひ、あれは相当気にしてるなぁ?」

「ちょっと!?あおらないでよ」

「バルレルく〜ん…………無駄な争いはやめましょうよぉ……」

「あのう、すいませんが、私たちまだ用事がありますので。失礼させていただきたいんですけど」

「別にかまいませんのよ。た・だ・し、出すものはきちんと出してもらいますけど。さあ、チビジャリ!ペンダントをお返しなさい!あれは元々、誇り高きウォーデン家の宝、当主である私、ケルマが持つべきものなのよ」

「ウォーデン家のケルマ……ってことは、もしかして彼女!?」


ほ〜ほっほっほっほ!!!


先ほどよりも高くて大きい笑い声が、私たちの耳を突き抜ける。

「ようやく気づいたわね。金の派閥の召喚師の中でも名門中の名門、ウォーデン家のケルマとは私のことですわ」

「金の派閥の召喚師。彼女が……?」

「あなたも召喚師ならば、どちらに味方するのが得かわかるでしょ?三流召喚師のマーン家の小娘に義理立てしても意味なくってよ!?」

「えっ、ミニスちゃん、あなた……?」

「まさか、君も金の派閥の召喚師なのか!?」

マグナの言葉に、ミニスはごめんなさいっ!と頭を下げた。

「だましたんじゃないの、言い出せなかっただけなのっ……お願い、信じて…!」

「ミニス……」

「さぁ、おとなしくペンダントをお渡し!」

「待ちなさい!ペンダントは今、彼女のところにないのよ!」

「だまされるものですか」

「信じると思うか?あの年増女がよ?」

「だから、バルレルく〜ん!」

「口で言っても無駄よ!言って聞くような相手じゃないのっ!」

「ワイバーンを召喚するサモナイト石のペンダント……力づくでも、この手に取り戻させていただきますわよ〜!」

そう言うや否や、ケルマは獣属性のテテを呼び出し、傍にいたウォーデン家の私兵も戦いに借り出した。
こちらはマグナ、トリスに護衛獣たちに、アメルにミニス。……そして不本意ながら、私も参戦しているらしい。

ミニスが、ごめんねっといいながら、テテにロックマテリアルを当てる。……テテは半端なく痛そうだ。2、3歩千鳥足を踏んだかと思うと、すぐに目を回して倒れてしまった。
バルレルは、もう一匹のテテを槍で遊ぶように倒した。
マグナとトリスは、剣を使いながら、飛んでくる矢を上手く弾き飛ばして、慎重にケルマに近づく。
ある程度近づいたところだった。
私は気づいたのだ。

「……マグナ、トリス!それ以上近づいちゃ……!」

「もう遅いですわ!……えぇいっ!」

緑の光が炸裂したかと思うと、妖艶なお姉さん(ボン、キュッ、ボーン!)がパチリ、とマグナに向かってウインク。
とたんに、マグナはほわぁ〜んとした目つきになってしまった。

あぁぁぁあ!!やっぱりぃぃぃ!!!

「もう一発ですわ!」

今度はトリスにお姉さんがパチリ。
トリスも隣にいる兄さんと同じような目つきになってしまった。

「な、なんだぁ!?」

バルレルの声に、レシィが半泣きでこたえる。

「あれ、メイトルパの召喚獣ですぅ〜!魅了状態にしてしまうんです!」

「おいおい……回復する手立てはねぇのかよ!?」

「ミーナシの滴でなら……」

私は、ダッと走ってマグナに近づく。ぽわ〜んとした目つきで私を見つめるマグナ。
ぶんっと振り下ろしてきた剣が、私の頬を掠め、小さな傷を作った。
どうやら魅了状態で目標物も定まってはいないみたいだ。

ぐっとその口元にミーナシの滴を当てると、無理やり飲ませた。
喉がゴクンと動き、マグナの目に正気の光が戻る。

……?あ……ご、ごめん!俺……」

「後でね!その前に、さっき買った、ミーナシの滴、トリスに飲ませてあげて!」

「あぁ、わかった!……って、わあぁぁ!!と、トリス!」

焦って私がマグナのほうを見ると、トリスがぽわんとした目つきでマグナに剣を振るっている。下手に妹相手に手が出せないマグナは、ただ剣で剣を弾くしかできない。

きぃぃ!余計な真似を……!ならば、あなたも虜にしてしまうだけですわっ!」

うげっ……ちょ、ちょちょちょ、ちょっとしゃれになんないよ〜!ミーナシの滴持ってるの、私とマグナだけなんだから〜!!!

