好きで

もう止められないこのキモチ

だけど

嘘をついて

嘘をついて

止めてきたこのキモチ

本当のキモチは



どこにいるのかな―――





True feelings






一週間前。

「女子でクラス旅行に行くことになりましたっ。行き先は、愛知っ!行きたい人は、までよろしくっ」

そんな手紙が配布された。

当然、私はの親友だから、即返事。

他にも仲のいい友達が結構くることになりました。

「よしっ。人数は集まったっ!後は日にちを待つだけだ」

の言葉に、私はうんうん頷いた。





「……だ、騙された……」

窓の外の景色を見ながらつぶやいた、私の独り言を耳ざとく聞きつけたが言い返す。

「騙しただなんて、人聞きの悪い。……たーまーたーまー、男子の旅行と一緒になっただけじゃない♪」

嬉しそうな、の顔。だけど、その顔が向いているのは、カッコイイ男の子。

「……まさか、タケル君がそーゆーことするとは思わなかった」

に言われたんだよ。な、許してくれって。年頃の男女が一緒に旅行なんて、許す親がどこにいるんだよ」

「そーだね……そこまでは、まだ許せるの……」

「そこまでは?」

私は、タケルの隣にいる男の子に指を指した。

「なんで、宗までいるの!!!」

タケルの隣にいる男の子―――。

私の幼なじみで、バスケの世界じゃ知ってる人の方が多い、名シューター神宗一郎。

そして―――私の好きな人。

だけど、彼はのんきに旅行していいのだろうか?マネージャーの私は知っているっ!部活の練習があることを!

「宗っ!部活はっ!」

「僕は牧さん直々に、の監視役に任命されてvv」

あっさり言った宗に、私はがっくりと肩を落とした。

「監視って……あんた、そーゆーこと言って、ことごとく私に声かけて来る男の子追っ払ってるじゃないっ!」

「ま、今回もそーゆーことになるかな……」

「のんびり言ってんじゃないっ!」

「う〜ん……だけど、前から俺、そこ、行ってみたかったから」

「……もう、言う事ないや……」

にこにこ笑う宗に、私は再び肩を落とした。





列車を降りて。

重い荷物を持って改札を出ようとしたら。

ピコーンピコーン、と赤いランプが点滅した。

「うわわわわっ」

慌てて元に戻る。

「え?え?……ちゃんと買ったよね?……なんで〜?」

?なにやってんの?」

の言葉に、私ははっと上を向く。

「切符がひっかかった〜。ちょっと駅員さんのとこまで行ってくる。先行ってて」

ん、と返事をして、は人ごみへ消えていく。さすが観光地。人が多かった。

駅員さんに事情を話すと、快く通してくれた。やっぱり、切符はあっていたらしい。

荷物を持ちなおそうと、一旦荷物を降ろすと、地面が暗くなっている事に気付いた。

ふっ、と顔をあげると、大きい人たち。

「彼女、1人で旅行?傷心旅行だったりする〜?俺たちと遊んで嫌な事忘れない?」

ぞわぞわ、と鳥肌が立つ。

今時、どこにそんなお決まりのセリフを吐く人がいるんだ〜。

ぐっとおなかに力をいれて、無視して突破しよう、と心に決める。

「おいおい、無視かよ」

無視無視。

「何様のつもりだテメー」

無視無視無視。

「ブスのくせに、何様だっての」

……ブ、ブス……。

ぐさっと心に槍が入る。

そんな私の表情を見て取ったのか。

「あ、傷ついちゃった〜?ごめんね〜?だけど、本当のことだから〜。鏡見てみれば〜?」

ギャハハハ、と品の無い笑い。

だけど、その言葉は確実に私の心に傷を作った。

ブス、といわれても言い返す言葉がない。『ブス』といわれて『なによ、バカ』といっても、いまいち迫力に欠ける。

それでもって、結構傷つく言葉だ。

涙が出てきそうになるのを、こらえた。

こらえたけど、ぽと、と1つ雫がこぼれた。慌ててうつむく。

すると、また、地面が暗くなった。

「?」

上を向くと同時に。

ガッ……!

