雪の贈り物




しーん……とした、静寂の空間。
音が何にも聞こえない。
そして、空気が冷たい。

「………………もしかして……」

は、もぞもぞと布団を出て、カーテンを開けた。


真っ白。


「……雪……ッ!」

一面銀世界。さらに空から降る白い粉雪はさらに、外を白く染めようとしている。
どおりで音が何も聞こえないはずだ。
そういえば、今も部屋の中なのにの息は白い。


ブルルルル……と携帯が振動した。
慌てて枕元においてある携帯を手に取った。

着信:土屋 敦

珍しくかかってきた電話。
遠く離れた大阪にいる彼氏だ。

「……は、ハイッ!!」

『おー、。おはよう。起きとったか?』

「お、おはよう!うん、今起きた。どうしたの?珍しい……」

『いや、なんや声が聞きとうなってな。……このところ、勉強が忙しゅうて、構ってやれへんかったし』

冬のウインターカップを最後に引退した土屋は、今は大学受験のために頑張っている。
地元大阪からバスケ推薦で大学への引き抜きもあったが、全部蹴った。
彼女であるの住んでいる、関東の方の大学に進学するためだ。

「ううん!全然平気だよ」

『……全然平気とか言われると、寂しいモンも感じるなぁ……』

「……あはは……勉強がんばってる?」

『うっ……痛いとこつくで、

「身体壊しちゃダメだよ?」

『おう。………………ところで、。そっち、雪とちゃうんか?』

「そうなの!!一面真っ白!!まだ降ってるんだよ!!」

『積もってるんか〜……』

「うん。…………敦にも見せたいよ〜」

『さよか。…………せや、。もういっぺん窓の外見て、実況中継してくれへん?』

「え?…………実況中継ってどんな?」

『ん〜……たとえば、塀のところには何センチ積もってるで〜とか』

プッと小さく笑って、は1度閉めたカーテンをまた開けに、窓際へ向かった。

「えっとねぇ〜……今は、道路は…………え?」

道路の雪を見ようとしたのに、なぜか目に入ったのは長い間見ていなかった顔で。
に気づいたのか、携帯を持っていない方の手をヒラヒラ振った。

『お〜い、さん?…………?』

ブチッ。

思わず通話ボタンを切り、急いでその辺にあった服を着て、外へ出た。
そこには、再度電話をかけようとしている、彼氏の姿が。

「……あ。ホンモンが出てきよった。いきなり電話切りよって……ビックリするやないか」

「ビックリしたのは、こっちだよ!な、なんでこんなところに!?」

「イヤ、ちょっと報告があってな〜…………」

「え?」

「……受かったで。第一志望の大学」

「………………え?」

目の前が真っ白なように、頭の中も真っ白。
土屋は、少し赤くなった鼻をこすった。

「…………電話じゃなくて、直接言いたかったんや。こっちでの物件探しも兼ねてな」

「ほ、本当に!?」

「嘘言ってどうすんねん。…………ま、これで遠距離恋愛ともおさらばや」

うわぁ〜……と感嘆の声を出したワリには、の顔は笑顔にならない。
土屋はちょっと悲しそうな顔をした。

「なんや?……あんま嬉しそうやないやんけ?」

「………………う、嬉しすぎて脳内の思考がついていかないの……だって、あんまり突然なんだもん」

「時期的に合格発表だとは思わなかったんか?」

「だって…………」

といったところで、の目から雪を溶かす熱い水が流れる。

「う、うわっ……な、泣くな!泣くなや〜!!」

「だって、嬉しいんだもん〜〜〜!!」

わんわん泣くを、土屋は撫でたり大きな体をちぢこめるようにしてなだめた。

「…………長い間、待たせてすまんかったな」

「………………ぐすっ……ずいぶん待ったよ……」

「……せやな。…………ところで。親御さんは……」

「今日は2人とも朝早くに出たはずだよ」

「さよか。……じゃ、ここで抱きしめても誰も咎めへんな?」

そう言って、ふわりとコートごとを抱きしめた。
は、土屋の身体にぎゅっと抱きついてから、また顔を上げて笑った。

「へへ……合格おめでとう」

土屋は、細い目をさらに細めて笑顔になった。

「おう」





あとがきもどきのキャラ対談


銀月:親御さんが見てなくても、近所の方がいらっしゃいますから!!

土屋:ってか、なんで久々ドリームが俺なんや?

銀月:結構土屋のファンが多いんだよね〜。

土屋:とかなんとか言って、どーせサッカーの大黒が俺に見えたとかいうオチやろ?

銀月:な、なんでそれを……!

土屋:バレバレや、おのれの思考は。…………、悪かったな。でも、これからはずっと一緒やからな?

銀月:砂吐き失礼いたしました……(吐)