あぁ……体のあちこちが痛む…………。

私、昨日なにか激しい運動したっけ?



Act.1  覚めても夢?



足がジンジンする。
とくに右のふくらはぎのところが果てしなく痛い。
眠りと覚醒の狭間をゆらゆらと漂っているというのに、痛みのせいで、いくらか覚醒のほうに天秤は傾きかけている。
もぞ、と動いた。少しでも、痛みをごまかして、この心地よい眠りを妨げないように。
すると。

「…………お〜い?」

お母さんの声でもない、というか、女の人でない声がする。
かといって、お父さんでもない。

「…………まだ、かぁ…………」

誰だ、この可愛い声は…………。

「2人とも無理に起こそうとするな」

…………………。
ちょっと待って。
今の声は、紛れもない緑川ヴォイス!?
え、なに!?ちょっと。誰か私の近くでなにかのゲームorテレビでも見てるの!?

見せろ、私にも!!!

私は、根性で目を無理やりこじ開けた。
一瞬、眩しさに目がくらむ。

「う…………ん?」

私のうめき声で、誰かがこちらを向いた。気がした。
寝返りを打って、顔だけで近くを見る。

「目、覚めた?」

「………………………あ?」

思わず、間抜けな声を出してしまった。
なにせ、目の前にいたのが。

トリスとマグナとネスティだったから。

あぁ、緑川ヴォイスの出所は、ネスティかぁ〜!と納得…………


するか!!!!(1人突っ込み)


「あぁ……とうとう依存症になったか、私…………前から気配はあると思ってたけど……よし、もう1回寝てスッキリ目覚めよう、そうしよう」

かかっていた布(なぜかいつもの布団じゃなかった)を引き寄せて、再び寝ようと目を瞑った。

「…………どこか、痛む?」

えぇ、バッチシふくらはぎが痛みます。
…………ん?私、足どうしたんだっけ?
確か、学校帰りに……森にいて。
そう、森で……森?


思 い だ し た 。


踏み出した右足を捕らえる地面はなくて。
私は、崖のようなところをすさまじい速度で落ちていったのだ。

意識を失う直前に見たのが。

…………マグナと、トリス?


今の状況と、一致するじゃないか。


カッと目を開けた。


「……………えっ!?」

「……大丈夫か?頭にはそれほど傷はないみたいだけど……」

目を開ければ、すぐ間近にマグナの心配そうな顔が。

え。

……………えぇぇぇぇぇぇ!?

起き上がると、とたんに、背中がズキィッ!と効果音つきで痛む。

「いだ――――――!!!」

「急に起き上がるな!バカか君は!」

ぎゃー!!!ネスティに怒られた―――!!バカって言われた―――!
嬉しいような怖いような―――!(混乱)

ズキズキと痛む背中を押さえつつ、私は混乱した頭をなんとか整理しようと、口を開いた。

「あの…………ズバリ、ここは、ドコでしょう?」

「…………………は?」

トリスが絶句するのもわかる。わかるけど。
私は、聞くしかないんですよ!!

「気がついたら、森に、いて…………どうも、私のいた世界とは違うような……」

3人が顔を見合わせた。

「…………近くに、人はいなかったのか?」

「プルンとした青いゼリーならいましたが(汗)人間はどこにも」

「………………はぐれ、かな?」

あぁ……やっぱり、そうなの?
というか、もう『サモナイ』の世界大決定?

「ここが、『リィンバウム』という世界なのは知っているか?」

「あ……(なんて答えるべきか一瞬迷う)はい……」

「…………君が、召喚されてきたって言うのも、わかる?」

「はい」

「それなら、話は早い。君はどこの世界から来たんだ?」

そこまで来てから、私は迷ってしまった。
このゲームで言う『名も無き世界』ではあるのだけれど……なにせ、状況が違いすぎる。
向こうではここのことを『仮想世界』としてみていたのだから。

「……見たところ、ロレイラルではないし、メイトルパでもサプレスでもない。シルターンか?」

「いえ…………あの……その……『名も無き世界』と呼ばれるところだと……」

マグナたちが、それを聞いて、またも顔を見合わせる。
あう……他に説明のしようがないのよ―――!!(汗)
どうしよう、どうしよう、と思って混乱していると、マグナたちは、それがどうもそれ以上がわからないと思ったのか。

「あ、無理しないで。……でも、召喚師が近くにいなかったんだ……」

「送還させるにも、元の召喚師じゃなきゃならないしなぁ」

「う〜ん……あ、バルレル」

えっ!?(地獄耳)
バルレル!?

