流星群
放課後の教室。
補習を受ける為に、あたしは先生方の会議が終わるのを待っていた。
幸い今日の放送当番はあたしではない。
暇だと歌いたい。
気がつくと歌ってる。
「・・・I don't wanna cry」
教室内に響くのが心地良い。
誰も聞いちゃいないけどもう沈んでしまいそうな夕陽だけはあたしを見ている。
西だけ赤い空に届けばいい。
暫く黙って静かな空を見た。
段々と暗くなってゆく。
冬はすぐに暗くなってしまうけど、それでもいいかなと思う。
寒い。
言葉にならない夜は 貴方が上手に伝えて
絡み付いた 生温いだけの蔦を 幻想だと伝えて
ガラ。
「!!」
「・・・・あ・・御免なさいっす」
「何だ・・・忠之助か」
一つ息を吐いてドアに突っ立っている忠之助にどうしたのかと聞く。
野球部はもう終りなんだろうか。
「あぁ、先生が今日は補習出来ないって言うから言いに来たっす」
「はぁ!?また?もう3回目よコレ」
いい加減に呆れた。
忙しいのは分かるけどもう3回目なのよ。
あたしだって部活出たいのに。
「でもさん頭いいから補習なんか受けなくても平気だと思うっすけど」
「仕方ないじゃない。母さんが仕事手伝えって言うからずっとレコーディング手伝ってたんだし」
母は一応歌手だ。
その所為であたしも有名人だけどそんなの関係ない。
あたしはあんまり好きじゃないんだ。
あの仕事。
「そうっすねぇ・・・そう言えば今歌ってたっすね」
「・・・聞いてたの?」
「あ」
申し訳無さそうに後頭部を掻く忠之助が何だか楽しくて笑った。
どうせ母さんの歌は歌わないからいいんだけど。
「いいけどさ別に」
「・・・でも上手いっすよホントに。えーっと・・続き歌ってくれると嬉しいっすけど」
「珍しいわね」
「さんが歌ってるの見るの好きっすから」
照れたように笑う忠之助を見てあたしまで照れてしまう。
何て恥ずかしい事を普通に言うんだろうこの人。
外はいつの間にか真っ暗で、うっすらと小さく星が見えていた。
今なら丁度いいかもしれない。
寒いけど。
「誰かの為に歌うなんてレアなんだからちゃんと聞いててよね」
「了解っす!」
嬉しそうで、あたしも嬉しかった。
敬礼した忠之助の手を両手で挟んで深呼吸。
無骨な大きい手があたしの手を軽く握ってくれた。
心を与えて 貴方の手作りでいい
泣く場所があるのなら 星など見えなくていい
目を閉じた。
星なんかは当たり前のように見えなかったけど暖かかった。
歌詞の意味を噛むと悲しくなるから自分の声だけ聴き続ける。
呼ぶ声はいつだって 悲しみに変わるだけ
こんなにも醜い私を こんなにも証明するだけ でも必要として
手を握る力が強くなった。
伏せた目で忠之助を見たら、優しくて。
なんだか泣きそう。
貴方に触れない私なら 無いのと同じだから
目を開いた。
「歌ってる時が一番綺麗っすよ。さんは」
照れ臭さを押し殺したような忠之助の表情にあたしはまた照れた。
やっぱり苦手だわこう言うの。
自分の手ばかり汗ばんでる気がする。
「・・・ありがと」
あたしは此処で泣いていいんだろうと思う。
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ご・・御免なさい流星群好きなんです!!
こんなで良ければお持ち帰りくださいませ銀月様。
返品可です(爆)
無断転載可。
出来る事なら著作権も放棄したいです(死)
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