……………すみません、私、昨日の昼間っから記憶がなくて…………。

だから、この状況も、まったくもって理解してません。

えーと……。
…………この恥ずかしい状況はなんなんですか!?




Scene.5  朝の出来事。


目の前で眠るのは、美白帝王。
睫長い……髪の毛サラサラ……などと、冷静に見ている場合ではない。
……なんなんでしょう?この背中に回された腕(汗)

いや……それよりも。

なんで私は彼と一緒に寝てるんデショウカ!?

待て待て待て。
そもそも、私の部屋じゃないぞ、ココ。
うん。明らかに昨日入った、バノッサさんの部屋ですよね。
しかも、これまた明らかなことに、バノッサさんのベッドな気がするんですが……。

…………あぁ、昨日襲われたもん、忘れるハズがない(いやな覚え方)

ぷるぷる、と頭を振って、現実に戻る。
目の前で寝ていらっしゃるバノッサ様。
……ダメだ、目の毒!!(え)
と、とりあえずここから出よう……。
なんとかして、この腕から抜け出さなければ……!

そーっと腕をはずしにかかる。
片手は腕枕(汗)になっていたので、この際、問題はない。
ただ、もう片方は……。

なぜかしっかりと、背中に回っていて。

「(ぬ、抜けないぃ〜〜〜)」

焦る。
そーっと腕をとって、ずらしながら体を起こす。
半分ほど体を起こしたところで。

と。

また抱え込むように手を回されて、腕の中へダーイブ(滝汗)
起きたのか!?
と思えば、静かな寝息で。
…………むしろさっきより密着度UP。
く、癖か……!?
バノッサ、女を抱くときの癖か!?これは!?

………………。
ちょっと暗い気持ちになりながら、もう一度外しにかかる。
するとまた、引き寄せられて、一言。

「…………寒い」

(暖をとってたのかよ!!!)

激しいツッコミを入れてから、息を吐く。
そして、自分にかかってる(というか、私にしかかかっていない)布団をバノッサにかける。
こ、これで寒くないだろう。だから、早く腕を解いてくれ……。

ふっと目が開く。
お、起きた!!

「ば、バノ…………!」

ポンポン、と頭をたたいて、自分にかかっていた布団を私の方へ押しやって、また目を閉じる。
……しっかりとまた私を抱え込むのを忘れずに。

「……(恥ずかしさで悶絶)」

お、恐るべし、寝ぼけバノッサ………!
寝起き悪すぎだよ……!

恥ずかしくて悶絶している場合でもなく。
とにかく腕を外そうともがく。

すると、さらに腕の力が強くなって。

「…………黙って寝てろ………」

掠れた声で、耳元で囁かれる。
いよいよ恥ずかしさがMAXになってきた。

「ば、バノッ………あの、その……」

寝息が首筋に当たってるんデスけど〜〜〜!?
恥ずかしすぎて、顔が熱くなってくる。

そこで。

ダダダダダダ…………バンッ!!

「バノッサさん!起きてください!さんが!!さんが、いないんで………す?…………あれ?」

腕を外そうとしてる私と、バッチリ目が合う。
とたんにカノンは顔を真っ赤にして。

「あ…………す、すみません………お、お邪魔しました………」

「ち、違っっっ!!激しく勘違いだよ!カノン!!」

「す、すみません、気が利かなくって……」

「違うっっ!こ、これは……そーゆー状況だけど、そーゆーことはまったくなくって……!!」

「…………でも、そしたらさんは僕のお義姉さんか……いいですねvv」

「よ、よくないよっ!………てか、そろそろこの騒ぎに起きようよ、バノッサ!!」

「あ、バノッサさんは最悪的に寝起き悪いですから。……しばらくしないと、起きませんよ」

「お、起きないって……こ、この腕を……この腕をなんとかしてください……っ(願)」

「しばらく一緒に寝てていいですよ。ご飯できたら呼びますしvv」

「いや、あの、外して欲し…………っ」

無常にもドアは閉められた(泣)
とたんに静かになった部屋に、めまいを覚える。
諦めて、ベッドに横になった。

「……バノッサぁ……」

反応なし。

「そろそろ起きようよ…………」

「…………一緒に寝た相手を抱きしめるのは、アナタの癖ですか〜?」

…………やっぱり反応なし。

ふぅ、と息を吐いた。

「…………起きないと襲うよ?チュ〜するよぉ?」

美白な頬を汚すよ!(コラ)
しげしげと肌を眺める。
ホント、白いなぁ…………。

「………………オイ」

掠れた、いつもより低い声。

「…………ば、バノッサ!!起きた?」

かったるそうに、寝転がったまま、口を開く。

「…………オレ様は起きねぇぞ」

「は?何をイキナリ(もういい加減起きてください。腕を外して〜〜〜)」

「……起きなかったら、キスしてくれんだろ?」

思考回路断絶。
そして、無理やり復旧させて。

「………………!!起きてたの!?」

「起きてない」

こ、こいつ…………(怒)
寝起き悪っ。

「バノッサぁ?」

「…………………(無視)」

「ぬ………………っ」

意地でも起きないつもりか…………っ。
あぁ、そう来るのか。
そう来るんだったら…………。

「遠慮なくするよ?その美白肌に」

また、眠りの世界に入ったのか。
返事がない(汗)

ま、寝てるうちにやって、起こして『ちゃんとやったぞ〜』って言えば恥ずかしさは低くなる(卑怯)

