Lovery prince!第2話〜だからなんなんだよ、ヤキュウケンって!〜






下はまぁ、体育の時にイヤというほど思い知らされたから一応男物の下着だ。

だけど!!!

問題は上だぁぁぁぁ!

イヤ、一応女の子なんで……少しはありますよ???

だから、サラシを巻いてるわけなんだけど……。

まさかここで見せるわけにはいかない。

何かいい案は……

何か……

思い浮かば〜〜〜ん!!!

ここで早くも私の高校生活は終わりなのか!?

男の格好して学校通ってた変な女ってレッテル貼られるのか!?

…………

イヤ過ぎだぁぁ〜〜〜〜〜!!!!

「監督!」

「ん?なんだ」

「すんません、トイレ行ってきていいっすか!?10分……いや、5分……3分で戻ります!行ってきていいですか!?つーか、行ってきます!!!」

ドビュンッ!!!

私はダッシュで部室に向かった。

こうなればしょうがない。

サラシがケガに見えるように細工するのみ!!!

ガーゼ(その辺にあったのをいただいた)とかをいっぱい胸にはさんで、包帯をぐるぐると巻きつける。

「……とにかく、これで『男』を通すしかない……」

少しでも裸を見られないように元の通りユニフォームを着る。

そのままダッシュで元の場所まで戻った。

「……おう、戻ってきたな。よし、全員脱げ」

来たよ……。

渋々私はユニフォームを脱ぐ。

ばれませんように、ばれませんように……。

「あれ?君怪我してるの?」

ギク。

比乃〜〜〜、余計な事はつっこまなくていいから!!!

「お、どうした22番。怪我か?」

「そ、そーなんです……家の階段で転んで擦って……とにかく、怪我なんです!」

「そーか。よくそれで試験が平気だったな」

「いや、痛くはないんですけど……でも、大丈夫です!俺にかまわず進めてください!」

幸い、脱いだもののすぐに十二支高校のユニフォームを着ることになって、私はホッと溜めていた息を吐いた。

君、大丈夫なの?」

「おう、オールオッケー全然オッケー!」

どうやら、ヤキュウケンってのは紅白戦らしい。エラーしたら一枚ずつ脱いでいく?

んじゃ、エラーしなきゃいいんだな。

「チーム分けと行くか……今9人ずつ2列に並んでるわけだが……その9人で1チーム。それぞれ、A,Bとなって紅白戦を行う」

「そ……そんな勝手な!!ポジションも決まってないのに!!」

「安心しろ、今までの試験の成績と、中学時代のポジションを考慮し、俺が配置した」

……私、中学時代の成績書かなかったんだよな〜……まさか『女子』ソフトボールなんてかけないし……。

前を見ると、比乃が口パクで『一緒だね』と言った。

あ、比乃と同じチームだ。

「これより、Aチーム対Bチームの試合を始める。せいぜいまっ裸にならんように」

もちろんですとも!!!

私にとって、まっ裸=負け じゃなくって。

まっ裸=人生の負け ですから!!!





私のポジションはセンター。

どうやら、肩と足を認められたらしい。

外野だから、ボールが来る確率も低い。

なんてったって。

ピッチャーがあのガン黒男だもん。砲丸投げ、素手で20Mの高校記録塗り替えた男。

だから、ろくにピッチャーの方を見もしなかった。

まぁ、思ったとおり、私の方にボールは飛んでこなかったし。やったねvv

打順も比乃が1人で頑張ってくれてるから、それほど気兼ねなく打てる。

あっという間に2−0になった。

エラーも失点もしてないから(どうやら失点すると一枚ずつ脱ぐ裏ルールがあったらしい)脱ぐ事もない。

このまま終わってくれりゃー、言う事ないんだけど……。

なんて。

世の中上手くいかないよね〜。ハハハン♪

まず、子津とかいう青バンダナの子がホームイン。

ゲッとか思ってたら、比乃がなにやら言ってる。

キャッチャーのもみあげくん(辰……なんとかさん?)がセカンドの比乃めがけてボールを投げてるから、カバーで後ろに回った。

比乃はボールを捕って、ランナーの猿……田?はアウト。←違う

よっしゃ、とか思ってた時。

「うわ〜ん!!!ツチノコお化け〜〜!!」

比乃が叫ぶから、目が行っちゃったよ……。

うわ〜ん!!!嫁入り前なのにぃぃ〜〜!!

