「……こ、これから、地獄の練習が始まるのね……」

湘北高校2年7組、

ゆっくりと、地獄への一歩を踏み出してしまいました。





妖怪と一緒に






一昨日―――

が、せっせとやっていなかった数学の宿題をしていると。

そのノートに影が落ちた。

暗い。

いやぁ〜な予感をどこかに感じながら、ゆっくり顔を上げてみた。

「あ、チャン?明後日から、学校でプチ合宿やる事に決定したから、そのつもりでよろしく〜」

お気楽ノー天気なキャプテンの言葉。

は、ふぅ、と溜め息をつき、宿題を再開させた。

「……わかったよぅ……彩子には伝えたの?」

「あぁ……アヤちゃんは来れないらしいんだ……」

「へぇ〜……んで……Xを移行して…………はぁ?」

ガタン、と思い切り机を蹴っ飛ばす。

「……いたた……って、彩子、これないの!?ってことは、晴子ちゃんと私だけ!?無理だよっ、そんなのっ。あの部員たちを2人でどう抑えろっていうのよっ」

ポリポリと宮城が頬を掻いた。

そして、くるっと向きを変える。

「晴子チャンも来れないらしいんだぁ〜……」

逃げ出そうとした、スピードナンバーワンガードの首根っこを、音速を超えた速さでむんずと掴む。

「なぁんて言ったぁ〜?リョーチン……」

「……つ、つまり……マネージャーは、チャンだけvv」

「なんで、そんな日に合宿なんてプラン作るのよ、アンタはっ!」

「しょ、しょーがないじゃんっ。作った後に2人とも来れなくなったんだからっ」

「馬鹿ぁ〜〜〜っ!」

泣きながら宮城の胸を叩こうとした瞬間。

腕を絡みとられた。

「……なに爆発してんだよ、

「ひ……三井さんっ……こ、この手を離してくださいぃ〜〜〜っ」

「おっ、オレのことを『三井サン』なんて呼ぶのは、この口か?あぁ?」

むにっとの頬が横にひっぱられる。

「な、なにひゅるんへふはっ……ひょーひんっ!ひてはいで、はふけなはいほぉ〜!」

チャン……頑張れっ!」

「はんばへふかぁ〜っ!」

シュタッと去っていった宮城を、恨めしく見つめる。
去った後で、やっと手を放された。
心持ち涙のたまった瞳で、元凶を、見る。

「……寿……なにするのよぉ〜……」

「オメーがあいつと楽しそーにおしゃべりしてるから、邪魔でもしてやろうかなーと思ってな」

「……なんだ、結局はヤキモチなんじゃん……」

「あぁ?なぁんか言ったか?」

「い、言ってませんっ……っていうか、寿もリョーチンになんとか言ってよぉ。私1人じゃ、あの悪ガキ軍団をどーもできないよ!合宿、中止にさせてっ。合宿なんかしなくても、朝早くから夜遅くまで練習してんじゃんっ!」

ヒュ〜とそしらぬ顔で口笛を吹く。

「……なんか、楽しんでない?寿……」

が言うと、ニヤッといつもの笑顔で笑う。

「……好きな女と1日中一緒なんだぜ?」

一瞬にして、の背中に悪寒が走った。

「……念のため、言っておくけど……合宿だからね?バスケづくしだからね?」

「おぅ。づくしだな?」

「聞けっ、人の話をっ!」





そんなこんなで合宿当日。

チャンッ、スコアブックどこ〜?」

「スコアはステージの上ッ!」

「……先輩、テーピングお願いします」

「流川ってば、怪我したの!?こっち来てッ!」

自分よりもかなり大きい流川の手を引き、コートサイドへ寄る。

ちゃんっ、ポカリないんだけどっ!」

「後で作ってくるから、我慢してて!」

大声で叫び返しながら、手早くテーピングをする。

「……うしっ……行ってこいッ」

「うす」

再びコートに戻った流川を横目で見ながら、空になったボトルを引っつかみ、持っていた笛とタイマーを安田に押し付けた。

「ヤスッ。後は頼んだ!私、ご飯作りに行ってくるからッ!」

返事の声も聞かずに、は調理室へ駆け込んだ。

息を切らしながら、バスケ部全員の食事を作る。

かなりの量の食事をつくらなければいけないので、いっぺんに作れる手軽なもの……といえば、カレーライスくらいしかないだろう。
ご飯をじゃんじゃん洗って、水につける。それが終わると、カレー用の具を切り始めた。
ダンボール箱にいっぱいだった野菜を全て切り終えると、ご飯を炊飯器にセットした。

