手にはカノンの手作りパンが入ったバスケット。 新しい、買ってもらったばかりの服。 胸には、アシュタルのサモナイト石(ペンダントにした) さぁ、準備は万端!いざ、出発だ!!! Scene.10 召喚の力。 ハヤトに貸してもらった腕時計は、12:50を指している。 少し急ぎ足で、商店街の入り口へと向かった。 がやがやとにぎわう商店街の中でも、存在が目立つ、4人の少年少女たち。 「(あぁ〜〜〜!!!!ナツミとアヤがいるぅぅぅ〜〜〜!!!可愛いぃ〜〜〜!ってか、ナツミ、スカート短っ!)」 ハヤトがこちらに気づいた。 「!こっち!!!」 ブンブンと手を振るハヤトを、可愛いと思いながら、ちょっと走り気味で近づく。 トウヤが、二コリと笑ってくれた。 「やぁ、。…………紹介するよ、僕と同じ学校で……」 「バレー部部長の、橋本夏美でっす!!ナツミって呼んでね〜♪」 「で、俺と同じ学校で、生徒会メンバーの」 「樋口綾です。よろしくお願いします」 丁寧に頭を下げるアヤと、ニコニコ笑って、私の手をとるナツミ。 …………生アヤと生ナツミは、超可愛い。(生っていうな) 「はじめまして〜!えっと、って言います!でいいよ!!」 「おっけ〜!!」 おぉ!ナツミの生おっけ〜だ!! なんて悦ってると。 「立ち話もなんだし、歩き始めないか?」 トウヤの発言に、全員一致でフラットに向かう。 途中、私は質問攻めにあった。 「は、私たちとは全然違う感じで来たんだね〜。私たち、4人で公園にいてさぁ……なんか、頭の中に声がして……気がついたら、4人とも来てたってわけ」 「あ、そうなんだ。…………ん?でも、ナツミって、アヤとハヤトとは、学校別じゃないの?お知り合い?」 「私たち、4人とも同じ小学校だったんです」 「へぇ〜…………そういえば、トウヤとハヤト、仲いいもんねぇ(なんておいしいオプション!)」 「は?」 「気がついたら、荒野に1人で立っててさ。部屋にいたから、裸足だし、大変だったんだよ〜。北スラムで気を失って倒れてたところを、バノッサに発見されて、現在に至りマス」 「それ以来、バノッサの家で暮らしてる、と」 んっふっふ、とナツミがいやぁな笑いを漏らす。 「ぶっちゃけ、バノッサとってどこまでいってんの?」 「あ、それ、俺も聞きたい」 はぁ!? 一体何を言い出すんですか、この方たちは!! 「別に、どこまでって…………ただの、家の主人と居候の関係だし。バノッサ、イジワルだしさ〜。わかるでしょ?」 「またまたぁ〜…………」 「ナツミさん?あの〜…………もしも〜し?」 「ま、いいや。そういうことにしといてあげる♪」 「しといてあげるって…………!!だから、なんにも…………!」 「まぁまぁ、2人とも。、あれが私たちのお世話になっている家です」 アヤがくすくすと笑って、ある建物を指差した。 廃墟の多い南スラムの中で、わりとキレイな建物。 な………… 生フラット!!!!! 「遊びに来ることは話してあるから、遠慮しなくていいよ」 「あ、うん…………えっと、お邪魔、しまーす…………」 「はーい」 奥から可愛い声がする。 そして、ぱたぱたという足音。 続いて目に入ってきたのは…………。 ぴ、ピンク!!! …………じゃなくて。 リプレママだぁ〜〜〜vv 「いらっしゃい!」 「あ、お、お邪魔します!!」 「どうぞどうぞ」 「は、はじめまして!って言います!!」 「私はリプレ。よろしくね」 握手をすると、奥の部屋から前髪パッツン…………いや、ガゼルが顔を出した。 「そんなとこで話してねぇでよ、上がってもらえよ」 「あれはガゼル。口は悪いけど、気にしないでね?」 「よ、よろしくお願いしま〜す」 あがらせてもらうと、広間には子供たちと一緒に遊んでいるジンガが。 どうやら海賊ごっこらしい。 ラミはレイドに本を読んでもらっていて、ご機嫌だ。 「やぁ、いらっしゃい」 レイドが、本から目を上げて迎えてくれた。 ぽけっとこちらを見たラミ。目があったので思わず笑うと、かすかに笑ってくれた。 