「…………おい」

バノッサの言葉をとりあえず、無視。

「…………なんでコイツらがいるんだよ!」

…………いーじゃん、楽しいんだし。





Scene.16  リインバウム風お花見。



アルサックの花も咲き誇り。
空は雲ひとつない快晴。
まったくもって、すばらしいお花見日和!

だけど、バノッサとカノンと私の3人でお花見して、何が楽しいというのだ。バノッサは1人で酒だろうし、そしたらカノンと私しか話さないじゃないか。
それだったら…………
フラットのメンバーを呼んでしまおう!という私のすばらしい計画がわからないのかしら?
たしか、フラットのメンバーは花見をあの根暗で実際年齢より10は老けて見られる(前置き長)マーン三兄弟の長男に邪魔されているはずだ。……ここまで話が変わっていると、邪魔されてるかもわからないけどね(汗)

「満開ですね」

「すごいねぇ……やっぱり桜に似てるよ」

「なんか、思い出すな、日本を」

「俺、入学式思い出すな」

口々に感想を述べる誓約者's。
……確かに、アルサックは桜に似ている。
そして、緑とピンクから思い浮かぶものといえば……

「ん〜……桜餅が食べたいぞ〜〜〜〜!!!っと!」

「あ、いいな、それ……リプレに言って、今度作ってもらおうか」

「あ、賛成賛成vv……でも。年頃の娘が食べ物のことばっかっていうのは……」

なぁにか言ったかな、ハヤトくん?

ハヤトの頭をグリグリ。わっはっは。聞こえんなぁ〜
でも、作ってくれそうだな、リプレ。……なんせ、ラーメンまで作っちゃうんだから。
シオンさん、桜の葉っぱ持ってそうだし。……というか、アルサックの葉っぱで代用できそうだし。

っていうかさ…………。

「…………なんか、やたらと人数が多いよね」

「誘ったら、みんな来てくれたからね……シオンさんたちもいるし。……あ、紹介するね」

「あ、シオンさんは顔見知りだよ。……ね?シオンさん」

「お久しぶりです、さん。……店に来てくださらないから、会いに来てしまいましたよ」

うわわ、そんな、シオンさんにそんなこと言われてしまったら……vv

「今度、絶対行きます〜!(というか、むしろ今すぐ行ってもいいです!)」

「ぜひいらしてください。……そして、こちらが、私の不肖の弟子で……」

「アカネでっす!」

「はじめまして!です!よろしくね」

「うん、よろしく〜」

同年代の女の子ということで、アカネとはすぐに打ち解けられた。
……可愛いよ、冗談抜きでvv

そして…………。

「モナティですの〜。この子はガウムですの〜。よろしくですの〜vv」

あああああああ〜〜〜〜!!!可愛い!メチャクチャ可愛いよ!モナティ&ガウム!
抱きしめて頭を撫で回したいのを我慢して、握手する。
あぁ……生きてて良かった……vv

〜〜〜!!!」

ドンッと背中に衝撃が。
この声わ…………

「カシス〜〜〜vvクラレットもvv」

「今日は、いっぱい話しようね!兄様たちも、が来るからって、今日来たんだよ〜」

「やぁ、

「元気か……って、聞く必要もないな」

「キールにソル!元気だよ〜!」

「いろいろと、君には聞きたいこともあるし、ね。カシスたちがうるさいから」

「む。なによ、それ。キール兄様、も行くって言ったら、1も2もなく承諾したくせに」

「なっ……カシス!」

ずいぶんと、パートナーたちの表情が柔らかくなった……気がする。



「レイドvv」

「紹介するよ。彼はエドス。私たちと同じく、フラットのメンバーだ」

「はじめまして、だな。エドスだ。よろしくな」

です。よろしくお願いします!」

エドスとの初対面。
…………もろ肌脱ぎのにーちゃんは、やっぱり今日も脱いでいた(笑)
バノッサとの昔話も聞きたい。

「えへへ、楽しくなりそうだねぇ」

私は笑いながら、シートを広げて、準備に取り掛かった。



ぎゃっはっはっは。
笑い声が聞こえる。ガゼルの声だな。
みんないい感じに出来上がってきたみたいだ。

「…………おい、居候……」

「あぁ、バノッ…………」

………………ぽかん。
開いた口がふさがらないとは、このことを言うのか。
そして、次の瞬間、私の意に素直に―――いや、反してと言っておこう。
その開いた口から音が出た。

あーっはっはっはっはっは!!!!

「……笑うなッ!居候!テメェ、2度目だぞ!?」

笑わずにいられるかってんだ!て、天下のバノッサが……バノッサが……子供両腕に侍らせて!