覚悟を決めて、その白いほっぺたに軽く触れるだけのキスをした。
…………は、恥ずっ…………。
自分でやったのに、恥ずかしさに顔が赤くなる。

くいっ、と手を引かれた。

「※☆△〒%*$#!?」

触れるだけじゃない、熱い唇を頬に感じて声にならない悲鳴を上げる。

手首を掴んだまま、ニヤリとバノッサは笑った。

「………………無防備だな」

「ば……………バカノッサ!!!オマエなんて嫌いだ〜〜〜!!!」

「…………ほぅ。そんなことを言うのか。……オマエ、状況わかってるか?」

ベッドに2人っきりvv
手首は掴まれ、拘束中vv
結論=襲われる体勢

「あ、あぁ〜〜〜!!(慌)」

「うるせぇ…………口ふさぐぞ」

「!?ね、念のため聞くけど、いかようにして……?」

聞いてみれば、意地悪くニヤリと笑う。

「…………実践してやろうか?」

「結構でございますです!!」

ブンブンと首を振って、なんとかバノッサの手を振り払う。
寝起きで握力が落ちてて助かった……。
ガバッと体を起こすと、即座にベッドから離れる。

「ば、バカノッサ!!!ご飯までには、ちゃんと目、覚まして来てよね!!」

言い放って部屋を出るときに気づく。
そろり、と後ろを向いた。
バノッサが不機嫌そうに身を起こすのが見える。

「バノッサ………」

「……あぁ?」

「…………オハヨウ」

「…………………おう」

返事を返してくれたのが、なぜだか嬉しかった。





「…………さんが!!さんがいないんで……す?あれ?」

カノンの声で意識が覚醒する。
でも、その声が途中で疑問に変わったところをみると、この状況を把握したみたいだ。

昨日、眠りこけたアイツをさすがにソファに放置はできなくて。
とりあえず自分の部屋に運んだ。
メシを食うのも面倒臭くて、アイツも起きる気配がなかったから、カノンにメシはいい、って言ったんだ。
…………コイツがオレの部屋にいるの、言うの忘れてたな。
んで、なんかもうアイツの部屋に運ぶのも面倒で。
…………結局一緒に寝たんだっけか。
だから、オレの腕の中にはアイツがいる。
…………さっきから、もぞもぞ動いてはいるが。

「しばらく一緒に寝てていいですよ。ごはんできたら、呼びますしvv」

「いや、あの、外して欲しっ……」

ドアを閉める音が聞こえる。
しばらくして、観念したのか寝転がる気配がする。
ふぅ、と吐かれた息が頬をくすぐった。

「…………バノッサぁ?」

返事する気なんかない。
返事をしたら、きっとコイツはこれ幸いとばかりに逃げていくだろう。
思考が正常に起動していない中で、それは惜しいと本能的に思っていた。

「そろそろ起きようよ…………」

起きる気なんてこれっぽっちもねぇ。

「…………一緒に寝た相手を抱きしめるのは、アナタの癖ですか〜?」

…………そんな癖はオレにはなかったハズ。
…………いや、むしろ『抱きしめる』なんて行為、どれくらいぶりにしただろうか。

もう一度吐息が頬をくすぐる。

「…………起きないとチュ〜するぞぉ?」

…………なんだって?
…………やってみやがれってんだ。
とりあえず、起きないでおく。が、その気配はない。
痺れを切らして、

「…………オイ」

声をかけてしまった。

「…………ば、バノッサ!!お、起きた?」

腕を外そうとしてるのが丸わかりで。
……キスもされてないのに起きてたまるか。
無意味な意識が頭を支配して。

「…………オレ様は起きねぇぞ」

言ってみた。

「は?何をイキナリ……」

「起きなかったら、キスしてくれんだろ?」

しばらくの沈黙。

「………………!!起きてたの!?」

「起きてない」

即答で返してやれば、黙り込む。

「バノッサぁ?」

怒った声が聞こえる。
返事をするのも面倒で、無視してやると、ぬ…………と黙り込む。

「遠慮なくするよ?その美白肌に」

…………美白だけ余計だ、とは思ったが口には出さず。

しばらくして。

柔らかい感触が頬に。

半ば眠りの世界に行きかけていた意識が、あっという間に覚醒させられた。

すぐそばにあった手を引き寄せると、簡単に腕の中に転がり込んできて。

「※☆△〒%*$#!?」

柔らかい頬に口付けてやった。

手首を握ったまま、笑ってみせる。
アイツの顔は半端じゃないほど赤くて。

「…………無防備だな」

「ば…………バカノッサ!!オマエなんて嫌いだ〜〜〜〜!!!」

その声にカチンときて。

「…………ほぅ。そんなことを言うのか。……オマエ、状況わかってるか?」

一瞬表情が止まったが、どうやら察したらしい。

「あ、あぁ〜〜〜〜!!」

苦悩の声。

「……うるせぇ…………口ふさぐぞ」

「!?念のため聞くけど、いかようにして……?」

「…………実践してやろうか?」

「結構でございますです!!」

ブンブン首を振って、オレの手を振り払う。
手が外れたとたん、起き上がってベッドから離れる。

「ば、バカノッサ!!!ご飯までには、ちゃんと目、覚まして来てよね!!」

なんてセリフを吐くもんだから、ちょっとだけムカつく。

ドアを開けるのを見ながら、ゆっくりと体を起こした。

「…………バノッサ」

「……あぁ?」

「………………オハヨウ」

言われた言葉に驚いて。
返す言葉が見つからず。

「………………おう」

出た言葉はそれだけだった。




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