「うわっ……もうこんな時間ッ……ポカリポカリッ」

ボトルにポカリの粉と水をいれ、ふたをして調理室を飛び出た。
シャカシャカと振って、混ぜながら、体育館へ戻る。

「あっ、ちゃんっ。ポカリはっ!?」

「ハイッ!……わぁぁっ、花道!あんた、血が出てる!こっちおいで!」

「え……どこすか?」

腕から汗とともに流れ出る赤い水滴を、タオルでふき取りながら、ギュッと押さえつける。

「しばらくそのままにしておいて。血が止まったら、脱脂綿に消毒液つけて、テープではっつけるっ!OK!?」

「わかりました!」

勢いに押されて、桜木が直立不動に挨拶する。

「そいじゃ、リョーチンッ!私、また調理室戻るから!なんかあったら来て!」

そして、また猛ダッシュで調理室へ戻る。

走りながら。

(こっちのほうが、練習よりキツイんじゃない!?)

疑問を隠せないだった。





本日4度目の調理室からの往復を終えた後、やっと部活が終わった。

「ほっほっほ……今日はこれくらいにしておこうか」

安西監督の言葉に、宮城が頷いた。

「よしっ、今日はこれまで!」

「あっした!!(ありがとうございました)」

ぞろぞろと汗を流しに体育館を出る部員。
その中で、は1人へたりと座り込んだ。

(つ……疲れた……いつもの10倍くらい疲れた……彩子ってば、よくこんなの1人でやってたなぁ……尊敬)

