Lovery prince!第3話〜ちょっと待てッ!なんだこのメンバー!!〜 犬飼に秘密がバレて。 よく眠れもしなくて、寝坊して慌てて家を出たら、なんとその犬飼が私の家の前にいた。 『とりあえず、俺はお前のことを黙ってるから!……それと、俺が【】って呼ぶかわりにお前も俺のことは名前で呼べ!じゃないと、おかしいだろ。……いいか?とりあえず、俺たちは幼なじみということにしておくんだ。いいな!?』 頷く間もなく、犬飼―――冥は走り去っていった。 私のことを考えてくれてる…… つくづくいいやつだ〜〜〜!!!(感激) 「……ということなので、来週には球技大会があるので、各自やりたい種目を考えておいてください。以上です」 気の弱そうな委員長の声が耳に入って、ちょっと前を見た。 「……球技大会?」 いつの間にそんな話が…… 私がぼそりと呟いたのを聞いていたらしい。隣の女の子が親切に教えてくれた。 「来週、球技大会があるのよ。種目は、バスケ、野球、サッカー、ハンドボール、テニスバレー、ドッチボール……そんなものかな?なんかね、自分が入ってる部活の球技には出ちゃいけないらしいんだけど……君、野球部だよね?昨日の入部試験に合格したんでしょ?すごいよね〜!!」 「そうか?ありがとう。……にしても、球技大会か……なんに出よう……」 野球は部活だからダメ。 ハンドボールもルールがよくわかんないからパス。 ま、妥当なところでバスケ、サッカー、ドッチボールか……。 「起立」 う〜ん……バスケは背がないからなぁ……この学校、おかしいくらいに馬鹿でかい人多いし。 「コラ」 ぱこん。 「いて!」 「、ぼんやりしてないで早く立ちなさい」 「は〜い」 担任に殴られた。 「礼」 「ありがとうございました」 ぼけぼけとそのまま授業は過ぎて――― 熾烈な昼の争いがやってくる。 「しまったぁ〜!乗り遅れた!」 わいわいとにぎわう購買部。 すでに満員の人で猫がとおる隙間もない。 「くそぉ〜〜〜〜……俺の昼飯!」 なんとか前に進もうとするが……デカイ壁に阻まれて前に進む事ができない。 「ちきしょぉぉぉ〜………」 やっとのことで買えたのは、小さなクリームパン1つ。 くぅぅぅ〜……と情けない音をお腹が出した。 私を殺す気か!? いや、寝坊してお弁当作れなかった私も悪いんだけどさ! しかし、目の前にあるのはやはりクリームパン1個。 はぁ〜……。 大きな溜め息をついて、私は中庭へ歩いていく。 中庭は風が吹き抜けて気持ちいい。 出来る事なら木の上で食べたいんだけど……なにせ、今は毛虫やらなにやらがいるからね、さすがにそれは出来ない。 「はぁ〜……これ1つでもつわけないだろ……」 どさっ、と芝生の上に座り込む。 「……もつわけないだろ……」 それでも、バリッとクリームパンの袋を開けて、食べ始める。 チビチビと、ゆっくりと。 ……食べきった。 涙目になる。 「くそぅ〜……」 トントン。 肩をたたかれた。 「?」 振り向いた先には、サファイアブルー。 「……司馬、葵?」 コクン。とサファイアブルー―――司馬が頷いた。 司馬と言えば、確か、昨日の入部試験で3球同時ノックでパーフェクト出してた、人道を大いに無視した男! 「どうしたんだ、こんなところで……昼飯か?」 コクン。 ……喋らない。 「……一緒に食うか?」 コクン。 頷いて司馬はその弁当箱を広げた。 さすがに高校生の男子は量が違う。大きな大きな銀の弁当箱に、これでもか、と言うほどにご飯がつまっていた。 「……うまそうだな」 ついつい目がいってしまう。そしてその後に自分の食べたクリームパンの袋。 我知らずに溜め息が出る。 トントン。 「?」 もう一度肩をたたかれる。 目が、あった。 「(……ご飯、それだけなの?)」 なんとなくそう言ってるような気がする。 ……あくまで、気だけど。 とりあえず、答えてみる。 「うん。購買で買えなくってさ……ようするに、食いっぱぐれ、ってヤツ?から、これだけ。寝坊して弁当作れなかったのも悪いんだけど」 「(……お弁当作ってきてるの?)」 「今まではな。昨日眠れなくってな……寝坊した。そんで弁当作れなくて……購買にいったらこのザマ」 「(……僕の食べる?)」 