侍らすって言うな!オラ、ガキども!さっさと退け」

それでも、フィズとラミはバノッサのマントを掴んで、アルバは腕をつかんでいる。
バノッサは、どかせようと思えば簡単に出来るだろうに、あえてしないのは、バノッサの優しさだろう。

「バノッサ、ほ、保父さんになれるよ〜」

なってたまるか!

「兄ちゃん、海賊ごっこやろーぜ!兄ちゃん、悪者のお頭って感じがするもん!」

「お兄ちゃんは、私とおままごとするに決まってるじゃない。お兄ちゃん、隣のおうちの不良な旦那さんに決まりね!」

ど……どれもバノッサを的確に言い表していてナイスだよ!!(大爆笑)

「んじゃ、バノッサ。私はカノンたちとお団子食べてくるから〜」

「あっ、こら、テメッ…………」

バノッサを尻目に、お団子(きっと誓約者たちのリクエストだろう)を食べている、集団の中へ入っていく。

「お団子、お団子〜♪」

は、本当に花より団子って感じだな」

「あ、ジンガ、そーゆーこと言う。ふ〜ん……てぃっ、頂き!」

両手に持っていたお団子を1個頂いた。ジンガ、持ちすぎだし。
ってか、どこでならったのさ、日本のことわざ

「あっ、俺っちの団子!」

私は団子を口に入れて、咀嚼した。
もぐもぐもぐ…………ごっくん。

「う、美味い…………っ。リプレが作ったの?これ」

「え?う、うん……どう?」

「美味すぎっ!」

さんって、こーいうの好きなんですか?」

「うん!カノンの作ってくれるお菓子も大好きだけどvv」

「リプレさん、よかったら、これの作り方教えていただけませんか?」

「もちろんいいわよ?でも、カノンくんのレシピも教えてね?」

わぁ……今度、遊びに行くときが楽しみだvv
そっとその場を離れる。
お団子を何本か持って、大きなアルサックの木の下に1人、座り込んだ。

「…………っふぅ……やっぱ、キレイだなぁ……どの世界でも、花は」

呟いてから、お団子をパクリ。
……あぁ、至福のとき……vv

ザァッと強く、風が吹いた。

花びらが、舞う。



さくら さくら いま咲き誇る
刹那に散りゆく運命と知って



あぁ、あの歌はこのことを言っていたのか、と思った。
すぐ散り行く運命と知っているのに、その瞬間に燃えるように咲く、花。
どうしても、この花が桜に見えるのは、日本が恋しいからだろうか。


小さく、歌う。





ひときわ大きな木の下に、ポツンと座る人間。
先ほどの文句を言ってやろうと、あえて気配を消して近づく。


さくら さくら いざ舞い上がれ


かすかな声が、聞こえる。
呼応するように、花びらが、舞った。


永遠にさんざめく光を浴びて


光を、浴びているのは
アイツだ。


さらば 友よ また この場所で会おう


―――心臓が、はねた。
花びらに包まれる姿が、透けて見えて。

無意識に、手を伸ばす。

「…………っ!?……なんだ、バノッサか」

掴んだ肩は、確かな温もりを。
存在しているという、確かな証拠を、与える。

「文句でも言いに来たの〜?……ん〜。文句は戻ってからね?」

ゆるやかに、肩の手をはずされて。
立ち上がって幾分近づいた顔。
先導するように、手をひっぱられる。

何も言えなかった。

ただ、つながれた手を、軽く握り返すことしか、できなかった。



「仲良く、手をつないでご帰還かぁ?」

「うっふっふ。ガゼルちゃんも手つなぎたいの?」

「なっ……誰が、そんなことっ……!」

「は〜い、はいはい。……って、何?この有様」

シートの上で酔いつぶれて(誰だ、酒を飲ませたのは)寝てるのは、ジンガ、アカネ、ハヤト、そして仲良く隣り合っているカシスにナツミ。みな、同じように真っ赤な顔をして倒れている。モナティはガウムと一緒に、疲れて眠ってしまったらしい。
キール、アヤ、クラレット、トウヤに、シオンを加えた5人は……まだニコニコ笑いながら酒を飲んでいる。……うわぁ、恐ろしい。ガゼルとレイドとエドスはちょっと遠巻きだ。…………わかるよ、その気持ち。近づけないもん。

「未成年だろーがあんたら!(シオンさんを除いて!)」

「こっちの世界じゃ、お酒はいくつからでもOKみたいですよ?」

「あ、そーなの?じゃ、遠慮なくvv(コロッ)」

「……飲みたかっただけかよ」

「あったりまえ〜。ふふふ、これで私も大人の仲間入りね!」

、もう酔ってないか?」

キールの言葉を、あっさりと無視して、ぐいっと一気に酒をあおる。
ごっくん。

ボワッ

顔から火が吹いた。

なにやってんだ、お前―――!!!