!」

バルレルが、ウォーデン家の私兵を倒して、こちらに来るのが見えたが、ダメだ、あの距離じゃもう間に合わない。

えいっ!

呼び出された召喚獣は、先ほどと同じく、私にぱちっとウインクをした。視線を外そうとしたが、外せない。体が硬直する。
だが。
パシュウゥ……ッ
小さな破裂音をさせて、私は硬直状態から解放された。

「あ、あら?珍しいわね、ミスするなんて……えい!」

すぐにまたあの召喚獣が出てきて、私にウインクするが、私は別になんともなく―――もちろん、ケルマの虜にもならず、事なきを得た。

「あ、あら?……えいっ、えいっ……えいっ………えぇいっ!

パシュッ、パシュッ……パシュッ………パシュウゥ!

ケルマの掛け声と呼応するように破裂音が聞こえる。
しばらく、ぜぇぜぇと息を切らしていたケルマだが、体をワナワナと震わせたかと思うと、きっと私を睨んだ。

「な、なんでですの!?どうして私の虜になりませんの!?他の人間にはちゃんと効きますのに!」

「さぁ…………ま、強いて言えば、あなたの虜になりたくないって言う、強い精神力かな?」

後方から、『さん〜〜〜あおるようなこと言わないでくださいぃぃぃ〜!』とレシィの声が聞こえたが、ここはあえて無視しておくことにする。
いつの間にやら、バルレルが息を切らして私の隣に来ていた。

「あれ、バルレル。心配して来てくれたの?」

「……ッ…テメェは……ッ……弱いくせになんでわざわざ前線にでて来るんだよっ!」

「な、なんで効かないんですの……!?」

「……だって、ミーナシの滴持ってるの、私とマグナだけだもん」

「まさか、なにか召喚術に耐性のある装備を……!?」

だもんじゃねぇ!マトモな防具もつけてねぇくせに!」

人を無視するのも、いいかげんになさいっ!……あなたに効かないのでしたら、隣の翼の召喚獣にするまでですわっ!……えいっ!」

何度も見たお姉さんが、やっぱり何度も見たようにバルレルにぱちりとウインクした。
私は、ヤバイ、と恐る恐る、バルレルの顔を見る。……目がいってたら、すぐにミーナシの滴飲ませよう。

「ほ〜ほほっほ!さぁ、翼の坊や、隣にいる小生意気な娘を黙らせなさい!」

「…………あぁ?誰が坊やだァ?」

ケルマの高笑いが止まった。
私はバルレルの瞳がいつもと変わらない、生意気そうな光をたたえてるのを見て、そっとミーナシの滴をしまう。

「……くっ……えいっ……えいっ!」

パシュッ……パシュウゥ……!

やっぱり、破裂音が生じ、バルレルはなんの変化もなく仁王立ちをしている。
最後にケルマは泣きそうな顔で私を睨んだ。

「きいぃぃぃぃ!!あなたがいるからですわ!あなたのその邪悪なオーラが、私の魅力溢れるオーラを打ち消しているのですわあぁぁぁぁぁ!!!」

ムチャクチャゆーな!!!あー、もう、バルレル!やっておしまい!」

「えっ!?殺っていいのか!?」

喜々としてバルレルが槍を構えるのを見て、私は頭に手をやった。
…………ここで殺ったら、次のイベントが来なくなる場合もあるな……。

「…………訂正、ほどほどに黙らせなさい」

「へぇへぇ。………ちっ……」

バルレルは、槍を持ってケルマに近づくと、すぐに背後に回って、柄のほうで、カッカッカッと2、3箇所打った。ケルマが、カクンと膝を落とす。

「こんな小娘たちに不覚を取るとは……」

「まだやる気かしら?お・ば・さ・ん!」

微妙なお年頃の彼女としては、1番言われたくない言葉をいただいたケルマは、むきいぃぃ!と頭に響く奇声を上げて、お約束の言葉、『覚えてなさい!』を吐き捨てて、兵士に支えられて逃げていった。ちょっと……いや、かなりカッコ悪かった。

