「!」 家を出たばかりのが振り返ってみれば、そこには隣の家の幼なじみが窓から顔を出していた。 「宏明っ!また遅刻するよ!」 の言葉に、越野がむっと顔をしかめる。 「お前なぁ……それじゃいつも俺が遅刻してるみてぇじゃねぇか!」 「だって、してるでしょ?」 「そーれーはー、俺が仙道を待っててやってるからなの!」 「……はいはい。その仙道があそこで待ってるよ」 いつもは時間にルーズな仙道が、珍しく越野を待っていた。 ここで機嫌を損ねたら、おそらく一生待ってはいまい。 越野は思い切り顔をしかめて、に向かって叫んだ。 「絶対今日は勝ってやるからなぁ〜〜〜!」 「はいはい……」 、1人深々と溜め息をついて学校へ行く。 WEAK AM 8:20 この時間では、越野達は完全に遅刻すると踏んで、のんびりと街道を歩いていた。 「……越野、またちゃんとプレイすんのか?」 隣で肉まんを食べながらの仙道の言葉に、あたりまえ、と言わんばかりに同じく肉まんを頬張る越野が胸をそらす。ゴクン、と肉まんを飲み込んでから出てきた言葉は、案の定それだった。 「あたりまえだろ!勝ち逃げなんて、ぜってー許してやらねぇんだからな!」 ぐっと拳を握る。仙道は、そんな友の姿を見て、珍しく真剣な顔をした。 「……にしても、おかしな話だよな……ベスト4の陵南のレギュラーとプレイして一度も負けたことがないなんて……しかも、女の子だろ?なんで女バス入んないんだ?」 越野はうっと口篭もった。その姿を仙道が見逃すはずがない。 「なんか、あったんだろ?」 越野の目の前に、ツンツンの黒い凶器が広がる。 顔は笑顔のままだが……その笑顔がかなり怖い。 「……だって、中学の時は女バス部員だったよ……」 「じゃあ、なんで、今は部活やってないんだ?」 「……仙道っ!お前野次馬根性丸出しだぞっ!」 「ちゃんのことだろ?……きっと、テクニックがすごいから先輩に追い出されたんだろ」 「人の話を聞いてないな……そうだよ。あいつは、テクニックで先輩達をごぼう抜きにしてた……だけど、体力ねぇんだよ……見た目は元気でも、体がついていかないっていうか……だから、あんま激しい運動を続けることが出来ねぇ……バスケみたいなヤツは特にな。コートに立てたとしても……そうだな、5分、7分くらいが限界だな。1クォーター分すらもたねぇんだよ」 「……まじか?」 「嘘言ってどうするんだよ」 越野が仙道を蹴る。仙道の顔はなおも真剣のままだ。 「今日から、体育、持久走だろ?ちゃん大丈夫なのか?」 さっと越野の顔が青ざめる。 「やべぇ……アイツのクラス1時限目じゃね!?」 「俺のクラスだから……そうだな、1時限目だ」 「うっそだろ!?……体育の有村は、絶対に見学とか許さねぇからな……アイツ、やばいって!」 時計を見れば、すでに針が指す時刻は、8:40を回っていた。 ぎり、と越野が唇を噛む。どう考えても、ここから学校までは、20分かかる。1時限目の始まる時刻は8:45。15分も走りつづけたら、の体は一体どうなる事だろう。 「仙道っ!悪いけど、俺ダッシュで行ってくる!お前は、後ででもいいから!」 鞄を抱えて走り出す。あっという間に仙道の視界から越野の姿は消え去った。 「やれやれ……熱いなぁ……」 彼の言葉は、越野の耳に届く事はない。 8:47――― 準備体操が終わったところで、体育教師、有村の大声が響く。 「えー、今日から持久走に入る!今日はロードだ!校門をでて、学校の周りを5周して来い!」 えー!と生徒のブーイングが起こった。 その中で1人、は若干青い顔で考えた。 (……持久走……まじ?死ぬんだけど……だめもとでいいから言ってみるか……) は、そろそろと体育教師、有村へと近づいた。 「あの〜……体が弱いので見学を……」 そこまで言ったところで、の言葉はかき消された。 「なにをいっとる!お前が昼休みに中庭で越野の相手をしている事はしっとるぞ!」 「……はは、そーっすよね……」 とぼとぼと生徒が集まる校門前に向かって歩く。 「よしっ!