「おい」

「うひゃぁっ!?」

イキナリ耳元でささやかれた声に、が赤くなった。

「な、ななな、なにすんの、寿ッ!」

「いや、疲れてるみてーだなーと」

「余計疲れるでしょ!」

大声で怒鳴って、更に力を抜く。

「……はぁ……もうイイや……怒鳴る気力すらない……ご飯、食べに行こうか……あっ、カレー温めなきゃ」

立ち上がったを、三井が突然抱きしめる。

「な……なに?」

「……今日の練習で、オメーと1度も話せなかった」

思いかえってみると、そうかもしれない。

「……そーかもね……っていうか、今日、私体育館にいなかったし。流川も花道も怪我するし。ほらほら、ご飯食べに、行こ?」

大きな手を掴んで、歩き出す。

体育館の出口まで行ったところで、三井が足を止めた。

「なに?行かないの?」

「……宮城が、おもしれーこと言ってたんだ」

唐突な言葉。

はぁ?とは思わず聞き返した。しかし、そのまま前を向いて歩いていく。

「……学校、今日誰もいなくなるらしんだ」

「……そりゃ、休日だしね?でも、管理人さんとかいるんじゃないの?」

「それが急な用事で田舎に帰って誰もいないらしい」

「ふ〜ん……それがどうかしたの?」

「……学校の中の鍵の配置とか、熟知してんの、マネージャーだけなんだよな?」

「多分、そうだと思うけど……」

「……見回りとかやらなきゃいけないらしいんだ、今日。万一のことがあっちゃいけねーからな……たとえば、鍵がちゃんとあるか、とかな……」

ギク、との肩が震える。

ギギギギギ、と音がしそうなほどゆっくりと、は三井の方を振り返った。

三井はにやぁ〜……と笑って言った。

「……夜中の学校って、真っ暗らしいぜ?」

脂汗が額に浮き出た。





パタ、パタ、パタ……

足音だけが廊下に響く。

懐中電灯だけを持って、はあたりを見回した。

「……な、なにも出ない……なにも出るわけない……」

曲がり角に来ると、ゆっくり息を吐いた。

「この先になんにもいるわけない。なんにもいるわけない……」

呪文のようにブツブツと呟いて、ばっと懐中電灯の光を角の先に当てる。

みなれた廊下だけが見えると、ほっと安堵の息。

しかし、また顔を強張らせて歩いていく。

これの繰り返し。

は、使わせてもらっている管理室から、校舎1個分離れた職員室へ向かって歩いていた。

正直言って。

かなり怖い。

一応、常夜灯はついているものの、その薄暗さが怖さを一層上乗せしている。

外をうなる風の音にさえ、体が震える。

階段を上って、曲がり角に来た時、再度ぎゅっと目をつぶって。

「なんにもない。いないったらいない。絶対ない」

呪文を唱えてから、ばっと懐中電灯を向けた。

目をつぶったまま歩くとなにかにぶつかる。

恐る恐る目を開けてみれば、見慣れぬ壁。

ゴトン、と懐中電灯が地面に音を立てて落ちる。

「ぬ、ぬぬぬぬぬ、ぬりかべがいるぅぅぅ〜〜〜!!!」

「お、おいっ」

「いや〜〜〜!助けて、鬼太郎〜〜〜!」

「おいっ、静かにしろって」

「いや〜〜〜!目玉の親父さぁぁん〜〜〜」

「オレだよ、馬鹿っ」

「うわぁん、私ぬりかべに知り合いはいません〜〜〜!」

「馬鹿ヤロウ!オレだ!MVPシューター三井寿だ!」

「MVPシューターなんて妖怪に、知り合いはいませぇん〜!」

完全に動転していて、取り付く島も無い。

三井は、ふぅ、と息を吐いて、腰を抜かしながらも、懸命に足と手を動かして逃げようとする、彼女の腰をつかんで、ぐいっと引き寄せた。

「…………オレだよ」

ふっと耳に息を吹きかけると、それっきりは動かなくなった。

あまりにも動かないので、心配になって声をかけてみる。

「……おい?」

その言葉がスイッチになったかたのように、は顔を真っ赤にして耳を抑えた。

「……馬鹿―――!耳に息吹きかけるなって、何度も何度も何度も何度も言ったじゃん!」

「お。戻ったか」

「え?」

我に返って、辺りを見回す。

「あ、あれ?ぬりかべは?MVPシューターは?」

「ぬりかべはしらねーが、MVPシューターならここにいるぞ」

「あっ、そっか……じゃなくて!寿ってば、妖怪だったの!?どーりで血の通っていないような行動を……」

「まだ動転してやがるな……いい加減戻れ、馬鹿」

そして、濃厚なキスをした。

舌を絡めとって、執拗に歯列をなぞる。

「…………MVPシューター三井寿はお前の彼氏で、れっきとした人間。OK?」

「……OKッス……」

「よし」

言葉を1つ漏らして、の髪の中に手を入れて撫でながら、再度キスをする。

「……ふっ……ぁ……なにすんのさっ!ちゃんと認めたじゃん、人間だって!」

脱がされかけた上着を引き寄せながら、はずるずると床を張って逃げようとした。

ら。

あっさり止められた(お約束)

「……しょーがねーだろ、ソノ気になっちまったもんは」

「なっちまった?」

自分の下半身を指差す三井。

の真っ赤度MAX。

「……どあほ―――!いっぺん死んで来い―――!」

「はいはい。とした後に、天国でもエデンの園でも行ってやるから。むしろ俺が行かせてやる?みたいなvv」

「天国とエデンって……どっちもいい方じゃないかっ……って、あっ、こらっ。こんなところで脱がすな―――!」

都合のいいお耳はピクリ、と反応。

「……こんなところでなきゃ、いーんだな?」

墓穴。

「……さぁ、どこへなりとも行ってやるよ」

逃れる術を持たない、だった。





は、必死で声を出すまいと頑張っている。

この校舎の中。

誰がいつ来るともわからない。

そして。

相手は夢中だから、誰に見られようと絶対に気づかない。

「……ちょっ……ぁ……」

ペロ、と突起をなめられては、声があがってしまう。

「……ん〜……ひ、寿っ……やっぱりやめよーよ……人来ちゃうよ……ん……」

お構いナシに、コトを進めていく三井。
次第に、我慢しきれなくなって、ポツリポツリと声がもれる。

「……ぁん……ふっ……はぁ……ん……」

抑えている(と本人は思っている)声が、三井の耳に入るたびに、ゾクリと彼の背筋を震わせた。
三井の人差し指が、鎖骨をなぞる。
指を追うようにして、熱い吐息と唇が降りていく。