そして、ようやく落ち着いた私たちは、とりあえず庭園のベンチに座り込む。
まず、マグナが私に向かって頭を下げた。

!ほんっと、ごめん!」

「ん?いいよいいよ、気にしないで〜。そんな大層な怪我じゃないし。あ、アメルも治さなくていいよ?ほっとけば治るんだから」

「……傷、残っちゃったらどうしよ〜〜〜」

「平気だよ〜。ってか、別に残ってもそんな困る顔でもないし」

ははは、と笑うと、マグナはもう1度ごめん、と言った。

「ホント、平気だって!!こんなの、なめとけば治るよ〜!」

「そんなとこ、どーやってなめんだよ」

間髪いれずに突っ込んできたバルレルの頭にゲンコを落とすと、レシィが隣からおずおずと手を差し出してきた。
その手の上には、Fエイド。

「あの、これ……まだ、血が止まってないみたいですし……」

本当に平気なんだけどなぁ……Fエイドを使うまでもなく。
迷っていると、バルレルがレシィの手からFエイドをひったくるようにしてとり、ぺタリと私の頬に貼った。

「ケチんなくていいんだよ、これくれぇ!」

…………だってぇ〜……基本的に、ケチケチ道中送ってたんだもん、私……。ケチらないと、いざというときに防具とか買えないじゃん。
でも、ま。
……彼らの心づかいが嬉しかったのは、間違いない。

「ありがと、レシィ、バルレル」

そういうと、レシィは本当に嬉しそうな顔をし、バルレルはケッと横を向いてしまった。
…………う〜ん……まったく、対称的な行動をとってくれるなぁ。
アメルが、そういえば、と話を切り出した。

「ミニスちゃん、金の派閥の召喚師さんだったんだ……私、ちょっとだけビックリしちゃった」

「ほんとね」

「黙っててごめんなさい。金の派閥と蒼の派閥は仲が良くないから、私が金の派閥の子って知ったら……嫌われると思って。だから、だから私……」

「いやだな〜、嫌うわけないじゃないか。なぁ、トリス?」

「うん、嫌うわけない!」

ミニスはじっと私のほうを見る。
慌てて私は答えた。

「元々、私は蒼の派閥じゃないし!嫌いになるわけないじゃん!」

にかっと笑うと、ミニスは本当に安心したように、元気よく、うん!と頷いた。




「それじゃ、あの子が探してたペンダントって、召喚獣を呼ぶ道具だったのね」

1度屋敷に戻って、先ほどの出来事を話す。

「そのペンダントの中にいるワイバーンさんは、ミニスちゃんの大切なお友達なんです」

「でもってそいつを横から奪おうってのが、ケルマっていう女召喚師だと……」

「はっ……ご苦労なこった」

リューグが呆れたように呟いて、ロッカにたしなめられた。

「金の派閥のマーン家と、ウォーデン家の対立は知ってたけど」

「そういう因縁があったとはな」

そこで、トリスとマグナは互いに顔を見合わせる。

「それで、あたしたちからみんなにお願いしたいことがあるの……」

ダダダダダ!バンッ!
扉を蹴破るような音が聞こえた。
ついで、屋敷中に響き渡る大声。

「どういうつもりだ、マグナ!トリス!」

「ネス、落ち着け。怒鳴らなくてもちゃんと聞いてるから」

「これが落ち着いていられるか!あれほど金の派閥の連中と関わるなと釘を刺したのに。どうして君は騒ぎを引き起こすようなことばかりするんだ!?」

「悪かったわよ。忠告に従わなかったのは、本当にすまないと思ってる。どれだけネスにしかられても、仕方ないんだって思ってる、けど」

そこでトリスはいったん言葉を切った。
大きく息を吸って、ネスをまっすぐ見る。

「あたしたち、バカだから他に方法が見つけられなかったのよ。あんなに必死だったミニスをほっとくなんてできなかった。だから、あたし……」

「先輩たちに頼み込んで彼女のペンダント探しを手伝ってもらうことにしたんだな?」

2人が同時に頷く。

「金の派閥同志の争いに巻き込まれるのを承知で、手助けするというんだな?」

もう1度、しっかりと頷く。
ネスが、ふぅ、とため息をついた。

「まあ、いい。今更僕が口を出したところで、過ぎたことは変わらない。だけど、忘れるなよ?僕達は僕達でやらなくちゃならない任務があるんだ。それだけは絶対に忘れるなよ」

「ネス、ありがと」

2人は同時に笑って、同時にそういった。




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