「よぉ、ソイツは目を覚ましたのかよ?」

「あぁ。……そうだ、自己紹介もしてなかったよ、俺ら」

「もう、お兄ちゃんってば」

あぁ……兄妹設定なのね…………なんて、オイシイ!!(心の中でガッツポーズ)

「トリスで〜す!こっちが双子の兄の、マグナ。それで、メガネかけてるのが、兄弟子のネスティ。今来たのが、お兄ちゃんの護衛獣の、バルレル。あと、私の護衛獣である、レシィって男の子と、フォルテっていう大きい男の人と、ケイナっていう女の人がいるの。今はちょっといないんだけどね」

マグナは霊属性……トリスは獣属性かぁ……回復には事欠かないわね、バッチグ!
……てか、今何話よ!?フォルテとケイナが揃ってるところからすると、1話は過ぎてるんだろうケド……。

…………………ハッ。

と、トリスがめっちゃ興味持ってこっち見てる!うあっ、マグナもだ―――!(汗)
あ。自己紹介ね。自己紹介待ってるのね!?

「あ、えと…………って言います」

自己紹介した瞬間、トリスとマグナがぽかんと口を開けた。
え?なに?私の名前、そんな変?

「…………え。……?」

「うん」

「本当に、って名前?」

「うん。偽名じゃないよ(いったいなんなのよ〜〜!?)」

「………………………一緒だ」

「え?」

「ううん!こっちの話!知り合いの人と、同じ名前だったから!」

知り合い?トリスたちって蒼の派閥から出られないんじゃ…………。

「珍しいな、君たちに僕の知らない知り合いがいるなんて」

「もぅ、ネスってば。私たちにだって人並みに知り合いはいるよね〜?」

「な〜」

まぁ、仲がよろしいこと!写メ撮っていいですか!?むしろ盗っていいですか!?(ダメです)

「で、ここは……ドコなのでしょう?」

「ここはね〜、レルムの村ってトコなんだ。、気を失ってるから、とりあえず連れてきたんだけど…………」

「あ、お手数をおかけしまして…………」

レルムの、村…………?まだ、活気に溢れている。
そして、マグナたちが訪れたその日。
…………村って、襲われるんじゃなかったデスカ―――!?(滝汗)

「目を覚ましたのか?」

ドアを開けて入ってきたその人は。

アグラ(マッチョ)爺さん〜〜〜!!!

うわっ。なにその筋肉!マッスルにもほどがあるよ!ってか、ボディービルダーで生きていけるよ!?
とりあえず、その他もろもろの内容は、ぐっと飲み込んでおいて、ペコリと頭を下げる。下手に口を開いたら、飲み込んだものが全部ペラペラと出てくるだろうから。

「アグラだ。もう大丈夫か?」

ゴックン、ともう1度飲み込んで。

「あ、はい。ありがとうございます。ご迷惑をおかけしたみたいで……」

「あぁ、気にせんでくれ。困ったときはお互い様じゃ」

にやっと笑ってくれるものだから、私もへらっと返してみた。
そこで、ぐぅぅぅぅ〜……と情けなくお腹の音が鳴る。
恥ずかしい…………。
…………そういえば、下校途中だったから、おなか減ってるんだよね……。
ふっとアグラ爺さんが笑った。

「さて、立てるか?たいしたものもないが、ごちそうしよう」

そう言って通してくれた居間から見える太陽は、すでに真上を通り過ぎていた。
うぁっ!刻々と近づいてるよ、襲撃事件が!



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