信じあうという、大きな力

それは、どんな魔力よりも強大で

その威力はこの世のなによりにも勝る

そんな力を

私は持つことができるのかな



Scene.26  最後の―――。



蒼の派閥戦が、終わった。
あっという間だった。
誓約者たち、パートナーたちの力に、派閥は圧倒され、決着はすぐについた。

終わって、グラムスさんたちの言葉を受け、私たちは帰路についた。

…………とは言っても、フラットの面々とは途中で別れた。
なんか、私って邪魔者?って感じだったから。
街の近くまで一緒に帰って(さすがに、すんなりと別れてくれなかった)後は、探検することにした。

せっかく初めての街の外なんだし!!
ふらふらちょっと見て回ろう〜!

なのに。

「あぁ…………返して、私のルンルン気分(涙)」

目の前には、数匹のはぐれ召喚獣が。つーか、ぷよぷよしたゼリーが。

「今日は、ぷよぷよ気分じゃないのよ〜〜〜!!!」

うようよと寄ってくるゼリーども。

「……ためしに『ファイアー!!!』とか言っても……」

…………連鎖して、消えてくれるはずないよねvv(涙)

ゼリー軍団どもは、私のほうに、じりじりと近寄ってくる。
いやぁぁぁ!!気色悪い〜〜〜!!!

「来るなってば〜〜〜!!!もう、アシュタル呼んじゃうよ!?」

石に気持ちを集中させようとした、そのとき。

ザシュッ………………

ゼリーが真っ二つに割れて、どろどろとした液体にかわる。
ヒィィィィッ!こっちも気色悪い〜〜!!

「…………おい、居候。テメェ、なんでこんなところに1人でいやがる(怒)」

「ば、バノッサ〜!!」

「バカか、テメェは」

といいながら、ばったばったとゼリーを切って切って切りまくる。

「…………もしかしなくとも、怒ってらっしゃる?」

「当たりめぇだ、バカ!あいつら(水色頭とグラサン)に、オマエが街の外に行くなんて聞かなきゃ、こんなとこ来なかったのによ」

「な、なんだよ〜!誰も来いなんて言ってないじゃん!」

「うるせェ。とにかく、とっとと帰るぞ」

「えぇ〜〜〜!!!なんでぇ!!せっかく街の外に来たのに!」

「外にゃ、うようよと危ねぇのがいるんだよ!1人でふらふらすんな!せめて、あの緑頭(アシュタルのこと)でも呼んでおけ!」

「だってぇ〜…………」

「だってもなにもねェ!!…………そんなに見てェんなら、今度、カノンと来ればいいじゃねェか」

あ。

「んだ、そのツラ」

「カノンで思い出した。私、お弁当貰ったんだ!!」

「あぁ?」

「せっかくだから、食べて帰ろう?ね?ね?」

私の、言い知れない執念に圧倒されたのか、バノッサは、その場にさっさと腰を下ろした。
私も、向かい合うように座って、リュックからお弁当箱を取り出す。

「今さっき襲われたばっかりなのに、なに、のんきにメシ食ってんだよ」

「……いっただっきま〜す」

バノッサの言葉を、軽く流して、ぱかりとあければ、可愛く整えられたお弁当。
ウインナー(こちらにも、ウインナーはあった)は、タコさん。
ゆで卵はギザギザに切れてる。

「えへへ〜。まずは、たまごからvv」

楊枝を持って、口元へ運ぶ。
程よい塩加減が、食欲を誘う!!

さて、ウインナー、と手を伸ばしたところ、ひょいっと狙ってたウインナーを食べられた!

「あっ!!私のタコさんウインナー!!」

「あぁ?テメェのだったら、名前書いとけ

できるか、んなこと!!って、その間に、おにぎりまでぇぇぇ!!!」

「うるせぇ。さっさと食わねェとなくなるぞ」

「私のお弁当―――!!!」

今度は、2人分……いや、3人分は作ってもらおうと、心から思った。





さて。なんなんでしょう、この目の前に広がる白いものは。

夕方バノッサと一緒に帰ってきて、カノンの夕食を食べて、部屋に戻ったとこまでは覚えてる。
そして、自分の意志でベッドに入ったところも覚えてる。

けど、目の前に広がる光景に、まったく身に覚えがないんですケド―――!?

デジャヴ!?

っていうか。

「なんでバノッサが私のベッドに―――!?」

「…………ぁ?」

おぉっと、バノッサが起きてしまう。静かにしなきゃ。

…………………………って、そうじゃなくって!!
むしろ、起こすべきだろ、この状況!!

「ちょ、ちょいっとバノッサさん?」

「………………………………あぁ?」

うっすらと、目を開く。

「なんで、あなたはここにいらっしゃるので?」

「オレ様の家だ、どこにいようと…………」

「あなたの勝手でございますが、なにゆえに………?」

「……………………なんとなくだ。……移動するか…………」

といって、半目で(かなり怖い)私を引きずりながら、自分の部屋へ向かう。

「って、ちょっと待て!!こら、移動するなら自分だけで……バカノッサ―――!!!」

バノッサは、さっさと自分のベッドに入ると、私をベッドに引きずり込んで、壁際に寝かせる。
挙句の果てに、寝かしつけるように、ぽんぽんと叩いてきやがった。

「ちょっと―――!!!寝ぼけるのも、いい加減にして―――!!!」

「………………………………寝ろ」

「と申されましても―――!!」

「……………………ぐー」

「って、寝てるし…………」

私はぐったりと、ベッドから抜け出すように、身を起こした。

ぐい。

押し込められた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!もう…………ッ」

しょうがない、と、私はできるかぎり、バノッサから離れて(結局引き寄せられたけど)寝ることにした。

そして。

それが、最後の。

最後の――――――。



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