カリッと突起を甘噛みすると、呼応して喘ぎ声。

「……ぁんっ……」

「……相変わらず、ここの感度はいいよな……」

「う、うるさぃ、この、エロエロ大魔人っ!」

「おっ、そーゆーこという?へぇ〜……」

いいながら、顔を、の中心へ近づける。

「……ひゃぁっ……ひ、寿っ……や、やめっ……そこ……っ……」

まわりをゆっくりとなめてから、徐々に中へ。そして、何度も舌を出し入れする。

「……ぁっ……」

「声、出さないようにしてるんじゃなかったのか?」

「ん〜……っ」

三井の言葉で思い出したらしく、涙目のまま口をつぐむ。
どれだけ、唇をかみしめていても、体の中心から湧きあがってくる快感に、思わず声が出そうになる。
今まで自分の体を支えていた両手を、口元へ持っていき、必死に声を外に漏らさないようにする。
涙目で口元を抑える、

その可愛さに三井寿(18歳 ♂)は悩殺された。

(……たまには、こーゆーHもいいかもな……)

邪なことを考えながら、そっと舌を離す。
ほっと、安堵の息を吐いた瞬間。
茂みをかきわけるように、指が進入してきた。

「やぁ……んっ……」

いやらしい水音。

声を押し殺そうとして出る、熱い吐息。

両方とも、シンと静まりかえった校舎によく響いた。
なおさら、気持ちが高まる。
くっと指を曲げられれば、の体も同様にしなる。
だんだんと、声を押し殺す事すら忘れてきた。
押し寄せてくる快感は、体ごと犯していく。

「……我慢してたからな……痛くても、こらえてくれよ……」

「うっ……んっ……」

「……よし」

ニヤリと笑って、三井はぐっと腰を深めた。

1つになった、2つの体。

三井が腰を動かすたびに、の腰も揺れる。

いつもよりも大きい三井のモノに、戸惑い、両手を三井の背中に回した。

「……はっ……ぁあ……んぁ……あっ、あぁ……!」

もう止めることが出来ない、溢れ出る嬌声。

「……今日は、いつにもましてイイ声だな……」

掠れた声が、ゾクリと背筋を震わせて。

「……も、ダメ……だっ……よっ……ぁんっ……はぁっ……んんっ……あぁっ!」

「……イッたのか……っ?……でも、もうちょっと、付き合えよな……」

震えているの両足を掴んで。

ぐんっと最奥までを貫いた。





「…………私、もう絶対合宿なんてしない」

服を着ながら、宣言したに、三井はさらりと返す。

「んじゃ、あれだな。旅行だな。2人で旅行」

「そんなの、絶対しないもんっ!」

ぷいっと横を向いた顔を、引き寄せて。

「……それじゃ、オレの家にお泊りするか?」

「……ずぇぇぇぇぇぇっったいしないっ!MVPシューターお化けのばかっ!」

言って、ダッシュで逃げ去る。
後に残された三井は、ポリポリと頬をかく。

「……馬鹿だな。そしたらオレがお前の家に押しかけるっつーのに」





あとがきもどきのキャラ対談



銀月「……強制終了」

三井「あぁ?」

銀月「リクエスト投票が1番高かったのにっ!……なんでこんなへっぽこ(ってかエロ)作品なんだよっ!」

三井「そりゃ、お前の腕がわりーからだろ」

銀月「……うっさいっ!MVPお化けっ!」

三井「つっても、リクエスト投票1位?」

銀月「そーですねっ。すばらしいですねっ」

三井「でも、お前の作品はすばらしくない」

銀月「……そのとーりですねっ……ったく……いちゃいちゃしてるくせに……」

三井「おぅ……といちゃいちゃすんのが、オレの仕事vv」

銀月「あー、そーですか!!」