ものすごい衝撃音がすぐ近くで鳴った。

「……目が腐るから、とっととどっかに消えてくれる?」

聞きなれた声。

「宗……」

笑みすらうかべてくれる、幼なじみ。

殴られたらしい男は、悔しそうに唇をかんでいた。

「……んだよっ、てめー1人でこんだけの人数相手にする気か?ばっかじゃねーの?」

「あいにく、君達ほど馬鹿じゃないからね……」

1分間。

たった1分で宗は、そのナンパやろーどもをやっつけた。

パンパン、と手をたたいて埃を落とした宗。

ゆっくりと近づいてきて、呆けている私と目線を合わせて腰をかがめた。

「……涙、ひっこんでる」

「……あまりのことに、びっくりしてひっこんだ……」

「それは、よかったよかった」

宗の笑顔に、ぎゅっと心が締め付けられた。





一騒動あって、それでもなんとか無事に旅館についた私たちは、早速部屋へ移動を開始した。

私とは同じ部屋。本当は4人で1つの部屋なんだけど、1つだけ、2人の部屋しか空いてなかったので、最終的に私とが同じ部屋になったのだ。

フロントでもらった鍵で、カチャ、と扉を開けると、たたみのいい匂いが薫る。

「……うわぁ……いい匂い……!」

「ホントッ!いい部屋でよかった〜……」

どさっ、と私は荷物を置いた。

「ここが私たちの部屋ね〜……」

その言葉を言うなり、はパンッと私に向かって合掌した。

嫌ぁ〜な予感が頭をよぎる。

「……っ、一生ぉ〜のお願いっ!部屋割り、私とタケルでお願いしますっ!」

「お願いされてたまるか〜〜〜!」

タケル君と相部屋なのは……宗。

そしたら、結果的には私と宗が同じ部屋になってしまうっ!

「絶対ダメっ!そんなのダメっ!」

「そこをなんとかっ!」

「ダメッたらダメッ!」

「お願いっ!」

結局……

拝み倒された私は。

神宗一郎と同じ部屋になってしまった―――。





「町にでも繰り出しますか……」

「……馬鹿……」

「……聞こえませんね」

「馬鹿〜〜〜っ!」

「さ、いこいこvv」

「……自由行動なんだよね、ここからは」

「うんvv」

この顔をみて思った。

「……タケル君と宗も一緒なんだね……」

「そのとーりっ!」

「1回死んで来いっ!」

「いやだよ〜んっ」

私は半泣きで部屋をでた。





「……うをっ……すんげー人……」

「タケル、待ってよ〜vv」

親友の聞いたこともない甘ったれた声。

「……って……って……」

私は軽い人間不信に陥りそうだった。

そのとき、くいっと腕をひっぱられる。

「ねぇねぇ、一緒にご飯でも食べない?」

「はい?」

また……ナンパ?

「い〜じゃん、友達も彼氏とどっか行っちゃったみたいだし。オレと、楽しい事、しよ?」

「え、いや……」

「いーからいーから。オレ、いーとこ知ってんだvv」

「知ってるって言っても……」

「ほらほら、いこ?」

にっこり笑ってるけど、下心見え見え。

「いや、遠慮したく……」

バコッ。

「……ごめんね、この子まだこれから行くところあるから」

「そ、宗……」

今まで話してた男を踏みながら笑顔で言う、宗。

……かなり、怖かったデス……。





向かってくる人を避けながら。

一生懸命を追う。

が。

行けども行けども見つからず。

下手をしたら宗ともはぐれてしまいそうになる。

「……たちがいない……」

「……しかたがないね。2人で回ろうか。向こうも携帯持ってるし、大丈夫だよ」

2人。

どきん、と胸が高鳴る。

けど、宗はいつもの笑顔。

「……そうだね、しょうがないね」

私は笑って、息を吐いた。

再度歩き出そうとしたそのとき。

「……ちゃん?」

一瞬、この人たちの中に私と同じ名前の人がいるのかと思った。

それにしては振り返る人がいない。

ちゃんと、振り向いてあげなよ、同じ名前のちゃん。

ちゃん……だよね?」

ちゃん……って。

私のことじゃんっ!

「……はいっ!」

返事をしたら。

上から笑い声がした。

「久しぶりだね、ちゃん……っと、神も一緒か」

上を見たら、見知った顔。

「あっ、諸星さん!お久しぶりですっ」

「久しぶり。……神も一緒に、どうしたの?」

「俺たち、今、"2人"で旅行してるんです」

「……2人で?」

な、なにを言い出すんですか、宗!

