目が覚めたら、視界いっぱいに広がる土。


…………



…えーと、すいません、ここはどこでしょう?(汗



Act.0  まりは荒野にて。



(ちょっと待ってください。私、たしか家でサモンナイトやってたんですよね?)

ぐるぐると頭の中でなにかがうずまく。
いや、間違いなく私の記憶と思考だけども!

さっきまでいたのは、自分の家で。
もっと正確にいえば、自分の家の自分の部屋で!
目の前にはPSとサモンナイトがあった!!

『あぁぁぁぁぁ〜〜〜!!バノッサ、バノッサぁぁぁぁ〜〜〜!』

と回想の中で叫んでる私。



間違いない。


私は家にいた!!(ドーン)

なのにどうして!?
なぜ、荒野につったっているのでしょう!?
部屋着のままで!!
しかも、裸足!!

ありえん!!

まさか、リィンバウムの世界に召喚vv
名もなき世界からの召喚獣(もちろん私vv)こんにちは♪
とか???



……なんて、どこぞの素敵サイトさまのドリーム小説じゃあるまいし……。

ちょっと、夢見すぎ、自分。

ふるふると頭を振って、一度息をつく。
そして改めて自分の周辺に目をやった。

砂。

岩。

土。



……心を閉ざしたくなった……(遠い目)


ちょちょちょ!シャレにならないッスよ!!!(汗)

マジでここどこ!?

ぐるぐると視界が回転しそうになるのをかろうじて抑えられたのは、無駄に普段妄想をしていたからかな。
夢小説ならこれは素敵な冒険、もしくは恋のはじまりだというのだろうけど、あいにくこのままじゃ、冒険や恋が始まる前に、 人生が終わる(キッパリ)
本気でそれ以外になにもないのかと、目を凝らして360度の視界を見つめる。
その甲斐あってか、遠くの方になにか街らしきものが見えた。

「…………とりあえず、行ってみるか」

独り言をつぶやいて、心なしか重い足を動かす。
一歩足を動かすごとに、土の感触がじかに伝わってくる。なにせ裸足ですから!(泣)
痛みとともに靴の偉大さを改めて感じながら、石を踏まないように足元を見る。すると、きれいな石がちらばっていることに気づいた。

「………………拾っとくかな。お金になるかもしれないし」

無駄に冒険慣れ(ゲームの影響)している自分が怖い。

ズボンのポケットに、つめられるだけつめる。
とにかく、私は今、お金と呼べるものがなにもない。
むしろ、金どころか金目のものすら何もない。だったら、少しでも売れそうなものなら持っておいて損はない。
……ここがどこかは別として。

いや、想像できてない、わけじゃないんだけど。
むしろ、この石を見て、想像が深まらなかったわけじゃないけど。

でも、どこだかまだ確定はでいないわけだし。

……とりあえず、人に会えれば状況が変わるだろう。
知っているキャラ……人に会えればいいんだけど。

……言葉が通じればいいんだけど。

様々な不安要素を持ちながら、私―――はまた、足元を見ながら、ゆっくりと進んでいった。



「………………っ…はっ……はぁっ………なんっで、こんなに遠いんだよ。日が暮れそうじゃないかぁ〜……」

荒野から見た限りでは、1時間もあればつきそうだったのに。
結局ゆっくりしているうちに、日はどんどん傾いていた。

「………おなかもすいたし………」

呼応するかのように、腹の虫が音を立てる。

「ええぃ!鳴るな!余計腹が減る!」

錯乱して、自分の腹にまで怒りだす始末。
いい加減、足も痛い。
やっとついた街らしきものの、外壁に背を預ける。

「は〜、は〜……疲れた……」

乱れた息を少し整える。
夕日がやけに大きい。

街にせっかくたどり着いたものの、人は見当たらない。
看板もない。瓦礫だらけだ。

「う〜…………ホント、いったいここはどこ……だぁぁぁぁぁ!?

背中の壁がボロッとくずれた。
どしゃっとそのままひっくり返る。
あー、やけにスローモーションだー……と呑気なことを思って。
意識が、すっとんだ。




「………………ッ!?」

ガラガラッ……ゴトッ……ッッ!

「…………?」

たまたま街の外で魔物どもを倒した帰りだった。
何かが崩れる音がしたので、興味本位で訪れた街のはずれのある一角。

「…………」

無言で、倒れている少女を見下ろした。
自分たちとはあきらかに違う服装。
何もはいていない足。
擦り傷がところどころにある。

「……………なんだよ、コイツは」

コン、と剣の鞘を使って顔を見てみるが、なんの反応もない。
それどころか、身動きさえしない。
死んでるのか、と思って離れようとしたら、かすかだがうめき声が聞こえた。
わずかに指が動くのが見えた。

「…………生きてんじゃねぇか」

フン、と笑って背を向けて歩き出す。
数歩歩いて―――
振り返ってしまった。

そこには、倒れたままの少女。

先ほど動いた指は、再び動きを止めていた。

「………………チッ」

舌打ちを1つして。

ひょいっと少女を抱えあげた。




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