言葉でしか伝わらないもの 言葉で伝えて欲しくないもの いろんな想いが ここにはある Scene.25 救出大作戦。 城を出てから、1度私たちは家に帰った。 フラットが尋常じゃない状態だから、一応、部外者である私たちはいないほうがいいと思ったこと。 それに、一応カノンに無事を知らせに、ね。 無言でフラットへ戻るメンバーを見ると、いたたまれない気持ちが溢れてきたが、どうにもすることはできない。 どうしようもなく、家に帰ってからも、憂鬱な気分が続いた。 バノッサは、家に帰って、すぐまた出かけてしまった。 もう、夕方だというのに。 どこへ行ったのかは知らない。 さっさと着替えて、なんにも言わずに出て行った。 なんだか、少し寂しくて、ぼんやりと部屋で過ごしていた。 次は、なにが起こるんだっけ? 頭にゲームをしてたころの記憶を呼び起こす。 オルドレイクが、パートナーが自分の子供だと告げる。 それから…………? それから…………なんだっけ。 落ち着け。 落ち着いて思い出せ。 「………………さん?」 ドア越しに声が聞こえる。カノンの声だ。 いつもと変わらぬ声に、安心する。 ぷっつりと思考は中断。 「ご飯、できましたよ?」 「……うん!いま行く!」 とりあえず、ご飯を食べてから、思い出そう。 ご飯を食べて、片づけを手伝い、お風呂に入った。 あまりの気持ちよさに、うつらうつらとしかけて、やっと思い出す。 「あぁ、ギブソンさん、カッコイイぞ事件かぁ」 そうだった。VS蒼の派閥だった。そう、ギブソンさんの言葉に泣いてたじゃん! なにやってたんだ、私! そう、蒼の派閥に連行されようとする誓約者たちだ…………。 確か、ガゼルたちが救出に行くはず。 でも、どこだっけ、場所。 「………………………明日、ガゼルたちにくっついていけばいいか」 もう、眠いし。 私は、ベッドにもぞもぞと入ると、そのまま寝てしまった。 相変わらず、ゲームの記憶に頼っている自分に、自己嫌悪。 朝起きても、バノッサは家にいなかった。 私は、ご飯も早々に、カノンに出かけることを告げる。 「カノン〜。ちょいっと出かけてくるね。夕方には戻ると思うけど」 「はい。じゃあ、お弁当持って行きますか?バノッサさんがいないおかげで、食事が余っちゃって。余りものでよかったら……」 戦闘するのに、お弁当持っていっていいのかな? っていうか、カノンが、すでにお弁当箱を探し始めてる。 …………ま、いっか。 カノンのお弁当おいしいしvv 腹が減ってたら戦はできないよね!!!(決定) なぜかもうできているお弁当を、小さなリュックに詰めて、ついでに2、3個バノッサの部屋から役に立ちそうなものをかっぱらって―――もとい、借りてきたものをいれた。 「よしっ…………じゃ、いってきま〜す!」 「夕飯までには、帰ってきてくださいね〜」 なんか、のほほんとしちゃったよ、私………………。 さて。フラットへ行ったのですが。 すでにいないんでございますよ、あの方たち!!! ちょっと、家出るの遅かったかな…………。 とりあえず、家に残っていたリプレに、行き先を聞いて、大急ぎで街の外に出る。 外に出る途中、水色頭と、グラサンに会った。 「よぉ、バノッサさんちの居候。出かけるのか?」 「出かけまっす!!バノッサに会ったら、バカ〜!ちゃんと家に帰って来い!って言っといて」 「いや、言えねぇし!そんなこと言えるの、オマエだけだから」 「そうなの?」 「そうなの。…………街の外に出るんだったら気をつけろよ?はぐれがうようよしてるからな」 「は〜い!じゃ、また」 1人で街の外に出るのは、初めてだから、ちょっとドキドキ。 道をそのまま進んでいると、不意に腕をひっぱられた。 「!?な………っ……むぐ」 「静かにしろって!!」 「ガゼル、キミがうるさいって」 ミモザ姉さんが、ガゼルのほっぺたをひっぱった。 「なんでがここにいるんだ?」 「えっと…………」 ゲームでストーリーを知っていたから、追ってきたとは言えないし。 う〜ん………………。 「ん〜と……なんでかな?……えと、そーゆーガゼルたちは、なんでこんなところに?」 私が話をごまかすためにガゼルに話を振ると、案の定、単純なガゼルは食いついてきた(笑) 「ハヤトたちが連れてかれた。…………ギブソンは安全は保障する、と言ってた。でも…………それが本当でも、アイツたちはどうなるんだ?一生、監視されて暮らすのか?……そんなのは、許せねぇんだよ!!」 「魔王、という可能性をもった彼らを、野放しにするとは思えない。一生、束縛されて過ごすことになるだろう……最悪の場合、彼らの存在が消去されるかもしれない」 「ガゼル……レイドさん」 「俺たちは、助けたいんだ。…………も、来てくれるか?」 「…………うん、もちろん!!」 そして、私たちは走り出した。 向こう―――蒼の派閥は大人数で移動しているから、歩みが遅い。そこで、先回りをして、待ち伏せすることにした。これは、すべてミモザ姉さんの提案。 「戦闘できる場所は、限られてる。姿を見せたら、すぐに飛び出すのよ。躊躇してはダメ!」 「、戦うんだけど……どうする?なにか、持っておくか?」 「…………ん〜と…………召喚術で……ナントカシマス」 「来たぞ!」 「出ろ!!」 まず、真っ先にガゼルが先陣を切る。 「悪いが、そいつらを返してもらうぜ!」 全然悪いと思ってないくせに!! 「ガゼル!?それに、みんな!!……まで!」 「へへっ……事情を聞いてね。…………やだもん。私、もっともっとハヤトたちと話したり遊んだりしたいんだから!!」 「馬鹿な……我々を敵に回すというのか!?」 「貴方たちに貴方たちの考えがあるように、私たちにも譲れないものがある。私たちは二人を信じる!そのためなら、あえて貴方たちとも戦う!」 「そいつらは、俺たちの大切な仲間なんだ……理由はそれで充分だ!そうだろう?」 みんなの言葉が、胸に突き刺さる。 これは、きっと言葉でしか伝わらない想い。 言葉で、伝えたい、想い。 グラムスのおっちゃん、ごめん。 あなたが組織として、任務を遂行しなければならないのは、わかってるんだ。 でも。 それ以上に、守りたいものが。 伝えたいことが。 あるんだ!! 「もっともっと、ハヤトたちと一緒にいたい!……たとえ、魔王であっても、ハヤトたちは、ハヤトたちなんだから!……そう、私は、信じてる」 そう、どうであろうと、ハヤトたちはハヤトたち。 ―――前にバノッサが、その言葉で私を助けてくれた。 同じように、私が今度は助けることはできないだろうか。 せめて。 せめて、この想いを届けたい。 やがて、ギブソンさんが。 「正しい答えなど、どこにもないんだ。大切なのは、その答えを正しいと思えるのかどうかだったんだ。…………私も、彼らと同じだ。君たちのことを、私は信じたい……。 たとえ、今まで自分が信じてきたものを、裏切ってしまったとしても!!」 そう、答えは、自分が『正しい』と思ったこと。 それが、答え。 一人一人、違ってもいい。 「帰るんだ!君たちの本当の居場所へと!!」 居場所は、ここに、ある。 それが、『答え』だ。 NEXT |