「…………でいいのかな?」 「あ、はい!!」 「私はレイド。剣術指導をしている」 「おれっちはジンガ!!格闘の旅の途中だ!!よろしくな!!!」 ブンブンと握手するジンガ。 う、腕がちぎれる……(汗) 「おい、ジンガ。困ってんだろ」 ガゼルが呆れたようにジンガを見る。 ジンガがぱっと手を離した。 そうして、解放された私は、持ったままのバスケットをリプレに渡す。 「えっと、これ…………パンなんですけど…………」 カノンが、変なものより、なにか食べ物とかの方がいい、と持たせてくれたもの。 リプレがにこっと笑って 「あら、悪いわね。ありがとう」 「ねぇねぇ、話しようよぉ〜」 ナツミの声に、私は笑って勧められた椅子に座る。 話するのはいいんだけどさ………… 私、パートナーにも会いたいんですが…………。 「おい、キールたちも呼んでこいよ」 たちってことは、やっぱり複数ってことなのね…………。 あぁ、フラットの家計、火の車だろうなぁ…………。 ガゼルがなんとなく不機嫌なのも、わかる気がする。 「私たちに、召喚のことを教えてくださってる人たちなんです」 「僕たちの世界のことを調べてくれてるんだ」 トントントン、と足音がして。 2組の男女が、ゆっくりと入ってくる。 ふわりとゆれる布。 ぎ………… ギザギザマントの子守唄!?(違) 「…………はじめまして。僕の名前はキール」 「あ、は、はじめまして………」 「俺は、ソル」 「私はカシスだよ〜♪」 「クラレットです」 うわぁお。ビックリ仰天だぁ。 だって。 すんげぇ誓約者たちに似てるもん。この方々。 …………ゲームじゃ、同じタイプの人は選べなかったけど、ここじゃそんなのもなにもないからなぁ。 「です。…………ハヤトたちと同じで、名も無き世界から来ました」 「いつ?」 「え…………っと、3週間と、ちょっと前から」 「………………」 な、なんで無言になるんですか……? キールさん、ソルさん、カシスさん、クラレットさん(長) 「…………おいおい、なに考え込んでるんだよ」 「…………いや。…………ところで、気になってたんだが…………そのペンダントは、サモナイト石かい?誓約済みのようだが」 アシュタルのことかぁ。 霊属性を扱う家系だから、霊のサモナイト石が気になるんだろうなぁ。 …………さて、どうやって説明しようか。 「え〜っと、そう。誓約済みのサモナイト石、なんだ」 「…………君が、誓約したのかい?」 「…………まぁ、なりゆきで」 「…………馬鹿な」 ま、はぐれ召喚獣である私が誓約できるなんて、ね…………変な話だもんなぁ。 「ちょっと、見せてくれないか?」 ソルがそういうので、紐をはずして、渡した。 「…………!!!なぜアシュタルが……!!サプレス最強の召喚獣じゃないか…………!」 ばっと他のパートナーもソルに近寄る。 …………そりゃーなぁ…………私も困惑してるし。 つんつん、と肘でつつかれる。 …………ナァツミさんじゃぁないですか…………。 「なんか、も何か力を持ってるみたいだね♪」 いや、そんな楽しそうに言われても…………(汗) 「すまない、状況がよく理解できないんだが…………」 「私もよくわかんないけど…………なんか、私が誓約した石のことを話してるみたい」 「誓約、できるのか?も」 「ん〜…………なりゆきで、あれとは誓約?したんだ。から、やりかたとかよくわからない」 トウヤに苦笑い。トウヤは、困ったように笑って、視線をパートナーたちに向けた。 「…………」 「は、はい!!」 キールが代表して、話しかけてきた。 ペンダントを返してもらって、またつける。そして、新たな霊のサモナイト石を取り出した。 「…………なにか、誓約してみてくれないか?」 「へ?……誓約?」 「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと!キール、何言って…………」 「簡単なものでかまわない」 せ、誓約っつっても…………。 