行け。俺も後ろからついていくからなぁ。サボってる奴がいたら、+5周だからな!」 (いや……まじ死ぬって……) 「次、!はやく行けっ!」 「はぁい……」 とりあえず、スタートする。速度は、ゆっくりめに。後ろから走ってくる生徒に早くもぬかされた。 中学が一緒だった植草が隣に来る。 「大丈夫?ちゃん」 「ん……きつくなったら、歩く」 「そうしなよ。それじゃ」 言うと、どんどん前に行ってしまった。さすがに、バスケ部の体力はすばらしい。 「……うわ……すごい……」 とろとろと走っているのか歩いているのかわからない速度で進む。次第に息が出来なくなってきた。後ろから、体育教師の声がする。 「こら―――!!なにやっとるかぁー!サボるなっ!」 (イヤ……サボってないんですけど……) ちょっと速度を速めてみる。……といっても、本当にちょっとだが。 「っ!+5周にするぞ!」 (だから……死にますって……) 最後の1人がをぬかしていった。 「、俺に追いつかれてみろ、+10周にするからな!」 の事情を知らない体育教師は過酷な命令をだす。 「……うそ……でしょ……」 さすがに、それはヤバイ。速度を上げて、まぁ、走っているかな、ぐらいのスピードにする。 目の前が、ぐるぐると回ってきた。 (だぁ……死ぬ……目、回る……けど、10周なんてもっとヤダ……) 気力を振り絞って走る。 走る。 (……もうだめだ) ぐるぐると回っていた視界が、グレイ1色。……アスファルト1色に染まる。 「こらー、!」 ピク、と体が反応して、体勢を立て直して走り出す。 半泣きだ。 (もう……ヤダ……) 「……この、クソ教師!になにやらせてんだよ!」 ふわっと自分の体がタオルケットに包まれたような温かさに襲われた。 「…………宏明?」 頭の上で、大きな声がする。 「が死んだら、俺がお前を一生追い掛け回すからなっ!」 「なにを言うか―――!越野―――!」 有村の声も近くなってきた。 「こいつはなぁ、喘息なのっ!ビョーキなのっ!お前のやってること、保護者会に言ったら、お前クビだぞっ!」 有村の声がピタッと止まった。 代わりに、心地よいテノールの声が耳に広がる。 「大丈夫か?」 「……も、ダメ……死ぬぅ……」 体を越野に預ける。 ちょうど耳が越野の胸にあたって。 心臓からは速い鼓動が伝わってきた。 「……宏明のえっち……」 「な、なんでだよっ!」 見なくてもわかる。おそらく越野の顔は真っ赤なゆでだこだろう。 「……鼓動が速い」 「は、走ってきたからだろっ!」 「ふーん……にしても、疲れた……」 きゅっと学ランの端を掴む。 越野が動揺した。更に鼓動が速くなる。 「……さ、さ、さ……サボっちまうか……?」 「……そーしようvv」 我に返ったのか。 有村の声が後ろでした。 だけどそんなことは気にせずに。 は、越野につれられて細い横道へ入った。 体の負担を考えているのか、越野の速度は、の体に負担にならない程度の速さだった。 そんな気遣いが嬉しくて、心の負担が軽くなって、更に体の速度も速まった。 おそらく有村にはもう2人の姿は見えないだろう。 。 体はちょっとWEAK(弱い)けど。 心は最高にハッピーでした。 あとがきもどきのキャラ対談 銀月「はいっ!初越野ですっ!UPが遅くなって申し訳ありませんっ!」 越野「……おい……」 銀月「いや〜……あんまり甘くないし……」 越野「……おい……」 銀月「なんか、主人公があんまし出てないっすねぇ〜……」 越野「おいっ!お前、俺だからって手抜きしただろ!」 銀月「……いや、そんなぁ〜!いつもより短いとか、いつもより甘くないとか、いつもより文章が変だとか、あ、それはいつもだけど……なことは、全然ないと思うよ?」 越野「すげーあるわっ!この、ボケッ!……、もう無理すんなよ?」 銀月「そうですよ、さん」 越野「お前は黙ってろ!……、今度からは俺を呼べ。な?じゃ、行くか」(越野スタスタと退場) 銀月「……すみませんでした。感想、苦情等、BBS&メールで下さいっ!」 |