Scene.30α  暗闇の中で。


『…………めろ…………』

誰?まだ寝かせてよ、眠いんだから…………。

『……ざめろ………』

うるさいなぁ。眠いんだってば、いろいろあって。

……………。

……あれ?
いろいろ?

……いったい、なにがあったんだっけ?

『………目覚めろ、名も無き世界からの召喚獣よ』

―――!!!!!

ハッと意識が覚醒した。
…………とは言っても、周りが真っ暗でなんなんだかわからない。

『目覚めたか…………』

「ッ……誰!?」

聞こえる声にあたりを見回すけれど、そこに人らしきものはいない。
声は、闇の中から聞こえていた。

『我はお前たちが『魔王』と呼んでいたものだ。…………今は、オマエの体の中にいる』

「…………ちょっと、勝手に人の中に入んないでよ!出てってよ!!」

『無理だ』

「うわっ、超キッパリ!!!」

『我はお前と同化した。離れる手立ては、皆無だ』

機械のような抑揚のない声に、背筋が粟立つ。
―――でも。
負けない。

「…………それなら、ちょうどいいわ。…………あんたが世界滅ぼすっていうんなら……止めることが、できそうだもの」

『………………ほぅ』

「あっ、すごいバカにしたね!?」

『フッ…………出来るものか、お前に』

「…………………ふふん、守るものがあるとね、人間、強くなれるのよ!!!」

そう言って、虚空を睨みつける。
戦ってみせる。
抗ってみせる。

大事な人を、守ることが出来るなら。

……怖くなんか、ない。

――――――……魔王になんか、させねェ!

バノッサの声が、聞こえた気がした。
そして、グンッと背中を押された感じがして。
真っ暗だった視界に、光が溢れる。

『!?なんだっ?引きずられ…………ッ』

私も、意識を無理やり引っぱられるような感覚を覚える。
その途中で見えた―――懐かしい風景。
満ち足りた力。
同化してしまった魔王。

――――――方法は、これしかない。

そして、私は目覚めた。




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