「…………さん?」

呼びかけられた言葉の主を見て、思わず安堵の息が漏れた。

「カノン〜〜〜」

慌てて走り寄ってくるカノン。

「…………助けて。こんな重いの1人じゃ運べません」

私は倒れたバノッサを指差した。





Scene.7  2つの価値。



「どうしたんですか、一体!?」

「いや〜…………ちょっと、バトルした?みたいな」

ははは、と笑いを漏らした私に、カノンが目を見開く。

「バトル!?怪我はないですか!?」

「あ、ハイ、怪我はないです、大丈夫です」

カノンはほっと息をつくと、バノッサの近くにかがみこむ。

「……バノッサ、大丈夫だよね?気を失ってるだけだと、思うんだけど」

心配で聞いたら、カノンは少し微笑んだ。

「えぇ。大丈夫ですよ。呼吸もしっかりしてますし。でも……バノッサさんが、珍しいですね」

私は困ったような笑みを浮かべることしかできない。
なにせ……襲ってきたのは、ほとんどラスボスと呼べるレベルのあの男なのだから。

「……誰ですか?さんとバノッサさんをこんな目に合わせたのは」

「(怖っ!怒ってる!!)え、いや…………正体不明の方々?」

「正体不明って……オプトゥス関連じゃないですね?」

「ないです、ハイ。たぶん」

「…………とりあえず、家に帰ってからジッッッックリと話を聞かせてもらいますからねvvで?なんで座り込んでるんですか?」

「ちょっち、力入らなくって…………大丈夫、なんとか立てるまでには回復したから」

よろよろと立ち上がる私を見て、カノンが怪訝そうな顔を見せる。
…………その表情、可愛いッス(萌)

「大丈夫ですか?」

「うん、平気(じゃないけど)。バノッサは…………とりあえず、運ぼう?手伝うからさ」

「僕1人で大丈夫ですよ。…………よっ、と」

小柄なカノンが、180cm近くある(いや、180cm以上あるかもしれない)バノッサを普通に持ち上げる。
………………スゴイ。

「カノンって、力持ちだよね〜…………」

何気なく言った一言。
ふ、とカノンの表情に影が落ちた。

「その…………僕、は…………鬼神と人間の子、なんです…………だから」

「………………あ」

忘れてた。
…………カノンもまた、そうして捨てられたこと。

あ〜、と試行錯誤して。

「………………でも、力持ちなのはいいことだよ!!バノッサだって運べるし!!いや!運べても、なんにもなんないけどさ!?それに!誰かが言ってたけど、それ、どっちでもあるってことじゃん!?スゴイじゃん!2つの価値があるんだよ!?スッゴイじゃん!うん!スゴイ!!」

私のマシンガントークに、カノンがきょとん、とした表情を見せる。
そして、ぷっ、と小さく噴出した(ナゼ!?)

「そんなこと、言ってくれた人、初めてです。ありがとうございます」

超絶笑顔にお礼を言いたいのは、むしろ私です。ありがとうございます!!!

「…………それに、スゴイのはさんの方ですよ」

今度は、私のほうがきょとんとした表情になる。

「だって、バノッサさんとここまで話できる人なんて、いませんでしたよ?」

「あ…………そう?」

「えぇ。…………バノッサさん、さんには優しいし」

「優しい!?どこが!?」

「いろんなとこが。…………さ、帰りましょう。ご飯できてるんですよ。僕、呼びに来たんですから」

ニッコリと、バノッサを背負ったまま笑うカノン。
私は、笑って、カノンと一緒に家へと戻った。




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