欲情




SIDE



「彰〜。彰遅い〜。何やってんの、あのルーズ男〜。寒いよ〜」

私は一人、待ち合わせの看板の前でガチガチと歯を鳴らした。

「……元旦早々遅刻か、あの馬鹿男は〜!ルーズにも程があるぞ、大馬鹿男〜!」

メラメラと背後に炎を出現させ、拳を握る。

「ねぇねぇ、彼女一人〜ぃ?誰か待ってるのぉ〜?大きな荷物、抱えちゃってさ〜」

擦り切れたジーパンに、薄汚いトレーナー。お世辞にも、素行がよろしいとはいえない。こんなところまで、ナンパに来たのだろうか。まったく、元旦早々暇な奴らだ。

「ねぇねぇ、寒いでしょ?どこか喫茶店にでも行かない?」

「……元旦に喫茶店ってやってんの?」

「あるんだよ〜、僕だけが知ってるところがぁ〜。ねぇ、行かない?ちょっと遠いんだけど……」

目が危ない。……これは、ラブホに連れて行かれる。

「行かない。私、ここで彼氏まってるから。とっとと帰って」

「彼女待たせる彼氏なんてほっといてさぁ〜、ね?行こうよ」

「しつっこいなぁ!行かないっていってんじゃんよ!」

がぅ、と睨みつけてみるが……効果なし。

「いこぉよぉ?誘ってるんでしょ、その顔はぁ?」

「さそってなぁぁぁぁぁぁぁい!」

まったく反対の事をいわれて、大きな声を出してしまう。

「ほらほら、待ってても、彼氏は来ないよ!ね?お茶だけでもいいからさぁ〜」

お茶だけで!?じゃあ、さっきのは、どーゆー意味で喫茶店にさそったんだよ!