「ち、違いますっ!クラス旅行で……!」

それを聞いた諸星さんは、クツクツと笑う。

「……へぇ〜……それは楽しそうだね」

意味深な視線を宗に向ける。

「諸星さんこそ、ここでなにをしてたんですか?」

「なにを……って、地元だからフラフラと……」

「よーするに、暇だったんですね」

にっこり笑う、宗。

「宗ってばっ……すみません……」

「あはは、いーよいーよ。……ところで、ちゃん。ちょっと耳貸して」

「はい?」

諸星さんから、言葉を聞いて、真っ赤になる。

「な、なに言ってるんですか!」

「本当のことだよ。それじゃあねっ」

爽やかに去っていく、諸星さん。

後には、真っ赤な顔をした私と、不機嫌そうな(でも顔には出していない)宗が残された。





そのまま旅館に帰ってきて。

夕飯を食べ終えて部屋に戻ってきた私たち。

部屋はふすま越しに布団が2つ、並べられていた。

部屋に戻ってきてから、かなりの時間はたっているけど―――

気まずい、沈黙。

どちらともなしにつけた、テレビだけが1つにぎやかだ。

「…………」

「…………

「うぁっ、はいっ」

びっくりして、必要以上に大きな声になってしまった。

また、気まずい沈黙。

「……ご、ごめん……な、なに?」

「いや、オレ、風呂行くけど、どうするのかな、って。風呂の時間だよね?」

時計を見れば、もう11時近く。

「……行くっ!」

がさがさと着替えを出して、ドアを勢いよく開けて、廊下に出た。

廊下に出て、ふぅ、と息を吐く。

出てきた宗と、大浴場まで一緒に歩く。

宗とは幼なじみで。

小さい頃はそりゃ、一緒に寝たり、お風呂入ったりしたけど……

したけど……

ブンブンブンッと顔を振って、雑念を振り払う。

「……じゃ、宗またねっ」

叫んで女風呂へ向かった。

すでにお風呂にはみんな入っていて。

後から入るのはかなり恥ずかしかった。

「おっ、やっと来たか〜……あれ、ってば、胸でかくなった?」

「なっ……なってないと思うけど……」

「嘘っ。揉ませろっ」

「いやぁ〜っ!、なにすんのっ」

「いけっ、っ!」

「こらっ、そこも応援しないっ!……やぁ〜っ!」

逃げていると、隣から口笛を吹く音がした。

『女子〜、いいことやってんなぁ〜』

「いーだろ。女子だけの特権でいっ」

「え、エロ親父っ。エロっ!馬鹿ぁ〜っ!」







浴衣に着替えて、髪を乾かすのも早々に、部屋へ戻った。

そうしないと、またいつ、に襲われる(本当に)わからなかったからだ。

だから、帰っても、部屋に宗はいなかった。

「……早く出すぎたかな」

部屋に1人って言うのは、ちょっと寂しい。

でも、ま、すぐ帰って来るでしょ。





お風呂に行ってから1時間。

まだ宗は帰ってきていない。

「もう、12時過ぎちゃったよ……鍵、閉めたら宗入ってこれないし……部屋の鍵、閉めないで寝るなんて出来ないし……どーしよ……」

そこで、机の上に、宗の携帯がないことに気付く。

よしっ、電話してみよう。

自分の携帯のメモリから、宗のを引き出す。

数回のコール音の後。

『……はい?』

宗の声がした。

「……宗?」

『……?』

「うん……今、ドコ?……お風呂じゃ、ないよね」

バックからは、ガヤガヤと、お風呂ではない騒がしさが聞こえる。

言い知れない、不安感。

『……町』

後ろから、神くん、と女の子の声が聞こえる。

「……誰、いまの。なにやってるの?」

嫉妬……からそんな言葉がこぼれた。

『…………』

沈黙。

「……なにやってるの?」

再度の質問に、冷たい声が返ってきた。

『……なんで、にそんなこと言われなきゃいけないの?……僕が誰となにしようと勝手でしょ?』

ぎゅっ、と心臓をわしづかみにされた気分だった。

そーだった……

私と宗は、ただの幼なじみで。

そんなことをいう資格はないのだということを、忘れていた。

「……そっ……か……そーだよね……ごめん、うるさくいって……」