「あのお猿の兄ちゃんホントムチャクチャだよぅ……あんな人たちに負けたらなんかもう野球やめたくなっちゃうよ……セクハラされた……パンツの中にツチノコが……」

比乃!激しく同意するよ!!!

「セクハラされたぁ〜……くそぅ……これで1枚ロストかぁ……」

アンダーシャツになる。

ま、アンダーシャツは黒だからね。何とかなると思うけど。

うわっ、後ろでなんかガン黒男が壊れてる!!!

『に゛ゃ〜』とか言ってる!!!

……ま、それは置いといて。

とにもかくにも、順調に試合は進んでいった。……途中で辰羅川さん(名前覚えた)のソロホームランがあったけど。

って!?

ガン黒男がフォアボール出してる!?

なぁにやってんだ、あの男ぉぉぉ〜?

バッターはあのわけわかんない猿田じゃないか!←違う

ホームランでも打たれてみろ、2ランで同点で……脱がなきゃいけなくなるじゃないかっ!!

なんてことをぐるぐると頭の中で思っていたら……猿田がバットにボールを当てた。そのままボールは上へあがる。平凡なキャッチャーフライだ。

うしっ、これで終わりだぁ!

「……捕るなぁぁぁ〜〜〜!」

―――!?

WHAT!?

何を言ってるんですか!?

その声の大きさに(というか怖さに)辰羅川さんがビビッたらしく、ボールは地面に落ちた。

ガン黒男……それほどまでにあの猿田と勝負がしたいのか……。

な〜んか、嫌な予感が……。

そして……

ギィィィィィン!!!!

およそバットが出した音ではないような音に、私は動けなかった。

無口なサングラスの少年がジャンプした瞬間、雷が鳴る。

「――――!!」

あまりのことに、一歩も動けない。ボールは私の守備範囲に飛んできていることは間違いないのに。

パラパラ……

上からガラスが降ってきた。

そう。

ボールはセンターの上にある時計につきささるようにして当たっていた。

湧き上がる歓声。

私はしばしボーゼンとことを見ていたが……不意に我に返った。

なんのことはない。

……脱がなきゃいけないじゃないかぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!

ど……どうしよう(汗)

ふと周りを見たら、誰もが脱ぎ始めていた。

こーなったら、脱ぐしかない。

決意を込めて、ユニフォームを脱いだ。

みんなは私のことなど目に入ってないみたい。

……助かった。



こうして―――

こうして変則野球『ヤキュウケン』は3−3の同点で幕を閉じた。

私は正式に十二支高校野球部のメンバーになったのだ。

……ん?

野球部のメンバー……??

……!!!

なっちゃだめじゃん!!!

ばれるじゃん!!!

サン、いまさら気づいても後の祭りです(笑)

とりあえず、ユニフォームをいそいそと着る。



ズーン……



!?

なんだこの暗いオーラは!!!私以外にもいたのか、こんな暗いオーラをかもしだす人物が!!

そんなオーラをかもし出しているのは、あのガン黒男だった。

「……ガン黒、そんな気を落とすなよ。猿田に打たれたくらいで……」

「……?(猿田?)」

こちらを見上げてきたガン黒男。

なかなかカッコいいヤツだ。

ガシッ!!

―――WHAT'S!?

肩をつかまれた。

「な、なななな何!?」

ユ、ユユユユ、ユニフォームよし!

シシシシシシ、喋り方よし!

……私は男だ!!!←説得力ナシ

「な、なんか用か!?」

私の声にびっくりしたように、ガン黒は見つめてくる。

「?????(なんなんだ―――!!!)」

「…………?」

!!!

なんで……!?

なんで私の本名知ってるんだ!?

「どうして、お前がこんなところに……!お前、女……!」

ガッ!

私は次の瞬間ものすごい勢いでガン黒の口を塞いだ。

「後で……後で校舎まで来い……いいな……?必ずだぞ?……必ず来い……いいな?」

コックリとガン黒が頷いたのを見る。

私は踵を返して制服に着替えに行った。





「あれ〜?君どうしたの?」

比乃がいつまでたっても帰らない私を見て、聞いてきた。

「いやぁ〜……今日はちょっと用があってさ……悪いけど比乃、先帰っててくれるか?明日、ゲーム持ってきてやっから」

ホント!?と目を輝かせたから、ホントホント、と頭を撫でる。

約束だよ!?と比乃は言ってから、部室を去っていった。

はぁ〜……。

溜め息が出る。

とにかく、誰も来ないうちに着替える。

バババッと着替えて学ランを装着。

よし。

私は大きく息を吸って校舎裏まで歩いていった。





「……もう、いたのか」

「とりあえず、な」

すでにガン黒は校舎内にいた。

グ、と唾を飲み込む。

「……なんで、お前私の本名知ってるんだ?」

「ちょっとまて。ってことは、とりあえずお前は『女』なんだな?」

一瞬とまどうが、コクンと頷いた。

「……なんで女がここにいるんだ。……しかも、が」

「……ちょっとまて……その前に私の質問に答えろ」

ガン黒は詰まったが、喋りだした。

「……覚えてないか?……神盟中の犬飼冥だ」

神盟中……?