そんなことを思っていたら、むりやりがっと手首をつかまれた。
さすがに、これにはぎょっとした。悪寒が背筋を駆け巡る。

「はーなーしーてぇ!もぉ……彰ぁっ!早く来なさいよぉ!」

「お呼びとあらば、どこにでもvv」

現れたのは、ツンツン頭の大男。―――私の彼氏、陵南高校二年、仙道彰だ。





仙道SIDE

「げっ!」

オレは、可愛い彼女、には最上級のにこやかな笑顔をむけ、ナンパ男に振り返った。
もちろん、男には頭同様、突き刺すような視線で。

「で?何か用かな?オレ彼女に」

今なおの手を握っている―――奴も執念深かった―――男の腕を、ぎゅーっと握って、悪魔の笑顔で言った。

「失せろvv」

「はひ……」

あっけなく去っていった男を、呆然と見つめる

〜♪大丈夫?」

オレの言葉で、ははっと我に返った。

「も、も、元はと言えば、彰が来るの遅いから、あんな妙なのにつかまっちゃったんでしょー!?カバッ、ナスッ!あんたの頭に、いつか切花さしてやる―――!」

おやおや、ご立腹のようだ。

「それはちょっとイヤだなぁ……とにかく遅れてゴメン。荷物持つよ。なにそんな大きな荷物抱えてんの……と……あれ?」

荷物を受け取りながら、オレは気づいた。

「静かにもってよ……ん?なに?」

……振袖?」

「……振袖以外に見えるんだったら、眼科いってきたほうがいいと思うよ?」

きつい一言を、にーっこり笑って言う彼女。ガスッとパンチを食らった。

「……マジ?いつもスカートさえ履かないが、振袖?」

「……別に、今から帰ってもいいんだけど?」

笑顔は変わらないが、額に青い筋が浮かんでる。

「……オレのため?もしかしてvv」

「べーつーにぃ?誰かさんが、振袖見たいなんていったこと、知らないし?」

自惚れてもいいんだよな?←聞いちゃいねぇ。

「……うっわ……すげー嬉しい……かわいいよ♪vv」

にっこり笑って、きゅっと抱きしめてしまうvvくすぐったそうに、は身を縮こまらせて笑った。

「……許してあげようじゃない……あー、なんて寛大な彼女なんだろうねぇ?」

「そんな彼女でオレは幸せですvv」

「……ありがとう」

照れてうつむく彼女は更にかわいいのです。





「彰ぁ〜、助けてぇ〜」

「お?」

初詣の神社はこれでもか、というほどに人が詰め込まれている。
繋いだ手を頼りにオレはきょろきょろと目を動かす。人より頭一つ高いオレは、すぐに最愛の彼女を見つけた。

?大丈夫か?」

ぐいっと手を引っ張ってやると、彼女はつんっと前につんのめりそうになる。

「うぅ〜……歩きにくいよぉ〜……こけるよぉ〜……」

半分涙目になっている。

「肩抱くか?それとも、しがみついてるか?」

「どっちもヤー!」

「それじゃ、抱き上げられるか?」

「…………肩抱く」

「おっけ♪」

ちぇ。抱き上げてもよかったのに。
でも、可愛いvv
ちゃんと、少し自分を前よりにして、が歩くスペースを作ってやる。

「大丈夫か?」

オレが声をかけると、

「うんっ!ありがと、彰!」

元気いっぱいの声が返ってきた。
普段も可愛いが、振袖姿ならなおさらの事。

「彰!」

上目遣いに悩殺なのです。



&仙道SIDE



カランカラン

「…………」

「…………なぁ?」

「……ん?」

「なに願った?」

は、べーっと舌を出す。

「教えなぁ〜い!言ったら叶わないんだもんねっ!」

「ちぇ。……あ、甘酒飲むか?」

仙道は、すぐそこにある甘酒に目をつけた。
ぴくんっとが反応する。

「飲む〜っ!」

「りんご飴は?」

「食べる〜っ!」

「おっけ」

すぐ近くにある店で、両方とも購入する。

「ほい」

渡しと、すぐには、ふぅふぅ、と甘酒を少し冷まして、こくっと飲んだ。

「あつっ……熱いよぉ〜」

涙目で上目遣い。
振袖姿の彼女は、ほっぺたをすこし赤くしている。涙目が更に色っぽい。

(うわっ……やべぇ…………欲情しそう……)

心の中で理性と獣が戦っている。

「彰?」

隣で邪な考えを持つ男がいるとは、思ってもいない純真無垢な表情。

「……なぁ……この後、俺の家寄ってく?」

「うん?いーよ?」

獣の勝利。……らしい。
甘酒とりんご飴を片手ずつに持って微笑む彼女。

(うっわ、やべぇ〜……)

仙道彰、こんな彼女に欲情中。





「彰?大丈夫?」

アパートの鍵をあけようとして、ボーっとしていたらしい。
……正確には、に見とれていただけなのだが。

「あ、あぁ……ほら、歩きにくいだろ?抱いてやろうか?」

「あ〜き〜らぁ〜!」

「……すいませんvv」

仙道は、ドアを開けると、を招き入れる。

「……そーいえば、彰、おせち料理食べた?」

仙道は、悲しい顔をする。

「男の一人暮らしに、そーゆーこと聞かないの……」

反対に、はにっこりと笑った。

「彰。その荷物、おせち料理」

あわてて、仙道は荷物に目をやる。

「まじ!?」

「マジ」

にっこり笑って、振袖を振る。

(〜〜〜可愛い〜!振袖って、男のロマンだよなぁ〜〜)

どの辺が、どのように。

「早く食おーっと。あぁ……神奈川に来てから、初めてのおせちだ……一年ぶりvv」

「そんなに喜んでもらって光栄ですvv……だけど、私は、昆布の煮しめと、黒豆くらいしか作ってないよ―――!あ!だけどね〜、だし巻き卵だけは、うまく作れた自信作!絶対食べてよね!!」

「もちvv」

ラブラブサインを出しまくっている二人。
は、仙道が持っていたおせち料理を、テーブルの上に並べる。
仙道が大事に扱っていたためか、料理はくずれることなく、きれいに御重に収まっていた。

「おぉぉぉぉ!すげぇなぁ……」

「食べて食べて――!」

仙道は、箸を握ると、

「じゃ、早速……いただきます」

「どうぞvv」

仙道は、の作ったと言う、だし巻き卵から手をつけた。

だしと卵が見事にマッチしていて、ほんのりと甘さが口の中にひろがる。

「……うまい……!」

「ほんとっ!よかったぁ〜……彰の家の味とかわかんないから、口に合うか心配してたんだ〜っ!」

仙道は、を抱き寄せると、

「マジで……うまいよ……」

耳元でささやいた。そのまま首筋に―――

ベシッ!