『…………』

「…………」

沈黙。

『……戻らないから、鍵閉めて寝てていいよ』

「うん……」

通話を切ろうとした時。

口が勝手に動いてた。

「好きなんだもんっ……宗のことが……気になるんだもんっ……宗にだって、私を好きにさせた、責任はあるっ……」

そこまでいって、通話を切って、布団にもぐりこんだ。

声を押し殺して、泣いた。

キモチを、押し殺して、泣いた。

……ぅくっ……んっ……くっ……

流れてくる涙はとどまる事を知らなくって。

いっそ声を上げて泣きたかった。

だけど、それをする資格はないといわれたばかり。

ただひたすら声を押し殺した。





しばらく、泣いていると。

バンッッッッ……!!

ものすごい音を立ててドアが開いた。

タタタッ、と近づいてくる足音。

っ?と問う声がふすまごしに聞こえた。

これ以上、何も言われたくない。

立ち上がって、置いてあった座椅子をふすまの移動する隙間に斜めにおいた。

ガタッとあけようとする宗。だけど、座椅子が邪魔で、開かない。

すると、ふすまを開けようとする音が止まった。

諦めてくれたらしい。

ホッとすると同時に、絶望が襲い掛かる。

また、涙が溢れてきた。

一体、この水分はどこからやってくるのだろう。

座り込んで、声を押し殺して涙を拭っていると。

ガスッッ………

盛大な音を立てて、ふすまが迫ってくる。

「……ぇ……?」

息を切らした宗の姿。

蹴り倒されたらしい、ふすまがすぐ横に音を立てて倒れた。

だけど、それに驚く間もなく、私は宗の腕の中にいた。

「……ごめん、傷つけた……」

走ってきたのか、汗をかいた胸。

頭に回された腕についた、時計が妙に痛かった。

「……な、なに……?……大丈夫だよ、なにいってんの……女の子、待ってるんじゃない?」

震える、声。

それを聞いた宗の腕の力が、強くなった。

「……以外に、女の子はいないよ……」

「……な、なにいってんの……」

ぶわっと更に涙が溢れる。

「……いっぱい、いっぱいいるじゃん……さっきの女の子だって……」

ぐっと強引に顔を向けさせられて。

キス、された。

「……僕にとって、女の子は、だけなんだ……」

もう一度、深くキスをされる。

「…………ごめん……ごめん、…………」

押しつけられた胸が熱くて、鼓動が私の耳に直接伝わった。

「大好きだよ、……ずっと、好きだったんだ……」

「わ……たしもっ……」

声が喉に張り付いて、出てこない。けど、ここで伝えなかったら私はただの間抜けだ。

「……わ、たしもっ……宗のこ、とが……好き、だったのっ……!ずっ……と……!」

泣き声にかき消された言葉は、伝わっただろうか?

まわされた腕の強さに、伝わった事を安心する。

抱きしめあっている私たちを、ただ、月の光だけが照らしていた―――。





翌日、勘のいいが昨日とは違った私たちを見て、ニヤリと笑った。

「あっれー?、もしかして……」

「いや、あの、これは……」

「神くん、、可愛かった?」

「はっ!?何いってんの!?!?」

慌てる私をよそに、2人はにこにこと笑いあう。

「うん、すっごく可愛かったよ。ありがとう、さん」

「いえいえvv」

く、黒いオーラがただよっていて、近づけませぇん……。

列車に乗る間際、ぽそりとが呟いてくれた。

「……神くんが、部屋代わろうって言ったんだよ?」

ぼんっ、と顔が赤くなる。

「そ、そそそそ、それって……」

ふふ、と笑って座席に座る

「策士だね、神くんは」

の言葉に、頷く事しか出来ない私でした―――。









あとがきもどきのキャラ対談



神「……なにか言い残す事はある?」

銀月「……ございません。すみません」

神「すみませんですめば、僕はいらないでしょ?」

銀月「(僕!?)……そ、そうですね……、はは、はははは……っ!」

神「うん、じゃ、さよなら(スマイル)」

銀月「……さ、さよなら……(こわいよ、こわいよぉ〜!)」