明日と言われた会議が

延ばし延ばしになってもう4日

今まで部屋でおとなしくしてた私も

そろそろ堪忍袋の緒が切れるよ?



Side Scene.3 未来へ続く出会い。



私がおとなしくするとわかったからか、兵士はだんだんと少なくなり、ついには見回りにしか来なくなった。

「ったく…………また今日も会議はないって……いい加減、帰して欲しいんですけど!」

誰もいない部屋で1人ぼやいても、何にも意味がない。
それでも、何もすることがないのだからしょうがない。
ずっと部屋の中にいると、気が変になってしまいそうだ。

カノンの手料理が食べたい。
アシュタルを気まぐれに呼んで、いろんな話を聞きたい。
フラットに行って、騒ぎたい。
アルク川行って、釣りしたい。
……バノッサと口げんかしたい。

じわりと涙が出てきた。
最近、涙腺が緩んだ気がする。

今日も会議がない。明日の午後の予定だって行ったけど、もう信じられない。
…………もうイヤだ。

ドアを開けて、あたりを見回す。
午前中は授業らしく、廊下には誰もいない。
持ってきた荷物を手にとって。

私は、部屋を抜け出した。



足音を立てないように、一気に廊下を駆け抜ける。
すでにこの4日で、大体蒼の派閥の動きは読めていた。
この私が、ただ黙って部屋にいるわけがない!←さっき、おとなしくしてたって言ったばかり

階段を駆け下りて、様子を伺う。
………ダメだ、入り口には兵士がいる。
そういえば、2ではミニスが止められてたもんね。

2階へ逆戻りして、逆の、森に近い方の階段へ走り、窓の外を見る。

…………誰もいない。そして、高さも……が、頑張れば……?(滝汗)
サンの部分に足をかけて、ゆっくりと下を見る。

…………だ、大丈夫だよね……(汗)

勇気を出して、飛び降りた!!!
ダンッ!
草がクッションになってくれて、骨折とかはしなかったけれど…………

あ〜〜〜!!!メチャクチャ、しびれる〜〜〜!!!(泣)
足が、めちゃくちゃしびれるのよ!
う、動けない…………。

ポンポン。

ギク。

肩を…………叩かれた。
ど、どうしよう、振り返ってフリップとかがいたら…………。
怖くて、振り向けない!

「なにしてるの?」

ひえぇぇぇぇ〜!!!…………え?
女の子の、声?

恐る恐る振り返ってみると…………。

……………。

トリス!!!!!(心の中で絶叫)

「いきなり、窓から降ってきて……派閥の召喚師じゃないよね?」

「あ、えと…………はい…………」

「お〜い、トリス〜!!!」

ハッ、新たなるキャラの出現!?
意気揚々と恐る恐るそちらを見ると。

ま、マグナ!!!!!????(更に絶叫)

ちょ、ちょっと待って!なんで、2人いるのよ!?
うっわ〜〜〜!!!!ここでも異常な物語発生!?

「お兄ちゃん」

兄妹設定ですか!?そうなんですか!?そうなんですね!?(決め付け)

「なにやって…………誰だ、その人」

「あ…………って言います」

って、自己紹介しても、なんにもならないし〜〜〜!!!!(汗)
ど、どどどど、どうしよう?

「…………もしかして、あなた、何日か前に、本部に連れてこられた人?」

ナイス、トリース!!!

「そ、そそそそ、そうなの!4日前に、ここに連れてこられて…………って、ここにいつまでもいちゃ、見つかるよね!?…………とにかく、どこか…………!」

首を左右にガンガン振って、森に面した小さな草陰を見つける。

「あそこ!」

トリス、マグナの腕をガッとつかんで、草むらに連れ込む(怪しい響き)

「こ、ここなら、まだ見つかりにくいよね……」

「えっと、あの…………、さん?」

「さん付けはいらないよん」

トリスは、ふわりと笑うと、

「………………?」

「いえーす!」

「(いえす???)…………あ、私はトリス」

「俺はマグナ。トリスとは双子の兄妹なんだ」

ビンゴ!!!最高、この世界!!!
……あー、でも、そーすっと大変だなぁ、兄弟子さま。

「…………は、なんで派閥に?」

「あ…………えっとぉ…………」

これまでの顛末を、簡潔に話す。
無駄なところは全て省いた。これからの物語に影響があるかもしれないから(すでに多いに与えているけれど)
省きに省きまくったけれど、なんとか2人はわかってくれたみたいだ。

「………………とにかく、帰りたい。みんなの所に。……笑っちゃう話だけどさ、私にとっては、あの人たちとこんなに長いこと離れてるの、初めてなんだよね……なんていうのかな…………やっぱ、離れてるのは、不安になる」

「…………家族って、そういうものなのかな」

マグナが、不思議そうに聞いてきた。
……家族が、いなかったんだもん、当たり前だ。トリスと2人で生きてきたんだから。
私はあわてて言った。

「でも、マグナたちにもいい仲間……家族って、絶対出来ると思うよ?っていうか、双子の兄弟がいるから全然いいじゃん!それに、いい兄弟子もいるみたいだし!」

「…………え?俺たち、ネスのこと、言った?」

アーウチ!!!(滝汗)