「まだ昼間でしょっ!このエロとんがり!」

「エロとんがり……ひでーなぁ……」

仙道は、もくもくとその間にも、おせち料理を次々と平らげた。

「……あー、うまかった。サンキュ、な」

「どういたしまして!」

「んじゃ、お礼にチャンの好きなアイスクリーム、もってきてあげよう!オレの部屋、行ってて」

「やったvv」

仙道が、台所へと足を運ぶ。

は、いそいそと携帯を片手に移動する。

「もしもーし、チャーン。ドア開けてくださーい!」

御盆片手に叫んでみる。

でも中から聞こえてくるのは、彼女の声。

「……よかった!彰にうまかった、って言ってもらえた〜!……うん。そうそう!あ……そろそろ来るから、切るね!……うん!よかったよ〜!……じゃ!」

電話らしい。仙道は、ふぅ、と息を吐くと、再度呼びかけた。

チャーン。開けてくれる?」

「あ、彰!」

がちゃ、という音が聞こえて、彼女の顔が見える。

(うわ……やべぇ……)

「わ〜い!ハーゲンダッツのストロベリーアイス〜!ありがと、彰!」

(……も、ダメだ……)

昼間も何もない。
持っていた御盆を放り出して、振袖姿の彼女を抱きしめる。

「……!あき……!」

奥まで攻めるようなキス。
唇を割り、歯列をなぞって舌を追い求める。
の口端から銀の滴がこぼれおちた。

「……んん……!」

抱きしめた時に乱れた着物から、白い鎖骨があらわになる。
それが更に仙道の欲を引き出す。
キスをしたまま抱き上げて、ベットに降ろすとすぐに帯をとき始める。

「ん〜〜〜!」

抵抗をしようと、弱弱しく両手が仙道の胸を押し出そうとするが、反対にその腕をつかみ真上へ封じ込める。
前を開くと、着物だからだろう。下着をつけていなかった。
は、真っ赤になってじたばたと抵抗する。

「む〜〜〜!……はっ……彰!なにやってんの!」

「……ん〜〜セッ……むぐっ!」

「真顔でそーゆーこと……って、彰っ!」

仙道の舌は、うなじ、首筋、そして鎖骨へと降りてきて、一旦鎖骨で止まり、きつく吸い上げる。

「あーきー、んっ!?」

仙道の長い指が、の口の中に入り、かき混ぜるように口内をまさぐる。

「ハイ、ちょっと黙っててねvv」

上の方から、丁寧に愛撫をすると、次第に喘ぎ声が口から漏れてきた。

「あっ……んん……はっやぁ……」

口に入れていた指を外し、濡れているソコにあてる。

(……大分、濡れてきたな……)

まずは、指を一本。苦もなくそれは飲み込んでいく。

二本目。ズブズブと飲み込んでいる。

(よし……)

……挿れるぞ……?」

「あっ……ん……あぁっ……!」

答えはないが、仙道はかまわず自分自身を埋め込む。

入ってきた、仙道の質量に、は嬌声をいっそう高く上げる。

足を自分の肩にのっけると、の腕を首に絡みつかせた。

ぐっとさらに腰を入れ、自身を内壁に擦り付けると、ある場所で、高い声を大きく上げた。

「……ここか?」

更にもう一回。

「やぁ……あぁん!」

軽くイったのだろうか。ふっと力が抜けた。
動かすと、またあの声がよみがえる。

「あき……ら!あぁ……はっ!」

……一緒にいこう……」

「ん……彰ぁ!」

二人は高みへと上りつめた。





仙道の腕の中で、が膨れる。

「……彰の馬鹿ぁ……お正月早々、真昼間から……」

「はは……でも、もノってたよな?」

真っ赤になって。

「……この、エロとんがりっ!」

「ひでーなぁ……」

「どっちがよっ!」

ぽかぽかと胸をたたく。

、胸見える」

ばっと隠してから一言。

「くぉの……エロとんがり!いつか、あんたの頭、氷山に刺してやるから!」

と一緒なら、いーやvv……ね、もう一回vv」

「……豆腐の角に、頭刺せ!」

たとえ、嘘でも死んじゃえ、なんていえないのだ。

と一緒なら……」

「馬鹿ぁぁぁぁ!」

真っ赤になる彼女。

仙道彰、こんな彼女にメロメロです。







あとがきもどきのキャラ対談



仙道「……はぁ〜……」

銀月「……人前で盛大に溜め息つかないでください……」

仙道「だって、溜め息つくほど、文才ないんだもんな」

銀月「言われなくても、わかってます!」

仙道「ったく……こんなやつ放っておいて、、さぁ、いこーかvv」

銀月「……よかったら、メールでも感想ください!」