思いがけない司馬の言葉に、驚く。 っていうか、視線で言葉かわせる……って私何人だよ!?宇宙人!? 「でも、司馬も腹減ってるだろ?俺にかまわず食えよ」 「(今日の練習、先輩来るらしいよ。練習きついから、ご飯ちゃんと食べないと倒れるよ?)」 司馬の指摘にちょっとたじろぐ。 昨日の入部試験からすると、練習はきついだろう。 確かに司馬の言うとおりだ。食べなきゃ倒れる。 でも、他人様のお弁当……。 くぅ〜……。 情けない音が響く。 「……司馬、明日、俺が弁当作ってくるから、今日、弁当わけてくれ!」 サングラス越しの目が驚いたように見開かれる。 「(……お弁当作ってきてくれるの?)」 あ。と私は口を押さえる。 普通に考えて、男同士で弁当の交換なんてしないよ!!!(汗) 「いや、イヤだったら全然いいし!何か他のものでお礼するし!」 司馬はフルフルと首を振った。 「(イヤじゃないよ。ありがとう。……ハイ)」 渡されたのは、エビフライ。 ……うまい。 パリパリと頬張りながら、暫く極楽を味わう。 「司馬、うまいよ、このエビフライ!」 「(そう?よかった。あ、おにぎり食べる?)」 お弁当箱の入っていた袋からおにぎりが数個転がり落ちる。 「……お前、これも食べるつもりだったのか?」 「(うん。あ、中身は梅干しだよ)」 「梅干し〜!梅干し、好きなんだ!……あ、司馬、嫌いなものとかある?あったら、明日、弁当に入れてこないから」 司馬がちょっと考え込んでる。 「(……熱い食べ物はダメだけど……お弁当だとそんなに関係ないから。特にないよ)」 「熱い食べ物がダメね……ってことは、冷たいものが好き?」 コクン。 んじゃ、なんとかして冷たいものでも作って持ってきてやるか。 はむ、とおにぎりを頬張る。 ……うますぎ〜〜〜!!! 「うま〜♪……司馬のお母さん、料理上手だなぁ」 「(そうでもないよ)」 「いや、うちの母親に比べたら……」 私の中に悪夢がよみがえる。 そういえば、ビーフシチューと言われて変な液体を飲まされた事が…… ゾワッと鳥肌が立つ。 「……いや、何も聞かなかった事にしてくれ。……あ〜、うまかった♪ごちそうさまでした。腹もいっぱいになったし!!!」 司馬が、よかったね、なんて視線で言ってくる。 「マジ、さんきゅ♪これからよろしくな!……あ、自己紹介まだだったなぁ」 自分の間抜けさ加減に呆れてくる。 「(知ってるけど……)」 「あ、じゃあいい?」 今更言うのも恥ずかしいので、ポリポリと頬をかきながら誤魔化そうとする。 「(……ダメ。自己紹介して)」 司馬の よいしょ、と立ち上がって、ゴミを取り上げる。 司馬の目が上を向いた。 「……俺の名前は!ポジションはセンター狙いだから、連携プレイとかでも何かと世話になるかも。ってなわけで、これからよろしくな!……んじゃ!」 「(あ、ちょっと……)」 「ん?……あ、明日の昼もここに集合な!」 私は言い捨てて校舎に入った。 男の人……だよね? そうとは思えないほど可愛い。 ちょっと色素の抜けた茶色めの髪とか、サラサラで日に透けてて可愛い。 僕のはるか下にあった顔は小さくて。 手とかも、男のゴツゴツしたものじゃなくて、小さいぷにぷにした手。 今まで恥ずかしくて声を出さなかったけど、あの人は視線だけで言いたい事をわかってくれた。兎丸みたいに。 いや、ある意味兎丸以上かな? 僕はホモじゃないけど……あの人だけは……。 …………。 明日の、昼はなにがあってもここに来よう。 「司馬!」 僕を呼ぶその声に、一瞬ドキ、とする。軽く息を吐いて心を落ち着かせてから、ゆっくりと振り返った。MDの音を最小にするのを忘れないで。 パタパタとが走り寄ってくる。 「よ!昼はさんきゅ!……これから部活だよな?」 コクン、と頷く。 「よっしゃ、いっしょにいかね?……お〜い、比乃!」 「待ってよ〜、くん!……あ、司馬くんも!やっほ〜!」 軽く頭を下げる。でも、。一緒にいくっていってももう部室の前なんだけど…… 「……あれ、子津と辰羅川と冥?」 ……冥? なんで、犬飼だけが呼び捨てなの? 「あ、兎丸くんに司馬くんにくん」 「おやおや、皆さんおそろいの様で」 にこやかに挨拶が交わされる。