この先、どうなるか私は知ってる

おそらく、彼らにとって、1番辛いことが起きると知ってる

だけど、それを言うのは

…………ルール違反だから。

口を閉ざすしかないんだ。





Scene.24  崩された信頼。



城。
本来のゲーム展開なら、バノッサが居城としてるはずの城。

が。

とうの本人、ここにいるし―――…………

「あぁ?なんか言ったか」

「いいえぇ?なんでもございません」

「テメェ…………やる気あんのか、コラ」

「…………やる気ったって、私、なにすればいいのさ」

「………………………」

なんにも言われないってのも、ムカツク。
…………ここは1つ、アシュタルさんでも呼び出して、戦ってもらうか…………?

「…………さて、さっそくのおでましよ?」

ミモザ姉さんの声に、わいわいと騒いでいたメンバーの顔が、ニヤリと変わる。
すでに、ジンガなんて、やる気マンマン、グローブをきつく締めなおしてる。

「グズグズしてる暇はない!蹴散らしていこう!」

ハヤトの声に、いっせいに、戦闘に入る。



………………さて、取り残されたワタクシ、はといいますと。

アシュタルを召喚する間もなく、悪魔兵が消えていくのを見ています。
みんな、恐ろしく強いんですもの。一体、レベルなんだよ!?50か!?

ぱんぱん、とナツミが手をはたいて、ほこり?を落とす。

「さ、行こっかvv」

………………あぁ。

怖い。

怖すぎるよ、ナツミさん。

悪魔兵をさっくり蹴散らして。
笑顔で先に進む誓約者たち。

………………そして、その後ろに見えるのは、パートナーたち。
必死に感情を隠そうとしてるが、事情をしってる私は、わかる。
…………そーだよね……倒そうとしてるのは、君たちの、父親なんだよね……。

それでも、君たちがいつかは乗り越えなきゃならない壁だから。
私が口出していいことじゃないから。

「…………さ、いこっ!大丈夫、なんとかなるって」

それしか、言えない。
言われた4人は、ポカン、と私を見る。
あまりにも、意味不明なセリフ。
そりゃそうだ。なんにも知らないことになってるんだから。
だけど、言わずにいられなかった。

これから、起こることを、思えば。




王の間にいる、悪魔兵たちもあっさりと蹴散らし、黒ずくめの男を問い詰めた。

「…………オルドレイクッ!どこだっ!」

「…………そんなに騒がずとも、私はここにいる」

玉座に、いつの間に現れたのか、オルドレイクが座っていた。

「貴様の目的は何だ?」

「この世界を滅ぼし、新たな世界を作り出すことだ」

「…………馬鹿な!そんなことが人間の力で出来るはずがない!」

オルドレイクが、ニヤリ、と笑った。
…………やめてよ、その笑い。

「人間だったらな…………そこの召喚獣は知ってるだろう……悪魔の力を」

そう言って、私を指差す。
…………悪魔って、アシュタルのこと?

「アシュタルは、悪魔じゃないもん…………私の、友達だよ……もっとも、友達にするには、歳をとりすぎてるけどね」

「……この世界を滅ぼすのは、サプレスの魔王だ。私ではない」

その言葉に、みんなが驚愕する。
そりゃそうだ。魔王なんて、本の中でしか見ない言葉だもん。

「貴様らも召喚師ならば知っているだろう、サプレスの悪魔を支配する者のことを。我々はそれを召喚することができるのだ」

「でたらめを言うな!!」

ギブソンさんが、声を荒げる。
やばい…………。
そろそろだ。
そろそろ…………。

「でたらめではない。我々は何年もかけて、その準備をしておるのだ。それに、失敗はしたが、1度はその儀式を実行しておるのだよ。……そうであろう、我が子らよ」

………………来た。
誓約者たちが、ゆっくりと、パートナーたちを振り返る。

「答えよ!?キール、ソル、カシス、クラレット!!」

「…………そのとおりです、父上」

代表するように、キールが言葉を絞り出す。

「…………うそだろ?」

ガゼルの声が、震えてる。
みんなが、信じられない目で、パートナーたちを見てる。
見てるこっちの胸が、苦しくなる。

「嘘ではない。そのものらは、儀式の責任者たちだ。そして、お前たち―――ハヤト、トウヤ、ナツミ、アヤ。お前たちは、誓約者などではない。…………偶然、魔王の力を一部受け入れてしまっただけの存在……出来損ないの、魔王なのだ!」

「もう、やめて!!」

ナツミの声に、オルドレイクが、さも楽しそうに笑う。

「…………我が子らよ……この者たちの始末は、お前に任せよう。儀式を失敗させた罪を 償って、我らの下へと帰ってくるのだ」

そして、姿が、消えた。

「……………………うそ、だろ?」

オルドレイクは、あっさり姿を消した。
崩された、信頼だけを、置き去りにして。




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