それは見えない糸をたぐるようなこと

暗闇を手探りで進むようなこと

可能性は無きに等しい

それでも

それでもそういうことを信じるのがオマエだったから



Scene.33  大地を駆ける想い。



召喚したツヴァイレライに乗ってやってきた、森の祭壇。
1週間前に見た時と、なんら変わっていない場所。

「…………もう来ないと思ってたのにな」

「来たくなかったけど…………一番、条件がいいんだもん、ここ」

「そうですね……ここ以外ですと、余計な負担がかかりますし」

順に地面に降りて、召喚の準備を始める。
次いで、バサリ、と翼がはためく音が頭上でした。
頭上を見上げれば、レヴァティーンに乗った、キール、ソル、カシス、クラレット。

「遅れてすまない。サモナイト石を持ってきた」

「ありがと、キール」

召喚術の準備をし始める8人の召喚師たち。

「……よくもまぁ、これだけ召喚師がそろったもんだな」

ポツリとハヤトが呟いたのを、バノッサはあきれた口調で返す。

「オマエらがそろえたんだろ」

「まぁ、そうだけどさ……」

「準備、出来たよ」

たくさんの、透明なサモナイト石。
名もなき世界からの召喚獣に必要な、石だ。

は、霊属性の気配もあったから、一応、紫のサモナイト石も用意しておこう」

そう言って、キールが紫の石をいくつか地面にばら撒く。
バノッサがチョーカーを手に取った。

「………………いいんだな?」

全員が、息を呑んだ。

心に思うことは1つだけ。

――――――オマエに、会いたい。



今すぐ会って、抱きしめたい。



「誓約者たる我らが望む」

「我ら召喚師が望む」

声とともに、光が生まれる。
弱々しかった光は徐々に強くなり、紫と白色の光が入り混じって神秘的な色合いを醸し出していた。

「名も無き世界の召喚獣よ、我らの呼び声に答えてくれ!」

石から発せられるのが、光だけじゃなくなり―――
何か見えない力に体が押され始めた。

巻き起こる風は木々を揺らし、葉を落とす。
やがて周囲のものが徐々に光に包まれていった。
まるでこの空間だけ、この世界のものじゃないみたいだ。

眩しさにたまらず、目を閉じた。

目を閉じれば浮かんでくるのは、ただ一人の姿。


怒った顔。

心配そうな顔。

泣き顔。

……笑顔。


目を閉じてもなお、

―――映る映像は、眩しかった。

願うことは、ただ一つ。

ただ、

ただオマエに。



『会いたい』



生まれてはじめて、心から願った。

こんなに人を想うことができるものなのかと、不安にもなった。

今まで生きてきた道が誉められたものではないのも知ってる。

人を愛する資格なんてない、と言われればそれまでだってわかってる。

今までの報いだというのなら、受け入れなければならないだろう。

だが、それでも、もし。
…………………もし『神』というものがいるならば。

――――――どんな形でもいい。アイツに会わせて欲しい。




風が強くなり、力の影響で地面が揺れる。

強烈な光が大地を貫き、地面が抉れた。

―――想いが、大地を駆けめぐった。



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