その中で、犬飼だけは浮かない顔だ。 「……とりあえず、。弁当は大丈夫だったか?」 ……なんで『』? 「なんでくんと犬飼くん、名前で呼び合ってるの?知り合い?」 そう。なんで? 「いや、俺たち幼なじみでさ。幼稚園が一緒だったんだよ。他は違うところ行ってたんだけど。な、冥」 ……幼なじみ? 「わたしは知りませんよ?」 「辰は知らないだろ。……、弁当は?」 「あぁ、司馬にもらった♪メチャメチャうまかったvvありがとな、司馬」 そんなに満面の笑みで言われると……(///) と、その直後。ピリ、とした視線が僕に突き刺さる。 ふっと顔を上げてみると。 犬飼がこちらを睨んでいた。 その目はあたかも、は俺のものなんていってるような気がして、腹が立った。 から、睨み返してやった。 サングラスで見えなかったかもしれないけど。 「んじゃ、いこっか」 その声に促されるように、子津がドアをあけた。 「いや〜〜〜〜!」 何!? 「さ、猿野くんが死んでるっす!」 ……僕たちはにらみ合っていたことも忘れた。 「グラウンド、グラウンド♪」 「(……なんか、嬉しそうだね)」 「そうか?……あ〜、どんな先輩がいるんだろ?楽しみだなぁ。上手い人ばっかなんだろうなぁ」 僕は、楽しそうなを見て、溜め息をついた。 変な先輩がいなければいいけど。 新入生だけで曲者ばっかりだからね。 「司馬〜?どうした?」 がこちらを向いて話し掛ける。 「(!!、前!)」 「ん?……おわっ」 ……忠告したのに。は激しくこけた。 「(大丈夫!?)」 「ん。……てて……すいませんでした!前方不注意です!」 は自分の手が擦り切れてるにもかかわらず、相手に謝った。 可愛いなぁ……。 なんてことを言ってる場合じゃなくって! 「(大丈夫?)」 僕の問いに、は大丈夫大丈夫と笑って見せた。 「……大丈夫ka?俺も前方不注意だっta……って、オゥ、ベリーキュートガール!君みたいなプリティーな子に、こんなことをしたボクをゆるしてくれるかna?」 そういって、その語尾が変な人はの手にキスを(!)した。 「いや、その……俺、男なんで……すいませんでした、本当に!それじゃ!」 僕の腕をひっぱってはズンズンとグラウンドに向かっていく。 僕は心の中でその変な人に舌を出した。 び、びびったぁ〜……。 いきなり手にキスなんかされたよ……。 やっぱり、男に見えないのかなぁ〜? が、頑張って男らしくならなきゃ……。 さて! グラウンド♪グラウンド♪ あ〜、どんな先輩がいるんだろう? 上手い人ばっかだよね?新入生より上手いのかな? 不意にユニフォームの袖がひかれた。 「?……あ!司馬、ごめん!ずっと腕ひっぱったまんまだった!」 「(いや、それは大丈夫だよ。それより、手、大丈夫?)」 司馬に言われて、自分の手が擦り切れていることに初めて気がつく。 「あ。……ま、舐めときゃ治るだろ」 ペロ、と自分の手を舐める。ちょっと痛いけど、まぁいいか。 司馬がなんか赤くなったような気がする。けど、すぐにそんなことにかまっていられなくなった。 だって!!! なんか、金パツの人がグラウンド整備してるんだもん!!! あんな人、昨日の試験にはいなかったよ!? ……特待生とか!? でも、その手つきは妙に手馴れていて。 きれいにグラウンドが整地されていく。 ……すっげー……。 「さって、俺らも頑張るか!これからお世話になるグラウンドだもんな!」 ザッザッととんぼがけ。 一年生はこれが仕事だからだ。 あ、猿野(やっと名前覚えた)が金パツの人に近づいていく。 「ちょっとチェリオ買ってきてぇ」 キラリとその人の目が光ったような……(汗) ん?先輩たちが集まってきた。 へぇ〜、これが十二支の先輩かぁ。さすがに、みんな体格がいい。私より低い人なんていない。これじゃ、主将なんて、どんなゴツイ人なんだろう。 「あれ、主将またトンボがけしてんスか〜?」 ……え? 主将……? トンボがけ? 慌てて辺りを見回す。ほとんど……いや、約一名をのぞいて全ての顔は昨日の入部試験で見ている。 ってことは……。 「いや、いいんだ……グラウンドは僕の大事な恋人だからね」 ……この人ダ―――!!! 