何をどうしたらいいのか、わからないんですが……? 「…………えーっと…………」 とりあえず、その辺にあったランプを手に取る。 確か、燃えさかるランプは、リプシーが召喚できたはず。 「(ごめん…………あんまり用はないっていうか、ほぼ私的な用事なんだけど、来てくれないかなぁ?リプシー)」 祈ると。 石がだんだんと熱を帯びてきた。 そして、ぼわん、と小さな灰色の物体が飛び出る。 「…………あ」 石像のように動かない私たちを華麗に無視して、リプシーは、にこにこ笑って私のほっぺたに頬擦りをする。 か…………可愛いvv 柔らかい感触がたまらない。 あぁ…………なるほど。 これが癒されるってことなのね!!こりゃ癒されるわ!!!納得!!!! 「…………誓約、できたみたいだね」 カシスが一番先に我に返った。 続いて、ソル、クラレット……キールの順に。 「…………ありがと、リプシー。ごめんね?……戻っていいよ」 可愛く鳴いて、ぱたぱた羽を動かすと、リプシーは光に包まれて消えていった。 なんか…………疲れた。とっても。 誓約って……大変なのね(汗) カクン、と膝が折れる。 「!?」 「なんか…………すっごい疲れた」 私の言葉に、困惑したように顔を見合わせる、パートナー4人。 ……私、そんなに怪しい人物ですか……? ふ、とキールが息を吐いた。 「どうやら……君には召喚の力があるみたいだな。召喚術は、一般人がそうそう使えるものではないんだ。……くれぐれも、他の人には言わないで欲しい」 「あ、はい…………」 「それに、今の君の様子から察するに、それほど慣れているとも思えない。あまり使いすぎると、命にも関わるから、気をつけて」 「はい」 「…………改めて、よろしく、」 手を、差し出された。 …………認めてもらえたのかな? 恐る恐る手を出すと、きゅっと握られる。 かすかに、笑みの浮かんだ顔。 「…………よろしく!!」 部屋の空気が、暖かくなった。 「う〜ん…………リプレのおやつ食べたら、眠くなってきちゃったよぉ〜…………」 すっかり、仲良くなった私は、リプレにおやつまでごちそうになってしまった。 疲れて椅子に座ったままの私。右にはキールとソル、左にはカシスとクラレット。目の前には、誓約者たち、そして、ガゼル、レイド、ジンガがいる。 …………なんておいしい光景(それしか頭にないのか) エドスはどうやら、お仕事らしい(ちなみに子供たちはお昼寝) あーぁ。エドスに会えたら、バノッサと一緒に働いてたときのこととか教えてほしかったのになー。バノッサが働くなんて……ちょっと想像できない!聞きたい!! 「大丈夫ですか?」 アヤがあまりにも眠そうな私を見て、そっと覘きこんできた。 「うー……眠い……これも、キールの所為だ」 「なっ……僕の所為か?」 「だって、キールがか弱い私に、キツイことやらせるんだもん」 「はか弱いなんて柄じゃないだろ〜」 「ジンガ……その横から出てる黄色いのひっぱるよ」 なんか、口調までトロンとしてくる。 あぁ、眠い…………。 「おい、大丈夫か?…………子供部屋でちびどもと寝てくるか?」 よそ様のお宅だし、何より初めて来たところだし、いろいろ考えることはあったけど、ぼやける視界に白旗をあげた。 「…………そうさせて、もらおうかな」 「ったく…………」 ガゼルが立って、子供部屋のドアを開けてくれる。 よろよろと歩いて、入った。 「起こしてやるからよ、寝てろ」 「うん、ありがと〜、ガゼル。ごめんねぇ〜」 「…………手土産持参だったからな、歓迎だぜ」 手土産目的かよ、とツッコミたかったが、もういいや。 部屋の中央に、3人が仲良く寝ている。その隣に邪魔にならないように横になって。 「おやすみ〜」 疲れた体を癒した。 「…………寝たか?」 「あぁ」 ガゼルは静かにドアを閉めて、テーブルへ近づく。 「召喚って、そんなに疲れるものなのか?」 「まぁ、初心者はな。