犬飼……冥?

「あっ!」

ビクッ、とガン黒―――否、犬飼が驚いた。

「県内最強のピッチャー、犬飼冥か!?思い出した!」

ソフト界での最強ピッチャー、神盟中の犬飼か!何度か2人して優秀選手に選ばれて、県選抜の合宿に行った……覚えてるはずだ。むしろ、私が忘れてた方がおかしい。

「久しぶりだなぁ〜。ソフトやめて、野球にしたのか?」

「ちょっとまて。……とりあえず、歩きながら話す」

犬飼に促されて、歩き出す。

生徒通用口で私は止まる。

傘……。

横を見れば、今にも折り畳み傘をさそうとしている犬飼が!!!

「犬飼!入れてくれ!!!」

指した瞬間に私は犬飼の傘の中に入り込んだ。

「んな……!?」

ちゃっかりと入り込むことに成功。

「……とりあえず、行くぞ」

犬飼は歩き出した。





私はしょうがないので犬飼に全部話した。

父親の策略で十二支高校に男として入学した事。

野球をやるつもりはなかったのに、比乃に促されるまま野球部に入ってしまったこと。

両親は海外転勤でもうすでに日本にいないこと。

一人暮らしをしていること etc......

「……ってなわけで、頼む!!!言わないでくれ!」

「とりあえず……それはいいんだが……野球部にこのままいるのか?」

私は決心していった。

「……いる。……野球、やっぱ好きだ」

野球が好き。

ソフトよりも。

なによりも。

やっぱり野球が好きなんだ。

睨むように犬飼を見ると、犬飼は諦めたように溜め息をついた。

「……とりあえず、困った事があったら言え」

自分でも笑顔になったのがわかった。





ってか、マジかよ。

ソフトの頃から変なやつだとは思ってたけど……まさか、こんなところで会うとはな……。

まさか、『女』が『男』になってるとは誰も思わないだろ?普通。

とりあえず……もう一度会えて、よかった。

中学の頃から、いやもっとずっと前からコイツ程普通に話せた女はいなかった。

好きなんだ、と言う意識はあった。

けどなんとなくうやむやに終わっていて……。

正直嬉しい。

ちら、と隣のコイツを見てみる。

と視線に気づいたのかこっちを見上げてきた。

少し雨に濡れた髪の毛。

ちょっと大き目の学ランが可愛い。

俺の中ではコイツは完璧に『女』だから、もう男物の制服を着てようが女に見えるんだけどな。

ってか、むしろ男物の制服に着られてて可愛い。

「……犬飼?顔赤いぞ?風邪ひいてんのか?」

上目遣い。

お前……それは悩殺ってもんだろ?

「……!!とりあえず!!家、ドコだ!?」

俺はここを曲がるから、赤くなった顔を誤魔化すように質問した。

「こ、この先のアパートですっ!」

声のデカさにびびったのか、アイツは敬礼しそうな勢いで答えた。

この先って言ったって……あのアパートか!?ここからはもう縮小プラモ並の小ささに見えるアパートか!?徒歩で10分はかかるだろう、あのアパートか!?

「……あ、もしかしてここ曲がるん?んじゃ、ここでさよならだな。傘、さんきゅvv」

……にこーって笑うな!俺の理性が……!!

「……あ、そうそう!私……いや、俺のこと呼ぶときは『』でよろしくな。そうでもしないと、俺、自分の名前覚えられそうにないからさ♪んじゃ、な!」

雨の中を駆け出そうとするアイツ。

「……と、とりあえず!」

俺の口癖に、『ん?』と純粋な顔で聞いてきやがった。

「……とりあえず、送ってく!!」





明日からの部活……

いや、明日からの学校は大変そうだ。







銀月の言い訳。



はい。

なにやらもうばれてます(死)

犬飼君ですからねぇ〜・・・

次は司馬くん登場予定です!



修正 2004.8.9