馬車に乗せられて閉じ込められ

ちらりと外を見たら、軽く10人は超える、兵士の数

たかが人間1人にこの待遇

…………私はよっぽど危険人物らしい



Side Scene.2 蒼い闇。



押し込められた馬車は暗く、何もすることがない。
あぁ、2のトリスやマグナは、こんな思いをしたのか、と妙に納得しながら、ぼんやりと外を見た。
どこまでも続く荒野。
はぁ、とため息をついて、外を見るのをやめにした。


ガタンッ、と止まった音で、ハッと目覚めた。
いつの間にか眠っていたらしい。目を開けたら眩しい光。
寝ているうちに、夜は過ぎたようだ。

………………この状況で熟睡って、私って大物?

「…………ここが、蒼の派閥本部だ」

馬車を降ろされて、マジマジと見る。

………………(感激)

ここが、ここが2の舞台なのね!?
エクセレント、聖王都ゼラーム!!!

「こっちだ」

私が感激している間に、10数人の兵士が取り囲む。
…………なんだよ、感激くらいさせてよ。

取り囲んだ兵士が歩き始めたので、仕方なく私も歩き始めた。

そして、連れてこられたのは古びた部屋。

「……………なんでこーゆーとこだけ、待遇悪いのよ」

「申し訳ないが、しばらくここにいてもらう。幹部召喚師の者が集まるのは、午後でな」

全然申し訳ないなんて思ってないくせに…………。
でも、そんなことは口に出さずに、私はコクリと頷いて見せた。

「必要なときは、外にいる兵士に声をかけてくれ。…………くれぐれも部屋からは出ないこと」

「え!?部屋から出ちゃいけないの?」

「ここは派閥本部だ。部外者にいろいろと探られると困るのでな」

「それじゃ、監禁みたいなものじゃない!」

「しばらく辛抱してくれ」

バタン、と閉められたドア。

「辛抱できるかっつーの!こんなオイシイ状況で!!!

思いっきりドアに向かって叫んでやった。



それでも辛抱した私はすごいと思う。
トリスやネスティがいるかもしれないという状況で、辛抱強く我慢したのだから。
部屋にいる間に、食事を取った。
パンに、スープ。
………………カノンのご飯が恋しい(涙)

「失礼する、召喚師が揃った」

ドアの外からの声。
私は、待ちかねていたので、すぐに部屋を出る。
そうすると、また、どっちゃりと兵士が待機していた。

あぁもう…………イヤになっちゃうよ…………。

「…………こっちだ」

開けられたドアを通って、部屋に入れば。

ラ、ラウル師範!!!それに、グラムスさん!!!その他!!!(酷)

「君は…………無色の派閥の乱の時の……」

そういえば、グラムスさんとは会ったことがあるんだよね。
ペコ、とお辞儀をして、勧められた椅子に座る。

「…………さて、早速だが…………君が、魔王と呼ばれるモノの依り代になったというのは、本当かね」

イキナリ直球ストラーイク!!!
返答に困ったが、嘘をついてもなんにもならないので、素直に答えた。

「本当、です…………」

「ならば、なぜ、お前はいま動いているのだ!」

げっ、この高圧的、かつ、うるさい声は…………。

「答えろ!」

あぁ…………やっぱり、フリップ・グレイメン…………(泣)
やっかいなのがいるなぁ…………。

「フリップ殿、冷静に話しましょう」

「あなた方は、なぜ、この人間だかなんだかわからないものを目の前にして、冷静にいられるのですか!?」

「し、失礼だなぁ!」

「フリップ殿!言葉が過ぎますぞ!」

「ぐっ…………」

ラウル師範が一喝すると、フリップはさすがに黙った。
やーいやーい(ガキ)

「申し訳ない。…………ところで、君はオプテュスというチームで暮らしているそうだが……」

「あ、はい。オプテュスでお世話になってます……あ!けど、彼らは今回のことに、関係ないので、絶対、手は出さないでください。お願いします!」

「いやいや、元よりそんな気はないよ。…………だが、まったく関係ないというのなら、君はなぜそんなところに?」

「あ、えと…………」

ヤバイ、墓穴掘った……(汗)
私が異世界からきた……っていったら、また面倒なことになるよなぁ…………。
ちら、とラウル師範を見て、グラムスさんを見る。

…………ダメだ。嘘はつけない。

「実は…………私、召喚されて、きたんです。…………無色の派閥の一派、セルボルト家当主である、オルドレイクに」

ガタンッ、と召喚師全員が席を立った。
それだけで、私の言葉が及ぼした影響がわかる。

「オルドレイク・セルボルトか!」

「その人に、第一の魔王召喚の儀式の前に、召喚獣を処理するためとして、呼ばれました。気がついたら荒野で……なんでその場にオルドレイクがいなかったのかはわかりませんが……たまたま1番最初に出会った、オプテュスのリーダーに保護してもらったんです」

「というと、君は、召喚獣……ということか」

「そう、なりますね…………ただ、『名も無き世界』と呼ばれるところからですけれど」

「ふむ…………それで?実際、魔王は君に降りたと報告を受けているのだが…………」

確かに、と私は頷いた。
だけれど、実際、私にもよくわからない出来事だ。抽象的にしか話は出来ない。

「魔王が私に降りた直後、私は意識の中で、魔王と対話しました。そのうちに、元の世界に帰れることを知って―――魔王の力を使って、私は、元の『名も無き世界』へ帰ったんです」

「だが、現に君はここにいるではないか」

「それは………………」

危険な召喚術を、誓約者たちが使ったとわかれば、きっと彼らにも蒼の派閥からお咎めが行くだろう。
それだけは、避けなければならない。
一瞬にして、私の頭を考えが駆け巡った。

「『誓約者』と呼ばれる彼らが、召喚術の研究の最中に、過って、もう1度私を召喚してしまったらしいのです」

「そんな嘘が…………!」

「フリップ殿。…………ふむ、それでこの世界に再び現れた君は、魔王でもなんでもなく…………君の人格を保って、現在に至る、というわけだね?」

「そのとおりです。実際……私にもよくわかりません。魔王がいるのか、いないのか。ただ…………もし、いるとしたら、私が人格を保ってここにいるということに、説明がつきません」

ふむ…………とグラムスさんが唸った。

「いっそ、コイツを派閥の監視下において、本部で管理すべきです!」

フリップの言葉は、いちいちカンに障る。
監視とか管理とか、人を人形みたいに……!
こりゃ、トリスやネスティが困るのも無理ないわ……(怒)

「…………申し訳ないが、。もうしばらく待ってくれないか。上の方と相談しないと、我々だけでは決めかねる」

「…………できれば、早く」

「もちろん…………それでは、各自、解散しよう。明日、もう1度ここで会議をする」

ぞろぞろと出て行く召喚師たち。私は、また兵士に囲まれ、席を立った。
部屋を出たところで、フリップとかち合い、すれ違いざまに。

「…………この、化け物が……!」

と呟かれた。
…………つくづく、嫌なヤツ。




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