…………ま、その初心者にアシュタルが誓約できるはずがないんだが」 「、どっからどーみても普通だもんねぇ〜……」 「でも……リプシーと誓約したとき、アイツ、名前を呼ばなかったよな?……一般の召喚師、まだ初心者ならなおさら、『声』という媒体を介して 存在を呼び出すものだ」 「ソル……?」 不安げなアヤを見て、ソルは言葉を止める。 それをキールが引き継いだ。 「だが、彼女は……声を介さず、ただ願っただけで、召喚できた……それに、迷わず『ランプ』を手に取っただろう?霊属性のリプシーが出てくるランプを。間違えてもおかしくはなかったんだ……不思議なんだよ」 「キール兄様……」 「心配するな、クラレット。不思議なだけだ。はあのとおりだし……僕たちに危害を加えることなんて、ない」 「あったりまえじゃん!!が私たちのこと襲ってくるわけないじゃん!ねぇ!?」 ナツミの声に、ハヤトたちは頷く。 トウヤは笑って、今その人物がいる子供部屋を見た。 「ま、不思議と言えば、不思議だけどな。その力も、存在も」 一同納得。 今日初めてきたのに、初めてあった人物ばかりなのに。 間違えることなく名前を呼び、知っているかのように話す。 知らないはずのことを知っていたり、言っていないことを知っていたりする。 まるで、なにが起こっていたのか、なにが起こるのかを知っている、そんな印象。 「…………そのくせ、子供たちと一緒に寝るくらい、馬鹿素直だしな」 ガゼルの言葉に、笑いが起きた。 「…………なぁ、そろそろ、起こしたほうがいいんじゃないのか?」 トウヤの言葉に、そうだな、とハヤトが外を見た。 すでにキールたちは部屋に引き上げている。ジンガとガゼルは薪割りだ。 日も落ちて、暗くなってきた。 昨日の様子から察するに、カノンやバノッサはを大事に思っている、遅くなったら心配するだろう。 家まで送っていくにしても、遅い時間は避けたい。 2人は子供部屋に入っていった。 「…………うわー、熟睡だよ」 子供たちの中で、無防備に眠るを見て、ハヤトが小声で言った。 トウヤは、そのあどけない表情に苦笑する。 「…………。そろそろ起きないと。カノンたちが心配するんじゃないのか?」 「…………ん〜……?」 うなり声を上げるが、起きる気配はない。 子供たちを起こしてはならないと、小声で話しかけるが…………疲労がたまっているのか、起きる気配はない。 「どうする?」 「…………でも、このままにしておくわけにもいかないよな」 困り果てていると、玄関で騒ぐ声が聞こえてきた。 「……なんでオマエがいるんだよ!」 ガゼルの大きな声が聞こえてくる。 はとりあえずそのままにしておいて、玄関へ向かった。 「…………バノッサ?」 獣ならば牙をむき出しにして唸り声をあげている、そんな様子のガゼルを平然と見つめる北スラムの統率者、バノッサがそこにいた。 「よぉ、はぐれ野郎ども」 「なんでここに?」 バノッサは複雑そうな顔をしたが、やがて、チッと舌打ちをする。 「…………カノンに迎えに行けって言われたんだよ」 「…………あぁ〜…………」 「納得するんじゃねェ!!!」 「……おい、お前らなんでそんなに普通に会話してるんだよ」 ガゼルの刺々しい声。 ハヤトたちも、自分自身で不思議に思う。 敵対していたはずなのに、この会話はなんなのだろう、と。 「…………なんでだろうな」 トウヤが、そう呟くと、バノッサが口を開いた。 「…………おい、居候は?」 「子供たちと寝てる。起こしてくるか?」 「…………いや、オレ様が起こす。あいつ、寝起き、あんま良くねェ」 「さっきも、うなって起きなかったよ」 バノッサは、ズカズカとあがりこむと、『子供部屋』と書かれた部屋の前で止まる。 「ここか?」 「あぁ」 ドアを開けると、先ほどと同じ姿で眠るの姿が。 幸せそうに、口元が緩んでいる。 バノッサははぁ、とため息をつくと、そっと近くに寄った。 「…………バノッサ?何する気…………」 だ、と続けようとしたが、その光景に声が出なくなる。 「…………おい、居候。そろそろ起きねェと、喰っちまうぞ」 バノッサが、の耳元で囁いた。 