怪しいと思ってた人が、主将だった―――!!! ゴツくはないけど、いろんな意味ですごい人だよ!! どーりで、高1にしては落ち着いてるなと思ったんだよ!!! 「よーし、グラウンド整備終ー了ー。1年諸君は整列してくれたまえ」 ……くれたまえ!? 「僕が十二支高校主将、牛尾御門だ。野球はLOVEだ。まずは諸君、野球を愛せ」 ……なんか、すごい人が主将だなぁ……。 校内競馬も終わって。 私は1人あまったから他の1年の組に混ぜてもらった。 ……タイムは先輩に及ばなかったけど、まぁ楽しんだ。 どうやら、私の手にキスをした人は虎鉄先輩というらしい。 この人は、口調こそおかしいけど、ファーストとしての才能はものすごい。 っていうか、体が柔らかい。 やっぱり、世の中にはすごい人がいっぱいいる。 ふぅ〜……今日の練習は結構疲れた。 早く寝て明日は寝坊しないで弁当(2人分)作らなきゃ! 「司馬!もう来てたのか、早いなぁ」 当たり前だよ。が来る前にここにいようと頑張ってきたんだもん。 「ハイ、昨日のお礼です。まずいかもしれないけど、食ってくれな!」 そう言って、は照れたように青い弁当袋を渡してくれた。 僕の弁当の量を見て、それと同じくらいの量の弁当を作ってきてくれてる。 大変だっただろうなぁ。 ちょっとドキドキして弁当箱を開けると、ぎっしりとごはんがつまっていた。お世辞じゃなくおいしそうだ。ためしにから揚げを食べてみる。 モグモグ、ゴックン。 「……う、うまいか?」 が上目遣いで聞いてくる。 「(……すごいうまいよ、ありがとう)」 パッと花が咲いたように笑う。 「よかったぁ〜……人に弁当作るっていうの初めてだからさ、心配してたんだ。うまいか、そうか。よかった」 嬉しそう。 でも、本当にうまいからなぁ。 「あっ!そうそう、司馬が冷たいもの好きだって言ってたから、冷たいお茶も持ってきた」 最高のサービスだよ、それ。 魔法瓶を受け取って、お茶を飲む。……よく冷えていておいしい。 「(……ありがとう、本当にうまいよ)」 へへ、とが笑う。僕も笑う。 と。 後ろから喋り声が聞こえてきた。 誰だよ、僕との弁当の時間を邪魔するのは。ま、後ろは茂みだから、こちらの方は見えないだろうケドね。 「……あの、犬飼くん」 女の子の声。 犬飼……? にも声が聞こえたのか、僕の方を見てくる。そして、ひっそりと声を押さえて 『ちょっと覗いてみるか?』 コクン。 は、茂みの間から目だけを覗かせるように、四つん這いになった。 ……ちょっと、ヤバイ体勢だよ、それ。 ブンブンと顔を振って、僕も同じ体勢になる。 茂みの間から見えたのは、女の子と犬飼。 「あの、犬飼くん……もし、よかったら、付き合ってくれないかな?」 ……告白の現場だ……。 どうしよう。 『冥って、モテんのな』 焦ってたらの声が耳元で聞こえた。 今度は違うところで焦った。 ……顔が絶対赤くなってるよ。 「……と、と、と、とりあえず、ごめん!俺、好きなヤツいるから!」 僕が湯気を顔から放出している隙に、展開は進んでいたらしい。 慌てて覗いてみると、犬飼はもうすでにその場にいなかった。 やがて、女の子も去っていく。 完全に2人の姿が消えた後、やっと僕らふたりは息をついて元のように座り込んだ。 「……ふぃ〜……まさか、他人様の告白現場を見ちゃうとは……しかも、冥の!ドキドキたぁ〜……」 僕は違うところでドキドキしてたけど。 「……冥って、ホントにモテんだなぁ〜」 あ、また『冥』 ……犬飼、ズルい。 決心した。僕はクイ、との制服をひっぱる。 「ん?なんだ、司馬」 ……司馬。 「(……僕のことも、名前で呼んで)」 「はぃ?」 「(だから、僕のことも名前で呼んで)」 「……名前でか?……なんで、また」 「(いいの。細かい事は気にしない)」 が、ちょっと笑う。 「あ、そう。……んじゃ、『葵』!俺のことも名前で呼べよ?」 「(わかった)」 僕は満足気に笑った。 NEXT 銀月のいいわけ てなわけで、司馬くんです。 視線で会話する2人。……すげー……。 最初の方にちょっと出てきましたが、球技大会の話を書きたいと思います。 ……頑張りますので、長い目で見ててやってくださいませ。 ブラウザバックでお願いします。 修正 2004.8.9 |