ガゼルの大絶叫がキンキン響く。

「それ、1番強いお酒ですよ!?」

「クラレットォ〜……早くいってよれ〜」

「この中でも、シオンさんしか飲んでなかっただぞ!?」

「それもはやく言ってほしはった……ヒールのおばか」

「呂律まわってないしな……」

「ほーゆう、ホーヤは強そうらね」

でも、このメンバーは…………。

「酒に強そうなメンバーらもんね……」

「どーいう意味かな、

「…………はんでもはいでふ」

、お水いる?」

「んー……や…ネム……」

あくびが、出た。
一気に眠くなる。
べちょっとそのまま倒れこんだ。
意識が、途切れる。



バノッサが、倒れこんだの顔を覗き込む。
起こそうかどうか迷っているようだ。

「寝てしまったようですね。……起こすのは後にして、バノッサさんも一緒にどうですか?」

「……あぁ」

小さく頷いて、シオンに出された酒をあおる。

「…………強いな」

「これを一気に飲んだんですからね。泡吹いて倒れないだけ、すごいですよ」

ふと、視線をに戻した。
寝ている口が、笑みを形作っている。

「……バノッサ」

「…………んだ、はぐれ野郎」

…………昨日……僕たちが一緒に居たとき、繁華街に居たの知ってたかい?」

ピクリ、とバノッサの手が止まる。
ゆっくりと酒を喉に流し込むと、口の端をペロリと舐めた。

「…………その後、やられたんだな」

「…………なにを?」

「イヤ、なんでもねェよ。……はぐれ野郎、それは確かか?」

「あぁ。……雑貨屋にいる時、こっちを見てたのを見たから。、気づいてたはずなのに、声をかけなかったから……その様子だと、見かけたことも言っていないみたいだな」

「……あぁ」

言う暇がなかったのか、それとも意図的に言わなかったのか。
どちらかはバノッサにはわからなかったが、なんとなくいい気はしない。

「…………彼女は、なにか一歩引いているようなところがあるから」

キールが呟いた。

「すべてを知っていて、黙っているような…………」

「キール兄様……?」

「あぁ、心配するな、クラレット。何度も言っているが、彼女は僕らに危害を加えたりしないだろう」

「はい、それはわかって、います…………」

「…………オイ。居候はどこへいった」

バノッサが急に声を上げた。
持っていた器の酒を全部飲み干して、立ち上がる。
その場に居た全員が、の倒れていた場所を見るが……姿がない。

「さっきまで、眠っていたのに……どこへ?」

「シオンさん、気配を……」

ドボンッ!

トウヤが言い終わらないうちに、川のほうで音がした。
音を聞くや否や、バノッサが走り出す。次いで、トウヤ、キールも、走り出した。

バシャバシャと水しぶきがあがっている。
バノッサがマントを外した。

「おい!?バノッ……」

バサッ、とマントだけがトウヤの手へと渡る。
それを見届けるか否やというぐらいで、バノッサはなんの躊躇もなく、飛び込んだ。
おぼれているをひっぱりあげる。

「オイ、居候?」

「う〜……げほげほ……ッ……あ〜、バノッサ……」

その様子に、バノッサが小さく息をつく。
そして、大きく息を吸い込んで―――。

馬鹿野郎!!

怒鳴った。

遅れてきたトウヤたちの足が止まる。

「あ〜、バノッサ……じゃねェ!なにしてやがる、この酔っ払いが!」

「お、お水を飲みに行こうと……(な、何〜?怖いよ〜?)」

「だからって、なんにも言わずに消えるな!」

「ひゃぁ!す、すいません!」

すいませんですんだら、騎士団がいるか―――!!!

はいぃぃぃぃ!!!

そこまで言って、荒々しく息を吐いた。
はびくびくとバノッサを見ている。
そして、バノッサはまた荒々しく音をたてて、マントでを包んだ。

「この、考えなしの大馬鹿野郎が」

「……ごもっともです」

「……怪我してねェな?」

「大丈夫です……ありがとう」

「……ったく」

バタバタと続く足音が大きくなった。
次いで姿を現したのは、トウヤやキールだった。

!大丈夫か!?」

「あ、トウヤにキール。……お騒がせしました」

「無事でよかった」

マントに包まったままで、ペコリとお辞儀する。

「濡れてるな……風邪引くぞ。バノッサも」

「気にすんじゃねェ。……そろそろ戻る。文句はねェな、居候」

「…………はい」

しゅーん、とはうなだれた。

「また、今度な」

「遊びに来るんだろう?」

二人の声に、一瞬で顔が明るくなる。

「うん!」

「カノン!帰るぞ!」

楽しかった、花見は、こうして終了となった。




NEXT