瞬間、ガバッと起き上がって、ブンッと拳が振られる。 わかっていたかのように、軽くそれをよけ、パシッとその手をつかみ取るバノッサ。 「な、なんてこと言うのさ、この、美白帝王バカノッサ3世!!!手ェ、はなせぇぇ〜!」 「変な名前つけんのヤメロって、何度も言ってんだろうが!!」 大声に、子供たちが次々に目を覚まして……目の前で繰り広げられている光景に、目を丸くした。 「…………?」 はっ、と気がついて、トウヤと子供たちをみる。 グゥィィィン、と顔が紅く染まった。 「「「「「「(面白い……)」」」」」」 「…………あっ、いや…………これは、バノッサが勝手にやったって言うか……」 「こうでもしねェと、起きねェからな、このバカは」 「バカって言うな!美白馬鹿!!」 すっぱぁん、とどこから取り出したのか、スリッパでその頭をたたく。 「…………はぁはぁ…………あれ?そういえば、なんでバノッサがここに?」 「もっと早く、そこに突っ込んでくれよ……」 ハヤトが盛大にため息をついた。 いつの間にか、子供部屋に集まっているメンバーに、の顔がさらに赤くなる。 「えっ?あれっ?」 「バノッサは、を迎えに来たんだってさ」 「へ?」 ぽけっ、とがバノッサを見れば、バノッサはぷいっと顔を逸らした。 「…………カノンに言われたんだよ。早く帰ってこなきゃ、俺らふたりとも、メシ食わせねェとよ」 「そりゃ、大変だ!!帰らなくちゃ!!」 わたわたと自分の服の乱れを直して、バノッサの手を引く。 「…………何持ってんの?バノッサ」 握っている、袋に目を留めて、は質問した。 またバツが悪そうに、バノッサは目をそらす。 「…………カノンが持ってけって」 「早く言ってよ…………リプレ〜〜!!なんか、まだ差し入れがあった!!!」 ひったくって、リプレにその袋を渡す。 リプレが袋を開けるのを、隣で覗く。 出てきたのは、クッキーと思わしきお菓子と、メモ。 「あら。…………子供たちに食べさせてあげてください、ですって」 「リプレのもすっごくおいしかったけど、カノンの作るおやつもおいしいよ〜」 リプレがニコ、と微笑んだ。 ポン、と肩をたたかれる。 「ありがとう、食べさせていただきます、って伝えておいてくれる?」 「うん!!……バノッサ、伝えるんだよ?」 「なんで、オレ様が…………ッ」 「バノッサが持ってきたから」 がそう言いきると、バノッサは何も言わなかった。 結局、沈黙をもてあまして。 「…………帰るぞッ!!!」 ぐいっとの襟をひっぱった。 引きずられながら、後ろを振り返る。 「どうも、お邪魔しました〜!!今日は楽しかったよ♪」 「私たちもだよ〜!また来てね!?」 「うん!ナツミとは、スカートについてお話が…………いやいや。なんでもない」 「今度、一緒に釣りに行こうな?」 「あ、僕も一緒に」 「うん!!!…………何かあったら、北スラムに来てね〜」 「おい!勝手に呼ぶな!!!」 「いーじゃん〜。…………イダダダダダ!!!ほっへたひっはふはぁ〜〜!!(ほっぺたひっぱるなぁ〜!!!)…………いだっ。それじゃ、またねぇ〜……!!」 だんだん小さくなっていく姿。 嵐のように、去っていった一人の少女。 残されたフラットのメンバーは、最初に誰が笑い出したのか…………いつの間にか、みんながみんな、笑っていた。 「…………面白い子だねぇ〜、は」 「えぇ、本当に。…………バノッサさんも、今日は怖くなかったですし」 「バノッサの顔みた!?あれは、尻に引かれてるね!!!」 「こらこら、ナツミ。あんまりからかいすぎるのはよくないぞ?」 「そーゆートウヤだって、顔笑ってるよ〜」 「…………はっ、あいつも男だったってわけだな」 「どーいう意味だ?ガゼル」 「…………見えなかったのか?あいつ、ずっとの手、握ってたんだぜ?」 昨日も、手を握っていたことを思い出したのか、ハヤトがぶふっと噴出した。 「お、俺…………たった2日でバノッサのイメージ変わったかも……!!!」 NEXT |