あっははははは!(乾いた笑い)……大丈夫。いい仲間が出来るから。お姉さんが保証しよう♪」

2人は不思議そうに顔を見合わせると、二カッと笑ってくれた。
そして、すぐに深刻な顔になった。

「…………でも、。早く逃げ出さないと、取り返しがつかなくなるかもしれない」

「え?」

「ラウル師範たちは、穏やかだから平気だとは思うけど…………もし、見つかったのがフリップ様、もしくはフリップ様の私兵だとすると…………とんでもないことになる」

「え?」

「派閥は大きい。特に、幹部召喚師にもなると、私室をいくつも持ってる。……俺たち、ここに連れてこられた当初は、そこに閉じ込められたんだ」

そうだ…………トリスたちは、ここに強引に連れてこられたんだ。
…………最初の扱いは、かなりひどかったんだろうな……。

「部屋っていうか、牢屋みたいな…………召喚師同士は、高位になればなるほど、お互いに干渉しなくなるから、そういう部屋があることは黙認も同然。……だから、そこではやりたい放題」

うわっ、何そのあくどい設定!!そこに連れ込んで、なにするんですか!(腐女子的発想)

「フリップ様はあれでも、幹部召喚師だからね……が暴れるから自分が引き取ったとかなんとか言えば、他の召喚師はうかつに何も出来なくなる。…………の話からして、派閥上層部は、会議を開く気はあまりないみたいだから…………最悪、ずっと監禁とかもあるかも」

「…………ちょっ、マグナ……あんまり脅かさないでよ〜……(汗)」

「だったら、なおさら早く逃げたほうがいいんじゃない?ハルシェ湖から、船が出てるから、それに乗って。とりあえず聖王都から離れれば、なんとかなるよ」

「サイジェント行きの船はあるのかな…………あぁ、ネスがいれば、すぐに答えが返ってくるのに」

ガシガシとネコのように頭をかくマグナは、とっても可愛い。
けれど、そんなことを言ってる場合じゃない。
私は、とりあえず、草むらを出た。

「ハルシェ湖って、どっち?」

「えっと、導きの庭園を出て…………」

「トリス、案内したほうが早くないか?」

「…………………貴様!!!」

ハッとその声で私たちは身をすくめた。

…………どうやら、1番見つかりたくない相手に見つかってしまったようだ。
あぁ、どこまでついてないの、私の人生…………(泣)

「なにをしている!部屋から出ることは禁じていたはずだ!」

、逃げて!)

トリスが小さな声を出して、私を森のほうへ押しやる。

「…………ん?そこにいるのは、成り上がりどもではないか!お前らが共犯か!?」

「なっ…………」

私は、無理やり前へ飛び出ると、マグナたちを背にかばって言い放った。

「ち、違うよ!私は彼らに捕まえられたんだから!」

「え!?ちょ、……っ!」

しーっと私は自分の唇に手を当てた。

「同じ年頃だと思って、油断してたわ……」

わざと、聞こえるように言うと、案の定、フリップは耳ざとく聞いていて、

「……フン、まぁいいだろう。成り上がりども、さっさと戻れ!……お前はこっちだ!」

「あっ…………!」

私は、フリップに半ば引きずられながらも、トリスたちを安心させようと、手をヒラヒラ振った。
少しの時間だったけれど、彼らがとてもキレイな心の持ち主だということがわかった。
出会ったばかりの私の話をキチンと聞いてくれて、一緒に打開策を考えてくれて、その上自分たちが罰を受けるのにかばってくれた。
それだけで、十分だった。



ドンッと私は、部屋に着くなり、投げ飛ばされた。
部屋、と言っても、今まで私がいた部屋とは全然違う。牢屋のような、鉄格子がはまった、暗い部屋。

投げ飛ばされた勢いで、背中をしこたま壁に打ち付ける。息が出来なくなった。
ガッ、と顔を掴まれた。

「この、化け物がッ!…………貴様のようなヤツを見ると、反吐が出るわッ!」

おなかに、鋭い痛み。
グッ、と今朝食べたものが出そうになった。

「お前が人間を名乗る資格などないッ!ましてや、召喚術を使うなどと…………恥を知れッ」

パンッと頬を叩かれた。

「本来なら、すぐに処分してやるものの……なぜ、上は処分の命令を出さないのだ……それも、これも、お前がわけのわからない化け物であるからッ」

そういうと、フリップは、しばらく、私を蹴飛ばし、殴り続けた。
日ごろのストレスやらなにやらを全て吐き出しているみたいだ。
意識が、朦朧としてくる。痛みも感じなくなってきた。

「召喚術を使っていいのは、認められた人間だけ…………召喚師だけだ!私のように認められた人間だけだ!」

狂ったように同じ言葉を繰り返す。
いい加減切れた私は、ふっと笑って言ってやった。

「…………認められたいのは、あなた自身が『成り上がり』だから?」

フリップは青ざめ―――そして、再び、顔を紅くした。

「なぜ、貴様が、それを!!!」

パンッと頬を殴られ、続けざまにもう一発。
口の中が切れたらしく、血の味でいっぱいだ。

「なぜ貴様が、貴様がァァァァ!!!」

「ぐっ…………あなただけがわかるのに!あなたにしか、『成り上がり』の辛さはわからないのに!なんで、それを有効に使って……!」

「黙れ、黙れェェェェェ!!!」

「うっ……ぐっ……」

続けざまに殴られるので、喋ることどころか、息すら出来ない。
そうして、しこたま私を殴りつけた後、私が何も言えなくなったことに満足したのか。

「……逃げ出そうとは二度と考えないことだな!」

捨て台詞を吐いて、去って行った。ご丁寧に鍵をかけて。

「…………んなことしなくても、逃げる体力なんてないよ……」

ゲホ、とセキをすれば、出てくる赤いモノ。
…………うぁー、喀血ってヤツ?(違)
ズキズキと痛む体をどうにもすることが出来ず、私は意識を飛ばした。



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